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【もしも】種・種死の世界に○○が来たら11【統合】

1 :通常の名無しさんの3倍:2012/07/14(土) 10:01:00.79 ID:???
このスレは種系SSスレのうち、まとめサイトのカテゴリで
クロス物とされるスレの統合を目的としています。
種以外とのクロスオーバーを種別問わず投下してください。
種作品内でのIF作品は兄弟スレにお願いします。

過去スレ
【もしも】種・種死の世界に○○が来たら【統合】
http://mamono.2ch.net/test/read.cgi/shar/1196339764/
【もしも】種・種死の世界に○○が来たら 2【統合】
http://mamono.2ch.net/test/read.cgi/shar/1208353319/
【もしも】種・種死の世界に○○が来たら 3【統合】
http://mamono.2ch.net/test/read.cgi/shar/1212323601/
【もしも】種・種死の世界に○○が来たら 4【統合】
http://mamono.2ch.net/test/read.cgi/shar/1218203927/
【もしも】種・種死の世界に○○が来たら 5【統合】
http://mamono.2ch.net/test/read.cgi/shar/1226476158/
【もしも】種・種死の世界に○○が来たら 6【統合】
http://mamono.2ch.net/test/read.cgi/shar/1230651332/
【もしも】種・種死の世界に○○が来たら 7【統合】
http://hideyoshi.2ch.net/test/read.cgi/shar/1233666943/
【もしも】種・種死の世界に○○が来たら 8【統合】
http://hideyoshi.2ch.net/test/read.cgi/shar/1242394476/
【もしも】種・種死の世界に○○が来たら 9【統合】
http://toki.2ch.net/test/read.cgi/shar/1254828439/
【もしも】種・種死の世界に○○が来たら10【統合】
http://toro.2ch.net/test/read.cgi/shar/1291395757/
まとめサイト
ttp://arte.wikiwiki.jp/

兄弟スレ
【IF系統合】もし種・種死の○○が××だったら 14
http://toro.2ch.net/test/read.cgi/shar/1298609709/

2 :通常の名無しさんの3倍:2012/07/14(土) 12:46:51.32 ID:???
>>1



3 :通常の名無しさんの3倍:2012/07/14(土) 15:15:30.41 ID:???
スタトレックオンラインの動画見てたら8472が生身でビーム出してた。

4 :通常の名無しさんの3倍:2012/07/14(土) 17:18:40.40 ID:???
新スレ立て乙です。前スレ291です。
昨夜は中途半端になって申し訳ないです。残りを投下させて頂きます。
8/13
「どなた」
「バジルールです」

 ドア越しに彼女の声がする。
 私は入室を許可すると、彼女がドアを開けて入ってきた。
 彼女の隣にはサイ・アーガイルの姿があった。

「あらあら、珍しい組み合わせね。どうしたのかしら。えーと……」

 私の部屋は殺風景な程にベッド以外は机と椅子くらいで、もう一人分の椅子しかない。
 元々4人部屋のベッドを撤去して利用しているためだが、
二人を立たせておくのも忍びないため、私はベッドの上に座り、二人に椅子を勧めた。
 彼女は恐縮して立ったままで良いと言ったが、それでは落ち着かない。

「良いのよ。今はオフ扱いなのだから、ただのおばさんよ。ほらほら」
「は、はい。……すみません。では、お言葉に甘えて」

 二人は椅子に腰掛けた。

「さて、どんなご用件?」
「はい、サイ・アーガイルのことですが、彼に上級士官への道を歩ませたいと考えていまして」
「上級士官へ……?それは、彼が望んでいるのかしら」
「はい。勝手な判断でご迷惑かもしれませんが、彼が友人を思い新型へ志願したと聞いて、
アーガイルはパイロットより人を纏める方が合っていると思いまして」

 彼女の申し出の後、サイ・アーガイルが私に宜しくお願いしますと挨拶をした。
 確かに彼は一身上の都合ということで試験を棄権していたが、まさかこんな理由だったとは。
 とはいえ、私は本来の地球連合の大佐ではない。
 私が何かを言える立場ではないが、確かに彼女の判断通り、
彼にはパイロットよりそちらの方向の方が向いているだろう。
 だが、それでも問題点はある。

「……あなたはオーブの人間で、本来は連合の士官になるべき立場に無いわ。
 それでも目指すというなら、あなたは外人部隊扱いになるわけだけど、覚悟はあるのかしら。
 尤も、私も門外漢がブランクを開けての大佐だから、人の事なんて言えたものじゃないけど、
この艦で上級職を目指す試験を受けることは可能だと思うわ」

 彼は私の言葉に、怯む事無く私の目を見て答えた。

「大佐、覚悟は有ります。是非とも宜しくお願いします!」
「私も彼の試験のサポートはするつもりです」

 彼は威勢良く私へ決意を語る。その声は部屋の外へも響くくらいだ。
 バジルール少尉も彼に協力するということだが、何があったのだろう。
 サイ・アーガイルはフレイ・アルスターと仲が良かったはずだが。……いや、そういう事ではないと思うが。

5 :通常の名無しさんの3倍:2012/07/14(土) 17:23:32.83 ID:???
9/13
「……そう。なら構わないわ。連合の基準に適合する兵が上を目指す事を阻む理由は無いし、
キラ君の様な特例は別として、あなたがこの艦で不足する上級士官への道を目指すというなら、
私としては有り難い話ね。でも、それは正規兵になるということなのだから、
体力面も相応に要求されるわよ?」
「頑張ります!」
「分かったわ。私も試験官としての対応は取れると思うから、暇を見てやって行きましょう。
 でも、まずは下のクラスをクリアすることが先ね。そうだ、他の志願者にも門戸は開けましょう。
 あなた以外のパイロット候補生も一緒に勉強出来た方が、あなたも張り合い有るでしょ?フフ、頑張って」

 私は彼らが帰った後、しばし休憩した後にハンガーへと足を運んだ。
 私のすべき仕事は、現在進行中の計画を少しでも早く終了させることだ。

 暗礁宙域を先行するバスターとゲイツ・ステルスは探索を続けていた。
 アスランは前回の戦闘後、あえて大きく距離を置く方針を採った。
 それは敵側を油断させる意味合いもあるが、評議会が要請していた「ラクス・クライン捜索」の為であった。
 そもそもアスランは彼女の婚約者という立場も有り、
あの時点で戦闘を継続し続けるわけにも行かない政治的な事情があった。
 故に彼は足付きの戦力を削る程度に留め、自陣営の戦力の温存と捜索の両立を計る。
 見失った暗礁宙域では自軍の艦艇の残骸らしきものは確認出来た。
 幾つかの遺体も回収するに至ったが、肝心のラクスクラインの消息は不明だ。
 ただ、不幸中の幸いかどうかは分からないが、残骸には脱出艇の残骸は含まれていなかったことから、
彼女が何らかの形で生存している可能性はあると言えた。
 バスターが接触回線で話しかけた。

「ったく、アスランも厄介な立場だな。
 お姫様探しもしなきゃいけないし、足付きも追わなきゃいけない。
 俺ならお姫様探しは後回しにするけどな」
「ディアッカ、……イザークが聞いたら激怒しますよ。彼は彼女の大ファンなんですから……。
 でも、そうですね。あの状況で足付きを逃がすのは僕もどうかと思います。
 ただ、戦果を上げていることも事実。婚約者という建前も入れれば絶妙な采配と言えるでしょう」
「……お前は相変わらず頭が切れるな。
 まぁ、お偉方を納得させるには損害ゼロで船一隻撃沈は十分戦果だよなぁ。
 しかも悲劇のヒロイン探しも両立だ。……あの小賢しさは一体なんなんだ。
 あいつってあんなにセコセコ動くキャラだったか」

6 :通常の名無しさんの3倍:2012/07/14(土) 17:26:13.50 ID:???
10/13
 ニコルは彼に問われて、しばし脳内にあるアスランの記憶を引き出した。
 彼は確かに優しいし優秀で手先も器用ときているが、性格的には優柔不断で決断力は無い方かもしれない。
 しかし、人前での立ち居振る舞いはさすがの秀才だけに隙無く動けるし、
戦闘においても身のこなしは一流だと言える。
 彼は命じられる事に忠実であり、あまり自分を全面に出す様な人間ではない。
 だが、ディアッカの言う通り彼は変わった。その変わり方は豹変と言っても良い。

「……元々は彼も次をリードする指導者の息子。相応の能力が有って然るべき。
 これまでが羊の皮を被っていただけなのかもしれませんよ。
 でも、貴方の言う通り、彼に似合わずあまりに手堅い。
 ……フフ、正直、そうした役割は僕の役目だと思ってました」
「はは、言えてるな。でも、お前、そんなことを考えて動いてたのかよ。怖いねぇ」
「そうですか?……そうかもしれませんね。
(……ですが、彼がそう動くなら、もう僕が気を使う必要はなさそうだ)」

 ニコルは心の中でそう呟きながら思わず笑った。
 自分が背伸びをしなくて良いということは、正直言えば気楽な事だ。
 これまで「このメンバー」の中で、彼は最年少でありながら「最大の気配り」を強いられてきた。
 リーダーとされたアスランは優柔不断、イザークは癇癪持ちで、
ディアッカは無関心、そして兄貴分として纏めてくれていたミゲルは戦死し、
何もしなかったら勝手に啀み合いが生じて、バラバラになりがちなこのチームを支えてきたのはニコルだった。
 ただ、今回のアスランの変化はアスランだけに限らなかった。
 これまで無関心だったディアッカは、以前と違い前面に出てくる気配もあるし、
イザークは以前より落ち着き(?)を見せてきている。
 そして自分自身、アスランの変化を切っ掛けに負担が軽くなったことは間違いない。
 それがこれまで被ってきた自分自身の「殻」を破る結果となるのであれば、
ニコル自身楽しみな面も感じていた。
 その時、センサーに一つの機影らしき物が観測された。

7 :通常の名無しさんの3倍:2012/07/14(土) 17:30:36.03 ID:???
11/13
「センサーに反応、識別は……連合のメビウス!?
 ……でもエンジンの出力が少し違う。新型でしょうか。」

 ニコルがセンサー情報をディアッカに転送する。
 彼もその情報を見てみるが、確かにデータベースにあるどのメビウスにも該当しない。
 この期に及んで連合が新型のメビウスを開発したというのだろうか。

「……どうだろう。近づいてみないとわからねぇ。
 幸い、向こうさんとの距離もあるし、メビウスのセンサーエリアは狭い。
 もしかしたら、お姫様を撃沈した奴らの仲間……なんてこともな。」
「連合がこの宙域に来る理由はなんでしょう。ここはZAFTの領域です。
 クライン嬢の慰霊団を撃墜するメリットも無ければ、
そもそもここまでやってくる事自体が困難なはずです」
「と、すれば、この宙域にいる連合といや……足付きか」
「はい。……どうします。
 罠の可能性もありますし、単なる哨戒として出ているだけかもしれません。
 しかし、新型が来ているということは、連合の援軍が待機している可能性も」

 ディアッカは周囲のセンサー情報を見ながら自身でも思案してみるが、
先の戦闘で目立った損傷もしていないはずの足付きが潜んでいるとも思えなかった。
それでも、実際にデータは出てきている。

「……罠を張る程向こうが余裕だとは思えねぇ。
 でも、もしそうなら理由は分かる。この宙域なら身を隠し易い。
 仮に何かトラブルが有ったとしたなら、どこかに潜んで修理に励んでいるって寸法だろう。
 てっきりあの遅いドレイク級引っさげて進んでいると思っていたが、
見つからなかった理由はこういう事か。」
「……何かを待つために待機しているのか、それとも修理の為かは定かじゃないですが、
この場を選ぶ理由は仰る通り一つ……動きたくないからでしょう。
 動きたくない相手ならば包囲殲滅が常套。
 ディアッカ、貴方が艦へ繋げてくれませんか。
 僕はこのままステルスで潜行してみようと思います」
「……おい、大丈夫か。まぁ、わかった。無理するなよ」
「はい」

8 :通常の名無しさんの3倍:2012/07/14(土) 17:32:54.96 ID:???
12/13
 バスターが離脱する。
 ニコルは彼の離脱後岩陰に隠れ、ミラージュコロイドを起動しエンジンを停止した。

 アークエンジェル艦橋では敵側のセンサー反応が消えた事に驚いていた。

「バスターが後退、グリーンが消失しました!」
「何、よく確認したのか!」

 CICからのセンサー情報の報告に、思わずバジルール少尉の声が上ずる。

「センサー情報は宙域ポイント351マーク12より離脱後消失とあります」
「……どういうことだ」

 突然消失した機体。
 詳細は先行させたメビウスとの通信を待つ他無いが、
通信をすればこちらの居場所がバレる危険性もある。
 しかし、こうした行動に対しても抜かりは無かった。

「先行するフラガ大尉に繋げ」
「はい」

 予めフラガ大尉には敵側へ接近する前に遠回りに飛行させ、
領域の幾つかのポイントに中継アンテナを散布した。
 このお陰で直接の通信を辿られずにアークエンジェルとの通信を確立させていた。
 そして、その通信も独自の新しい暗号化を施している徹底振りである。

「こちらアークエンジェル、バジルール少尉です。
 大尉、敵グリーンの消失を確認しました。何かわかりませんか」
「……こちらフラガ。敵さんはこちらでも確認出来ていない。
 どうなっているんだ。とりあえず哨戒行動の真似をしているが」

9 :通常の名無しさんの3倍:2012/07/14(土) 17:35:08.19 ID:???
13/13
 フラガの方でもサッパリ状況はつかめていなかった。
 その時、ラミアスが通信に加わった。

「……あまり考えたくはないけど、ミラージュコロイドの可能性を考える必要があるわね」
「何だそりゃ?」
「最新の光学遮蔽技術よ。ブリッツに搭載していたの。
 もしかしたら、ブリッツを使っているのかもしれない。
 センサーを赤外線反応に切り替えてみて。
 たぶん、かなり極小の噴出反応を検出出来ると思うわ」
「わかった。やってみる」
「詳しい情報はそちらに転送するわ。これからは根比べ……というべきかしら」
「……?、まぁ、了解」

 フラガとの通信が切れた。
 バジルール少尉はモニターにブリッツの情報を引き出していた。

「艦長、ブリッツが……というよりは、
ブリッツの……情報が漏れたと考えられているのですね」
「……えぇ。大佐もさすがね。センサーラインの強化はこのためだったのね。
 あれ程のシステムが無ければ、我々は今頃蜂の巣よ」
「スクリーンに表示します」

 少尉が大型スクリーンにセンサー情報を表示した。

「こちらがまだ情報で上を行っていると信じたいですね」
「えぇ」

 二人の視線は、
消失したポイントから僅かにそれた宙域に新たに現れた反応へ注がれていた。

第15話終わり。第16話へ続く
投下終了です。有り難うございました。最初の方は前スレをご覧下さい。

10 :通常の名無しさんの3倍:2012/07/14(土) 23:02:55.67 ID:???
ワープ10突破乙!
ボーググリーンwwレーダー範囲5000kmww
セブンにしてれば簡単な改造なんでしょうけど、SSだと造形と特撮の費用を気にせず魔改造ができるのがいいですね!
700年前の目撃者に出てきた砲塔付きヴォイジャーはけっこう好きです。
サイは上級士官目指すという事はMS土下座はなくなりそうだな。
なんかアスランが覚醒してるしこれなら凸にはならないか?

11 :通常の名無しさんの3倍:2012/07/15(日) 01:53:32.60 ID:???
乙です!
ボーググリーン吹いたwww
なるほど、ちょっと怖いかもwww

それにしても読んでてアメリカのドラマ見ている気分になるSSだ
しかも週一というスピード!!
本当凄い文才です!!

これからも頑張ってください!!!

12 :通常の名無しさんの3倍:2012/07/15(日) 22:01:50.26 ID:???
291です。
>10 >11
 乙有り難うございます。
 メビウスの装甲素材変更は新型も視野に入れている設定です。
 艦艇用のラミネート装甲素材と、MS用PS装甲素材のストックがあるわけで、
それらの材料を活用しながら研究を進めている感じです。
 メビウスFへの採用は試験的な意味合いもあります。(ゼロは採用していない)
 セブン側はより調達コストの低い素材の活用を求めています。

 レーダーについては、シャトルアーチャーの長距離センサー性能は、
素体のシャトルコクレーンと同等の光年単位なので、
フルスペックを利用する前提は置いていません。
 それでも従来型センサーより遥かに高性能ですが、距離以外にも制約があり、
あくまで「この世界」のスペックを基準にリミッターを掛けている設定です。

 技術系の改造については、現行の設計を発展させることを基準にしているので、
単純に省エネルギー化していたり、低コストで製造出来る様に部品点数を見直したり、
機体自体の軽量化による機動性を上げたりと、割と普通の方向でも進化します。
 ただ、セブンによる場合は通常の研究者が行う技術確立までの試行錯誤をすっ飛ばして、
C.E.に最適な形で如何にダウングレードするかという観点でやっているので、
開発出来る事は分かっている面が開発速度の差になっている感じです。

 あと、お名前募集は継続中です。
 メビウスFのパイロットが6名程必要になってます。
 階級は軍曹4名曹長2名って感じで考えています。
 種オリジナルで活用して欲しいキャラも可ですが、採用は一名で隊長扱いです。

13 :通常の名無しさんの3倍:2012/07/15(日) 22:27:45.98 ID:???
ヤスベエ アベ。
曾々おじいちゃんの名前です。
名前は古風ですが当時は「ハイカラな人」だったとか。
という事で、新しい機体にパッと飛びついちゃった的な感じで如何でしょうか?

14 :通常の名無しさんの3倍:2012/07/16(月) 21:28:35.82 ID:???
>13
 ヤスベエという名前だけ使わせてくださいwww
 そんな古風な名前のメビウス乗りとか、面白いですね。
 ヤスベエ・ポートマンとかそんな名前の日系人って感じで使わせて頂こうかと。
 何と言っても大西洋連邦の主要国はアメリカなので。
 年齢は29歳くらいで、曹長とかにしときましょうか。

 メビウス部隊は割と長く存在すると思います。


15 :通常の名無しさんの3倍:2012/07/16(月) 22:12:43.78 ID:???
>>14
おお!採用ありがとう御座います。
姓はポートマンでもウィルソンでも何でもいいですよ。
設定は全てお任せ致します。
あった事のないおじいちゃんの活躍を期待してます!

16 :通常の名無しさんの3倍:2012/07/17(火) 13:23:26.55 ID:???
スタートレックエンタープライズ借りて見たら小型シャトル2機で宇宙艦引っぱっとった。
出力パネェ。

17 :通常の名無しさんの3倍:2012/07/17(火) 21:36:00.52 ID:???
デルタフライヤーとかスペックやばい。

18 :通常の名無しさんの3倍:2012/07/18(水) 00:45:51.02 ID:???
種放映当時、ウェスリーの影響で石田ボイスキャラにはトラブルメーカーのイメージ持ってたww

19 :通常の名無しさんの3倍:2012/07/18(水) 05:43:31.03 ID:???
>名前
ご参考に

さらに怪しい人名辞典
ttp://www2u.biglobe.ne.jp/~simone/more.htm
欧羅巴人名録
ttp://www.worldsys.org/europe/
最終手段として、ここの適当に命名って機能を使ってしまう手も

20 :通常の名無しさんの3倍:2012/07/18(水) 19:54:56.45 ID:???
フォッグ・ナイト
夜霧の異名を持ち鎮圧戦が得意。やたら自国を持ち上げる。

21 :通常の名無しさんの3倍:2012/07/18(水) 22:57:14.83 ID:???
291です。
>19
 情報有り難うございます。
 まぁ、無理矢理付けようと考えれば付けられなくはないのですが、
 そうやって勝手に付けちゃうよりは、こちらにいらっしゃる方の参加も有った方が、
みんなで作っている感も有って楽しいかなと思ったんです。迷惑でしたかね?(汗
>20
 やたら自国を持ち上げる国の人って、どこら辺の国だろう。
 大西洋連邦だと、みんな持ち上げたがる人達ばかりっぽい。w
 ナイトとか言っているから、イギリス辺りなんだろうか。
 チャールズ・フォッグ・ナイトとか、ミドルネームから因んだって感じだとハマりそうですね

22 :通常の名無しさんの3倍:2012/07/18(水) 23:21:43.35 ID:???
今日見た映画からそのままであれだけど、
バズ・ライトイヤー

23 :通常の名無しさんの3倍:2012/07/18(水) 23:27:46.42 ID:???
艦長のフレイへの諭し方が上手いな。
さすがある時間軸だと23年間単艦の帰還行でヴォイジャークルーをまとめていただけの事はあるわ。
多数の種族とのファーストコンタクトもしてるし、経験が違うな。

24 :通常の名無しさんの3倍:2012/07/19(木) 21:27:56.87 ID:???
悪魔艦長はだてに数々のデッドエンドやバッドエンドを乗り越えてきたわけじゃないぜ。

25 :通常の名無しさんの3倍:2012/07/20(金) 01:28:33.69 ID:???
恥かしながら応募してみようw
ジョニー・ガレン
軽めのお調子者。考古学教授の祖父がいる。

26 :通常の名無しさんの3倍:2012/07/20(金) 20:16:19.25 ID:???
291です。今週分投下開始します。13分割なので2回に分けて投下になりそうですね。
1/13
第16話「通信」

 ZAFT軍ザラ隊旗艦ヴェサリウスでは、
バスターからの近距離通信で連合の足付き艦隊と思しき部隊の存在が伝えられた。
 執務室でその報を受けたアスランは、グラディスと今後の対応について協議している所だった。
 応接椅子に腕組みして対面に座る彼女は、この唐突な報に内心呆れていた。
 彼女からすれば出来過ぎた話にも思えるこの報告に、半ばこの少年の頭の中を覗いてみたく感じていた。

「……お姫様探しのつもりが、結果的に足付き追撃になったわけね。
 まさか、これも想定内というわけかしら」

 彼女からこういわれて、アスランも内心苦笑していた。

「さすがにそれはありませんよ。
 ただ、本国の増援として指揮下に入ったツィーグラーを先行させても何の手掛かりも無い。
 妥当な結果と言われれば仰る通りになるのでしょうけど」

 実際、先の戦闘を切り上げた事に他意は無いし、敵側も先を目指すものと考えていた。
 あの戦闘での対応の早さを考えれば、出来るだけ進んで体制固めすると思っていたのだ。

「まったく、足の遅いローラシアを先行させると言いながら、頭の回る事。
 で、叩くのかしら?」
「そうですね。……叩けるなら叩きましょう。
 相手がわざわざ潜む以上、そこに意味があるんでしょうから。
 とはいえ、どの道叩くつもりですが、出来ればあぶり出したいのが本音です」
「相手の目的は何かしら。
 デブリベルトに留まりながら修理をする程の損傷を受けている様には見えなかったけど。
 修理じゃないとしたら、……援軍を待っているのかしら」
「この宙域に彼ら以外の連合がやってくるとしたら、
その動きは逐一報告されるはずです。しかし、そうした情報はありません。
 援軍の線は薄いでしょう。考えられるのは新造艦である足付きが、
内部的に負荷をかけて想定外の破損をしたか、ドレイク級の損傷に問題があるかだと考えます」

27 :通常の名無しさんの3倍:2012/07/20(金) 20:17:27.08 ID:???
2/13
 グラディスは顎に手を当て、しばし考え込む様に間を置く。
 アスランはそれを黙ってみていた。徐に彼女の口が開く。

「……最近、私も貴方の石橋の叩き方が少し分かった気がするのよね。
 私が貴方なら、この場で突貫工事はしたくない。
 でも、見つけた以上は攻撃をしなくてはならない。
 ここは最大船速で強襲し、敵に考える暇を与えずにあぶり出せれば勝ち。
 ……と考えているんじゃないかしら」

 グラディスの意見に、アスランは穏やかに微笑む。

「良いですね。やってみましょう」

 彼の即答振りにグラディスは眉を上げて驚いてみせたが、彼女も微笑んで同意した。
 その後はバスターを帰投させると、二隻を最大船速で暗礁宙域へと進ませ始めた。

 艦長日誌補足
 私は艦隊の指揮はアークエンジェルを中心に任せ、
我々が為すべき艦隊戦力の改修に努力していた。
 トゥヴォックは民間保安部隊の結成を終えると、
それをバーナードから引っ張ってきた武官に引き継がせた。
 これでアークエンジェルに不足した武官についてはひとまず補強出来ただろう。
 彼にはセブン1人で遅れがちなローのエンジン改修作業の監督に向かわせた。
 これで作業効率は上がるだろう。

 私はMSハンガーへ出向いていた。
 ハンガーでは所狭しと整備士達が働いている。
 そこにある幕の張られた例の一角へ足を運んだ。
 そこには新しく組まれつつあるMSの姿があった。
 忙しく働いている作業員達の中で、
整備主任のマードック軍曹が私を見つけて声をかけてきた。

28 :通常の名無しさんの3倍:2012/07/20(金) 20:18:49.81 ID:???
3/13
「あ、大佐!どうしました」
「あら、マードックさん。って、もう大佐なのよね。
 ふふふ、どう?作業の進み具合は」

 私の問いかけに彼は苦笑混じりで答える。

「いやはや、ハンセン女史は凄いですぜ。
 こいつの設計もとんでもない物だったけど、これを実際に組み上げる技術は、
……俺達がおおよそ知っているようなレベルを超えている。
 なのに彼女の手に掛かれば難なく進んでしまうんだ。
 あの手は魔法かなにかですか」

 彼の驚きは無理も無い
 彼女は「我々の時代でも」高度な技術者だ。
 それがこの時代で作業しているのだ。
 いくら人間の作法に慣れてきたといっても、彼女は偽装を上手くこなす方ではない。
 しかも、この状況下で最善を尽くすとなれば、偽装どころではなく効率を優先するだろう。
 実際そのお陰でドレイク級の改修も進んでいるが、少々やりすぎた感はある。
 私は溜息を一つ付くと、彼同様に苦笑混じりに答える他無い。

「……確かに彼女は天才ね。私達でも一目置くほどよ。
 でも、時に真面目過ぎて付いて行くのが大変になるのはご愛嬌かしら。
 さて、私も作業を手伝うわ。
 分からない事が有れば彼女の代わりに答えましょう。何か有る?」
「大佐がですかい!でしたらこれなんですが……わかりますかぁ?」

 彼は私の提案にいかにも懐疑的といった表情であったが、
手に持ったパッドを操作し設計の分からない所を示した。
 私は彼のパッドを受け取り目を通す。

「……(これは神経接続型インターフェース。……フラガAIで味をしめたのね。
 それにしても……これはいつ出来上がるのかしら)
 このシステムはいわばオールガンバレル操作の試作ね。
 彼女の理論によれば、このオプティカル回路を全身に巡らせ、
それぞれの末端に電子/光コンバータを接続して、
神経伝達スピードを人間の生体性能に近づけている。
 一部ではたぶん反応速度は上回るはずだわ。
 精密部品については、我々のシャトルにある部品を利用するようね」

29 :通常の名無しさんの3倍:2012/07/20(金) 20:20:24.49 ID:???
セブン自重しねーw

30 :通常の名無しさんの3倍:2012/07/20(金) 20:20:42.80 ID:???
4/13
 彼は私を見て呆気にとられた表情で暫く立っていた。
 だが、ハッと我に帰ると目を輝かせ、矢継ぎ早に質問を始めた。
 その時、耳に装着したコミュニケーターがアラート音を発する。

「ちょっと待って。はい、こちらジェインウェイ」
「ラミアスです。敵母艦が動きました。
 高速でこちらへ向けて発進してきている様です」
「高速で。………グリーンはどうなったの?」
「大尉のメビウスを追って、ゆっくりこちらへ迫っています」
「そう。今の所は予定通りかしら。
 また何か変化が有ったら教えてください」
「はい。では」

 コミュニケーターの発声が消えた。
 しかし、敵の動きが気になった。
 これまで慎重に動いてきていた敵が、大胆にも高速で接近してきているという。
 潜んでいる敵を前に高速接近とはどういうことだろう。
 一撃離脱を構えるには宙域の条件も悪く、
最悪なんらの効果も上げられず仕舞いになりかねない。
 幾つか保険は掛けたつもりだが、敵の意図を計りかねた私は、
シャトルに待機させているイチェブへ通信した。

 アークエンジェルのブリッジでは、敵側の動向がセンサーを通して逐一補足されていた。
 その時、サイ・アーガイルがセンサー情報を慌てて読み上げる。

「敵ナスカ級が消えました!」

 その報告に、バジルールが声を荒げる。

「見間違いではないのか!よく確認しろ!」
「はい!……いや、間違い有りません。
 情報をそちらへミラーリングします」

31 :通常の名無しさんの3倍:2012/07/20(金) 20:21:02.67 ID:???
支援

32 :通常の名無しさんの3倍:2012/07/20(金) 20:23:09.00 ID:???
5/13
 そこには確かにセンサー識別からロストしていることが確認出来た。
 ラミアスがその報告を聴きしばし考えると、
手元のコンソールを動かしモニターに情報を表示した。
 そこには何かの計算結果が表示されていた。

「艦長、これは……」
「……予想だけど、もしあの距離からサイレントランされた場合に、
こちらへ到達する想定時間よ。」
「サイレントラン!?……しかし、どうして」
「敵はミラージュコロイドによる光学遮蔽を利用して潜行している。
 私達は勿論そちらをモニタリングするけど、……母艦もそうだとしたら?
……相手はミラージュコロイドの弱点を逆手に利用してきている可能性があるわ」

 ラミアスの話は大胆というには荒唐無稽とでも言える程のものだった。
 勿論というべきか、バジルールはその意見に反論した。

「敵母艦サイズでミラージュコロイド!?
 あのサイズで潜行出来る程のエネルギーがナスカ級にあるとは思えません」
「えぇ、私もそう思います。でも、たぶん目的はそれだけでも十分な陽動になる。
 潜めている私達からすれば、敵は派手に動いてくれる方が有り難い。
 だからこそ……そうしないのよ」

 ラミアスは全艦に第一戦闘配備を敷き、
敵艦の攻撃に備えてMS及びMA部隊を宙域に待機させる命令をだした。

「キラ・ヤマト、ストライク、行きます!」
「イチェブ・オドンネル、デュエル、出撃します。」

33 :通常の名無しさんの3倍:2012/07/20(金) 20:24:46.28 ID:???
精神融合

34 :通常の名無しさんの3倍:2012/07/20(金) 20:34:22.75 ID:???
6/13
 ストライクとデュエルが艦前方に待機し、
ドレイク級から出撃したメビウスF二機が後方に待機した。

「メビウスF-01、ヤスベイ・ラムレイ、おし、出撃する!」
「メビウスF-02、フォッグ・ナイト、出る!」

 メビウスFの初陣だが、2機はバーナード及びローのMAチームメンバーに見送られながら、
無事にリニアカタパルトを出撃して行った。
 グリーンのラインが輝き、両艦の後方に陣取る。

「……ったく、囮ってのは性に合わないねぇ」

 フラガのメビウス・ゼロは、ゆっくりと背後の「グリーン」を誘導していた。
 敵側は全くアクションを起こすわけでもなく、こちらの動きにそっと付いてきていた。
 何度か攻撃に最適なモーションをとってみたが、相手側は一切手を出して来ない。
 さすがのフラガもここまでの慎重さを見て煽るのはやめたが、敵の動きが不気味であった。

「艦との距離は………そろそろか。じゃぁ、行かせてもらいましょうか」

 フラガはエンジンを全開にして発進した。
 そのときグリーンがミラージュコロイドを解除した。

「お、乗ってきたか!?」

 グリーンがバーニアを吹かして急速に接近を始める。
 後方からターゲティングを受けていることをセンサーがアラートで知らせる。
 フラガはそのアラートを半ば無視する様に感覚を研ぎすます。
 システムがロックオンされた事を強い警報音で知らせてくるが、
彼は全力で機体を高速航行させ続けた。
 一筋の光線が通り過ぎる。彼はそれを紙一重という僅かな差でかわした。
 彼のメビウスは新しく搭載したエンジンにより、
これまでならば不可能だった細かい上下運動なども可能となったお陰の産物だ。

「……ふぅ、さすがだねぇ。アニカちゃんは天才だぁ〜♪」

 一方、グリーンを操縦するニコルは相手の機動力の高さに驚いていた。
 彼の知るメビウス・ゼロは直線的な高速航行に長けた飽くまで「戦闘機」であって、
上下左右といった飛行中の運動性能はMSに劣るものと思っていたが、
 このメビウスはエンジンが改修されて高性能になっていた。

35 :通常の名無しさんの3倍:2012/07/20(金) 20:35:45.33 ID:???
名前募集キャラキター!

36 :通常の名無しさんの3倍:2012/07/20(金) 20:37:30.11 ID:???
7/13
「……甘く見てはいけないですね。
 連合は着実にキャッチアップ……いや、我々を凌駕し始めている。
 引き締めなきゃ…」

 彼は努めて冷静だった。
 彼の乗る機体はミラージュコロイドの影響でかなりのエネルギーを消費していた。
 もはや無駄玉を打てる程の余裕も無い。
 引き返して補給を受けることも可能だが、艦隊側からの命令は何も無い。
 ZAFTは階級等の命令系統が曖昧な軍事組織であり、
一見すると混沌とした指揮系統を持つが、
コーディネイターはそれぞれの持てる力の最大を行使し合うことで、
最大のパフォーマンスを発揮しながら自然に連携することを旨としていた。
 故に、命令が無いということは、彼には一定の自由が与えられているのと同時に、
最大の戦果を期待されているとも言える。
 ナチュラルならば尻込みする様な制度設計だが、
彼らにとっては自由が最大の価値なのである。

 逃走を始めた敵機を確実に仕留めるためには、相手の足を止める必要がある。
 これまでならば接近戦に持ち込んで叩いたものだが、
 新型がエンジンのみ改修されたのかはわからず、無闇に接近するのは憚られた。
 ならば、やる事は一つであった。
 ニコルはゲイツの残るエネルギー全てを使ってターゲットを攻撃することにした。
 武器システムのエネルギーリミットを全解除し、ターゲットスコープを覗き込んだ。
 彼の操作で照準が絞られて行く。

「……全ターゲットロックオン、オートファイヤシステムスタンバイ。
 カウント、3、2、1……ファイヤ!!」

 ゲイツ・ステルスのビームが幾筋も放たれる。
 オートファイヤシステムにより攻撃操作が自動で駆動し正確な精密射撃を始めた。
 しかし、それらは全てメビウス・ゼロに当たる事は無かった。

37 :通常の名無しさんの3倍:2012/07/20(金) 20:39:04.95 ID:???
支援

38 :通常の名無しさんの3倍:2012/07/20(金) 20:40:18.76 ID:???
8/13
「なんだぁ!?、へった糞だなぁ。
 って、くそ!俺がか!?」

 フラガは自分の認識の甘さを悔いた。
 敵の攻撃は全て前方のデブリを狙ったものだったのだ。
 大型の岩などがビームにより破砕され、宙域前方に無数に飛び散る。
 このまま突っ込めば機体の損傷程度では済まされないだろう。
 彼にはエンジンを逆噴射して緊急停止させる他に道がなかった。
 そこへゲイツ・ステルスがシールドからビームクローを出して迫る。

「頂きますよ!!!」

 だがその時、彼の進行方向を巨大なビームの閃光が阻んだ。

「!?」

 そこに現れたのは、彼らが宿敵である「足付き」だった。
 いや、足付きだけではない。
 足付きからはストライクが出てきていた。
 ストライクはシュベルトゲベールを構えてゲイツに急迫する。
 咄嗟に受け止めようと盾を構えるが、斬撃を受け止めた瞬間にエネルギーが切れた。
 ストライクはそのままゲイツの左腕を切り落とすと、
その衝撃で弾かれたゲイツにバーニアを噴かして迫る。

「うぉおおおお!!!!」

 キラが咆哮する。
 半ば迷いを振り切る様に彼は突進する。
 しかし、システムが攻撃アラートを知らせた。
 彼の機体をアグニの強力なビームが擦り、
ストライクの装甲がじりじりと音を立てて悲鳴を上げる。

39 :通常の名無しさんの3倍:2012/07/20(金) 20:42:13.77 ID:???
同化

40 :通常の名無しさんの3倍:2012/07/20(金) 20:43:09.04 ID:???
9/13
「ディアッカ!ナイスです!」
「おう!お前は早く後退しろ!」

 ゲイツの後方からは、潜行していたナスカ級と共に複数の機体が出撃していた。
 彼らはバスターの支援砲撃と共に迫る。
 ストライクはメビウスを庇いながら後退すると、
それを援護する様に一斉に艦隊が艦砲射撃を始めた。
 宙域が両軍の攻撃で眩い閃光に包まれる。

「……アークエンジェル前進微速、特装砲用意」

 アークエンジェル艦橋では前方を睨み、冷静にラミアスが指示を出す。
 バジルールがモニターを見ながらそれに呼応する。

「ローエングリン照準、エネルギー充填率、80…90…100%充填完了!」
「丁!」

 ラミアスの号令下、特装砲が閃光を放ち前方を貫いた。

「回避!」

 グラディスの命令下、ナスカ級キグナスは回避運動をするが、
彼女の判断は一歩遅く、左舷から翼に掛けてローエングリンの光が貫いた。
 損傷した左翼から爆発音がし、激しい衝撃が艦内全域を伝う。

「くぅ、報告!」
「は、左舷壁面損傷、左翼大破。
 隔壁緊急閉鎖していますがぁ……負傷者が出ている模様です」

41 :通常の名無しさんの3倍:2012/07/20(金) 20:44:07.82 ID:???
ポンファー

42 :通常の名無しさんの3倍:2012/07/20(金) 20:47:17.73 ID:???
10/13
 アーサーの読み上げに、グラディスは内心腸が煮えくり返る程の怒りを感じていたが、
同時に足付きとの戦力差を改めて実感させられていた。

「今のは何なの!?」
「は、はい、センサーの記録からポジトロン反応が出ています」
「ポジトロン!?陽電子砲ですって!?!……なんて破壊力なの。
(こんなものを正面から相手するなんて聞いてないわよ。……いいわ。
 やってやろうじゃない。アスラン・ザラ、見てなさい!)
 ……キグナス前進微速、主砲照準、敵、足付き!」
「か、艦長!?」

 アーサーはこの状況でまだ前進をするという艦長の命令に戸惑っていた。
 彼女は気が触れたのか。しかし、彼女の目はいつもの力強いものだった。

「……キグナスの勇姿を見せてやるのよ!!」
「は、はい!!」

 アークエンジェル艦橋では敵側の動きに動揺が広がった。
 キグナスは損傷しつつも前進してきたのだ。

「敵ナスカ級、迫ります!」

 CICの報告にラミアスは狼狽えた。

「特攻する気!?回避!あ、訂正!!!
(……できないわ!?敵はドレイク級を狙って!?)」
「艦長!このままでは」

 迫り来る敵艦の姿に、いつも冷静なノイマンが慌てた。

「分かってるわ、特装砲用意!」
「艦長、この距離では充填が間に合いません!」

 ラミアスの命令も、即座にバジルールがそれを否定する。
 だが、彼女にはそれ以外に打開策は見えなかった。

43 :通常の名無しさんの3倍:2012/07/20(金) 20:49:21.36 ID:???
ゴミを燃やす時間

44 :通常の名無しさんの3倍:2012/07/20(金) 20:50:51.32 ID:???
11/13
「いいから、出来るだけ充填して放って!!!」
「艦長!」

 その時、CICのアーガイルが報告を上げる。
 彼女からしたらこんな余裕の無い状況で、
他の情報を上げられるのは正直うんざりだが、そんな事は言っていられない。

「今度は何!!!」
「後方から艦影!」
「なんですって!?」
「敵、ナスカ級です!」

「!?」

 艦橋が戦慄した。
 後方に現れたのはもう一隻のナスカ級、ヴェサリウスの姿だった。
 ヴェサリウス内部では、前方宙域の状況を冷静に見つめていた。

「ザラ隊長、足付きを捕捉しました。……さすがです」

 アデスが賞賛の言葉を告げる。
 その言葉にアスランは軽く手を挙げ返答する。

「いや、グラディス艦長程の人じゃなければ、
あの場で引き下がってこの作戦はダメでしたよ。
 本当に尊敬すべきは彼らです」
「……左様ですな。
 しかし、隊長の判断無くしても、この作戦は成立しませんよ」
「……ありがとうございます、アデス艦長。
 さて、ではヴェサリウス主砲照準!敵、足付き!砲撃用意!」

 アスランの命令下、ヴェサリウスはアークエンジェルに照準を合わせた。
 もう、その命令を下すばかりというその時、それは発せられた。

45 :通常の名無しさんの3倍:2012/07/20(金) 20:53:03.74 ID:???
支援

46 :通常の名無しさんの3倍:2012/07/20(金) 20:54:18.97 ID:???
12/13
「……ZAFT艦隊に告ぐ、今すぐ攻撃を止めなさい」

 ジェインウェイの言葉が発せられる。
 シャトルアーチャーのコックピットから通信を繋げたジェインウェイは、
音声通信を敵味方両方に聞こえる形で無理矢理割り込ませていた。

「……本艦隊はZAFT現最高評議会議長、シーゲル・クラインの令嬢、
ラクス・クライン嬢を保護している。
 宙域を漂っていた救命ポッドを人道的に保護した我々に対する攻撃は、
ラクス・クライン嬢の命を奪う行動とみなす。
 本艦隊は貴艦隊が即座に攻撃を停止し、現宙域から去ることを希望する。
 もし守られない場合、クライン嬢は我々と運命を共にする事は免れないことを言い添える。
 尚、彼女の身柄は本艦隊が責任を持って移送し、外交チャネルで貴国に返す用意がある」

 この通信に両軍は一時停止した。
 それは両軍にとって衝撃的な内容であった。

「………大佐、こんな………」

 ラミアス他アークエンジェル艦橋の誰もがその言葉に息を詰まらせ絶句した。
 キラもストライクの中で半ば時間が止まった様に聞き入っていたが、
そのあまりの内容に愕然としていた。
 ヴェサリウスからアスランが怒りを抑えつつ、足付きへ通信を入れる。

「……貴艦隊が……我が国民であるラクス・クライン嬢を保護したというが、それは本当か。
 その確認をさせて欲しい」

47 :通常の名無しさんの3倍:2012/07/20(金) 20:55:38.83 ID:???
悪魔発動

48 :通常の名無しさんの3倍:2012/07/20(金) 21:01:52.67 ID:???
13/13
 この通信に対し、一通の映像通信が発せられた。
 そこに映っていたのは、ラクス・クライン本人だった。
 彼女は自室の中でトゥヴォックの撮影のもと、カメラの向こう側へ話しかける。

「はい、その声はアスランですか。
 お元気ですか?私は元気です。それに、どこも怪我無く大丈夫ですわ。
 見ての通り狭いお部屋に缶詰ではありますけど、
地球軍の皆さんは良くして下さっていますわ。
 地球軍の方々が仰る通り、私は彼らに暖かく保護されました。
 もし皆さんがこのまま攻撃を継続されていたら、
私も貴方と会えなかったかもしれません」

 彼女は終始笑顔でそう告げるのに対し、
アスランは怒りも忘れ、半ば呆気にとられつつ言った。

「……あの、ラクス、……貴方が無事で良かった。
 あー、その、我々は地球軍の言い分を聞き入れ、一時撤退します。
 しかし、本当に……その、ご無事の様ですね」
「はい!とっても無事ですわ♪
 ですから、アスランも気を落とされないで。
 私は必ず帰ってきますから、お父様にも心配為さらないでとお伝え下さい。
 あ、出来ればですけど、本国に慰霊団のVを送って下さいますか?
 一緒に来て下さった慰霊団の皆様が映っているので、ご遺族の方にお渡し下さいましたら。
 データは通信後に送って下さるそうですので、お願い出来ますか?」
「……はい。そのように手配させて頂きましょう。
 私も、必ず貴方を迎えに行きます。その……それまでご無事で」

 この通信により、この戦いは唐突に終わりを告げた。

第16話終わり。第17話へ続く。

49 :通常の名無しさんの3倍:2012/07/20(金) 21:08:48.66 ID:???
支援のお陰で一回で投下終了できました。
ご支援下さいました皆様、有り難うございました。

あと、お名前募集キャラを登場させてみました。
メビウス部隊の活躍は有りませんでしたが(汗

50 :通常の名無しさんの3倍:2012/07/20(金) 21:19:58.42 ID:???
乙!
>神経接続型インターフェース
これって未来艦長が付けてた12年後にドクターが開発したっていうアレの応用か?

>自然に連携することを旨としていた。
戦場で自由主義とかw数で負けてんだから戦術もっと練れよw
そんでラクスの事伝えた艦長だけどこれが最善の手だわな。

51 :通常の名無しさんの3倍:2012/07/20(金) 23:46:12.97 ID:???
ナスカ級ZAFTウォーバード!w
立体モノが無いから我が家のスタトレ艦船と絡ませて遊べないのが残念だ
流石悪魔艦長、非常時には色々ブッチギリで非常手段を取る、そこに痺(ry

52 :通常の名無しさんの3倍:2012/07/21(土) 01:30:54.36 ID:???
お〜!
何かもうガンダムのSSを読んでいると言うよりは普通にSF物を読んでいる気分ですよ。
ラクスの事は原作よりもいい状態で伝えられましたな
カメラを用意していたと言う事は、やっぱり社長は最後の切り札として取っておいたのかな?
にしてもセブンが半ば暴走気味になってるwww
効率を求めちゃうから仕方ないと思うけどもうちょっと自重しようwwww

53 :通常の名無しさんの3倍:2012/07/21(土) 06:02:45.19 ID:???
種死になったときムウが記憶喪失だけで住むはずが無い
絶対メタル刹那真っ青のボーグムウになってそうだ

54 :通常の名無しさんの3倍:2012/07/21(土) 09:02:49.32 ID:???
そういや艦長は科学士官だったな。
それにしても神経接続型インターフェースとは、進ませ過ぎw

55 :通常の名無しさんの3倍:2012/07/21(土) 09:12:09.15 ID:???
実は種終盤にエネルギーリボンが発生してネクサスへ跳ばされてたとか
議長やラクス、ロゴスの真の目的はこの理想郷を巡る争奪戦だったのだ

56 :通常の名無しさんの3倍:2012/07/21(土) 23:20:54.91 ID:???
カメラ持って撮影するトゥヴォックにワロタw
まあ、ジェインウェイ艦長ならラクス拾った段階でこの程度の策と後始末は思いついてるよねえ、
この程度軽くできないとデルタ宇宙域じゃ生きていけないぜ。
次回はAAクルーに悪魔的弁舌が炸裂すると思うと楽しみです。
それと不安部隊…じゃなくて保安部隊が結成、白兵戦も来るのか?

57 :通常の名無しさんの3倍:2012/07/23(月) 09:53:03.52 ID:???
実はスタートレックの作品中で、相手の要人を実は保護しているって言うネタは結構あったりするんだよね
惑星連邦の基本として、武力行使より交渉って言うスタンスだからこの手の対応はお手の物だ、悪魔艦長的には“楽な任務”だろうw

58 :通常の名無しさんの3倍:2012/07/23(月) 22:28:57.31 ID:???
ラクスの血液の中に情報が隠されているのかw

59 :通常の名無しさんの3倍:2012/07/24(火) 21:31:37.03 ID:???
艦載用フェイザーの射程ってどのくらいなんだ?
30万kmぐらい?

60 :通常の名無しさんの3倍:2012/07/25(水) 01:40:24.27 ID:???
>>59
有効射程距離は1光秒(約30万km)らしい
フェイザーは光の速度を超えられないから、これ以上の距離は1秒以上のタイムラグが発生して発射時と命中時のズレから実用じゃないっていうのもあるんだろう
限界射程はもっとあると思う

61 :通常の名無しさんの3倍:2012/07/25(水) 16:26:01.23 ID:???
携帯型(ハンドガン・ライフル型)も同じ?

62 :通常の名無しさんの3倍:2012/07/25(水) 20:17:15.13 ID:???
携帯型だと大気に影響を受けそうだな。

63 :通常の名無しさんの3倍:2012/07/25(水) 22:13:14.29 ID:???
前スレ291です。
次の17話が20分割と長かったので、
明日から少しずつ投下とかで行こうかなと。
あと、投稿時に自分の名前付けた方が良いのかなぁ。


64 :通常の名無しさんの3倍:2012/07/26(木) 00:37:34.37 ID:???
>>63
騙り防止のためにトリップ入れてもいいんでは。

65 :通常の名無しさんの3倍:2012/07/26(木) 01:58:52.63 ID:???
>>63
うひょー、楽しみです!
悪魔館長の厳しくもまっとうな教育シーンが毎回気持ちいいw

66 :量産型牛& ◆eVzLvfNS20BR :2012/07/26(木) 19:35:31.28 ID:???
前スレ291です。とりあえず量産型牛になりました。
くれぐれもミルクは出ませんので悪しからず。投下開始します。
1/20
第17話「秘密」

「……あれじゃ、まるで人質だよね」
「……うん」

 トール・ケーニヒの言葉にミリアリア・ハウが頷く。
 いや、その思いはこの場に集まる誰もが感じていた。
 あの時のあの通信内容を聞いた者なら、軍のやる事の汚さに幻滅を感じるのは無理も無い。
 食堂で同じ食事をこうして取れることや休みが与えられた事は素直に有り難い事だが、
何か納得が行かない良心の呵責を感じていた。

「……でも、あの場で大佐が言わなかったら、僕達どうなっていたんだろう」
「………」

 カズイの指摘はいつもながら的を射ていた。
 あの時にジェインウェイの通信が発せられなかったとしたら、
ブリッジの指揮官達は打開策を見出せたとは思えなかった。
 少なくとも、ジェインウェイはブリッジクルー達より一枚も二枚も上手だったことは間違いない。

「そういえば、キラは?」

 ミリアリアがトールに尋ねたが、彼は首を横に振った。
 彼女の問いにはサイ・アーガイルが答えた。

67 :量産型牛& ◆eVzLvfNS20BR :2012/07/26(木) 19:39:15.49 ID:???
2/20
「さっきマードックさんに呼ばれて整備に向かったよ。
 ……キラも複雑だろうな。
 あいつ、口では助かって良かったとか言っていたけど、相当無理している。
 フレイの件以来塞ぎ込みがちだろ?
 いや、それ以前からMSに乗って戦うってこと自体が凄い負担だと思うんだ。
 それでも正義感……って言うのかな、あいつなりに信じてやってきたと思うんだ。
 それが今回はまるで悪者だろ」
「……悪かろうと、生き残らなきゃ意味無いじゃない」

 彼らのテーブルの横に、水の入ったコップを手にしたフレイ・アルスターが現れた。
 彼女はトレーニングウェアを着て、その首にはタオルがかかり顔は汗ばんでいた。
 コップの水を一口飲むと続ける。

「私は大佐の行動を支持するわ。
 使えるものを使わないで死んだって、誰も褒めはしないわよ」
「だけど、物事には……」
「あらサイ、なら……私達はあの場で正義の味方ぶって、
悪役に大人しく殺されろとでもいうの。
 私は真っ平ごめんよ。悪者?上等よ。
 悪かろうが生き恥晒そうが、勝たなきゃ何も言えないもの。……パパの様に」
「……フレイ」

 サイはそれ以上言えなかった。
 彼女は言い終えると、カウンターの方へ歩いて行った。

68 :量産型牛& ◆eVzLvfNS20BR :2012/07/26(木) 19:42:01.07 ID:???
3/20
 艦長日誌
 先の戦いはクルー達に動揺をもたらしていた。
 彼らは若く正義感に燃えている。
 だが、戦争は時に残酷な状況に出くわすものだ。
 我々はヒーローごっこをしているわけではない。
 その場で悪魔と罵られようと、冷徹に決断出来ずに生き残る事は出来ない。
 そして、それを理解しつつも……人とはとても繊細な生き物だ。

「……大佐、思惑通りに時間は取れ、
我々は順調に月艦隊へ向けて航路を進めています」
「……そう」

 バジルール少尉が現在の状況を報告した。
 普段はこの説明はトゥヴォックの仕事だが、
彼は他の仕事に徹してもらっているので不在だ。
 保安部は機能し始めたのだが、
職業武官と民間保安部の間の調整に時間を要しているのだ。
 だが、理由はそれだけではない。
 この艦で私に次ぐ階級を持つ彼の存在感は大きく、
この場で必要以上に威圧的な状況を作りたくなかったのもある。
 私の返事の後、彼らは一様に押し黙っていた。

「……皆さん、納得が行かない様ね。まぁ無理も無いわ。
 でも、私達は正義の味方でも何でも無い。軍人よ。
 課せられた使命を遂行する事にのみ、その能力を使わないといけない。
 ただし、私も人道を理解している。
 貴方達が良心の呵責に苛まれるだろう事もまた。
 だとしても、誰かが悪者にならなければならない時もあるのよ。
 誰か一人が悪者になることでクルーが救えるなら、私は躊躇わず悪魔にでもなる。
 ただそれだけのことよ」

 彼らには少々辛辣かもしれないが、これまでの経験上、
ここで引いては何も良い結果は生まない。
 そこにフラガ大尉が挙手し発言を求めた。
 私はそれを許可した。

69 :量産型牛& ◆eVzLvfNS20BR :2012/07/26(木) 19:52:32.89 ID:???
4/20
「自分は大佐の行動は仕方ないと理解しています。
 自分も同じ立場なら、同様の指示を出します」

 彼の言葉にバジルール少尉も続く。

「私も大佐を支持します。むしろ、大佐に感謝しています。
 本来であれば、……作戦指揮を任された我々がしなければならなかったことを、
大佐が代行してくださり、正直、安堵しています」

 バジルール少尉は自身でもその策を過らせていた。
 だが、それを決断する余裕を見出せず後悔していた。
 ラミアス大尉もまた、彼女の言葉に続く。

「……私も、助かりました。申し訳有りません」

 まるでそれは雪崩を打つ様に、その場の参加者が皆感謝と支持を始めたのだ。
 さすがの私もこの状況には苦笑する他無かった。

「……もうやめて。ここは何かの宗教かしら。
 私は、やるべき事をしただけで、誰に感謝される話でも無いわ。
 もし何か悔いる事が有るなら、次は気をつけることね。
 さぁ、私達がすべき事をしましょう」

 私は彼らに議事を進めることを促した。
 彼らに必要な事はここで反省させることではない。
 どんな状況でも冷静に判断し決断することに慣れる事だ。
 先の戦闘は我々が完璧ではないことを認識させる上でも良い教訓だろう。
 危うい橋も渡れれば怖くないが、それに慣れると危険である事を忘れてしまう。
 それが結果的に『渡れない事もある』可能性を失念させ、重大な事態に至る。
 漫然と渡っているわけではないが、気分というものは怖いものだ。

70 :量産型牛& ◆eVzLvfNS20BR :2012/07/26(木) 19:55:16.97 ID:???
5/20
 ZAFT軍ヴェサリウス内アスランの執務室には、
アスランの他にグラディスとアデスの姿があった。
 彼らは椅子に座りコーヒーを手に会話を始めた。

「まったく、呆れる程間の悪い話ね。
 本国の要請通りにクライン嬢は見つけた。
 でも、敵に保護され人質にとられ、
あの最高のタイミングで、……お陰でキグナスは大ダメージよ」

 そう口火を切ったのはグラディスだった。
 その表情は晴れやかとは言えないが、それも当然だ。
 この場で一番活躍しながら、一番割を食ったと言えるのが彼女の艦だった。
 損害を覚悟の上で攻撃を仕掛け、後少しという所で逃す結果となった現状は、
腸が煮えくり返る程度では済まされない。
 クルーにも死者が出たのだ。
 怒らない方がおかしいくらいだ。

「グラディス艦長、……今回は本当に申し訳有りません。
 私に非情さがあったなら、……あの場で仕留めることも出来たと思います」
「アスラン!?」

 アスランの言葉に一番驚いたのはアデスだった。
 あの温和なアスランが、まかさこのような事を言ってのけるとは夢にも思わなかった。
 しかし、この言葉は彼女に対して十分な牽制となった。
 彼の言葉に同意すれば、彼女はクライン嬢を見殺しにする事に同意する様な話だ。
 軍人として忠実な彼女からすれば、上層の命令は絶対である。

「……良いのよ。結果はどうあれ見つかった。
 後はどのように奪還するか。
 ……でも、状況はより深刻よ。
 足付きを倒せば彼女が死に、彼女を生かせば足付きも無事。
 生きたまま奪還するとなると、当然白兵戦も視野に入れざるを得ない。
 私達の戦力に白兵戦要員なんていないわよ。
 まさか、鹵獲同様にあなたがやる気」

71 :量産型牛& ◆eVzLvfNS20BR :2012/07/26(木) 19:57:21.84 ID:???
6/20
 グラディスの言う通り、事態はより深刻な方向と言えた。
 彼女の奪還を考慮に入れると攻撃オプションが限られる。
 だからと出来ないと言って帰る事が許されるわけでもなければ、
このまま足付きをジョシュアに行かせるわけにもいかない。
 だとすれば、彼らは「どちらも」遂行出来ないといけない。

「……クルーゼ隊長ならば、私にこう言うでしょう。
 彼女を生かすのが難しいならば、
その亡骸を抱き泣いて見せるくらいの芝居は求められる……とでも。
 自分が泣いて済むのであれば、それでも構いません。
 ……だけど、問題はそこじゃない。
 見殺せば、父はシーゲル様と事を構えることになります。
 そうなれば……ZAFTは」

 アスランの口調は淡々としたものだったが、
その内容はその場に居るものを凍らせるには十分な内容だった。
 多少落ち着いたグラディスが言う。

「……国防委員長閣下の意図はわからないけど、
少なくとも議長は彼女の生還を求めているでしょうし、
国民もそれを望んでいるというのが本国の声でしょうね。
 まったく、足付きを倒しても倒さなくても、火に油を注ぐ様な話よ。
 ……あなた、この戦いは何処まで行けば良いと思っているの?」
「……そんなことわかりません。
 もう来る所まで来てしまった。現状は我々がまだ押しています。
 その間になんとか出来れば良いのですが、そもそも、私は政治家じゃない」
「あら、いずれは貴方もお父上の様に立つことになるんじゃないかしら?」
「……そんな先のことはわかりませんよ」

 アスランはそう言ってカップを口に運んだ。
 彼の言う通り、彼らが何を考え行動しようと、
事態は意図するものとは逆の方向に進むばかりだった。

72 :量産型牛& ◆eVzLvfNS20BR :2012/07/26(木) 19:59:22.02 ID:???
7/20
 ジェインウェイはいつものシャトルアーチャーでの定例会議を招集した。
 ドレイク級の改修作業も終わり、
艦隊が月へ向かって全速で航行を始めた事で余裕ができたのだ。
 表向きはいつもの様にお茶会としてお菓子を持ち寄っての座談会だ。

「セブン、トゥヴォック、エンジン改修作業ご苦労様」
「社長、礼には及ばない。
 我々はすべき任務を全うしたまでだ。
 だが、感謝は受け取ろう」

 セブンの言葉に私は思わず笑った。
 その反応に彼女は訝しげにしていたが、そんな反応がまたおかしかった。
 トゥヴォックがそこに咳払いをして状況説明を始めた。

「……我々は現在、月軌道に向けて航行しています。
 到着はこの速度であればそう時間は掛からないでしょう。
 しかし、問題は到着してからです。
 いくら我々が偽装しようとも、
本物の軍部との接触は少々危険を伴うことが予想されます」
「それは承知しているわ。
 でも、出来れば向こう側の上層と話が出来ると良いのでしょうけど、
現状ではヴォイジャーとの通信も出来ないから、出たとこ勝負になるでしょうね」
「いえ、ヴォイジャーとの通信は確立しました」
「なんですって、いつ?」

 彼の発言は唐突で、さすがの私も目を丸くした。

「暗礁宙域離脱後にチャネルが開けました。
 ただ、チャネル発信元はボイジャーではなく、シャトルコクレーンからのものでした」

73 :量産型牛& ◆eVzLvfNS20BR :2012/07/26(木) 20:01:14.40 ID:???
8/20
「で、どうなって?」
「話によれば、副長が連合軍の大西洋連邦の上層との接触に成功したそうです。
 彼らは我々の救出に乗り気で、援軍を派兵する用意があると告げたそうです」
「援軍ね。で、その上層の人間とはどんな人物なの?」
「副長からの話では、ムルタ・アズラエルという、
いわゆる主義者の最高幹部とのことです」
「ブルーコスモスね。信用に値する人物なのかしら?」
「それは何とも。
 ただ、副長はそう考えられる人物だと見ているようです」
「そう、わかったわ。
 後で私の方からも通信をしてみる。以上、解散」

 主義者の最高幹部が我々に興味を示したというのは話が早い。
 私は副長との通信の上で彼の情報を頭に入れた。
 彼らはいまだ劣勢にある軍の立て直しに躍起になっている。
 そして、我々の元にやってきた3隻の艦も彼の指示によるものらしい。
 彼は軍とは別の独自の情報網があるらしく、
不明のはずのアークエンジェルの位置をある程度推定出来ていたという。
 ……でなければ援軍などやってくるわけは無いが、その背景は気になった。

 アークエンジェルの展望室で一人涙を流す少年の姿があった。
 キラはこれまでの様々な出来事を思い出し、胸を詰まらせる思いを感じていた。
 人を殺してしまった事、フレイの父を守れなかったこと、
同じコーディネイターである少女を人質にして生きている事。
 そのどれもが彼の脳裏を埋め尽くし、安息させる暇を与えない。
 普段は作業に没頭することで何とか堪えていたが、
先日の一件はそうした緊張の糸が切れる出来事だった。
 現在の自分は悪役としての役回りで、
これに人殺しで役立たずとくれば最悪ではないかと自問自答していた。
 そんな自分に耐えられず涙が溢れてきて、それを止めたくても止められずにいると、
様々な感情が堰を切って押し寄せてきて、いつの間にか声を出して泣いていた。

74 :量産型牛& ◆eVzLvfNS20BR :2012/07/26(木) 20:04:05.03 ID:???
9/20
「……まぁ、どうなさいましたの」
「テヤンディ!」

 そこに現れたのは、桃色の髪の少女だった。
 彼女の周りをハロがポンポンと跳ねる様に漂っている。

「あぁ!何やってんですか、こんなところで……」
「お散歩をしてましたら、こちらから大きなお声が聞こえたものですから」
「お散歩って……、だ、駄目ですよ。
 勝手に出歩いちゃぁ……スパイだと思われますよ?」

 キラは涙を拭いながら彼女のもとへ寄る。
 彼女はそんな彼に悪戯っぽく微笑んだ。

「ふふ、このピンクちゃんは……」
「ハロー」
「……お散歩が好きで…というか、
鍵がかかってると、必ず開けて出てしまいますの」
「ミトメタクナイ!」

 彼女の言うピンクちゃんと呼ばれるロボットが場違いな言葉を発している。
 この場違いな言動センスは確かにアスランのものと内心思いつつ、
彼は溜息をついて彼女の手を握る。

「あぁ……とにかく、戻りましょう。さぁ」
「ふふ、戦いは終わりましたのね」
「……えぇ。まぁ、貴方のお陰で」
-----------------------きりとり線----------------------
とりあえず、ここで切り上げます。またしばし後で。

75 :通常の名無しさんの3倍:2012/07/26(木) 20:37:00.70 ID:???

早く続きが読みたくなりますね


76 :量産型牛& ◆eVzLvfNS20BR :2012/07/27(金) 01:34:15.99 ID:???
10/20
 キラの顔をにこやかに覗き込むラクス。
 しかし、彼の表情は晴れない。

「……なのに、悲しそうなお顔をしてらっしゃるわ」
「……僕は、僕は、本当は戦いたくなんてないんです。それに、アスランは……。
 貴女も僕と同じコーディネイターなのに、人質に、するなんて……」

 キラは思い詰めた表情を再び始めた。
 彼女は彼の苦悩の深さを感じ取り、自分の手を取る手にもう片方の手を添えた。
 彼はそんな彼女の手の温もりを通じて安らぐものを感じていた。

「……気に病む必要はありませんわ。
 私は、私の存在が誰かの命を救うのであれば、それで構いませんわ。
 命に亡くなって良い命なんてありませんもの。
 出来れば誰もが笑って暮らし、話し合える方が幸せですわ」
「……でも」
「……貴方は出来る事をしたのだから、それを気に病む事はありません。
 それより、貴方がこうして無事で私とお話して下さる。
 ……そんな事実の方が、ずっと大事な事だと思いますわ」
「……貴女は」

 彼がそう言いかけた時、彼女は彼の手を引いてその身体を引き寄せる。
 無重力下で難なく引き寄せられた彼の体は、ふんわりと抱きしめられた。
 柔らかな感触と温もりが伝わる。
 彼にはその暖かさが何か特別なものの様に感じられた。

77 :量産型牛& ◆eVzLvfNS20BR :2012/07/27(金) 01:37:06.94 ID:???
11/20
「……私は、誰でもない、ただの一人の人ですわ」

 キラは彼女の胸で再び涙をこぼしていた。
 その姿をそっと廊下の影から覗く視線が有るとも知らず。

 ハンガーはこの艦の中で一番忙しい職場だ。
 その中で連合の整備士は勿論、救出された民間人の技術者も一緒に作業している。
 この混成部隊のまとめ役を事実上しているのは、意外な事にセブンだ。
 彼女は元々男だらけの整備士達には人気が有ったが、民間技術者達もまた彼女を信頼している。
 ヘリオポリスからの救出者の中には当然ながらコーディネイターもおり、
幸いな事に高度な技術知識を持つ者も居た。
 そんな彼らは当然のごとくプライドは高く、当初は連合クルーとの間で衝突も絶えなかった。
 だが、彼女の機械的な姿勢が意外な調和を生み出す。
 彼女はコーディネイターではない(厳密には調整されているが)のに彼らを超えている。
 その絶対的な知識と技術力を知った彼らは、純粋に彼女に対する尊敬の念を持った様で、
彼女が調整することで全てが効率的に働くこととなった。
 現在では彼女に間違いを理路整然と指摘されることに快感を感じているクルーもいる。
 新しく加わったドレイク級の整備士達にも絶大な人気を誇っているようだが、
本人はそれを意に介する様子も無く、至って平然と全てのフラグを折るそつなさも学習した様だ。
 いや、当初は彼女にも苦労は有った様だが。

「セブン、見たわよ。
 随分と派手にやっているようじゃない」
「どういうことだ」

78 :量産型牛& ◆eVzLvfNS20BR :2012/07/27(金) 01:46:20.89 ID:???
12/20
 私は珈琲カップを片手に彼女に話しかける。
 彼女の方はクルーから上がってきた作業情報を、
普段通り脇目も振らず処理している。
 彼女の良い所は、この姿勢を常に崩さない事だ。
 そのお陰で普段通りの会話を装う事が出来、我々が目立つ事も無い。
 尤も、私の存在はそれなりにインパクトを与えるに至った為、
今後は気を付ける必要はあるが。

「マードックさんが随分困っていたわよ。やってくれたわね。
 あんなオーバーテクノロジー、いくらシャトルを利用出来ると言っても、
 整合性を持たせるのは頭痛の種よ」
「あぁ、そのことか。それなら問題無い。
 彼らの技術は特異な進化をしている。
 バッテリー、ロボット、そして神経接続型インターフェース。
 彼らのガンバレルというシステムは、
我々の神経接続型インターフェースとは違う進化をしている。
 確か、要は我々の技術でなければ良いのだったな。
 ならば彼らの技術が『進歩』する分には問題ないはずだ。違うか?」

 これは予想外の答えが返ってきた。
 あれは彼女なりに状況に合わせ、論理的に判断した結果の産物だというのだ。
 確かに彼女の設計は我々の技術的アプローチとは異なっていた。
 それが地球連合の技術をベースにしているとすれば、この地球もなかなか侮れない。

「……なるほど、だからあんなに大規模な神経リンク経路を設計したわけね。
 でも、あの設計は普通の人間が操縦出来るものではないわ。
 ガンバレルは特異な空間認識能力を要求される。
 そうした意味では、フラガ大尉は特別な存在よ」
「あぁ、その通りだ。この設計は操縦者を選ぶ。
 だが、それは問題無い。幸いな事に適合者が2名いた」
「2名も?……まさか、あのテストで残した?」
「……どうやらこの世界の人間には、我々の知らない進化の道がある様だ」
「……その様ね。で、このロボットは操縦者を選ぶのかしら?」
「いや、目標はストライクと同等のスペックを目指す以上、誰にでも動かせる仕様にする。
 ガンバレルの様な特殊装備は別として、使う分には問題無い」
「それを聞いて安心したわ。
 正直、使う人間を選ぶ装備は増やしたくないもの。
 キラ君を見たでしょう?……彼は無理をしている。
 いえ、私達がさせているのよ」
「……そうだな」

79 :量産型牛& ◆eVzLvfNS20BR :2012/07/27(金) 01:51:00.49 ID:???
13/20
 我々の視線の向こうに開発中のそれが見えている。
 まだ組み上げ途中ではあるが、その姿が徐々に出来上がりつつ有った。

 ZAFT軍、ザラ隊旗艦ヴェサリウスの執務室では、
アスラン・ザラがキグナス艦長タリア・グラディスと通信していた。

「……本当に不本意だけど、私達の艦はこのままの戦闘継続は無理ね。
 我々の方から移せる人員はそちらに移したから、彼らの事はくれぐれも宜しく頼みます」
「はい、グラディス艦長」
「悔しいけど、アスラン・ザラ、期待しているわよ」
「はい」
「また会いましょう。ZAFTの為に!」
「ZAFTの為に!」

 グラディスとの通信が切れた。
 執務室の椅子に背を深く沈めると、彼は思索に耽た。

 グラディスのナスカ級キグナスは左翼部の損傷の程度が重く、
戦闘継続は困難と判断し本国へ帰投することとなった。
 戦力の減少は痛いが、これまでの働きを考えれば十分な戦功を立てている。
 彼女は本国に帰投後昇格することが決まっており、内容としては凱旋帰国と言える。
 また、アスランへも唐突なフェイス昇進ではあったが、
それに見合った結果を出しているという判断のもと、
本国からネビュラ勲章の授与が伝えられた。
 そして、新たな援軍が派遣されることが決まった。
 日程的には連合の月艦隊への攻撃に合流させるというものだったが、
近傍宙域にそのような事が可能なほどの船速を誇る船は存在しないため、
単なるリップサービスと割り切り溜息をつくのだった。

80 :量産型牛& ◆eVzLvfNS20BR :2012/07/27(金) 01:56:05.41 ID:???
14/20
「……ラクス、何であんなに嬉しそうだったんだろう」

 不可解な程ににこやかな彼女の表情は、
誰かに強制されて言わされているという感じは受けなかった。
 どちらかといえば、とても自然に寛いでいる様な印象を受けた。
 ただ、不可解という言葉を使いつつ、彼女にとってはそれが普通の様にも感じられ、
自分自身で何を言っているのだろうと自問自答する様な話でもあった。

 思えば彼女との関係は仲睦まじいとは言えなかった。
 勿論、喧嘩する程の険悪さはない。
 だが、喧嘩する程お互いを深く知っているわけでもなかった。
 有るのはぎこちないながらも彼女との関係をとろうと努力する自分と、
それをにこやかに受け取ってくれる健気な彼女。
 正直な感想を言えば、こんなものは飯事の様なもので、
彼女の方がそれをずっと上手く演じていた。

 それでも、あれ程自然に寛いでいる顔を見た事が無い。
 彼女の身辺には四六時中SPが付き、外出するにも自由が有るわけではないことは知っている。
 アイドルとして、親善大使として、彼女は公私ともに拘束された生活を送り、
いわば現在の状況は初めての外泊くらいの勢いなのだろうか。

 あまり深く考えると頭痛の種になりそうな気がして考えるのを止めた。
---------------------きりとり線----------------------
この辺で切らせて頂きます。残りの5つ分はまたあとで。
いつもならこの量でも1話分なんですけど。
長いと投下がやっぱり大変ですねw

81 :通常の名無しさんの3倍:2012/07/27(金) 02:13:40.68 ID:???
支援

82 :量産型牛& ◆eVzLvfNS20BR :2012/07/27(金) 02:32:32.99 ID:???
15/20
「キラ」

 シミュレーターの置かれた訓練ルームに入って行く彼を見て、
イチェブが彼の名前を呼んだ。
 彼は呼ばれた方を振り向いて立ち止まる。

「訓練するなら、一人より二人の方が良いだろう」
「あ、うん。そうだね」

 訓練ルームはセブンの手直しで、
シミュレーターがこれまで一台のところが二台に増設されていた。
 しかも彼女の特別調整済みの設計で、……その鬼畜設定振りに定評が有る。
 今後更に2台の増設が計画されているらしい。
 二人は特別なシミュレーション用パイロットスーツに着替えると、その中に入った。
 シミュレーターはGAT-Xに模したコックピットになっており、
先程のスーツは機体の操作時のGを擬似的に発生させる様に出来ている。
 それによりこれまでのシミュレーターより高度な体験が可能で、
二人は実際に使っている機体とほぼ同じ操作体験が出来る。
 訓練モードは普段のセブンの鬼畜練習メニューではなく、
二人での模擬戦モードを設定した。
 全てのモニター情報が実際の戦場をシミュレートする。
 それは目立ったデブリも無い現在の宙域に近い情報が再現されていた。
 そこにエールストライクとデュエルが対峙する。
 ストライクはシュベルトゲベールを、デュエルはビームサーベルを手に、
互いの間合いを計る。

83 :通常の名無しさんの3倍:2012/07/27(金) 02:33:04.31 ID:???
支援

84 :量産型牛& ◆eVzLvfNS20BR :2012/07/27(金) 02:35:14.44 ID:???
16/20
「……イチェブ、君は何で戦うの」

 仕掛けたのはストライクからだ。
 ストライクはエールのスピードを武器に真っ直ぐに突進してくる。
 ストレートな突撃だからこそ、身構える側としてもシンプルに構えられるが、
真正面からのエールの加速も加わった重い一撃は、
ビーム同士の衝突による衝撃も加わり一際大きな力となって返ってくる。
 ストライクはその衝撃を振り払う様に更にエールを噴かして、
姿勢を崩したデュエルに食らいつく。

「……僕は、命を守る為に必要な行動をとる」

 冷静に姿勢制御を進めるイチェブは、キラの攻撃を正確に予想して受け止めると、
その勢いを借りて反撃に転じる。
 ビームサーベルがストライクの盾に防がれ火花を散らす。

「じゃぁ、僕と戦う事になったとしても?」
「そうかもしれない。キラは僕を撃つのか」
「……わからない。でも、撃ちたくないよ!」

 盾で受け止めたストライクは、イーゲルシュテルンでデュエルのカメラを攻撃する。
 デュエルは視界を遮られるのを避ける為に間合いを取ろうとした所を、
ストライクに蹴り上げられ、後方に投げ出された。
 不意打ちを食らったイチェブだが、目視に頼り過ぎたことを反省し、
センサー情報を加味した思考計算に切り替え、更にセンサー情報自体をも補正する。
 OSの操作もコマンドラインに切り替え、全ての情報を手打ちで打ち込んで行く。

85 :量産型牛& ◆eVzLvfNS20BR :2012/07/27(金) 02:36:55.06 ID:???
17/20
「そう。なら、僕は撃たなくても済む道を探すよ。
 それが例えどんなに不可能に近くても、可能性は必ずあるんだ。
 僕は僕の道を進むよ。それが人としての生き方なんだろう?」
「……そう…なのかな。だったら、僕はどうして戦わなくちゃいけないんだろう。
 僕も、ラクスも……同じ人間なのに、イチェブやみんなとは…違うんだ。
 それは僕が望んだわけでもなく、みんな知らずに生まれてくるのに。
 生まれた時には決まっているんだよ。そんなのって、なんか……」

 デュエルの機動が突然高速化した。
 OSの各種サポートを必要最低限以外打ち切り、
命令をイチェブ自身の手打ちコマンドで打ち込み始めた事で、
デュエル本来が持つ性能を引き出し始めたのだ。
 これはいつも使いたい手ではないが、キラはそうせざるを得ない相手だ。
 彼の様な優秀な技能のある操縦者には、お決まりの命令は対応されてしまう。

「……キラ、僕の秘密を一つだけ教えるよ。」
「秘密?」
「あぁ、僕は厳密には君達の言うナチュラルじゃない。
 僕の両親は、僕にある特別な遺伝子操作をした。
 それによって生み出された僕は、
生まれついて身体の中に毒を持って生まれてきたんだ」

 デュエルはエールの持つスピードを打ち消すため、
最小限の動作で最大限相手の行動を阻む様に動作パターンを指定。
 エールがスピードを出す前にデュエルがその軌道を阻んだ。

86 :量産型牛& ◆eVzLvfNS20BR :2012/07/27(金) 02:38:55.48 ID:???
18/20
「え……」
「その毒を使って、ある組織を壊滅させる遺伝子兵器として作られたけど、
計画は失敗に終わり、僕は両親にも捨てられたまま彷徨う事になった。
 そこを拾って救ってくれたのがジェインウェイ社長だ」
「……それじゃ、イチェブもコーディネイター?」

 キラが相手の行動パターンの変化に対応する為にキーボードを取り出す。
 不規則機動パターンを幾つか組み、それに対する回避運動を作成する。
 迫るデュエルをエールのスピードで振り切らなければ、イチェブに捕捉される。

「……コーディネイターという程の操作はされていないよ。
 僕の身体の中に、特定の条件下で発動する遺伝子を付加しただけだから、
それ以外は普通の遺伝情報を引き継いでいるよ」

 ストライクがデュエルを突破する。
 デュエルの背後を取る事に成功したストライクは、急反転させて切り掛かる。
 強制制動を掛けた為に、強力なGがキラの身体に重くのしかかったが、
それにも歯を食いしばって耐えた。

「……イチェブは、それを隠しているんだよね!大佐はどこまで知っているの?」
「全部知っているよ。ジェインウェイ社長は僕の毒性情報を無毒化する為に、
遺伝情報の再操作をしてくれた。だから、僕はここに立っていられる」

87 :通常の名無しさんの3倍:2012/07/27(金) 02:39:33.71 ID:???
ボーグ殺しウィルスか。

88 :量産型牛& ◆eVzLvfNS20BR :2012/07/27(金) 02:41:49.81 ID:???
19/20
「え、ちょっと待って!
 遺伝子の再操作って、……そんな高度な技術が確立されているの?」
「毒性情報を不活化するだけだから、難しいことはしていないよ」

 デュエルが振り向いてストライクの攻撃を受け止めようと動くが、
一歩遅く、デュエルの右腕がシュベルトゲベールによって切断された。
 しかし、イチェブはその行動を予測した様に、
すぐさま切断された右腕からビームサーベルを左手で取ると、
振り返る遠心力を利用して切り掛かる。
 ストライクの頭部が切られ、メインカメラの表示が消えた。
 それでもキラは諦めなかった。
 しかし、シミュレーター側はシステムフリーズと判定した。

 キラは溜息をついた。
 そして、ヘルメットを脱いでシステムをリセットし、
通信オンリーにすると背もたれに身を預ける。

「……そうなんだ」
「キラはコーディネイターと戦うのが嫌?」
「……僕も一つ秘密を教えるよ。
 あのZAFTの司令官。僕の小さい頃の友達なんだ」
「え……」
「頭では分かっているんだ。……もう昔の彼じゃないって。
 でも、連合にいると、僕等の事をよく思わない人は沢山居るでしょ。
 僕等が命がけで戦っても、そんなの当然のことだって言っちゃう人とか。
 そんなにまでして、僕はここに居るべきなんだろうかって。
 それでもさ、ここにも友達が居て、僕等が戦わなかったら、
たぶん、みんな生き残る事なんてできないじゃない。
 僕がナチュラルだったら、こんな思いを抱かずに済んだのかな……」

89 :通常の名無しさんの3倍:2012/07/27(金) 02:44:14.94 ID:???
支援

90 :量産型牛& ◆eVzLvfNS20BR :2012/07/27(金) 02:50:42.84 ID:???
20/20
 デュエルのモニターには、エネルギー残量ゼロの表示が出ていた。
 キラ側のシステムフリーズに助けられたが、この様な幸運は続かないだろう。
 運も実力の内と言うが、そんな不確かなものに身を預けるのは御免だ。
 しかし、まさか敵の司令官が彼の友人だとは思わなかったイチェブは、
戦闘から頭を切り替えて暫く考えていた。
 自分自身はまだ友達との交流はおろか、
普通の人間との交流もそれほど経験しているわけではない。
 これまで様々なホロプログラムで社交的関係を勉強してきたが、生身の人間、
特に自分と同じ世代の仲間との関係というものが上手く想像出来なかった。
 それでも彼には一つだけ揺るぎない答えが有った。

「……遺伝子は全てを決定しない。
 設計図は設計図に過ぎないよ。
 どんなに精緻な設計を作っても、どんなに完璧な形を模索したとしても、
 それはそういう形や機能に出来上がったものに過ぎなくて、
たぶん僕等はこの先どんなに姿形が変貌を遂げたとしても、
人としての心を忘れちゃいけないんだ。
 それを忘れてしまったら、その時が本当の別れの時なのかもしれない」
「……僕は、人なのかな」
「大丈夫。キラは人だよ」

 イチェブはOSの隠しコマンドを出して通信記録の全削除を命令した。
 その命令は受理され、艦内のデータベースから完全に削除された。

 二人はハッチを開けて外に出る。
 ヘルメットを脱いでいるキラを見て、イチェブも脱いだ。
 そして、徐にイチェブが右手を前に出し、親指を上に立てて拳を握って見せる。
 キラも静かに手を前に出して彼の真似をし微笑んだ。
 イチェブも彼の動作を見て口元に笑みを浮かべていた。

第17話終わり、第18話へ続く。
ご支援有り難うございました。投下終了です。
7/20の最後の行のボイジャーはヴォイジャーの間違いです。
申し訳有りません。
脳内訂正して頂ければ幸いです。

91 :通常の名無しさんの3倍:2012/07/27(金) 03:13:44.43 ID:???
量子スリップストリームGJ!
おお、キラに新たなる友が生まれたか!
しかしデルタ宇宙域のヴォイジャーの状況にキラを放り込んでみたいなw
ヴォイジャーは限界速度ワープ10でトカゲ化した艦長とパリスを元に戻せてる医療技術があるからなあ。
ボーグドローンも元に戻せるし、ボーグと8472の技術あるからこの程度の遺伝子治療は御茶の子さいさいだぜ。
死後18時間ぐらいでも蘇生もできる。

92 :通常の名無しさんの3倍:2012/07/27(金) 13:19:06.89 ID:???
乙であります!
フレイは艦長に弟子入りでもしそうな雰囲気。

>「……僕は、人なのかな」
>「大丈夫。キラは人だよ」

まあスタトレ世界じゃ流動生命体や非実体生命体がいるからな、キラ程度のは気にするほどの差じゃない。

93 :通常の名無しさんの3倍:2012/07/27(金) 22:03:04.11 ID:???
まあこんな言い方は何だけどCE世界程度の遺伝子操作で生まれたコーディネーター
では、スタトレに出てくる様々な生命体の前には進化どころかあらゆる面で退化した
存在にしか見えないだろうな、本編準拠では(特に精神面が)
プラントのコーディ至上主義者がそのこと知ったらどんな反応するか見てみたい
まあほかのガンダム世界相手でもでも似たようなことになるだろうけど
そういえばGガンの面子(特に師匠)はヴォイジャーの人たちにはどう映るのかな

94 :通常の名無しさんの3倍:2012/07/27(金) 22:53:07.57 ID:???
投下乙!

原作では孤立してフレイに利用され始めたキラに新たな友情か。
人だよというシーンは何だかジンワリ来ました。

社長も上手い具合に立ち振る舞って見事に皆を纏め上げてる感じ
一方アスランは何だか冷徹になりつつある気がする・・・いい意味でw


しかしキラの悩みなんて元ボーグからしてみたら殆ど大したことない様な気がする。

95 :通常の名無しさんの3倍:2012/07/28(土) 00:35:17.28 ID:???
キラは利用できそうにないし、フレイは自分の手でザフトと戦うコースかね。

96 :量産型牛& ◆eVzLvfNS20BR :2012/07/29(日) 16:27:29.78 ID:???
GJ & 乙有り難うございます。
夏休み期間に入りましたね。投下回数を少しだけ上げる予定です。
週に2〜3話ずつ行けたら良いですが、無理はしません。
ただ、30話で一度お休み貰う事にしました。
なるべく9月前半中には到達したいと考えていますが、実際の所は未定です。

他にはこのキャラの登場を希望とかも参考にはするかもしれません。
基本的にはアニメ種ベースなので、外伝キャラ等は殆ど出ない状態なので。

それと、第15話の前半戦(旧スレ分)の再アップは必要でしょうか?


97 :通常の名無しさんの3倍:2012/07/30(月) 00:19:07.91 ID:???
週2、3話とか作者さんはタキオンコアの惑星にでも住んでいるのか!?
15話前半はまーまとめサイトに載るからいいのでは。
バルカン人によるプラントコーディネイターの評価とか見てみたいなw

>>94
イチェブはその上種族にとってボーグにウィルス感染させるための実質使い捨てだったしねえ…


98 :量産型牛& ◆eVzLvfNS20BR :2012/07/30(月) 23:40:19.28 ID:???
19分割なので、2〜3回に分けないと無理かもしれません。
とりあえず、投下出来る範囲で徐々にスピードアップ。
1/19
第18話「証拠」

「あぁ、すばらしい。まさか自分の目でここまで到達出来る日が来るなんて」
「ここがカイパーベルト。太陽系最外縁部のオールトの雲の手前ですよ。お気に召した様で?」
「えぇ、最初に聞いた時は眉唾物の話だと思っていたけど、
こうしてこの場に立ってみると、彼女の申し出を受け入れて良かったわ」

 彼女は終始ご機嫌だった。
 それは無理も無いことだった。
 このCEという世界に住む人類の中では、彼女がこの領域を通る初めての人間なのだ。
 世が世なら、彼女の一歩は小さくとも、
人類にとっては大きな一歩とでも喧伝されるだろう出来事だ。
しかし、彼女はそう出来ないことを条件にこの場に立っている。

 ある日突然仕掛けられた買収工作は、
彼女が出社し自分のオフィスでゆっくりと新聞に目を通している間に、
それは見事なまでに一瞬と言って良い程あっさり完了していた。
 世界中を駆け巡った投機資金は自身のグループ会社は勿論、
世界中の「加われば良い」と考えていた企業や、
手を出すには多額の資金が必要と断念していた企業群も含めて、
全て「VST」と名乗る企業のもとに集結していたのである。
 そして、彼女が新聞を見終えた所に、
オフィスへ何の前触れも無く入ってくる人物達の姿があった。
 先頭を歩く者はサングラスをかけた女性で、
両サイドには先住民を思わせるタトゥーをした体格の良い中年男性と、
アジア人の男が連ねていた。

99 :量産型牛& ◆eVzLvfNS20BR :2012/07/30(月) 23:42:06.15 ID:???
2/19
「あなたがシャノン・オドンネルね。
 この会社は私の会社が買収しました」
「……何ですって?」

 私は卓上のPCから彼女の言葉の真偽を確かめたが、
確かにその通りの現実が表示された。
 それはあまりに突然過ぎて、一瞬頭の中が真っ白だった。
 そんな私に彼女はこんなことを言った。

「驚いたわ。データで知ってはいたけど、本当に私にそっくり。
 フフ、こういう偶然は何か運命的なものが糸を引いているのかしら」

 彼女はサングラスを外す。
 その顔は鏡でも見ているかの様に確かにそっくりだった。
 いや、顔だけじゃない。声も背格好も同一と言って良い程だ。

「私は貴女と取引がしたいの」
「……どんな」
「そうねぇ、確か東洋の歴史では、こういうのを影武者と言ったそうね」
「……それは、貴女の身代わりになれというの?」
「いいえ。その逆よ」
「え」
「……私が、貴女になるのよ」

 それが、キャスリーン・ジェインウェイとの出会いだった。

100 :量産型牛& ◆eVzLvfNS20BR :2012/07/30(月) 23:45:26.66 ID:???
3/19
 艦長日誌
 艦隊は月の第八艦隊との合流ポイントへ向けて航行していた。
 新しいエンジン周りをまとった二隻の艦は、
現段階では最速であるアークエンジェルの船速に十分に付いてきており、
到達予定時間はかなりの短縮が出来るだろう。
 私はこの間で最も丁重に扱うべき客人のもとへ来ていた。
 ドアの前で呼びかける。彼女のきれいな声で入室の許可があった。

「お久しぶりね。クラインさん」
「まぁ、ジェインウェイさん。お久しぶりです」
「少し話したいの。良いかしら」
「えぇ、喜んで」

 彼女はにっこりと微笑んで私に椅子を勧めた。
 彼女の部屋はあの一件以来、待遇を改善するべく内装を改装し、
彼女専用の部屋として二段ベッドを一段に変え、寛げる様に椅子とテーブルも設置。
部屋のドアには誰が付けたのか「VIP」とプレートが付けられていたが、
確かに文字通りのVIPがここにいることには変わりないので不問にした。
 私は彼女の対面に座ると、持って来たお菓子の籠をテーブルに置いた。

「まぁ、クッキーですね!手作りですか?」
「えぇ、お茶菓子に食堂の奥様達から頂いたものを持って来たのよ。
 この厚めのホームメイドなクッキーを見ると、私の故郷のブルーミントンを思い出すの」
「ブルーミントンですか。大規模な穀倉地帯として学んだ事がありますわ。
 ジェインウェイさんのお宅では、よくクッキーを焼かれるのですか?」
「えぇ、でも私は残念ながら料理の方は得意じゃないの。
 父の影響もあって、それこそガリ勉の様に勉強して科学者を夢見たものだわ。」

101 :量産型牛& ◆eVzLvfNS20BR :2012/07/30(月) 23:47:35.72 ID:???
4/19
「では、すごくお勉強をされていたんですね」
「そうね。それが今を形作っていると思うわね。何事も無駄な事は無いと感じるわ。
 さて、今日貴女の所に来たのは、ただ世間話をしに来たわけじゃないの。
 貴女の今後を話す為に来たのよ」
「……そうですか」

 彼女は私の話を聞いて表情を変える事は無かったが、
それまでの受け答えよりは幾分トーンダウンした様に聞こえた。

 その頃、ZAFT軍ヴェサリウス艦橋ではアデスは勿論、
そこにはZAFTレッドのメンバー達が話し合いをしていた。

「アスラン!お前、勲章貰う暇があったら、
その……ラクスちゃん……を、救い出す方法を考えろよな!!!」

 初っ端から飛ばすのはイザーク・ジュールだった。
 彼は大のラクスファンだけあり、ラクス救出に燃える炎は尽きる事無い。
 その言葉に半ば頭痛を覚えつつも、アスランは答える。

「……何も勲章を貰う為に戦っているわけじゃない。
 あれは本国が勝手にしていることだ。正直うんざりしている。
 君に言われるまでもなく、彼女は許嫁だ。
 救い出すためにどうすれば良いか考えているさ」

102 :量産型牛& ◆eVzLvfNS20BR :2012/07/30(月) 23:51:53.72 ID:???
5/19
「ほぉ、じゃぁ、策はあるのか!」
「……だから、その策をみんなで考えているのだろう。妙案があれば聞くよ。イザーク」
「妙案!?そんなもの、突っ込んで乗り込んで行って、
『ラクス様、お迎えに参りましたぁ!!!』
『キャァ、有り難う!もう大好き!』と熱く抱きしめてだなぁ……」

 イザークはもはや自分の世界に入っていた。
 ご丁寧に熱い抱擁シーンまでジェスチャーしてみせる始末だ。

「……イザーク。君がラクスに並々ならぬ思いが有る事は分かった。
 その気持ちは胸に仕舞おう。だけど、突っ込んでいってどうやって救出する。
 乗り込んで行くということは、君が白兵戦を仕掛けるのかな」
「おぅよぉ!!!槍でも鉄砲でも、何でも来いだおい!!」

 これまたアクション付きで主張する彼を見て、
 アスランは頭痛に続き目眩がしそうな気がしていた。

「はぁ……(俺、なんでこんな奴しか周りにいないんだろ)、良いだろう。君が乗り込むと良い。
 でも、足付きに組み付いて中に侵入するとなると、奇襲でもしないかぎり難しいだろう。
 前回の戦闘でミラージュコロイドはバレていた。
 向こうは当然それを想定して対峙してくると見て良い。
 本気で艦を落とさない限り難しいだろうが、そうなればラクスの命は無いだろう」

103 :量産型牛& ◆eVzLvfNS20BR :2012/07/30(月) 23:59:37.82 ID:???
6/19
「ぐぬぬぬぬ……」

 そこにニコルが挙手した。

「アスラン、良いですか?」
「良いよ。何だい」
「はい、僕は第八艦隊と合流する前に足付きを叩く事を提案します」
「今叩くと?……これからやるとなると、
相手との戦闘時間はせいぜい10分有るか無いかになるぞ」
「はい。それでも10分もあるんです。
 何もせず合流されるよりは少しでも削っておいた方が良いはずです」

 確かに彼の言う通りだが、戦術も限られ戦力も満足ではない。
 しかも、こちら側の勝利条件はとても制限の多い状況だ。

「君も知っての通り、力押しでやれば良い話じゃない」
「はい、確かにクライン嬢を救出する事も大切ですが、
我々の最大最重要の任務は足付き艦隊を沈める事です。
 見逃せば、犠牲はクライン嬢だけでは済まされないでしょう」

 ニコルから一際鋭い視線が飛ぶ。
 普段の彼からは想像もつかない様な冷たい視線に、
アスランは背筋にそら寒いものを感じつつ、
彼の提案が「自分の一番言いたいこと」であることに気が付いた。
 いわば彼は憎まれ役を買って出るというのだ。

「……君は、俺に彼女を犠牲にしろというのか」
「……いいえ。白馬の王子様ならば、必ずやハッピーエンドに出来ると期待しています」
「……ったく、無茶を言ってくれる。良いだろう。
 仕掛けてみようじゃないか。但し、状況が変われば中止するぞ。
 ディアッカ、君もそれで良いのか」

104 :量産型牛& ◆eVzLvfNS20BR :2012/07/31(火) 00:04:47.00 ID:???
7/19
 唐突に振られたディアッカだが、彼は指で鼻をこすると、
彼らしい不敵な笑みを浮かべた。

「……俺は隊長さんの命令に従うまでだぜ。
 ま、どの道あいつ等とは決着付けなくちゃならないからな」
「……そうか。それを聞いて安心した。
 アデス艦長、聞いての通りです。急な仕事ですが、お願いできますか」

 アスランの姿勢はいつも丁寧だ。
 アデスはその低姿勢ながら大胆さも持ち合わせた、
このアスラン・ザラという男に期待してみたくなった。

「アスラン、君は良くやっている。私もやれる限りをやろう」
「有り難うございます」

 アスランは強く拳を握りしめた。
 その目は遠く先を行く足付き艦隊を見据えるかの様に。

 その頃、アークエンジェルのとある一室ではまだ彼女等が話していた。
 ラクス・クラインはティーカップを口に運びかけた所で、
ジェインウェイの言葉に止まっていた。

「……仕事……ですか?」
「えぇ。貴女は便宜上は救出したVIPとしても、軍からすれば捕虜なのよ。
 その捕虜を自由に歩かせていたとなると、何かと外聞が悪いのよね。
 だから、貴女を人手不足を理由に労働に駆り立てたとしようと思うの。どうかしら」

105 :量産型牛& ◆eVzLvfNS20BR :2012/07/31(火) 00:08:30.50 ID:???
8/19
 ジェインウェイの唐突な提案は意外では有ったが、自身でも望むものだった。
 この場所で監禁生活はさすがに疲れる。
 いつまでここにいるのか分からない以上、
出来る事なら自由に行動出来る方が良いに決まっているが、
彼女が知っている地球連合という組織は、
旧世紀の人道的な配慮とは掛け離れたものと考えていた。
 故に彼女の真意が気になった。

「……あの、私が一人で勝手に逃げてしまうかもしれない。もしくは、
誰かをそそのかして何かをするかもしれないとは、お考えにならないのですか?」

 ジェインウェイは彼女がわざわざ自分の選択肢を提示してみせた事に感心していた。
 彼女の話は普通に有っても不思議じゃないことだ。

「……そうねぇ。あなたは随分と真面目ね。
 黙っていれば分からなかったかもしれないのに。
 確かにそんな事もあるかもしれない。でも、それはそこの指揮官が悪いのよ。
 そんな杜撰な管理体制で運用している軍も悪いわね。
 もしそれが成功するのならば、いわば貴女はその隙を突いただけ」
「では、私が逃げてしまっても良いと?」

106 :量産型牛& ◆eVzLvfNS20BR :2012/07/31(火) 00:15:04.18 ID:???
9/19
「フフ、勿論そうなって欲しいとは思っていないわ。でも、この先何が起こるか分からない。
 出来る限り隙を作るつもりはないけど、出来てしまった穴はどうしようもないわね」

 彼女はジェインウェイの言葉を聞いて、暗に逃げろ言われている様に感じた。
しかし、その一方で「捕まえる」とも言っている様に聞こえていた。
 たぶん、彼女の意図している事はその両方だろう。
 逃げる機会が与えられた場合には逃げる自由もあるが、
その時ではない場合は、堂々と脱走者として捕まえる大義名分が成り立つ。
 この女性は穏やかな顔で語りかけているが、中身は真逆だと言えた。

「……私に何をお求めになられているのですか」

 彼女の表情は相変わらずにこやかだが、その言葉には警戒心が伺える。
 ジェインウェイはそんな彼女の緊張を解す様に笑みを浮かべた。

「フフ、何も求めていないわ。ただ、そうねぇ、貴女は私と口裏を合わせてくれれば良いのよ。
 そうすればここでの生活も楽になると思うの。ずっとこのままは嫌でしょ?」

 ラクスは彼女が如何様にもできると考えているのであれば、
その提案に乗る以外に選択肢は無いと感じた。
 実際それで自分に不都合が有るわけでもなく、どちらかと言えばメリットも多い。
 何より監禁生活にはこの場以前から飽きていたのだ。渡りに船だ。

…というわけで、この辺で切っておきます。
続きはまた後で投下しようかと思います。とりあえず週2は行けそうだな。
週3は編集スピード的に間に合わなそうだと本日実感。ではでは

107 :通常の名無しさんの3倍:2012/07/31(火) 00:27:39.30 ID:???
さすが社長。
圧倒的なカリスマを持つラクス嬢もタジタジですな。

しかしカイパーベルトか。
行って見たら感動するんだろうな〜

108 :通常の名無しさんの3倍:2012/07/31(火) 00:40:57.86 ID:???
支援

109 :量産型牛& ◆eVzLvfNS20BR :2012/07/31(火) 00:59:38.56 ID:???
続き行きます。
10/19
「……知りませんよ?何が起こっても。
 私はこう見えて結構お転婆なんですから」
「まぁ、元気が良いのは良い事ね。
 なら、掃除婦から始めて見るかしら?」
「フフ、はい!」

 彼女は元気よく返事をした。
 その表情は意外にも生き生きとして嬉しそうだった。
 私はその後もしばし詳しい話等をしながら一時を過ごした。

 それから暫く後、私はラミアス大尉からブリッジへ来て欲しいと要請があった。
 私がブリッジに入ると慌ただしく作業する声がするが、
私の入室に気が付いて全員が敬礼した。
 私はそれを直させると、大尉より状況報告を聞いた。
 彼女の話によると、CICのセンサー索敵範囲で敵艦隊の動きに変化が有った事が認められた。
 暫く後方からゆっくりと付いて来ていた例の部隊だが、船速を上げて来ていたのだ。
 その時 サイ・アーガイルがバジルールに報告する。

「方位、202マーク5、空間グリッド3842195。
 後方航行中のZAFT艦隊からの出撃を確認。」

 そこにトノムラの報告が続く。

110 :通常の名無しさんの3倍:2012/07/31(火) 01:07:43.11 ID:???
GJ!
将来ピカードに命令出すお人はやっぱ格が違うでえ。ピンク髪程度では太刀打ちできんわw

>「……私が、貴女になるのよ」

なるほど調べられた時のために実在の人物になり変わったわけか。
そしてなんかアスランだけでなくニコルも変化してきてる?

111 :量産型牛& ◆eVzLvfNS20BR :2012/07/31(火) 01:11:57.75 ID:???
11/19
「機体はジン3機並びにバスター、グリーン、ブラック、……それに、イージスです!」
「イージスだと!?」

 彼らの報告にバジルールはこれまでの戦闘を思い出していた。
 これまでの戦闘で目立った動きこそして来なかったが、
イージスは的確に戦場をコントロールしていた様に見えた。
 イージスが出てくるという事は、敵も本気で落としに来ているのだろう。
 彼らは連合が開発した機体を上手く運用している。
 しかも、これまでの戦闘を見る限り、彼らは深追いはしない慎重さも兼ね備えていた。
 敵の目的がどの程度を目指しているのかは分からないが、このタイミングだ。
 確実にダメージを負わせることに着目していることは明らかだろう。

 余談だが、センサー類はボーグ式の3次元空間グリッド方式が導入された。
 中身はセンサー情報を置き換えているに過ぎないが、敵の詳細な位置表示を可能とし、
グリッドセルの拡大縮小を利用する事で、不必要な情報を排除出来るスマートさを持つ。
 ヴォイジャーでは天体測定ラボで利用しているが、
メインセンサーの切り換えをしなかったのは、
連邦のセンサーでも充分な性能を持っていたからだ。しかし、ここでは違う。
 アークエンジェルのシステム設計は原始的で、
シャトルアーチャーのセンサー情報を上手く活用出来る状態になかったため、
結局OSレベルで作り替えることとなった。
 そして現在に至る。

「大佐、自分は特装砲発射後、
 出来る限りの弾幕を張り、牽制を掛けながら振り切ることを提案します」

 彼女の提案にジェインウェイは顎に手を当てしばし思案すると答える。

「……振り切って振り切れるかしら。どう思う?大尉」

 振られたラミアス大尉もセンサー情報を見つめながら話す。

「向こうも仕掛けてくるには、何かの勝算があると見るべきかもしれません」
「と、言うと?」

112 :量産型牛& ◆eVzLvfNS20BR :2012/07/31(火) 01:16:54.40 ID:???
「分かりません。ただ、我々が合流される前に攻撃のタイミングを作った事実を考えると、
単純にとにかく攻撃してみようとしている……と考えるのは駄目なのでしょうか?」

 彼女の答えにバジルール少尉は如何にも不満という顔をしていた。
 その表情のストレートさに彼女らしさを感じて思わず吹き出した私だが、
彼女の不満は仕方の無い話かもしれない。

「フフ、そうねぇ。まぁ、彼らじゃないものね。分からなくて当然よ。
 ……ただ、言える事は逃げちゃダメよ。
 逃げたら追いたくなるのは犬でも知っている心理ね。
 我々がすべき事は、戦いながら……思い知らせるべきよ」

 私の答えに、その場の全員がごくりとつばを飲み込んだ。
 そんな事にはお構いなく私は命令を下す。

「ラミアス艦長、バーナード及びローのフライを出撃させて宙域にスタンバイ、
私の合図で一斉射撃。MS隊も出撃させて。彼らには別の動きをしてもらいます」
「はい。本艦のメビウスゼロはどうされます?」
「フラガ大尉にはフライ部隊を指揮して貰いますから、MA隊として動いてもらうわ」
「わかりました。僚艦に命令、MA出撃手配をお願い。
 MS隊ストライク、デュエルの出撃急がせ!大尉のゼロはMA隊の指揮を」

113 :量産型牛& ◆eVzLvfNS20BR :2012/07/31(火) 01:20:17.82 ID:???
13/19
 ラミアス大尉の号令下、連合艦隊が慌ただしく動き始めた。
 ZAFT側でもその動きが確認されていた。
 ヴェサリウスのブリッジでは、足付き艦隊から5機のMAの出撃が報告される。
 敵側の動きの速さに、アスランはイージスの中で母艦からの情報を見て舌打ちした。

「(この距離でこちらの動きが全て補足されている!?
……連合のレーダーは化け物か。これでは奇襲にならないじゃないか)
 全機散開!敵の陽電子砲には注意しろ。あれは触れて良いものじゃない」

 各機から了解の通信が入る。
 敵の動きの速さから計算して、もう撃って来てもおかしくない。
 ……と思っている矢先に第一射が二筋の閃光を走らせ宙域を貫く。
 対応に遅れてジンの一機が足を損傷した。

「損傷した機体は戻れ!(くそ、まるで見透かされている。)
 敵陽電子砲の射程を定めさせるな。ヴェサリウスは後方待機を維持」

 バスターが進行を止めて途中の宙域で回避運動をしながら撃ち始めた。
 バスターの弾幕が宙域に煙幕を張る様に味方の姿を隠す。
 その隙を突く様にイージスを先頭に各機が続く。

 アークエンジェルではジェインウェイが号令を出した。

「今よ!」

114 :量産型牛& ◆eVzLvfNS20BR :2012/07/31(火) 01:27:40.75 ID:???
14/19
 MA隊が一斉に射撃を始めた。
 しかし、その射撃する方角は進行方向正面ではなく、上下で別れていた。
 そして、上層と下層に陣取ったドレイク級からも攻撃が開始される。
 合流間近ということもあり、ミサイル等も惜しげもなく放出した。
 それはまるでバスターによる宙域を水平に隠す弾幕を回避する様に。

「何!?(全て予測済みだと!?)くそ、全機撤退!)」

 アスランが作戦の中止を叫ぶ。
 敵側はあえて正面を避けて、上層と下層へ飽和攻撃を敷く事で進路を限定したのだ。
 これは如何に強固なPS装甲といえど、集中攻撃を受ければ耐えられない為だ。
 しかもその攻撃の薄い正面を突破しようものなら、
陽電子砲の砲火と敵MSとの戦闘が待っている。
 しかし、イザークが1人その命令に背き中央を突進した。

「ラクス様は目前なんだぞ!!!
 ここで引いては、イザーク!男が廃れるぜ!」

 ゲイツ・アサルトのバックパックから小型ミサイルが射出される。
 それらの射線上を辿る様にゲイツが高速でアークエンジェルへ迫る。
 ローエングリンの砲撃すらも半ば動物的感とでも言うべき機敏さで避けた彼は、
愛するラクス様のために猪突猛進だ。

「もらったぁ!!!!」

 イザークが咆哮する。
 だが、彼の突撃はストライクによって阻まれる事となった。

115 :量産型牛& ◆eVzLvfNS20BR :2012/07/31(火) 01:33:57.96 ID:???
15/19
「……アークエンジェルを傷つけるのは、この僕が許さない!!!」
「なにぃぉおおおお!!!」

 イザークは相手の技量が高くない事は先の戦いで見抜いていた。
 そんな奴が堂々と自分の前にやって来たことに、安く見られた様で憤慨した。

「大した技量も無いくせに!!!」
「ぐぅぅ」

 キラは食いしばりながらシュベルトゲベールで受け止める。
 攻撃をしながら片手でキーボードを引き出すと、手打ちで入力を始めた。
 先日のイチェブとの戦闘を思い出し、敵の行動パターンを過去の記憶を元に設定。
 回避パターンをOSに一部サポートさせながら攻撃に集中する。
 ゲイツはストライクに休む隙を与えず、ひたすら間合いを詰めてビームサーベルを振るう。
 接近戦が得意ではないキラからすると、この近接具合がやり難い。
 どうにかして間合いを作りたいが、悔しいことに相手の方が戦い慣れている。

「ラクス様を返しやがれ、この卑怯者がぁああ!!!」
「な!?……んだとおお!!!ラクスは渡さない!!!」

 それは突然に起こった。
 キラの頭の中で何かが弾けるのを感じたその瞬間、
周りに見える全てのものが、ある種当然とも言える程ハッキリ理解出来る様に感じられた。
 彼の前方からは途方も無い闘争本能が感じられる。

116 :量産型牛& ◆eVzLvfNS20BR :2012/07/31(火) 01:42:33.11 ID:???
16/19
 しかし、同時に何故か憎めない暖かいオーラも感じる。
 イメージを言うなら、とっても凶悪そうに眉間に皺を作る努力をして吠えるチワワだ。
 可愛い。なんて可愛いんだ。こんな可愛い奴が僕を傷つける筈は無い。
 なのにも関わらず、それは自分に対し攻撃を仕掛けているのだ。
 が、何故だろう、突然動きが緩慢になった様にも見える。
 しかも、何となく先の行動が予想出来た。
 理由は分からないが、ゆっくり動くのであればこちらも容赦する必要は無い。

「(大した技量も無いのは、君の方だ!!)」
「ぐあぁああ!!!!!(キャィィン!!!!!)」
「(あぁ、ごめんよ!ごめんよぉ!!!!)」

 シュベルトゲベールがゲイツのコックピット付近を切り裂いた。
 その損傷により内部で誘爆しイザークが負傷する。
 すかさず止めを刺そうと動くストライクだが、そこを強力なビームが走る。
 変形したイージスの放ったスキュラがストライクとゲイツを離すと、
そのままイージスはゲイツに組み付いて後方へ撤退していった。

「……敵ながら、毎度潔い引き際ね。引くなら追わなくていいわ。
 全機撤収。全艦全速前進」

 ジェインウェイが宙域を見つめながら命令を告げる。
 第八艦隊はもうすぐだ。

 その頃、デルタフライヤーでは、
ハリー・キム少尉がヴォイジャーと通信していた。
 
「キムからヴォイジャー」
「はい、こちらヴォイジャー。なんだいハリー」

117 :量産型牛& ◆eVzLvfNS20BR :2012/07/31(火) 01:46:04.13 ID:???
17/19
 彼はデルタフライヤーで「シャノン・オドンネル」を乗せ、
オールトの雲を抜けようとしていた。
 本物のシャノンとの影武者契約の交換条件は、彼女の、いや、
まだ人類の誰も見た事も無い領域への探査であった。
 とはいえ、この任務自体は米国宇宙軍の最新型宇宙船を使用した試験飛行という名目で、
デルタフライヤーがワープドライブを搭載した未来の船だと夢にも思わないだろう。
 彼女は純粋に科学的探究心が旺盛で、自分の目で見たもの以外は信じない。
 ……そうした所はジェインウェイにそっくりだ。

「なぁ、トム、こちらで人工的な、亜空…あ、いや、
通信をキャッチしたんだが、帯域の問題か上手く調整出来ない。
 そちらに転送するから調べてくれないか」
「良いだろう。ベラナにスタンバイさせておく」
「わかった。転送を始める」

 ハリーは航行中、謎の通信をキャッチしたのだ。
 その内容は上の通り、何を発しているのかさっぱりわからず、
いくら調整しても自動翻訳機の調整範囲に入る音声通信に変換出来なかったのだ。
 デルタフライヤーのコンピュータは限定的なため、
その通信内容をサンプリングしたデータをヴォイジャーで解析すれば、
もしかしたら聴けるかもしれないと彼は考えた。
 トレスが機関室から通信を入れる。

118 :量産型牛& ◆eVzLvfNS20BR :2012/07/31(火) 01:48:20.98 ID:???
18/19
「こちらベラナ。あなたの通信を解析してみたけど、こちらでもサッパリわからないわ。
 なんか、イルカやクジラの声みたいなものに近い音声データには変換出来たけど」
「イルカやクジラ?他にデータは?」
「音声データの他に幾つか画像データがあるわ。んー、
何かの文字みたいなものと、色々な絵があるわねぇ。
 それに、これは……クジラ?……でも、羽かしらねぇ。
 クジラに羽が付いた様な生き物の画像があるわ」

 シャノンは彼女のあるワードに引っかかった。

「羽!?」
「え、そこに艦長がいるの!?」

 シャノンの声に、ベラナはジェインウェイと勘違いして驚いた。
 ハリーは慌てつつ、どう説明して良いか言葉を選ぶ。

「あ、いや、その、例の」
「え!?……あ、あぁ。そ、そういえばそんな話だったわね。
 えーと、シャノンさん……よね?」
「えぇ、そうよ。ベラナさん、初めまして。
 その……羽の付いたクジラの画像を、こちらへ送って貰えるかしら?」
「良いわ。どうぞ」

119 :量産型牛& ◆eVzLvfNS20BR :2012/07/31(火) 01:51:55.82 ID:???
19/19
 ベラナがフライヤーのモニターに画像を転送する。
 モニター上に映された絵を見て、シャノンは驚愕した。

「……エヴィデンス・01」
「え?証拠?」

 ハリーは唐突に告げられた単語に首を傾げる。

「……エヴィデンス・01よ。知らないかしら?
 初の地球外生命体の証拠として、プラントに化石が残されているわ」
「……どういうことよそれ。化石って、億単位の昔のものってことよね」

 通信の向こう側のベラナが不可解とでも言いたげな表情で話す。
 ただ、その顔はボイスオンリーのため相手には伝わらないが、
彼女の疑問は当然出てくる疑問であり、矛盾なのだ。
 それに対し彼女は腕組みをし、右手を顎にあててしばし考えると、
半ば自分に言い聞かせる様に言う。

「……そうかもしれないし、違うかもしれない。
 私達はまだ科学のほんの僅かな際に居る存在よ。
 でも、一つだけ言える事が有るわ。
 彼らは何らかの形で『居た』のよ。……その生死はともかくとしてね」

 シャノンはその画像に見入っていた。
第18話終わり、第19話へ続く。
投下終了です。皆様ご支援どうも有り難うございました。
お楽しみ頂けましたら幸いです。

120 :通常の名無しさんの3倍:2012/07/31(火) 09:02:53.43 ID:???
乙!
イザークはギャグ担当なのかww
AAのレーダー表示がボーグ式にwそ
デルタフライヤーキター、羽根クジラにもスタトレ視点で切り込んでいきそうですね。

121 :通常の名無しさんの3倍:2012/07/31(火) 09:34:15.09 ID:???
おつおつ
イザークがアホの子路線を進みつつあるなwww

122 :通常の名無しさんの3倍:2012/07/31(火) 21:02:28.22 ID:???
イザーク…
なんか納得してしまった
種死ラストであんなことにならなきゃ
以前ほかのクロススレでも書き込んだんだけど、二次創作のほうが完成度高くて
面白いってどーよ

123 :通常の名無しさんの3倍:2012/07/31(火) 22:57:38.02 ID:???
NJ涙目すぎるww
こうなったら羽鯨の化石にトゥボックが精神融合してみるしかないな。

124 :量産型牛& ◆eVzLvfNS20BR :2012/07/31(火) 23:51:36.37 ID:???
皆様、乙等の労いのコメント有り難うございます。

10/19の その時 サイ・アーガイルが…
の所は、 その時、サイ・アーガイルが…に訂正ですね。
他にもミスが無ければ良いですが、見つけたので脳内訂正お願いします。

VST製OSのガイド音声では「、」でやるか「 」でやるか迷ってたりします。
「、」で行くと邪魔臭いかなぁとか、見た目の印象的にスマートじゃないかなと。
機械的な感じを伝える意味でもスペースで空ける方がそれっぽいかな…なんて?w

本編シードのHDリマスターがアラスカに到着したじゃないですか。
あそこの査問会のシーンって美味しいですよねぇ。悪魔艦長的にw
いつかアレをやる日が来るんですが、残念ながら30話内では届きません。
30話で一期みたいな感じにしますんで、二期以降のお楽しみイベントかな。

125 :通常の名無しさんの3倍:2012/08/01(水) 00:03:35.56 ID:???
艦長が完全にAAのブリッジを呑み込んでいるww

126 :通常の名無しさんの3倍:2012/08/01(水) 13:29:31.29 ID:???
つまり悪魔艦長がアラスカ基地の幹部を査問するってことですね!?

127 :通常の名無しさんの3倍:2012/08/02(木) 00:11:03.56 ID:???
面白い! 続きを楽しみにしています。
ところですごく気になるんですが、なんで艦長のファーストネームが
「キャスリーン」なんでしょうか?公式表記は「キャスリン」なんですが。


128 :量産型牛& ◆eVzLvfNS20BR :2012/08/02(木) 21:59:15.89 ID:???
>127
 評価有り難うございます。
 しかし、公式の日本語表記はそうなんですか。
 私は公式サイトのキャスト表記は見てなかったので、
単純にドラマのボイスから聴き取ってこの名前にしてます。
 異議が多い様でしたら表記を脳内訂正してもらいますが、
不都合なければこのままで行かせてもらおうかと思います。
 その方がちょっぴり違う悪魔艦長って言い訳に使えそうですしw

129 :通常の名無しさんの3倍:2012/08/03(金) 02:09:35.80 ID:???
スタートレックWikiで調べたら2人乗りで全長4m足らずのタイプ15・シャトルポッドですら秒速128kmあるとは。
ただ改良型のタイプ15A・シャトルポッドは秒速13.2kmと表記されててどっちが正しいのやら。
それにしてもデルタフライヤーはワープなしでどのくらい速さ出るんだろうか?

130 :通常の名無しさんの3倍:2012/08/03(金) 23:02:03.06 ID:???
お〜
投下乙!
本当社長がいると心強いわwww
ラクスのカリスマも社長の前ではかすんで見えるねw
ラクスはラクスで他のSSより生き生きしている感じがする
にしてもイザーク・・・w

131 :通常の名無しさんの3倍:2012/08/03(金) 23:36:05.15 ID:???
ディープスペース9で、
ウォーフ「彼ら(遺伝子操作人類)のような生命体が自由競争を許されたら、親は我が子を強化しなければと圧力を感じる」
オドー「そうです。そもそも DNA再配列が禁止されたきっかけは、まさにそういう理由からです」
って会話があったなあ。
やっぱコーディネイター禁止の流れは変えられんよね。

132 :量産型牛& ◆eVzLvfNS20BR :2012/08/03(金) 23:38:04.62 ID:???
皆様こんばんは、本日は15分割になります。二回分けで行けたら良いかな。
では投下開始させて頂きます。
1/15
第19話「決意」

 ZAFT軍ヴェサリウス内アスランの執務室では、応接椅子に座るザフトレッドの面々が居た。
 アスランの対面に座るのはディアッカ・エルスマンとニコル・アマルフィだ。
 彼らメンバーのもう一人の姿はない。3人とも陰鬱とした表情をしていた。

「……イザークの負傷具合は幸い軽度だった。
 命令無視の結果とはいえ、無事なことは不幸中の幸いというべきか」

 アスランはイザークの処遇に苦慮していた。
 彼は現在、医務室内で集中的に治療を受けている。
 それもこれも作戦中の命令無視による独断行動の結果だ。
 機体の損傷も含めての責任は重い。

「イザークの奴、顔の傷は幸い治るらしいが、
本国に帰還する必要があるって聞いて拒否ったそうだぜ。
 まぁ、あいつの熱さはいつもあんな感じだ。確かに傷を負いはしたが、
本人も機体も直せる範囲だから、隊長権限で不問……ってなわけには行かないのか?」
「ディアッカ、言いたい事は分かるが、あいつの為になるのかわからない。
 ZAFTは自由な規律の軍隊だが、上官命令無視には罰則を科せる権限がある。
 ……とはいえ、正直な話を言えば、今はどちらでも良い。
 戦いたいというなら、それを優先する」
「ほぉ……」

 ディアッカはアスランの意外な判断に驚いた。
 この件は以前の彼の真面目さを考えれば、確実に問題にして押さえ込むと考えていたからだ。
 そこにニコルが尋ねる。

「どちらでも良い……ということは、イザークはそのまま温存するということですか」

 ニコルの質問に、アスランは溜息を吐きつつ答えた。
 その表情からは彼が自分の決断に満足している風には見えない。

「……あぁ、そうだ。いずれにせよこちらの戦力は不足している。
 1人でも欠けるのは痛い。失態は功績で挽回してもらうしかないだろう」

 本来であれば罰を科さなくてはならない立場にありながら、状況が許さない。
 だからと生真面目に規律を守ったならば、そのせいで共倒れになる危険すらある。
 どっちを活かすにしても、アスランからすれば重い話だった。
 ニコルがそんな彼を察して申し訳無さそうに言った。


133 :通常の名無しさんの3倍:2012/08/03(金) 23:40:06.31 ID:???
支援

134 :量産型牛& ◆eVzLvfNS20BR :2012/08/03(金) 23:40:09.95 ID:???
2/15
「そうですか。僕も……提案した張本人です。処罰は覚悟の上でした。
 本当に、申し訳ない。僕がゴリ押した形になりましたが、
あなたはそもそもこの戦いを、あまり乗り気ではなかったのではないですか」
「乗り気?………決断した以上、ニコルだけの責任じゃないよ。
 試す価値はあると思っていた。いや、価値は有ったのかもしれない。
 だが、それで分かったのは、……相手の能力が想定より驚く程高いという現実だよ。
 データは冷酷だ。奴らのセンサーレベルは並外れている。こちらの動きは全てお見通し。
 俺達は連合のセンサー範囲ぎりぎり圏外を航行していたはずなんだ。
 ……少なくとも俺はそのつもりだった。なのに、従来のレベルを大幅に越えていた」

 アスランの指摘は二人も実際に目にしていた。
 連合艦隊は機敏に対応し、こちら側の攻撃態勢とほぼ同時に行動して戦術を揃えて来ていたのだ。
 しかも、それだけではない。こちら側に合わせて戦術を凌駕してさえみせた。
 それは単にセンサー上で識別していたというよりは、
動き自体を把握しているとでも言える程機敏で的確な行動だった。

「……もしかしたら、俺達はとんでもない勘違いをしているのかもしれない」
「勘違い?」

 ニコルが首を傾げた。
 腕組みしながら二人のやりとりを聞いていたディアッカも、
珍しくアスランを真面目な顔で注視している。

「あぁ。俺達はモビルスーツが重要だと思っていた。
 だけど、本当はあの足付きが一番重要だったんじゃないのか」
「足付きが……ですか?連合の大鑑巨砲主義の修正としての足付きではなく、
飽くまで大鑑巨砲主義version2.0とでも言う代物だと?」

 ニコルの話す大鑑巨砲主義は、これまでの連合の艦艇が飽くまで戦艦での砲撃中心であったことによる。
 しかし、Nジャマー散布後は砲撃も目視に頼る事となり効果が減少していた。
 その状況に上手く適応したのがMSによる目視近接戦闘であり、
GAT-Xシリーズの開発に繋がったのだと考えていたのだ。
 黙って聞いていたディアッカも、この発言の奥に潜む答えに動揺していた。

「おいおい、ちょっと待ってくれよ。鹵獲MSだって十分高性能だぜ?
 ……なのにあの足付きはもっとすげーってのか?」
「……そう想定出来る条件がこれだけ揃っていて、
 否定する方が難しいとは思わないのか。二人は」

 言い終えてアスランが背もたれに深く体を沈め、目を閉じた。
 注視する二人の顔には、うっすら汗がしたたっていた。
 彼の滲み出る苦悩の姿が、この時ハッキリと彼らにも共有出来るものとなったのだった。

135 :通常の名無しさんの3倍:2012/08/03(金) 23:41:38.30 ID:???
支援

136 :量産型牛& ◆eVzLvfNS20BR :2012/08/03(金) 23:42:27.59 ID:???
3/15
 その頃、アークエンジェルの食堂では、
加藤ゼミの面々が第八艦隊と合流するとあって最後の会食と洒落込んでいた。

「一時はどうなる事かと思ったけど、
さっきの戦闘も無難にこなして何とか無事にこれたな」

 サイ・アーガイルは感傷に浸る様にこれまでのことを思い出していた。
 カズイがそれに続く。

「そうだね。でも、フレイはどうするのかな」
「フレイは……わからねぇ」
「え、サイ、最近フレイと話して無いの?」

 カズイの質問はサイにとってはとても痛い問いであった。
 出来るなら暫く黙っていたい事だったが、腹をくくる。

「……俺達、別れたんだ」
「えぇ?!」

 その場の全員が驚く。
 あまりの反応に彼自身も驚くが、気まずいながらも続ける。

「フレイはこの前のパイロットの件と良い、かなり本気でトレーニングを受けているだろ?
 ……でも、俺達は元々は民間人で、一時的に入隊している扱いだ。
 だから、第八艦隊との合流でオーブに一緒に帰るもんだと思っていたんだ。
 だけどさ、あいつ、残るって言ったんだ」
「残るってことは、……正式に入隊するってことでしょ?
 それとサイと別れるのはどう繋がるのよ。つまり、一人で帰れって言われたから?
 でも、それならサイは残る気無かったの?」
「ミリアリア、俺がそんな冷たい男だと思ったか?勿論、一緒に残ると言ったさ。
 俺としてはフレイには帰って欲しかったけど、自分は残るつもりだった」
「じゃぁ、別れる理由無いじゃない。なのにどうして?」

 確かにこの中には全く別れる要素は無い。
 フレイは除隊しないことにも同意し、彼自身も残るというのだ。
 一緒に戦って行こう!……で万事安泰であるはずだった。
 しかし、サイにとってはまさかの答えが待っていたのだ。


137 :量産型牛& ◆eVzLvfNS20BR :2012/08/03(金) 23:43:38.25 ID:???
4/15
「振られたんだよ。そもそも俺達の関係は親同士が決めた物だ。
 あいつは、俺の事を頼りにしてたし、大きな不満も無かったんだとよ。
 でも、それがいけなかった。あいつ、変わっただろ?
 ……おじさんが亡くなってから自立し始めたんだ。
 つまりはさ、俺は単なるお守り役だったってことさ」

 しみじみと語る彼の話に、一同は何も口を挟めそうになかった。
 しばし辺りに静けさが降りる。
 カズイが話題を変えようと口を開いた。

「あ、あのさ、キラはどうするのかな。
 凄く辛そうだったし、除隊…するよね?」

 この会食にキラの姿はなかった。
 彼はいつもの通りMSのメンテで出払っている。
 しかし、この場で一番帰りたいと感じているのは彼だろうことは、
一同の共通認識だった。

「うーん、だけどよぉ、俺、この前こっそり見ちゃったんだけどさぁ、
あのピンクの御姫様とキラがラウンジで抱き合っていたんだぜ?」
「えぇええ!?」

 トールの発言にこれまた一同は驚きを隠せなかった。
 彼は頭をぽりぽり掻きながら自分の発言に自重しつつ続ける。

「あ、いや、俺が見たってことは内緒だからな!……ここだけの話、
あいつ、お姫様のことを人質にした事を凄く恥じていて、
堪え切れず泣いていたみたいなんだ。そこをお姫様が慰めた……と。
 どうも、あのお姫様とキラ、……出来ているんじゃないかな」
「……あ…それ、わかるわ。この前の戦闘でも、キラ、彼女の事凄く気にしてた。
 うん、だったら、彼女の為に残るかもしれないわね」

 ミリアリアも戦闘中のストライクの情報を見て知っていた。
 彼女に対する執着とも言える必死さをみれば納得の行く話だった。
 そんな話を聞いてこの場で一番面白くないのはカズイだった。

「っちぇ、いいよなキラは。何でも出来て、ルックスも悪くないし。
 あんな綺麗な子と付き合って…リア充爆ぜろ」
「……わかるぜ、兄弟」

138 :通常の名無しさんの3倍:2012/08/03(金) 23:44:11.83 ID:???
支援

139 :量産型牛& ◆eVzLvfNS20BR :2012/08/03(金) 23:45:14.02 ID:???
5/15
 カズイの最後の呟きに、普段なら引いているはずのサイが同意した。
 そう、彼ら二人はゼミの男達の中では、彼女のいない不遇者同士となっていたのだ。
 まさに兄弟。

「あ、そうそう、俺も残るが、お前達は無理しなくて良いからな」

 サイの言葉にトールが首を横に振る。

「いやいや、サイが残るなら俺も残る!
 乗りかけた船だ!最後まで乗ってやるさ!!!」

 彼は力強く拳を握り宣言する。

「トールが残るなら、私も残る!」

 その彼の話にミリアリアも意志を固めた。
 だが、彼女の決意に一番驚いたのは隣に座るトールだった。

「ぇえ!?!ちょ、ミリィは戻れよ。無理すんなって!」

 彼は慌てて彼女の説得に入る。しかし、彼女の意志は固い。

「ちょっと、私を女だからって差別しないで!
 それにトールと離れるなんて、嫌!」
「ミリィ…」

 感動のあまり、彼は思わず彼女に抱きついた。
 彼女はそれに応えるようにひしと自らも彼を抱しめると、
もはやそこは二人のラブプレイスだ。
 それをこのバカップルだめだとばかりにジト目で見る二人。

「……はぁ。みんなが残るなら、僕も残るよ。怖いけど最近トレーニング楽しいし」
「良いのか?」

 サイはカズイが無理していないか心配して声をかけた。
 だが、彼は首を横に振って答える。

「僕もアークエンジェルのクルーだよ。仲間はずれにしないで欲しいな」
「はは、そうか。そうだよな」

 一同の決意が固まった。

140 :通常の名無しさんの3倍:2012/08/03(金) 23:45:49.80 ID:???
支援

141 :量産型牛& ◆eVzLvfNS20BR :2012/08/03(金) 23:46:28.20 ID:???
6/15
 艦長日誌
 我々は連合軍第八艦隊と合流した。
 旗艦メネラオスとの通信チャネルも開き、
この艦もようやく連合軍の正式な一員として迎え入れられることになった。
 そして、この軍を指揮する最高指揮官デュエイン・ハルバートン准将が、
自らアークエンジェルを訪れた。
 私は彼らを作戦室へ招き、そこで会談する事とした。

「いやぁ、よく守ってくれました。ラミアス君の話から聴きましたが、
ジェインウェイさんの采配だったと知り驚きましたよ。この場を借りて改めて礼を言いたい」

 ハルバートンは帽子を脱ぎ、深々と私に向かって礼をした。
 私はそれを直す様促して応じる。

「いいえ、礼には及びませんわ、閣下。私も犬死には御免です。
 生き残る為に協力するのは当たり前ですわ。それに、それ相応の報酬を頂きますし」
「ははは、相変わらずだ。しかし、あなたの功績は大きい。
 この艦は勿論、試作の2機を持ち帰れることは、
今後の連合とZAFTの戦況を大きく変えることになるでしょう。
 しかも、それが可能となったのは貴女の存在が大きい。
 どうです、正式に復隊されるおつもりはありませんか」

 来た。この質問は想定内の言葉だ。

「私が復隊したとして、どのような扱いになるのかしら。
 今は飽くまで臨時で暫定の大佐でしたけど、正直私もブランクがあります」
「何をおっしゃるか。この件については、既に上層部側も了承していてねぇ。
 貴女が良ければ正式に連合軍第八艦隊所属の大佐として復帰することになる。
 まぁ、私の部下扱いではあるが、不自由は無い様に努力する。どうですかな?」
「……准将閣下、勿体ないお言葉ですわ。
 ただ、正式に軍属となると、経営上に不都合が出ますわ」
「ふむ、確かに兼業軍人はあなたの経営は勿論、我々としても問題だ。
 だがねぇ、あなたはこれだけ秘密を知ってしまっている立場だ。
 それほど選択肢が無いことは承知してくださるものだと思うが」

 ハルバートンは私の目を凝視した。
 彼としてもこの案件は最重要の課題とでも言った所だろうか。

142 :通常の名無しさんの3倍:2012/08/03(金) 23:46:58.58 ID:???
艦長支援

143 :量産型牛& ◆eVzLvfNS20BR :2012/08/03(金) 23:47:26.42 ID:???
7/15
「では、条件を提示したら、そちらは飲んでくださるかしら?」
「条件?……内容次第ですな」
「私が責任を持つのはアラスカまで。
 それ以降は民間企業として戻る事を許可して頂けますかしら?
 ……この艦を無事に送り届ければ軍部としては十分じゃなくて?」

 彼はしばし沈黙した。彼女の提案を受け入れるのは正直難しい。
 軍と言う組織はそんなに簡単に抜けたり入ったり出来る組織ではない。
 それを虚偽で答えれば彼女は確実に拒絶するだろう。

「……惜しいな。私としては貴女と共に戦いたいものだが」
「准将閣下……私は何も軍から全て手を引くわけでは有りません。
 状況次第では継続もあり得るでしょう。
 しかし、私が軍属として残らなかった理由もお察し下さい」

 彼女の言う「残らなかった理由」とは、過去の事件と関係していた。
 彼女の業績で最大の作戦となった火星コロニー建設計画時代に起きた事件で、
軍部は全ての責を彼女になすり付けたのだ。彼女はその後軍を離れた。

「火星での記録は目を通した。当時の軍部が君に対して辛く当たったことは承知している。
 うむ、これまでの貢献を考えれば、我々が譲歩しない方がおかしいというべきか。
 わかった。私が君の希望を保証しよう」
「閣下、有り難うございます」

 この後の交渉で、私は正式に第八軌道艦隊所属大佐として着任した。
 所属艦隊はこれまで通りアークエンジェル及びバーナードとローを指揮下に置くが、
ハルバートン准将は月のプトレマイオス基地への移動ではなく、
大西洋連合司令部のあるアラスカへの降下を求めてきた。
 これには私も異を唱えたが、准将は一刻も早く地球に持ち帰り、
GAT-Xシリーズの量産化をはかり、失われ続ける若者の命を減らしたいと望んでいた。
 彼の言葉は我々の連邦にも通じる人道が宿っている。
 少なくとも彼の様な指揮官が連合にいることは救いと言えた。
 指揮系統については、所属艦隊の指揮権は私にあるものとし、
第八艦隊旗下では旗艦メネラオスの命令に従うものとした。

 だが、私は肝心な事は彼らに伏せる事にした。それはラクス・クラインについてだ。
 もし彼らにこの情報を伝えればどうなるかわからない。
 彼女は我々を連合とプラントに結ぶ切り札だ。カードを切るにはまだ早い。
 この事は事前にクルー達にもキツく言い含めた。
 実際問題、彼女の情報はここのクルーにとっても厄介なものだ。
 彼女が居ることが連合上層に知れれば、間違いなく連合司令部は我々を重要視するだろう。
 だがそれは我々が亡き者にされる可能性をもはらむ。彼らの過去のやり口を考えれば、
人道から外れた行動をしないとも限らないのだ。そう、艦諸共破壊するという手段を。
 敵軍の将を脅す材料として使えるものならば、連合もまた手段を選ばないということを
彼らにはキツく言い含めた。そのお陰もあり彼らはこの情報を一切漏らさなかった。

144 :通常の名無しさんの3倍:2012/08/03(金) 23:49:26.90 ID:???
支援

145 :量産型牛& ◆eVzLvfNS20BR :2012/08/03(金) 23:51:11.81 ID:???
8/15
「え、わ、私が中佐ですか!?」

 私の言葉に一番驚いたのはラミアス大尉だ。
 准将との会談後に作戦室に集まった上級士官との会議の席で、私は彼女に昇進の話を振った。
 彼女からしてみれば雲の上の話が唐突に自分に振りかけられ、
どう反応して良いのか頭が真っ白という様子だ。

「貴女にはこれからもアークエンジェルの艦長で居てもらいます。
 これまでの働きは十分な力を発揮していたと評価しているの。どうかしら?」
「……私に務まるのでしょうか。中佐だなんて」
「この度、私が正式に着任する以上、この作戦室の面々は、
私の軍の参謀として機能してもらう必要があります。
 その為に一定の権限を持ってもらわないと、これからの任務に差し支えると判断したの。
 昇進の承認は既にハルバートン氏から取っています。貴方に拒否権はないわよ。
 それに、私が指揮するのはアラスカまで。それまでにここにいる皆さんには、
私が居なくても機能するだけの技量を学んでもらいます。
 いわば、ここは学校だと思ってくれて良いわ」

 この後ラミアス大尉は同意し彼女は中佐に、バジルール少尉は大尉に、
 フラガ大尉は少佐に昇進させた。
 二隻の艦長のグライン/ブライトマンの両名は少佐のまま留任し、
トゥヴォックを中佐に昇進させ腹心とした。
 その他、全クルーの階級が一つ上がることとなった。これは准将からの計らいだ。
 他の処置はほぼそのままで、人員については降下するアークエンジェルへ
バーナード及びローから補充すると共に、現在クルーとして共に働く民間人については、
そのままアークエンジェルが降下してアラスカ経由で本国へ送り届ける事となった。
 これは現状で秘密を知り過ぎていることと、
アークエンジェルが彼らの支援無しに運用出来ない程度に彼らと一体化していることが言える。

 操艦についてはこれまで通りとし、
トゥヴォックの所属をバーナード及びローの指揮官として配置し、宇宙へ残すこととした。
これは宇宙軍との関係を維持する事で、今後の軍部をコントロールするためだ。

 方針が決まると話は早い。
 艦隊からは地上用戦闘機であるスカイグラスパー2機が補充された。
 また、不足していた必要物資も滞り無く積み込まれ、
これまでガラクタの山を再生して利用していた整備陣も色めき立っていた。

146 :通常の名無しさんの3倍:2012/08/03(金) 23:52:26.75 ID:???
支援

147 :量産型牛& ◆eVzLvfNS20BR :2012/08/03(金) 23:56:20.73 ID:???
9/15
「これ、こんなに急いで整備する必要有るんですか?」

 キラはハンガーでフラガのメビウス・ゼロの整備を手伝っていた。
 地球降下も視野に入った事から、セブンの発案でメビウスに翼を付ける作業をしていたのだ。
 大気圏内でのガンバレルの使用は無理だが、
前回の戦闘後にフライと同じ装甲に切り替えたこともあり、耐久性も上がっている。
 機体のボディカラーはゼロ同様だが、PS装甲ONで緑になる。
 ただ、普段は省電力モードで動作しPS装甲は動作させない設定になっている。
これは機体のバッテリー電源容量上仕方ない処置だ。

「アニカちゃんは仕事が早いからな。……そのために出撃出来ないのはまずいだろ?」
「それは、そうですが」

 実際セブンの働きの早さのお陰で様々な物が高性能になってはいるのだが、
そのお陰で様々な物が唐突に一時的であれ使えない状況もしばしばある。
 先日はアークエンジェル自体のOSのアップデートの為に機関が完全停止し、
クルー達は真っ暗な時間を3時間過ごすなど、トラブルとも言える事態も経験していた。
 もしあの状況で襲われていたら、真っ暗な中マニュアルで出撃する戦闘となっていたのだろう。
 ただ、そのアップデートのお陰でセンサーが強化されて、先の戦闘では完全に上手を取り、
ZAFTを難なく撃退出来たのは功績と言える為、甲乙付け難いどころか有り難いことだが。
 フラガは不意にキラの仕事の方が気になった。

「それよりお前の方は良いのか?」
「はい。ハンセンさんがOSの調整をしてくれています。
 今度積み込まれたスカイグラスパーはストライクと互換があるそうで、武装が使えるそうです」
「へぇー、そりゃまた凄いな。こいつにもそんな機能有れば良いのになぁ。
 ま、このゼロの大気圏内改造は簡易だ。突入は無理だが、
翼を持たせることで、重力下の操縦性能を上げているそうだ。
 詳しい事は分からないが、アニカちゃんの話によれば、
摩擦熱にも簡易ラミネートのお陰で数分は頑張れるそうだぜ。保険ってやつだな」

 実際に使うか分からないが、低軌道上で戦闘となれば間違いなく重力に掴まる可能性がある。
 彼女の対応の凄さは既にフライで実験して性能を確認しているということだ。
 ゼロで実験せずにフライにしたのは、ゼロが主戦部隊で使えなくなるのを危惧し
ジェインウェイが許可しなかった為だが、大佐の危惧は杞憂に終わり問題無く動作して戦闘を終えた。

「イチェブくんの方は新しい装備が完成したそうですね」
「あぁ、今作業してるあれ、あいつが自分で設計して作ったそうだぞ。凄いねぇ。
 お前もだがあいつも天才だよ。俺みたいなMA屋はお呼びでないって感じだ。
 嫌だねぇ、年の差ってのは」

148 :通常の名無しさんの3倍:2012/08/03(金) 23:57:38.11 ID:???
支援

149 :通常の名無しさんの3倍:2012/08/03(金) 23:58:03.51 ID:???
支援よーい
;y=━(´・ω・)カチャ
;y=━( ゚д・∵. ドゴ──────ン!!!

150 :量産型牛& ◆eVzLvfNS20BR :2012/08/03(金) 23:58:53.96 ID:???
10/15
 フラガの言う通り、新型武装はイチェブによって設計され開発された。
 彼は敵ブルーを参考に小型ミサイルポッドをデュエルに搭載させた。
 この武装については彼がコツコツと自分で設計した案があり、それをそのまま採用した格好だ。
 武装自体は連合のMA用小型ミサイルを第八艦隊から大量に調達出来た事で完成したが、
 この武装は着脱可能で、デュエルにストライクと同じコネクタを取り付け、
 ストライカーパック的に利用出来る様、新型試作カーボン素材で軽量化している他、
 増設コネクタを用意し、デイジーチェーン接続でアークエンジェルから
エネルギー供給を受けながら戦闘する事も出来る。
 また、盾をストライクと共通運用に変えて部品点数を削減するなど、
今後の運用効率向上のための武装共通化を進めている。

 こうした仕事の支援は勿論セブンが関わっており、彼女はこなすべき仕事が沢山あることは勿論、
大幅に制約の有る中での開発というこの状況を楽しんでいる様だ。
 無い素材は自分で作るをモットーに、ハンガー付近の部屋は殆どが彼女の工場施設と化しており、
新しい材料を製造するための装置が所狭しと開発され稼働している。
 この装置類があるお陰で彼女の開発は軌道に乗っているとも言え、
ジェインウェイもあまり強くは言えなかった。なぜなら、
彼女は確かに連合の技術水準で出来る範囲の開発方法を生み出しているからだ。
 オーバーテクノロジーであったなら、強制してでも彼女を止めただろう。
 彼女もそれを理解している犯行だから始末におけないともいる。
 ちなみにラボの開発メンバーは民間クルーのコーディネイターが多い。
 元々産業機械装置等を開発または管理する技術者がコロニーでは多く働いているため、
そうした技術者がここに居るのは必然でもあった。

「そんな、僕は彼と違って何も出来ないですよ」
「そうかぁ?前の戦闘じゃ、俺にはそう見えなかったけどね」

 フラガは先の戦闘データを見て驚いたうちの1人だ。
 キラがこれまで少々苦戦しながらも頑張ってきていたのは分かっていたが、
前回の戦闘は頑張っているなんていうレベルではなく、人間を超えた制御を見せていた。
 これがコーディネイターの為せる技なのかと思うと癪に障るが、
イチェブの事を考えると新世代と旧世代の違いという思いも浮かび、
自分の仕事の出来に内心悩んでいないと言えば嘘になる話だった。
 それでも彼は民間人の素人で、自分は訓練も受けた軍人なのだから笑ってしまう。
 少なくとも年齢分は仕事が出来ると思わせたいと思うのは、虚栄心だろうか。
 しかし虚栄心と言われても、強く有りたいと彼は感じていた。

151 :通常の名無しさんの3倍:2012/08/04(土) 00:00:12.41 ID:???
支援

152 :通常の名無しさんの3倍:2012/08/04(土) 00:02:06.55 ID:???
支援よーい
;y=ー( ゚д゚)д゚)д゚)д゚)д゚)・∵. タタタターン

153 :量産型牛& ◆eVzLvfNS20BR :2012/08/04(土) 00:02:09.70 ID:???
11/15
 その頃ZAFT側ではアスランがアデスと共に作戦を練っていた。
 執務室の応接椅子に対面で座りながら、連合の動きをもとに相談が続く。

「足付きは一度プトレマイオスへ行くものと思っていたが、
どうやらそのまま降下する気の様だね」

 アデスは連合側の動きを見て推測を語る。
 それを聞くアスランは、しばし顎に手を当てて考える仕草を見せた
 連合側の配置は遠くではあるが、ある程度把握は出来ていた。
 普通に考えれば彼らの方が余裕はあるのだ。急ぐ必要もないと考えられるが。

「……それだけ連合も焦っているんでしょう。あれは確実に戦局を左右する。
 それは俺達自身が使っていて痛い程理解していますが」
「そうだね。叩きますかな?」
「……勿論です。刺し違える覚悟が要るでしょう」
「しかし、我が方はジン5、ゲイツ2、それにバスターとイージス。
 MSの戦力数は確かにこちらが上だと思うが、向こう側には密集した艦隊が待っているのに対し、
我々はヴェサリウスとツィーグラーの2隻。かなり分が悪い。増援も間に合わないこの状況では…」
「艦長、増援は、……端から期待していません。
 そもそも、優れた種だなんて嘘ばかりだ。批判しているナチュラルと何が違うんだ」
「……アスラン」

 デスク上のパッドに映る星図を見てアスランは表情を歪め、これまで押し殺していた思いを吐いた。
 突然の独白にアデスも彼の気持ちを察する他になかった。彼はまだ少年なのだ。
 暫くの沈黙のあと、姿勢を正したアスランは表情を引き締めて指示を出す。

「艦長、ツィーグラーの人員はヴェサリウスに移します。全MS部隊は出撃。
 ヴェサリウスは後方待機。ツィーグラーには……私が乗ります」
「それは!?」
「……それ以上は言わないでください。そもそもその覚悟なくして戦えますか。
 恐怖に打ちのめされていたら、勝てるものも勝てない」

 アスランの表情からは固い決意が伺える。
 だが、それをそのまま受け取る様では副官は務まらない。
 何より、そんな覚悟を少年に強いている自分が情けないとも感じていた。

「いや、しかし、それならば私が!」
「艦長…いや、アデスさん。この戦いで無闇に将兵を失うのは勿体ない。
 この戦場から逃れられる船速を維持出来るのはヴェサリウスだけだ。
 艦長が居なくなっては船に申し訳ないです」

154 :通常の名無しさんの3倍:2012/08/04(土) 00:02:56.57 ID:???
支援

155 :通常の名無しさんの3倍:2012/08/04(土) 00:05:00.80 ID:???
にア ころしてでもしえんする

156 :通常の名無しさんの3倍:2012/08/04(土) 00:06:47.85 ID:???
|・ω・)ヒョコ

|( ・ω・)つ【支援】

|彡ピャッ☆

157 :量産型牛& ◆eVzLvfNS20BR :2012/08/04(土) 00:08:13.62 ID:???
12/15
「………我々にもその覚悟が無いと思っているのかね。
 これでも私は君より年も上だ。
 なのに年端も行かない君にそんな覚悟を迫っている私は何だろうか」
「指揮官が範を見せずして、部下が努力するわけではないですよ。
 それに勘違いしないでください。私も死にたくはない。勝ちに行きます」
「……」

 彼の決意は簡単に変わる様な物ではなかった。
 もう彼の中ではプランが固まっていた。これ以外に足付きを止める方法は無い……と。
 そう考えている彼に何を告げたとしても、彼を傷つけることにしかならないだろう。
 アデスはその後何も反論はせずに大人しく彼の意志に従った。

 アークエンジェルの通路を一人の少女が食事の乗ったトレーを持って進む。
 彼女の向かう先は、この船の中で最もVIPなお客様の部屋だ。
 尤も、本日はVIPの看板は外され「ゴミ置き場(有毒危険!)」とあるが。
 いや、気を利かせたのだろう。上層部命令の箝口令に従ったとはいえ、
クルー達の中にも客人を何としても守りたいという気持ちがそうさせたのだろう。

「……ここに置くわよ。
 あんた、また戦闘になったらどうするの?」

 フレイは食事の載ったトレイをテーブルに置くと、彼女に話しかけた。
 話しかけられた方は、微笑んで応じた。

「フレイ、あなたはどう為さるの?」
「私?本当は戦いたいわ。みんなギッタギタのバッコバコにしてやるんだから!
 でも、使える機体も無いし、体も出来てないって言われているのよ」
「そうですか。私は……無用な戦いが一つでも減らせるのでしたら、
出来ることをします。……あの、トレーニングはお辛くないですか?」

 彼女が心配そうにフレイの顔を覗くのを見て、フレイは頭が沸く様なものを感じた。
 そして、そのざわつきに耐えられず、思わず頭を掻きまくる。

「あぁ〜もぉ〜!何それ!そのしゃべりどうにかならないの?
 もっとフレンドリーにならないのかしら?」

 突然つんけんとした態度で早口で言われ、今度はラクスが目をパチクリとして驚いた。
 彼女からすれば責められる様なことはした覚えが無い。

158 :通常の名無しさんの3倍:2012/08/04(土) 00:09:44.56 ID:???
支援

159 :通常の名無しさんの3倍:2012/08/04(土) 00:10:41.56 ID:???
(・∀・) - ゛ = 支援

160 :量産型牛& ◆eVzLvfNS20BR :2012/08/04(土) 00:11:05.86 ID:???
13/15
「フレンドリー…のつもりでしたが、お気に触りましたら改めてみたいのですが、
その、どうお話したら?」

 彼女のこのまったりとした反応に、自分の頭を掻きむしりたくなる衝動を抑えて言う。
 いや、既に頭は先程掻きむしってはいたが。

「私は同じ女の子同士、普通にため口聞いて欲しいのよ。
 よそよそしいのは無し。良い?!」
「その…同じ年頃の女の子とお話することが無くて、よく分からないんです。
 えーと、フレイ、私もトレーニングを一緒に受けるのは、……ダメですか?」
「え?何言ってんのよ。あんた一応捕虜よ。
 今は『お客様』扱いしているけど、自由に動いていい軍隊がどこにある?
 ZAFTだって勝手に出歩いて良いわけじゃないでしょ?」
「……あ、それでしたら、先日ジェインウェイさんに許可を頂きました!
 艦内のお仕事を手伝うなら動いても良いそうです」
「へ?」

 フレイは鳩が豆鉄砲を食らった様に、一瞬思考が停止した。
 あの厳しい大佐が、まさか彼女を自由に歩かせるのを許可しただなんて、
さすがの彼女もにわかには信じられない。

「……私を騙そうとしてない?」

 如何にも怪しいという目つきで彼女の顔を見る。
 ラクスはその反応に困りつつも、信じてもらう他に無い。

「はい。私がもし嘘をついているとしたら、すぐにわかることですわ?
 少し外に出ただけでも大騒ぎになってしまいますもの。でも、許可があるから、
昨日はトイレのお掃除をして来たんですよ?トイレのお掃除って大変ですね。
 でも、磨いて行くとピカピカになって、それが凄く嬉しくって。
 そうしたら面白くなっちゃいまして、色々と工夫していましたら、
いつの間にか全部のおトイレを綺麗に掃除してしまいましたの。
 作業に集中すると、時間が過ぎるのってあっという間ですわね。フフ」

161 :通常の名無しさんの3倍:2012/08/04(土) 00:12:14.32 ID:???
支援

162 :通常の名無しさんの3倍:2012/08/04(土) 00:12:57.09 ID:???
四円

163 :量産型牛& ◆eVzLvfNS20BR :2012/08/04(土) 00:13:14.08 ID:???
14/15
 フレイはこれまた唖然として聞いている他無かった。
 ただ、確かに昨日のトイレは異様に綺麗になっていたのは気付いていた。
 しかも、ポプリが置かれていて、香りも普段よりずっと品の良い空間に。
 あまり深く考えていなかったが、あれが彼女の仕業なら…確かに頷ける。
 だが、それ以前にZAFTのお姫様がトイレ掃除だ。
 ……大佐は本当に恐ろしい人だ。

「はぁ、あんた凄いわね。正直驚いたわ。トイレ、とても気持ち良かったわよ。
 あのポプリの趣味は、あなたの仕業なんでしょ?」
「まぁ、お使い下さったんですか!気持ちよく使って下さったなんて、私、嬉しいです。
 えぇ。あのポプリは私が作らせて頂きました!」

 彼女はとても嬉しそうに微笑んだ。実際嬉しかったのだろう。
 自分の仕事を褒められて嫌がる人もそう居まい。しかも、彼女はこれが初体験なのだ。
 その仕事を褒められたなら、その喜びは相当のものだろう。
 ……そんなことを考えていると、フレイは色々と考えるのが馬鹿らしくなった。

「もう、調子狂うわねぇ。あんた、ホントにトレーニングしたいの?」
「はい!」
「……私のトレーニングに付き合うより、あんたの好きなことをした方が楽しいと思わない?」
「それは…そうかもしれませんが、私は一人より皆さんと何かご一緒できる事が有ればと……」
「……はぁ。もう、謙虚なんだか腹黒いのか。まったく。
 良いわ。この件、一応大佐に確認とってからになるけど、
そんなに一緒に居たいなら私は構わないわ。
 あんたみたいなコーディネイターばかりなら、世の中もっと脳天気なのにね」
「……そう、なのですか?そうでしたら、私も嬉しいですわ」
「やだ、もう!なにその答え。笑っちゃうじゃないのよもぉ!」

 フレイが声を出して笑う。
 それをジッと見ている彼女の視線を感じて、笑うのを止めそちらを見た。
 その時視線が合ってしまい、それがまた面白く感じて二人は同時に思わず笑った。

 メネラオス艦橋では、センサーに異常を感知し緊急警戒態勢に入っていた。
 ハルバートンが艦長席で隣に立つ副官のホフマン大佐から報告を聞く。

164 :通常の名無しさんの3倍:2012/08/04(土) 00:15:33.02 ID:???
支援

165 :量産型牛& ◆eVzLvfNS20BR :2012/08/04(土) 00:15:38.22 ID:???
15/15
「前方より接近する機影を確認。ZAFTです。
 こちらへ向かっています。邂逅時間は15分程度と思われます。いかが為さいますか」
「くぅ、この大事な時に」

 ハルバートンは敵の絶妙なタイミングに苦った。
 ようやく合流したのもつかの間、
ZAFTが攻撃してくるのは想定内としてもこの動きは早過ぎる。
 しかし、その時自陣営から通信が入った。

『オドンネルです。ZAFTの進軍はそちらでもキャッチされていると思います。
 我々はこれより迎撃態勢に入りますが、宜しいですか』
「いかん、アークエンジェルは即刻降下を。奴らの目的はそちらだ」
『はい、それは承知しています。しかし、降下までに数分の猶予があります。
 我々は彼らをよく知っています。未経験のそちらより私の方が、
この戦い有利に運べる自信がありますが、それでも強行為さると言うのですか。
 勿論、私は貴方の指揮下にあることは了承しました。
 ご命令とあればそれ以上は申しませんが、下策であると進言しておきますわ』
「………10分だ。10分でどうにか出来ぬなら、君等は降下してもらう」
『……充分ですわ。有り難うございます』

 ハルバートンは部下であるはずの彼女に圧倒された。
 彼女には彼にも理解出来ない何か得体の知れない威圧が感じられた。
 この圧力を感じる相手は、彼の記憶にある相手の中ではアズラエル理事くらいだろう。
第19話終わり、第20話へ続く。

というわけで、投下終了です。支援のお陰で一回で投下出来ました。
皆様ご支援下さいまして有り難うございます。
誤字脱字とか無ければ良いなぁ。有ったら脳内修ry
では、お楽しみ頂けましたら幸いです。次回は来週火曜辺りに投下予定です。

……遂に低軌道会戦間近までやってきました。長かったなぁ。

166 :通常の名無しさんの3倍:2012/08/04(土) 00:23:29.89 ID:???
投下おつおつー
いよいよ、か

167 :通常の名無しさんの3倍:2012/08/04(土) 00:26:11.00 ID:???
乙!
アスランからのAAの評価ヤバいなw
まあレーダー戦で負けてたら不利なんてもんじゃないからな。
元ボーグの二人はやっぱ凄いッス!連合の技術進みまくりw
てかアスランがなんか覚醒してるし、ザフトの救世主となるか?
フレイもラクスとの交流で変わっていくのかなあ。

168 :通常の名無しさんの3倍:2012/08/04(土) 00:27:15.32 ID:???
アヅラン特攻を悪魔艦長がどう捌いてしまうのやらwktk

169 :通常の名無しさんの3倍:2012/08/04(土) 00:29:57.92 ID:???
やはりハルバートン程度ではボーグクィーンすら圧倒する艦長の相手にもならんな。
盟主王との邂逅が楽しみだ。

170 :通常の名無しさんの3倍:2012/08/04(土) 12:19:28.16 ID:???
AAらは魔改造の代償として殺人コンソール完備になったりはしないのだろうか

171 :通常の名無しさんの3倍:2012/08/04(土) 19:42:11.19 ID:???
さすが最も多くのファーストコンタクトを成し遂げた艦長だけのことはあるぜ。

172 :通常の名無しさんの3倍:2012/08/04(土) 20:14:20.39 ID:???
この艦長ならELSとも交渉できる気がするw

173 :通常の名無しさんの3倍:2012/08/04(土) 20:36:16.09 ID:???
スタトレはテレパシー種族結構いるし問題ないな。

174 :通常の名無しさんの3倍:2012/08/04(土) 22:24:36.11 ID:???
セブンとイチェブが止まらねえwww

175 :量産型牛& ◆eVzLvfNS20BR :2012/08/06(月) 00:03:33.06 ID:???
 現在までのAAのクルーの階級と配置
☆加藤ゼミ(カトーゼミとしないのは変換楽なので)
 キラ=中尉…ハルバートンの恩賞。ストライクパイロット
 サイ=曹長…試験合格による昇進。ブリッジクルー
 フレイ=軍曹…試験合格による昇進。パイロット候補生
 ミリアリア=軍曹…試験合格による昇進。ブリッジクルー
 トール=伍長…パイロット選定合格による。パイロット候補生
 カズイ=伍長…パイロット選定合格による。パイロット候補生
※キラは実技は免除(既に戦ってる)で筆記試験を受けて正規合格済み。
※サイ/フレイ/ミリアリアは正規試験合格し、昇任試験も突破。
※サイは上級士官コースで事務方の勉強中。フレイは筆記を突破するも実技不合格。
※トールとカズイは筆記試験に失敗するも操縦技術試験はクリアしている。
※その他、AA正規クルー下士官達(ブリッジクルー)は全員少尉に昇格。
☆現在のAAのクルー配置は以下の通り。
 シャノン・オドンネル(ジェインウェイ)大佐…艦隊指揮官(ほぼ作戦室に常駐)
 マリュー・ラミアス中佐…艦長(非戦時ナタル又はムウと交代で休暇)
 ナタル・バジルール大尉…副長(非戦時サイ又はムウと交代で休暇)
 アーノルド・ノイマン少尉…主任操縦士(戦闘時以外はフレックス扱いでトノムラと交代)
 ジャッキー・トノムラ少尉…副操縦士(通常航行時はトールまたはカズイと交代)
 ロメロ・パル少尉…CIC主任(非番の時はサイと交代)
 ダリダ・ローラハ・チャンドラII世少尉…作戦室補佐(非番時はフレイと交代)
 ジョニー・ガレン曹長…保安部隊長。(ローから出向。お名前公募キャラ)
☆CICセンサー群オペレーター種別
 ボーグ式3次元空間センサー管理…サイ・アーガイル(CIC/保安部副主任)
 戦術情報及び艦内情報管理…ロメロ・パル
 艦隊オペレーター…ミリアリア・ハウ
☆アークエンジェル各セクションの管理者
 機関部及びハンガー主任…アニカ・ハンセン技術中尉
 同上副主任…コジロー・マードック曹長
 医療室勤務医…ハン・ソロ(民間人/お名前公募キャラ)
 パイロットチーム隊長…ムウ・ラ・フラガ少佐
 AAにこにこ清掃局…そのうちピンクのお姫様?

176 :通常の名無しさんの3倍:2012/08/06(月) 00:10:09.74 ID:???
>>175
すげー、ここまで設定してるとは!
ボーグ式ワロタww
ちなみに牛さんはスタートレックで好きな艦はなんですか?
自分は最終回ヴォイジャーとウォーバード・シミターですね、強くてカッコいい。

177 :量産型牛& ◆eVzLvfNS20BR :2012/08/06(月) 00:22:14.87 ID:???
その他
現在、ヤスベイ・ラムレイ、フォッグ・ナイトが登場してますが、
メビウスFパイロット枠はあと4人くらい有ります。

その他公募枠としては、AA食堂等の一般人枠というものが(おい
AA食堂は綺麗な奥様やおねーさんが沢山働いている夢の職場(?)
こんな奥様やおねーさんをプリーズというのがありましたら。

書き忘れていましたが、イチェブも中尉に昇進してます。
彼はハンガーでセブンと一緒ですので、彼らのラボで働いてます。
AAでの生活が長くなると生活も描かないといけないから、
30話以降の準備的にご意見ご希望があれば参考にしようと思います。

178 :量産型牛& ◆eVzLvfNS20BR :2012/08/06(月) 00:29:15.75 ID:???
>176
 2009でCGで描き直したエンタープライズAや分離合体のプロメテウス、
 勿論、悪魔艦長の母艦であるヴォイジャーも好きですよ。
 設定については、整理しておかないと分からなくなっちゃうので、
 メモ的意味合いもあります。今後はこの陣容で進んで行きますので。

179 :量産型牛& ◆eVzLvfNS20BR :2012/08/06(月) 01:36:12.12 ID:???
「……艦長、敵は連邦軍と接触後、彼らの情報を吸収している様です。
 ボーグとは違いますが、同様の技術習得形式を持つ様です」
 トゥヴォックの冷静な分析結果は彼女も確認していた。
 突如現れた「彼らの敵」を前に、我々は連邦軍と同盟を結ぶ初の「異星人」
として振る舞っている。実際はCBという組織を通した物だが。
「彼らの特性は流動生命体に準じたものの様ね。形状を学習して記憶するだけ
じゃなく、全ての物質的要素を量子レベルで整形できる。……いわば以前見た
Dクラス惑星の流動金属生命体と同じ様ね。でも彼らと違って寒さにも強い様だけど」
「……はい」
 前方宙域を木星方面から現れた異星体の編隊は、地球連邦軍の攻撃部隊を次々
と飲み込んで行くのが見える。こちらの攻撃を躱すのではなく、あえて受け止め
る事で情報を蓄積するタイプの様だ。
 しかも、この流動金属生命体には他の流動生命体と違い温度差の変化にも強い
という強みがある。宇宙空間上を自由に流体として存在出来、それを形状記憶で
整形出来る程の高度な量子生命体とでも呼ぶべきだろうか。その彼らの狙いはテ
レパスに有る様だ。
 テレパシストを集中的に狙うのは、彼らがテレパシストの声に反応しているの
かもしれない。確証は無いが、彼らとコンタクトを取る手段があるとすれば、唯
一反応を示しているそれ以外に考えられない。
「トゥヴォック、連邦軍にはどの程度のテレパシストが居るの?」
「数名程度と見られますが」
「そう、彼らの攻撃は我々の攻撃も躱すかしら?」
「……それはわかりません。やってみなければ。ただ、彼らとコンタクトするの
に役立つとは思えません。無闇に情報を与えるよりは何もしない方が良いかと」
「……この場にケスがいたら。量子レベルの意識を精神融合で受け止めるのは
無理が有るわ。この場は彼らのヴェーダを利用して情報を分散処理し、彼らの
量子的な反応には一か八か試作の量子魚雷に賭けてみましょう。重力で彼らが形成
するスピードを凌駕出来れば時間は稼げる筈。その隙に彼らの中枢から情報を
全て吸い上げ、テレパス達にヴェーダからの情報を読み解かせる。00Qへの装甲
の装備状況は?」
「準備は整っております」
「では、我々が突破口を開く!あとはQに賭けるのよ。さぁ、作戦開始よ!」
 ジェインウェイは前方宙域に現れた巨大な異星体の本体を凝視した。
 装甲を装備したヴォイジャーが発進する。ワープ5で異性体へ接近したヴォイ
ジャーは量子魚雷を発射。魚雷は命中すると超重力が周囲の異星体は勿論、巨大
異星体の表面を引きはがした。ヴォイジャーはその中へシールドを形成して侵入
して行く。
「シールド、50%にダウン。ELSの侵入は無し」
「まだよ。Qを発動させるには遠過ぎるわ」
「シールド、ダウン!装甲、90%で維持。ELSが装甲組成を調べています」
「ミスター・トゥヴォック、トランスフェイズ魚雷を発射」
「トランスフェイズ魚雷、1番2番3番発射!」
 トランスフェイズ魚雷にELSが群がる。しかし、波長を変調させるトランス
フェイズ魚雷をコピーする間も無く、魚雷は爆発し周囲の異星体をなぎ払う。
「艦長、前方にコアらしきものを見つけました」
「ジェインウェイから00Q、今よ!」
「刹那・F・セイエイ、OOQ、発進する!」
……という妄想を書いてみました。

180 :通常の名無しさんの3倍:2012/08/06(月) 05:13:07.05 ID:???
GOOD!!

181 :通常の名無しさんの3倍:2012/08/06(月) 22:46:45.75 ID:???
Q、Q言ってるからついにヴォイジャーのクルーにスタトレの「Q」が加わったのかと思っちゃったよw
さすが艦長、00世界でも大暴れだぜ!
それにしても最終回ヴォイジャーはあとドクターの夢兵器・光子砲も実装して欲しかったですね。

182 :通常の名無しさんの3倍:2012/08/06(月) 23:13:16.56 ID:???
最強候補の一角00Qでも兵器の威力や性能で考えると
ヴォイジャーに遠く及ばないんだよな

183 :量産型牛& ◆eVzLvfNS20BR :2012/08/06(月) 23:27:57.11 ID:???
この話、昨夜のコメント書き込み後すぐに考えて1時間で書いたものなので、
色々と現在読むと微妙な言い回しも多いですが、ELSとのコンタクトを望む方が
いらっしゃる様なので、ノリで書いてみました。
確かに00の兵器よりは、Voyが使う兵器は強力ではありますが、
ELSという生命体を相手にした場合は割と良い勝負かなぁ。
対話しないと無限大増殖同化コピーするELSは普通に脅威だと思います。

184 :通常の名無しさんの3倍:2012/08/06(月) 23:40:46.68 ID:???
>>182
戦闘の単位が桁違いだもんな、星間文明は伊達じゃない。
ヴォイジャーに至ってはデルタ宇宙域で技術収集しまくって改造してるからなあ。
終盤じゃボーグ最強級の戦略キューブと正面切って戦って時間稼ぎして最後までシールド維持してたし。

185 :量産型牛& ◆eVzLvfNS20BR :2012/08/07(火) 20:12:33.30 ID:???
1/11…今回は11分割なので、遅くても2回の投下で終われます。
第20話「低軌道会戦・前編」

 モニターには2つの遺伝子サンプルが表示されている。
 一つは一般的地球人の、もう一つはコーディネイターと呼ばれるものだ。
 その表示には特定の遺伝子をターゲットにした調整が確かに行われているが、
それが大きく異なると言える程の変化を示しているとも言えない。

「しかし、このコーディネイターという人々の遺伝子はとても歪な配列をしている。
 身体的な能力を上げることも出来ていることがあるが、大抵はその為に何かを犠牲にしている。
 この程度の技術でよく進めようとしたものだ。少尉、ハイポスプレーを頼む」

 ドクターの補助をしているのは、普段は機関室勤務のボーラック少尉だ。
 彼は普段補助をしている筈のトム・パリスが艦長代理としてブリッジに勤務していることもあり、
その代理としてここに赴任している。
 彼の目前にあるのは一人の人間の死体だ。集中治療室にアンチされた死体は装置で覆われ、
頭部を除いて露出している面は無い。
 この死体はプローブを射出して、先日崩壊したヘリオポリスより転送で回収した幾つかの死体の中の一つだ。
 ヴォイジャーでは死体を回収してドクターによる分析を行っていたのだ。
 その主な目的はコーディネイターとナチュラルの分析にある。
そして、その為に運ばれて来たのが目前の少年兵の死体だ。いや、死体だったものだ。
 ドクターはハイポスプレーを手にすると、それを検体の首に当て薬剤を浸透させた。
 すると、その死体はびくりと動いた。

「………うはぁ!?!」
「おっと、落ち着きたまえ」

 少年兵は意識を回復したが、死の直前の記憶に動悸を早くしていた。
 だが、すぐに自分の見ている視界がコックピットではない事に気が付き沈黙する。
 それ以前に座っていた筈が横になっているし、何故か体の自由も利かない。

「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ……あ、あぁ……」
「あー、君の名前は確か……ミゲルと言ったね。ミゲル、我々は宇宙空間を彷徨う君を回収したのだ。
 だが、もう大丈夫だ。君の体は元通りに回復する。私が約束しよう」
「……ここは?」
「ここは医療室だ。一緒に回収したラスティ君も順調に回復している」
「……嘘だ。ラスティは死んだ」

 彼はあの戦いでラスティが亡くなったのを知っていた。その弔いも込めて足付きへ挑んだのだ。
 そして、ヅラ諸共あの世へ葬れる絶好のチャンスで……それ以降の記憶は無い。

186 :量産型牛& ◆eVzLvfNS20BR :2012/08/07(火) 20:21:47.77 ID:???
2/11
「嘘ではない。君は数刻前まで死んでいた。だが、我々が君を蘇らせたのだ」
「蘇らせた!?」
「ボーラック少尉!患者が動揺する様な言葉は謹んでもらいたいな」

 ドクターがボーラックの言葉を諌める。しかし、ミゲルの動揺が静まる筈は無い。
 ボーラックの言葉が本当ならば、自分は確かに……死んでいたのだ。

「……俺は、本当に死んでいた……んだな。あ、うぅ、ぅ……」

 ミゲルは自分でもどうして溢れるのか理解出来ないが、大量に込み上げる涙を止められずにいた。
 そして、その流れる涙が、自分が生きているんだということを知らせてくれるのだ。

 プラントコロニーマイウス4の某所では秘密の会合が行われていた。
 そこはアマルフィ家の別荘の一つで、装飾的なものは控えめでシンプルな佇まいだ。
 よく言えば近代的な建築だが、悪く言えば質素でどこにでもある様な邸宅だ。
 そこにこのプラントの最大派閥が集まっていた。

「……シーゲル、我々は方針を改めるべき分岐に来ている様だ」

 シーゲル・クラインの前に座るのはユーリ・アマルフィだ。
 彼はパッドに映るとある報告を見ながら彼に話しかける。その表情はとても暗い。
 話しかけられた方も内心頭を抱えたいくらいの気分であったが、
そうしたところで何らの解決にも繋がらない現実にただ耐える他無いのだ。

「……うむ。パトリックの暴走具合は目に余るが、彼の見解は正しいということか。
 だが、本当に可能性は無いのかね?」

 彼の質問にユーリの右隣に座るアイリーン・カナーバが口を開く

「正直な話、私の方で密かに運用していた最新の量子コンピューターの計算次第では
突破出来ると踏んでいたが、デュランダルはまだ掛かると言っている。
 だが、仮に突破出来たとして、イーブンに持ち込めただけであって解決ではない」

 彼女に続く様にユーリの左隣に座るアリー・カシムが続く。

「議長が指示されたプランBを実行する以上、ザラ派と組むのは不可避と考えます。
 但し、彼らが我々と軌を一にするとは限りません。保険となるプランC及びDの平行
運用とプランDともいえる新しい道も模索された方が良いかと」

 彼の言葉を聞いて、シーゲルはテーブルの左側に座る人物の方を向いた。
 彼こそは現在の戦場を作り出した張本人だ。

187 :量産型牛& ◆eVzLvfNS20BR :2012/08/07(火) 20:23:03.86 ID:???
3/11
「……私が作り出した結果を、私に覆せと言うのかね」
「オーソン、何も君を責める為に呼んだわけじゃない。我々はむしろ君に感謝している。
君が尽力していなければ現在の我々は無い。
 確かに大きな被害を出したが、そのお陰で我々は生き続けられている。それを忘れる事は無い。
 だが、君の力を今一度我々は必要としている様だ」

 シーゲルの言葉に幾分気を良くしたオーソン・ホワイトは、ゆっくりとした口調で話す。

「……パトリックに提供したものは試作に過ぎん。だが、連合は面白いものを開発した。
 ミラージュコロイドは全ての兵器を一変させるだけのポテンシャルがある。
 ……それは私が研究しているアレにも応用が出来そうでな。
 コロイドによるビーム反射を遮蔽に応用すれば、我々は何も分裂炉のみ頼ることはなくなる」
「ん!?……オーソン、まさか」
「あぁ、我々が目指すべきはもはや地球ではない」
「……むぅ」

 シーゲルはオーソンの自信に満ちた目を見た。
 彼は科学の為ならば誰の批判すらも耳を塞げる強い信念の持ち主だ。
 だからこそ、ザラともクラインとも与せずに独自の路線を貫いてプラントを現在まで導いて来た。
 その彼が再び新しい道を提示しようとしている。

「……プランDか。フフ、オーソン、君の案を聞こうか」

 シーゲルは決断した。
 これよりクライン派は新たなる路線へ突き進む事となる。
 その頃、ZAFT軍ザラ隊旗艦ヴェサリウスでは、一人の少年兵が怒りにうち震えていた。

「……ストライクめ。この痛み、……必ず思い知らせてやる」

 イザークは右目を覆う包帯に手を当て、その怒りを露にした。
 隻眼というハンディキャップすら、彼の怒りの前にはものともしない。
 新たに整備されたゲイツ・アサルトソード。シールドビームクローだけではない、
対艦刀はストライクの装備を参考にヴェサリウスのチームが完成させた。
 接近戦での不利を克服する為に開発されたこの装備をもって、彼は戦いに臨む。

「ザラ隊長、全軍出撃しました。我々も向かいましょう」
「アデス艦長、こちらの準備も整いました。ヴェサリウスは深入りしないでください」
「……健闘を祈る」
「……ツィーグラー、発進!」

 アスランの乗るツィーグラーがゆっくりと動き出した。

188 :量産型牛& ◆eVzLvfNS20BR :2012/08/07(火) 20:25:03.79 ID:???
4/11
 連合艦隊は一時的にシャノン・オドンネルの指揮に入った。
 これはハルバートンが彼女の提案を受け入れ、10分間を彼女の自由に任せたからだ。
 しかし、彼も無条件に全てを与えたわけではない。
 10分という時間の制約の他に、アークエンジェルの前進を認めなかった。
 その代わり自軍の艦艇の指揮権を認めた。

「……着たわね。戦争が機動力のみで決まると思ったら大間違いよ。
 戦争の本当の恐ろしさを……見せてあげるわ」

 ジェインウェイは作戦室から矢継ぎ早に指示を出した。
 連合艦隊にはアークエンジェルを中心にV字型の陣形を採り、
艦隊火力ロスを出さない横一列の隊列にした。
 そして、アークエンジェル後方にはシャトルアーチャーが待機し全軍の指揮命令の中継をさせる。
 上方の空間にはフラガ大尉のメビウスを中心にフライを4機と艦隊のメビウスを全機回した。
 下方の空間にはストライクとデュエルを配置。
 あえて下層に空いた空間を作ったのは、重力空間への誘い込みを兼ねてのものだ。

「……何だよあの陣形は。あからさまに下へ来いって言ってるだろ」

 MS部隊後方から支援砲撃ポイントで待機を始めたディアッカが思わず言った。
 実際、誰がどう見ても「下へ来い」と言わんばかりの陣だ。

「……どうします?あれ、乗るかそるかで言えば……乗っちゃだめですが、イザーク行きましたよね」
「はぁ〜、……ニコルは上へ行け。オロール達を引っ張ってくれ。俺はあいつの支援をする」
「了解、ディアッカ。あなたはイザーク思いですね」
「へん、笑ってくれ。腐れ縁は腐っても縁だってな」
「……死なないでください」
「お前もな」

 ニコルはイージスを変形させ上方のジンの編隊の先頭へ出た。
 メビウスからの攻撃が始まる。
 一定の防衛ラインが突破されたのを合図とするかの様に、一斉に射撃が始まった。
 それらは先頭を走るイージスを集中して狙う。

「そんな玉、いくら出しても意味有りません!」

189 :量産型牛& ◆eVzLvfNS20BR :2012/08/07(火) 20:26:36.65 ID:???
5/11
 スキュラを放つ。しかし、瞬時にメビウスはその射線上を避け、
執拗にイージスへの攻撃を続けた。
 それはまるで攻撃されるのが分かっていたかの様に、
彼らの行動はこちらの攻撃の一歩手前で判断している様に感じられた。

「ストライク!!!!」

 イザークは目標を認めた。
 艦隊下層で陣取るストライクとデュエル。
 二機はゲイツが向かってくるのを見て呼応する様に前進する。
 丁度艦隊前衛周辺まで来た彼らは、先にデュエルが小型ミサイルを放って牽制する。
 だが、イザークはものともせず対艦刀で迫り来るミサイルを切り裂いて突き進む。
 それを後方からバスターが支援。

「イチェブさんはバスターを。僕はあのブルーをやります」
「わかった」

 イチェブは同意するとすぐにバスターへ向けてバーニアを吹かす。
 交代する様にシュベルトゲベールを構えたストライクがイザークへと対峙する。
 それを見て舌舐めずりをしゲイツ・アサルトは突進した。
 ソード同士が衝突する。金属同士の重い衝突が激しく火花を散らせ、ジリジリと互いを牽制し合う。

「ストライク!この痛み、晴らさせてもらうぞ!」
「……ぐぅ!新装備か」

 メビウス・ゼロは敵側の攻撃部隊がまっすぐにこちらへ向かってくるのを認め、
全メビウス隊に一斉射撃を命令する。
 近接信管のミサイル群は敵MSとの交差面手前で爆発する様にセットされているが、
敵側もそれに即座に対応して来ていた。
 彼らは先頭のイージスを中心に縦列を組んでいる。
 しかも、イージスのスキュラは対艦攻撃に使える程の出力があるため、
おいそれとその正面に陣取る事が出来ない厄介な武装だ。
 唯一の救いは、こちら側の管制が相手側より「一歩早い」ことだ。

「……こりゃすげーや。先読みしている。
 いくら強くっても、当たらなけりゃ意味ないよね」

190 :量産型牛& ◆eVzLvfNS20BR :2012/08/07(火) 20:41:08.08 ID:???
6/11
 メビウス部隊はアークエンジェルCICより逐一敵側の攻撃情報が伝えられていた。
 そして、その情報にオートで回避運動が出来るシステムが組み込まれていた。
 システム管制を担当しているのはセブンだ。

「……空間グリッド51394の722α、スキュラ起動、
射線軌道51393の722β修正、回避α1クリア。
 艦隊主砲発射角868修正、発砲、敵ジン左腕部損傷、程度D支障無し……」

 彼女は黙々と作戦室のジェインウェイのそばで処理していた。
 メネラオス艦橋ではハルバートンが目視は勿論、モニター上の情報を見て驚いていた。
 彼のこれまでの戦闘経験からすれば、下層のMSが互角に対応していることは納得しても、
上部のメビウスでは物の数に入らないと思っていた。しかしどういうことか、
メビウス部隊は艦隊の火力を利用して善戦している。しかも現在まで損害ゼロである。
 こんな戦いは一度も見た事が無い。

「……閣下、私は夢を見ているのでしょうか」

 側近のホフマン大佐が、艦長席の隣で前方から視線を逸らさず直立不動のまま尋ねる。

「……夢だとすれば、随分良い夢じゃないか。出来れば覚めないで欲しいものだ」
「……全くです。しかし、オドンネル女史は……とんだ怪物ですな。
あ、これはオフレコですよ。彼女に知られたら食われそうだ」
「はっはっは、私もそれを思った。いやはや、我々は今まで一体何を考えていたのだ。
 戦争のいろはは情報だ。Nジャマーがなんだ。
 彼女は個人のビジネスで解決してみせたではないか。
 我々がコーディネイターに劣るという幻想は終わる時が来た様だ」
「……そのようですな」

 ハルバートンはしばし考えを巡らすと、
彼女に前命令を取り消して暫くの間時間制限無く戦闘させてみる事にした。

 アスランはツィーグラーをゆっくりとジンの後方から前進させていた。
 艦砲での支援をしつつ全体を俯瞰する。

「……(下層の方は連携をしてくれている。問題は…馬鹿にしてくれる。
 雑魚と思っていたメビウスに当てられないだと。よし)
 ニコル、君は艦を叩け。ジンは各自散開しメビウスを多方面から攻撃。
 突破が無理なら各個撃破だ」

191 :量産型牛& ◆eVzLvfNS20BR :2012/08/07(火) 20:52:51.18 ID:???
7/11
 アスランの命令後、ジン部隊が散開し隊列を解いた。
 多方面に別れて攻撃を始めたジンに対し、メビウスも散開すると編隊を組んで、
各機体をまるで役割分担が決まっているかの様に整然と攻撃し始める。
普段ならば敵ではないはずのメビウスが、機械的な程に精密に飛んでくるのだ。
 ジンに乗るZAFTのパイロット達もこのようなメビウスの挙動は見た事が無い。
 しかし、コーディネイターはその動きにも対応出来る柔軟さがある。
 機体性能はこちらが上ならば冷静に動けば良い。
 オロールを中心にジン同士も連携してメビウスを一機ずつ標的を絞り攻撃を始めた。
 以前の彼らならばこのような無様な戦いは選択しなかっただろうが、さすがの彼らも学習した。
 メビウスが撃墜され始める。
 ……とはいえ、ようやく損害を互いに出し始めたというのが正しい状況判断だろう。
 その動きは作戦室に座るジェインウェイも認めていた。

「押してくるわね。強者は弱者の真似事はしないのかと思っていたけど、
それほど愚かじゃないのね。良いわ。そんなにデートがしたいなら、
こちらが行ってあげるまでよ。全軍微速後退!」

 艦隊がアークエンジェルを除いてゆっくりと後退を始めた。
 それは逆V字を描く様に徐々にアークエンジェルが全面に立つ格好となっていく。
 そして、それと同時に全軍の攻撃が後方支援射撃となり、
アークエンジェルを中心に壁となった。
 敵側の動きを見て、アスランはツィーグラーを全速力で噴かし、
出せるだけの攻撃兵器を使って前進する。
 MS部隊の攻防は膠着状態を続けていた。
 ストライクとゲイツの戦闘は勿論、バスターとデュエルの戦闘も決着がつかない。
 特にバスターは対艦刀を持って参戦していた。
 本来なら長距離攻撃機であるバスターが接近戦に対応しているのである。
 バスターが牽制射撃を放っても、デュエルは小型ミサイルで迎撃し迫る。
 それを対艦刀で振り払うの連続である。
 戦闘時間もこれまで経験していた時間を大幅に越えている。
 手数も多い分さすがにエネルギーの限界の方が近い。
 しかし、それは相手も同じはずだと考えていた。
 だが、相手側は一向に手を抜く隙を見せない。

192 :通常の名無しさんの3倍:2012/08/07(火) 21:00:09.82 ID:xMPOn/Kr
支援砲撃

193 :量産型牛& ◆eVzLvfNS20BR :2012/08/07(火) 21:00:34.94 ID:???
8/11
「……やばいな」

 ディアッカはこのままでは勝てないことは想像出来た。
 何より彼は「失ったOS」の効果がここに来て大きい事を悟っていた。
 確かにOSのセキュリティは向上したが、
それと同時に高度なエネルギー管理も失われたのだ。
 彼らのOSはその操作性や堅牢なセキュリティに目が行きがちだが、
戦場で最も重要なことは「制約無く戦える」ことである。
 とても洗練されたエネルギー管理は、
こちら側のOSより単純計算で4割程度は省エネルギーで動作していた。
 エネルギー残量をより意識して行動したならば5割以上の省電力性能を実現しているだろう。
 この5割という数字はそのまま行動力の差となって表れる。
 こちら側が電力消費対策に対艦刀を用意したのに対し、彼らは普段通りの装備どころか、
デュエルはより重武装になっている。これを差と言わず何を差と呼べぶべきだろう。
 しかし、アスランは撤退命令を出さず、ニコルもメビウスに振り回されている。
 ここで冷静に判断出来るのは自分以外には居ないと思えた。だが、
果たしてこのタイミングが正しいのかは判断しかねた。
 ゲイツのエネルギーはバスターよりは持つが、イザークは冷静ではない。
 しかも、気のせいでなければ、足付きは徐々に高度を下げている。
 ほんの僅かずつで誤差の範囲の様に錯覚するが、
数値上はゆっくりとだが確実に下げているのだ。
 このままだと空間に押しつぶされかねない。

「艦長、敵ローラシア級が突っ込んできます。」

 トノムラが焦って報告を入れる。
 ラミアスは動じる事無く命令を出す。

「ローエングリン照準!敵、ローラシア級!」
「このままでは撃てても破片は……」

 アークエンジェル艦橋では目視でツィーグラーが迫るのが見えていた。
 最初は交差する軌道を描くと思われていたツィーグラーが、
唐突に衝突軌道へ変更したのだ。後退しながら射角を取るが、このまま照射に成功したとしても、
全てを破壊し尽くす事は出来るかどうか。それは賭けに近かった。

「丁!」
「……ここまでくれば、確実だ」

194 :量産型牛& ◆eVzLvfNS20BR :2012/08/07(火) 21:02:48.79 ID:???
9/11
 アスランがコックピットの中で不敵に笑った。
 ローエングリンの光がツィーグラーを飲み込む。内部機関を貫通した陽電子砲はそのまま艦を貫いた。
 程なくして大爆発が生じるが、爆散しつつも大きな破片がそのままアークエンジェルへの衝突コースを描いた。
 その時、作戦室でジェインウェイが叫ぶ。

『フラガ少佐、今よ!リミッター解除!』
「ほい、来た!リミッター解除!」

 ゼロのガンバレルのリミッターが解除されリニアガンが収納されると、新たな砲芯が現れ発砲する。
 濃い橙色の光線が走り、4基のガンバレルが大型の破片に向けて次々に攻撃する。
 するとそれらは粉々に破砕され、なんと跡形も無く消滅したのだ。

「ヒューーー!ビーム兵器ってのは良いねぇ。しっかし、おっそろしい破壊力だぁ。」
『大尉、ナイスタイミングよ』

 ツィーグラーは消滅した。文字通り消えてなくなったのだ。
 この事に作戦の失敗が濃厚となったZAFTは浮き足立ち、士気が乱れ始めた。

 ヴォイジャーの医療室では、例の二人が回復して自由に歩ける程度になった。
 まだ医療質を出る事は許されないが、彼らには新しい服が与えられ、
普通に経口で食事をとる事が出来るまでに回復した。

「なぁ、ドクター、いい加減にここはどこか教えてくれないか」
「凄く進んでいる施設だってことは僕等にも理解出来ます。でも、連合にもZAFTにも見えない」

 二人は回復してからというもの、この謎に興味津々と言った所だった。
 ホログラムで形成されたドクターとの対話という状況をみれば、そりゃ興味も沸くというもの。
 しかし、彼らにどう説明すべきか正直苦慮しているといったところだ。

「あぁ、まだ君等に説明すべき時期ではないんだ。
 だが、君達についての事ならば、ある程度は話す事が許されている」
「僕等のこと?」

 ラスティが首を傾げる。実際問題、自分の事は自分が一番分かっていると思っていた。

「俺達のことってどんなことだよ。まぁ、これまで黙りだったんだ。
 折角だから教えてもらおうじゃないか」

195 :通常の名無しさんの3倍:2012/08/07(火) 21:03:02.50 ID:???
支援
y=ー(´・ω・)カチャ

196 :通常の名無しさんの3倍:2012/08/07(火) 21:03:49.63 ID:???
支援てー
;y=ー( ゚д゚)・∵. ターン

197 :量産型牛& ◆eVzLvfNS20BR :2012/08/07(火) 21:04:47.22 ID:???
10/11
 ミゲルの態度に、ドクターは少々悪戯心をくすぐられた。

「そうか、ちょっと待っていたまえ。ドクターからパリス」

 彼が呼びかけると、突如空間のどこからとも無く声がする。
 天井を見回すもスピーカーが有る様には見えない。

『なんだい、ドクター』
「例の二人のためにホロデッキの使用をしたいと思うのだが、良いかね」
『……うーん、そういうことなら、俺のプログラムのカントリーを使うと良い』
「了解。通信終了。……さて、コンピューター、3名転送」
「え?」
「な!?」

 二人が突然輝き出した自分の体に驚いているのも束の間、
3人はコンピューターによって転送された。

 ジンがメビウスに押され始めるのを見るに見かね、
ディアッカが後退命令をだそうとしたその時、その声は発せられた。

「……全軍、後退だ!」

 ゲイツステルスに乗ったアスランが遮蔽を解いて宙域に現れ後退命令を出した。
 だが、メビウスは食らいついた様にジンを離さない。
 ニコルを支援に回そうにも、彼もゼロとフライの連携に遭い動けそうになかった。
 イザークは相変わらずストライクに執心している。
 ディアッカの額から汗がこぼれた。

「アスラン!幾ら何でも一方的じゃねぇか!!!」
「そんなことは分かっている。お前も見ただろう!
 あんなもの、あれに付いている兵器のレベルじゃない!」
「だけどよぉ!!これじゃ、あんまりじゃねぇか!!!
 敵さんは今回は逃がす気ねぇぞ!どうするんだ!」
「逃げ道は俺が作る。ニコルを回すから、お前はイザークを何とかしろ」

198 :量産型牛& ◆eVzLvfNS20BR :2012/08/07(火) 21:05:54.96 ID:???
11/11
 アスランがそう言って通信を切った。しかし、彼にだって何ら目算等無い。
 ツィーグラーを消滅させたあの光線を見ては、さすがの彼もゾッとしていた。
 陽電子砲に破壊光線……次は何が出てくるのだろうか。足付きは不思議のデパートである。
 そして、それが連合の新装備として全軍に行き渡った日には、
……自分達に明日はあるのだろうか。まるで悪夢だった。

 しかしその時、センサー範囲に未確認の機体が確認された。
 セブンはその情報を分析するが、
こちら側の予想データの標準値から大きく5倍以上の出力で迫っているため、
CEの兵器群では対応出来るスピードではなかった。

「社長、通常出力の5倍のゲインを持つ機体が急速に宙域に接近している。
 識別は分からないが、技術標準はZAFTのものの様だ」
「新型にしては速度が異常ね。どうなっているの」
「……制限付きのこちらのコンソールからでは難しい」
「分かったわ」

 ジェインウェイは耳のコミュニケーターに触れた。

「ジェインウェイからトゥヴォック。
 シャトルのコンピューターで見ているかしら。あれは何?」
「シャトルよりトゥヴォック。こちらでも捕捉しています。
 確認出来た事は、出力がストライクの5倍はあります。
 そして、Nジャマーが不自然な反発を見せているのが確認出来ます」
「反発?」
「はい。機体を中心に同心円範囲に球状の斥力フィールドを発生させた様な印象です」
「それって、まさか…」

 艦隊前方ZAFT艦隊より更に深い後方から急速に何かが飛来した。

「フフフフフフ、お待ちどう様かな諸君。……私は帰って来たよ」

 白銀に輝く謎の機体は友軍機へ識別信号を送った。
第20話終了、第21話へ続く。
ご支援有り難うございました。投下無事完了致しました。次回は金曜日の夜に。

199 :通常の名無しさんの3倍:2012/08/07(火) 21:10:57.17 ID:xMPOn/Kr
お疲れ様でした。次回も楽しみにしてます!

200 :通常の名無しさんの3倍:2012/08/07(火) 21:11:49.68 ID:???
投下おつおつ
そういえば狂うぜのことをすっかり忘れてたわ

201 :量産型牛& ◆eVzLvfNS20BR :2012/08/07(火) 21:32:52.63 ID:???
1/11の
集中治療室にアンチされた死体は装置で覆われ、……は
集中治療室に安置された死体は装置で覆われ、……です。(アンチって……汗
3/11
…我々は何も分裂炉のみ頼ることはなくなる……は
…我々は何も分裂炉のみに頼ることはなくなる……です。
9/11
まだ医療質を出る事は許されないが、……は、
まだ医療室を出る事は許されないが、です。

申し訳有りません。脳内訂正して頂ければ幸いです。

202 :通常の名無しさんの3倍:2012/08/07(火) 21:52:59.95 ID:???
乙!
ドクターキター!
これは生命体149の蘇生術だな。さてミゲルとラスティはこれからどうなるのか?まあ、いざとなれば記憶消去(ryそして安定のヅラww
やはりコーディネイターには欠陥があったか、カーン様と比べてもロースペックだったからな。
プラントは核融合製作フラグ?
艦長は連携と策でザフトに対抗、それに対応するザフト、しかさらにその上をいくとAA陣営と面白い。
アスラン達の窮地に帰ってきたクルーゼですが、なんとなくネタ臭が…w

203 :量産型牛& ◆eVzLvfNS20BR :2012/08/07(火) 22:24:14.92 ID:???
皆様、労いの乙有り難うございます。
また訂正です。
4/11の
……着たわね。…は
……来たわね。…ですよね。うぅ、酷い。

204 :通常の名無しさんの3倍:2012/08/08(水) 00:29:20.36 ID:???
遺伝子操作人類の行きつく最適解はドミニオンのジェムハダーやボルタ族みたいな一代限りの工場生産なんかなあ。

205 :通常の名無しさんの3倍:2012/08/08(水) 01:26:50.14 ID:???
投下乙です!

しかっし社長怖い・・・
「戦争の本当の恐ろしさを……見せてあげるわ」
このセリフだけでお腹一杯ですwww

何かもうやっぱり社長が太陽圏支配してもいいような気がして来たwwwww

206 :通常の名無しさんの3倍:2012/08/08(水) 19:32:27.52 ID:???
悪魔社長とドクターには、ぜひともあの脳みそジョージ・グレンにキツくかましてほしい。

207 :通常の名無しさんの3倍:2012/08/08(水) 20:22:11.73 ID:???
シェル・ブリットのジーンメジャーくらいになれればあるいは…<遺伝子操作

208 :通常の名無しさんの3倍:2012/08/08(水) 22:08:45.79 ID:???
ヴォイジャーは遺伝子関連もすごい技術力持ってるからなー、8472から技術貰ってるし。
コーディをナチュラルに治せるかも、トカゲを人間に戻せるぐらいだしw

209 :通常の名無しさんの3倍:2012/08/09(木) 00:27:01.47 ID:???
ワンやスーダーが生きててくれたらなあ……

210 :通常の名無しさんの3倍:2012/08/09(木) 19:38:38.05 ID:???
投下乙ですー。ついにドクターがw
ホログラムだっていうのをカミングアウトしてるって事なのかな
OSのエネルギー管理の差が云々っていうのが成る程!面白い
それにしてもメビウスにフェイザーとかセブンやり過ぎw

211 :通常の名無しさんの3倍:2012/08/09(木) 20:04:59.44 ID:???
セブンならムウのメビウスをボディにほかのメビウスが手足に自在に変形して
スクランブル合体MSとか作れるんじゃないのw

212 :通常の名無しさんの3倍:2012/08/09(木) 20:49:51.55 ID:???
OSの差がここまでパネェとは。
>>211
アークエンジェルにはプロメテウスの多方向攻撃システムを搭載して分離合体機能持たせてほしいw

213 :量産型牛& ◆eVzLvfNS20BR :2012/08/09(木) 21:13:42.93 ID:???
 訂正します。発音上ボーラックよりヴォーラックですね。

214 :通常の名無しさんの3倍:2012/08/09(木) 21:43:50.89 ID:???
ヴォーラックってポンファーになってベラナに求婚して決闘したあのバルカン人かwww
あれはカオスなエピソードだった。

215 :通常の名無しさんの3倍:2012/08/09(木) 23:02:47.70 ID:???
ぶっちゃけホワイトベースってU.S.Sエンタープライズに手足をくっ付けたデザインだから
このSSのお陰でアークエンジェルが惑星連邦宇宙艦隊に混ざっても違和感が無い錯覚がしてきた

216 :通常の名無しさんの3倍:2012/08/09(木) 23:41:55.80 ID:???
もうドレッドノート投入とか、大分変化があるな。

217 :量産型牛& ◆eVzLvfNS20BR :2012/08/10(金) 20:35:55.30 ID:???
1/16……今回は16分割。遅くて2回に分ければ投下できるかと思います。
第21話「低軌道会戦・後編」

「じゃじゃ馬を慣らすには、準備運動が必要かな」

 通常の5倍の出力はパイロットにも勿論強烈な負荷を掛ける。だが、当の本人からすれば、
その程度の圧力などものともしなかった。伊達に鍛えてなどいない。
 コーディネイターの中で彼がトップを張るには相応の努力を要した。例え身体が痛もうとも、
それさえ彼には勲章だ。
 白銀に輝く機体はそのままの勢いでビームサーベルを起動させると、連合艦隊の左翼へ突撃した。
 艦隊は照準を合わせる暇無く次々に艦橋を切り裂かれていく。
 対応に動いたフラガ大尉のゼロがガンバレルで攻撃するも、
スピードに追いつけずに敵の新型の突貫を許してしまうどころか、
敵機は膝からアーマーシュナイダーを取り出して投げ、
ゼロのガンバレルの一つを繋ぐケーブルを切り裂いて通り過ぎてみせたのだ。
 爆音を上げて左翼を形成していた艦艇は轟沈。
 現れて数分もせずに、しかもたった一機のビームサーベルによって数隻の艦艇が潰されたのだ。

「他愛も無い。まるでナマケモノだな」

 新型のパイロットは不敵に笑みを浮かべた。
 だが、そのナマケモノと罵られた側もただ指をくわえているわけではない。
 連合艦艇は多大な損害を被っても即座に陣形を立て直し、残った右翼の艦艇で砲撃を開始。
 弾幕を厚くして新型の攻撃を牽制する。

「ほぉ、……そうだな。ナマケモノという名は身勝手な命名だったな。
 ゆっくり動いているようで、実は凶暴な様だ。こわいこわい」

 新型は逆V字の広がりに合わせて後方へ突き抜けた後、右周りに旋回し砲撃を回避、
自陣営のジンを狙うメビウスを一機ずつ落とし始めた。
 ジェインウェイはメビウスの後退を命令しジンとの距離を置くが、
その後退に乗じて新型が追撃して次々に撃墜。
 これまでの連合の勢いが嘘であったかの様に、新型は圧倒的な攻撃を展開した。

218 :量産型牛& ◆eVzLvfNS20BR :2012/08/10(金) 20:39:38.55 ID:???
2/16
 旗艦メネラオスではこの状況を見てハルバートンが決断した。
 アークエンジェル作戦室との通信チャネルが開かれる。

「……潮目が変わった。オドンネル君、これまでだよ。降りてもらう」
「しかし、それでは閣下は!?」
「私よりアークエンジェルだよ。この戦闘は君達を無事に降下させたら勝ちだ。」
「わかりました。ご無事で」

 ジェインウェイは彼の覚悟を悟り、音声通信のみながら敬礼した。
 違う世界の軍とはいえ、勇敢な指揮官の決断は尊いものだ。
 彼は命を投じてでもこの艦を守るという。ならばその覚悟に応えるのが礼儀だろう。
 ジェインウェイが艦橋に命令を下す。アークエンジェルは降下体制に移行した。
 指揮権がメネラオスへ返上されると、メネラオスがアークエンジェルの前に陣取り、
左右を残りの艦艇が保護する陣形を敷いた。そして、
 残りのメビウスも密集してアークエンジェルを保護する姿勢を見せた。

「……おやおや、劣勢に回った途端に逃走とは気が早い。
 もう少し楽しませてくれるものと思っていたが、少々買い被り過ぎたかな?」

 彼は攻撃の手を緩めず、残りの艦をまるで手玉に取る様に一隻一隻攻撃した。
 それに呼応する様に行動の自由を取り戻したジンも加勢し攻撃を始める。
 だが、連合側もメビウスFを中心に攻撃を立て直し、ジンを一機ずつ仕留め始める。
 これはハルバートンの命令というよりはトゥヴォックの指揮によるものだが、
彼はシャトル・アーチャーの通信機能を最大限に活かし、全機を自動操縦で制御下に置き、
動作ロスを完全にシャットアウトして機体性能を本来の80%まで引き出した。
 その動きは密集形態を採りつつも、的確に相手の武装を攻撃して無力化を進める。
 彼の判断はとてもシンプルだ。何も本体丸ごと叩かずとも武装や推進装置さえ無力化すれば、
MSとて単なる空飛ぶ棺桶なのである。

「っちぃ、これだけ乱されても立て直してくるか。
 ……知将ハルバートンは伊達ではないということか」

 自身の機体が残ったとしても、友軍機が撃墜されては外聞が悪い。
 このまま艦を攻撃し落とすこともできるが、
彼の思惑と合致しないのはどうにも面白くなかった。

219 :量産型牛& ◆eVzLvfNS20BR :2012/08/10(金) 20:43:34.81 ID:???
3/16
 アークエンジェルの艦橋では所属機へ帰投命令を出していた。
 降下が始まっているため、大気圏突入の摩擦熱が船体全体に広がり始めていた。
 これは周辺の所属機も状況は同じで、早々に帰投しなければ重力と摩擦熱の餌食になりかねなかった。
 メビウス・ゼロは既に重力の摩擦熱に晒され始めていたが、
機体を損傷していたこともあり早々に帰投していた。
 しかし、ストライクとデュエルはまだ戦闘中だった。

「艦長、このままでは二人は」

 ミリアリアの言葉にラミアスは思案していた。
 彼らの機体には大気圏突入モードがついている。
 このまま降下したとしても降下出来るとはいえる。
 だが、問題はその突入モードが「本当に働くか」であった。
 まだ実験すらした事の無い代物だ。不測の事態が有ったとしても不思議ではない。第一、
装甲が耐えられたとしても、中の人間が無事である保証は無いのである。

「二人を見捨てるわけにはいかないわ。大佐もそう仰ってくれるはず」
「しかし、それでは降下ポイントが大幅に!?」

 バジルールの懸念はラミアスも認識していた。
 この状況で進路変更すれば間違いなく降下点が大幅にずれる。運が良くて大西洋だが、
そこが連合の制海権が届くエリアとは限らない。
 確かにこのまま彼らを見捨てたならばアラスカへは降下できるが、
実際に使用された機体が持ち帰られる事によるメリットは計り知れない。
 データと実物では全く違うのである。

「……二機を失っては、何の為に准将閣下が決断されたか分からないわ。
 私達は何が有っても無事に送り届けることが任務よ!良いわね、バジルール少尉!」
「……はい。アークエンジェル回頭、降下しつつ二機を保護する軌道を取る。
 中佐、失礼は承知で申し上げますが、私も大尉に昇進したんです。どうかお忘れなく」

 ラミアスは唐突な彼女の言葉に一瞬目が点になった。そして、
普段はそういう反発をする様に見えない彼女が見せた一面が、
状況的には不謹慎では有るが面白く感じられ笑みを浮かべた。
 バジルールも自分で発言しておきながら、相手の反応を見て内心後悔し赤面していた。

「そうだったわね。信頼しているわよ。大尉」
「は!」

220 :量産型牛& ◆eVzLvfNS20BR :2012/08/10(金) 20:46:16.99 ID:???
4/16
 バジルールはラミアスの命令に従い、二機の救出に向けて指示を出していく。
 その頃、ゲイツ・アサルトの執拗な攻撃にストライクは徐々に押されていた。
 単純に格闘スキルの差が表れてきたのだ。だが、その状況にも変化が訪れた。

「!?」

 イザークは急激に機体の動きが鈍くなっていることに気が付いた。
 ストライクを倒す事ばかりに集中していた彼は、
既にかなりの高度を失っていることに気付いたのだ。
 ゲイツ・アサルトは宇宙用の試作機体であり、降下対応はされていない。
 気密という面では宇宙に対応しているのだから完璧であろうが、
この戦闘で所々損傷している機体が大気の摩擦熱に耐えられる保証はない。
 まして、無事に大気圏を抜けたとして、何事も無く着地出来る様な装備は一つもない。
 そこにディアッカから通信が入った。

「イザーク、もう止めろ!お前、取り返しのつかない所まで落ちているぞ。
 俺が行くから、お前は吹かして少しでも降下スピードを下げろ。良いな!」
「お、おぅ。でも、着た所で、お前も落ちるだけじゃないのか!」
「忘れたか、コイツには大気圏突入機能があるんだ。
 少なくともお前の装甲より耐熱仕様になっている。
 俺の影になればお前の受けるダメージは和らぐだろう」
「……ディアッカ」

 イザークは事の重大さに気が付き、もはやストライクどころではなくなっていた。
 自分自身の生存の可否に関わる事態になっているのだ。
 ディアッカの声が急に救いの神の様に聴こえたその時、もう一つ割り込んでくる通信があった。

「イザーク、僕もお供しますよ!」
「ニコル!?お前、どうして!」
「僕の乗ってるイージスも対応機です。連合の機体に救われるのは癪ですが、
一機で支えるより二機ではないですか?」
「……ニゴルゥ〜〜〜」

 普段の彼とは大違いの反応に、二人は珍しいものを聞いた驚きの半面、
ちょっと怖くも感じた。
 だが、ニコルはそんな二人に重大な事実を伝えなくてはならなかった。

221 :量産型牛& ◆eVzLvfNS20BR :2012/08/10(金) 20:49:08.19 ID:???
5/16
「え、あ、もう、泣かないでくださいよぉ。
 ……というか、僕のイージスもエネルギー切れ間近で。
 ディアッカの影に回らせて貰おうかと思いまして……ってへ!」
「!?!」
「!?!」

 その頃、ストライクも自由落下していた。
 攻撃を躱すのに徹してそのまま重力に捕まったのだ。
 機体全体が熱の上昇で悲鳴を上げる。

「ぐ、くそ、動け!このぉ!」

 キラは気が動転していた。
 アラート音の大合唱に機体自体の軋み、そして身体全体にも掛かり出した重力の重み。
 思わず嘔吐していた。不快な臭気が己の判断力をより衰えさせる。

「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ」
『キラ、キラ!返事して!キラ!』
「……ミリアリア?」
『ストライクには大気圏突入モードがあるの。機体の姿勢を立て直して何とか動かして!』
「……。」

 彼は重力の圧力下で気を失いかけていた。
 だが、彼女の言葉を聞いて朦朧としつつ、気を振り絞る様に集中した。
 突入モードに切り替えた事で背面を向けて落下していた機体の姿勢が修正され、
シールドを前に突き出す形で突入する姿勢になった。
 そして、そのまま彼は気絶してしまった。

「……キラ」

 そこにデュエルが彼の隣に降下しストライクの右腕を掴むと、
アークエンジェルの動きに合わせる様に着艦地点へと促した。

「……これでもう、大丈夫だ」

222 :量産型牛& ◆eVzLvfNS20BR :2012/08/10(金) 20:51:01.41 ID:???
6/16
 彼らは無事にアークエンジェルの背に覆われ、着艦に成功した。

 アークエンジェルが降下に成功した頃、軌道上では新たな動きが有った。
 月方面から大規模な連合の応援艦隊が押し寄せて来ていた。

「(…あの数を相手に戦う事はできるが…ここはこの程度の手柄で良しとすべきか。
 いや)…まだ残っていた」

 彼はそう呟くと、機体のバーニアを噴かしてビームサーベルを構え突進した。
 その先は旗艦メネラオス。

 ハルバートンはその攻撃を怯む事無く睨み見ていた。
 彼が見ているものは所詮現実である。
 夢を見るには早過ぎたのだと心の中で己を笑った。しかし、
彼にもまだ仕事が残されている。敵の攻撃対象は分かっているのだ。
損害を最小限にする努力は惜しまない。

「総員退艦!生きて明日を勝ち取れ!」

 その言葉を最後に、メネラオスの艦橋は貫かれた。
 新型は艦橋を貫き終えると踵を返す様に後退した。

「ZAFT全機に告ぐ。私は……ラウ・ル・クルーゼだ。
 この戦闘、降下された以上、深追いは無駄と判断し撤退を希望する。
 異議の有るものはいるか?」

 彼の名と共に告げられた撤退命令に異議を言う者はなかった。
 何より数刻前に彼に劣勢状況から救われたばかりのボロボロの兵士達からすれば、
彼の命令は願ったり叶ったりだった。
 こうしてZAFTの部隊は撤収し、連合艦隊は応援艦隊と合流して月への帰路についた。

223 :量産型牛& ◆eVzLvfNS20BR :2012/08/10(金) 20:53:12.16 ID:???
7/16
 この戦闘で生き残った艦艇は、バーナード及びロー他2隻のドレイク級だけだった。
 旗艦メネラオスは艦橋を貫かれたのみだったため、大きな爆発も無く多数のクルーが救助された。
 その救助活動を指揮したのはトゥヴォックの乗るシャトル・アーチャーだった。
 彼はこっそり行動不能だが生命反応のある負傷者を転送で救助していた。
 後に生き残った者の数名はその事を証言しているが、単なる奇跡で片付けられている。

 双方に多大な犠牲を強いたこの戦闘は、後に低軌道会戦と呼ばれ、
連合が圧倒的なZAFTの前に敗れ去った会戦として知られるが、
当の戦闘を経験した者達からすれば、確かにZAFTは勝利したが、
その内容は一歩タイミングが違えば結果は変わっていたと思えるものだった。

「シャトルアーチャーからヴォイジャー、こちらはトゥヴォック少佐だ」
「ヴォイジャーからゴールワットです。少佐」

 ボリアン人のゴールワット少尉が現在はブリッジ勤務をしている。
 彼女はハリー・キム少尉の交代として通信を担当していた。
 ちなみに現在のブリッジはパリスが艦長代理としてトップに立ち、
副長をトレスが代行している。そのため機関部等様々なセクションリーダーも変更されている。
機関主任はヴォーラック少尉が担当しながら医療室補助も行っている。
 ブリッジにはトムやベラナが不在時はハーグローブ大尉が艦長席に座り指揮し、
副長席にはサマンサ・ワイルドマン少尉が着任した。そして、
ヴォイジャーではトムの次に優秀なパイロットであるパブロ・ベイタート少尉が操舵する。

「私は地球連合軍の月面プトレマイオス基地へ向かう事になった。
 出来ればこちらに応援が必要だ。数名のクルーをピックアップして欲しい」
「分かりました、少佐」
「艦長達は地球に降下した。座標はこちらから送る。艦長達の捕捉を頼む」
「はい」

224 :量産型牛& ◆eVzLvfNS20BR :2012/08/10(金) 20:55:01.21 ID:???
8/16
 トゥヴォックの乗るシャトルが艦隊の後方を行く。
 彼は少しずつ迫る月の表情をただ見つめていた。

 その頃、ヴォイジャー艦内では、
艦長代理を任された二人が話しながら通路を歩いていた。

「核分裂反応を抑制するフィールドなんてよく考えついたよなぁ。
キャプテンプロトンの設定にも登場させようかなぁ」

 キャプテンプロトンとは、彼の作ったホロデッキ用の演劇プログラムの一つだ。
 20世紀中頃に作られたモノクロSFドラマを似せて作られている。
 彼にはこうしたホロノベルと呼ばれるホログラムドラマのプログラムの才能が有る様だ。

「……いい加減にしてよ。それより艦長達は地球へ降りたそうよ。
 私達も近づく事を考えた方が良いと思うのよ」
「チャコティやトゥヴォックが居るんだぜ?それに大丈夫だよ。
 いざとなったらワープで向かえば良いさ。
 なんせ奴らの科学力じゃ、ボイジャーに傷一つ付けられないんだぜ」
「そんなの分かってるわよ。問題は艦長達に何か有った時でしょ。
 転送可能距離を確保しておかないと、何か有ってからでは遅いわ」
「それじゃ俺達バレバレだぞ。まさかロミュランみたいに光学遮蔽するのか?
 仮に出来たとしても、そんな事したら条約違反だとか後で艦長にどやされるぜ?」

 普段ならトムの冗談の様な話にはまともに付き合わない様にしている彼女だが、
この時は彼の言葉に素直に耳を傾けた。

「……良いわね。それで行きましょう」
「はぁ?」
「これよ、これ」

225 :量産型牛& ◆eVzLvfNS20BR :2012/08/10(金) 20:57:51.29 ID:???
9/16
 ベラナの持っているパッドには、地球連合が開発したとある技術が表示されていた。

「……要は宇宙連邦の技術じゃなければ問題無いのよ」
「……なるほど」

 二人は早速作業に取りかかることにした。
 ブリッジに入った二人は主任級のクルーを集めて作戦室で会議を始める。
 艦内が慌ただしく動き始めようとしていた。

 荒涼とした景色が広がる。
 アメリカ西部のデスバレーを思わせる赤茶色の大地が広がり、
乾いた空気が喉をカラカラにさせる。
 道も何もない荒野のど真ん中に二人は居た。

「さっきまで部屋の中に居たのに、突然どこだよここは」
「昔のアメリカドラマに出てくるような世界だよね。それにしても暑いし喉が渇く……」
「あ、なんか向こうから近づいてくる」
「え、何?」

 彼らの視線の向こうから何かが近づいてくるのが見える。
 ガソリンカーの様な音が聞こえるが、どういうことだろうか。
 そして程なくして現れたそれは、20世紀の白いオープンのキャディラックだ。

「やぁ、二人とも、ここは気に入ったかね?」
「あ、ドクター!?!」

 運転席からご機嫌な笑顔で語りかけるドクターを見て、二人は素で驚いてた。
 彼はカウボーイの様なウェスタンスタイルの服装をしていた。
 カントリーウェスタン……まさか、そう言う事なのか?

……と言った所で、第一回投下を終えたいと思います。
続きはまた後で。では。

226 :量産型牛& ◆eVzLvfNS20BR :2012/08/10(金) 22:51:26.70 ID:???
では、続きを投下させていただきます。
10/16
「ちょ、待って、どういう事だよ。この状況マジ意味分かんない!説明しろよ!」

 ミゲルがいきり立って抗議する。
 ラスティも同様にこの状況が如何にも腑に落ちないといった顔だ。
 まぁ、確かに唐突にこのような状況と出くわせば動揺もするものだろうが、
彼らには少々落ち着きが欲しい所か。

「あぁ、わかったわかった。とにかく二人とも乗りたまえ。話はそれからだ」

 二人は同意して大人しく車に乗った。
 ミゲルは助手席へ、ラスティは後部座席に座った。

「あぁ、君達、シートベルトを締めたまえ」
「えぇ!?マジで?オープンカーでウェスタンなのにシートベルトかよ!」
「……なんか格好悪いなぁ」
「四の五の言わずに締めなさい。私は医者だ!
 患者の命を守る義務が有る!何事も安全第一だ」

 二人は仕方なくシートベルトを締める。
 ドクターはそれを確認すると、にんまり微笑んでエンジンを噴かし発車した。
 車がゆっくり走り出す。……それは本当にゆっくりと踏みしめる様に。

「……ドクター」
「なんだね、ミゲル」
「……安全運転なのは分かるけどさぁ、これじゃ走った方が速くね?」

227 :量産型牛& ◆eVzLvfNS20BR :2012/08/10(金) 22:57:55.96 ID:???
11/16
 確かに彼の言う通り、現在の時速は15kmだ。
 走るよりは速いかもしれないが車にしては遅過ぎる。
 ドクターはその指摘に憤慨しつつも、気持ちだけ加速を付けだした。
 現在の時速はそれでも30km。二人はこれ以上言うのを諦めた。
速度が遅くとも風が感じられれば問題無い。

「ねぇ、ドクター。それでこれは一体どうなっているのですか?」

 ラスティーが穏やかに問い掛ける。
 車に揺られて風も吹いて気持ち良いが、彼らにとってそれらは全く重要な事ではない。
 そもそもこの状況は勿論、自分達が死んでいた筈が生きていることや、
先程の「転送」のことを含め、不思議がいっぱいである。
 病室には見えない壁が存在して外には出られないため、分かるのはどこかの施設という事だけだ。
 それもとても高度な技術を持った。

「うーん、君等の事を話すと言った筈だ。それ以外の事は私からは何も言えんよ。
 それより、どうだねここは。狭い医療室から比べればずっと開放感があるだろう」
「……開放感有り過ぎて、俺達喉がカラカラだよ」
「おぉ、そうか。後部座席に箱があるだろう?そこに水が有る。飲むと良い」

 ドクターの言う通り、ラスティの座る座席の足下、
丁度運転席の後ろ側に灰色のクーラーボックスの様な箱があった。
 開けてみると、確かに水の入った透明のボトルが用意されていた。
 ラスティが箱の中のボトルを取り出そうと手を入れると、
その箱の中はとてもひんやりとしていた。
 クーラーボックスというよりは冷蔵庫と言っても過言ではない。
 よく出来ていると思いつつ彼は入っている二本のボトルを取り出すと、
一つをミゲルに手渡してからボトルのキャップを開ける。
 そして乾き切った喉を潤す。

「ぷはぁ!きーもちぃ〜〜〜」
「生き返る〜〜〜っ」
「……おい、ラスティ、それ、洒落にならねぇから」

 ミゲルに指摘されてばつが悪そうに舌を出す。
 しかし、染み渡る水の冷たさが自分達の生を感じさせることは間違いない。

「で、説明はどうなってるんだ」
「……少しはこの場を楽しむという気は無いのかね。まぁ、
言える事は我々は君等の敵ではない。尤も味方かと問われれば、それも何とも言えんがね。」
「じゃぁ、何なんだよ」

228 :量産型牛& ◆eVzLvfNS20BR :2012/08/10(金) 23:01:14.46 ID:???
12/16
「何と問われても困るな。まぁ、我々からすれば君等の方が何だと問いたいくらいだね」
「え?」
「君等はコーディネイターだが、そのコーディネイターは言う程万能ではない。
 私は君等の遺伝子を失礼だが調べさせてもらった。それによって分かった事は、
ミゲル、君に限った事ではないが、君等の遺伝子は、成る程、確かに調整されたものだった」

 ドクターの話に思わず二人はあきれ顔になった。
 ラスティが如何にも面白く無さそうに言う。

「……ドクター。そりゃコーディネイターだもん。当たり前ですよ」
「そうかね?君等は自分がどのようにコーディネイトされたか知っているのかね?」
「うーん、僕等は基本的には容姿と能力を調整出来ると教わっています。
 僕自身は両親からどのように調整されたか分かりません。ただ、
第二世代コーディネイターは、基本的に親の能力が劣化しない程度に補正されると聞いています」
「ほぅ、では……自分の遺伝的操作の内容は知らないのだね」
「はい。……っていうか、ドクターは医者なのにそんな知識も無いの?」
「ん?いや、私は全てを理解している。少なくとも君等の医者よりはな。だが、そうだな。
君等の言う調整という物には初めて遭遇した。だからこそ私は君に質問したのだ」
「ふーん、変なの」
「……で、何が俺達のことなんだ?」

 ミゲルが二人のやりとりを聞いて問題を本題に持って行こうと話しかけた。
 ドクターはそれにニヤリと微笑んで話し始める。

「君等の能力、コーディネイト、それには不確定要素が伴う様だな。
 どうも着床前遺伝子操作によるコーディネイトは、
核分裂の過程での遺伝子変異を想定しておらず、
もしくは、想定していてもなお安定した調整が出来ない様だ。その為、
コーディネイターの能力はとても不安定で、場合によっては能力を損失している」
「あぁ?」
「君等に分かり易く言えば、得る代わりに何かを失っているとでも言えば良いのかね。
 運動神経を強くすれば寿命が短くなり、寿命を長くすれば運動能力を損失する。
 病気に強くすれば病気に弱くなるし、美貌を得れば崩れるのも早いのだ」

229 :量産型牛& ◆eVzLvfNS20BR :2012/08/10(金) 23:04:30.19 ID:???
13/16
 ドクターの話はにわかには信じられなかった。
 実際にナチュラルより高度な運動能力と学習能力、そして綺麗な容姿を獲得している。
それらには何らの問題も無い筈だ。

「な!?どういうことだよ」
「簡単な事だ。激しい運動をすれば、
体は多くの酸素を取り込むため酸化し老化が促進される。
その老化を止める為に抗酸化作用を高めれば酸素供給量が抑圧される。
 運動選手は酸素供給量が高くなければ体に高負荷を掛け続けられない。
それを無理矢理抗酸化させるんだ、細胞に対する負荷は想像を絶するね。
 これと同じ様に様々な仕組みには相関関係が生じ、
それら2つを同時相殺して最適化するなど不可能な話なのだよ」
「……つまり、どういうことなんだ」
「……はぁ。不可能を可能にする。言葉だけを聞けば聞こえは良いが、
実際は多大な無理をしているという事だ。
無理を続ければ何が起こるかは分かるだろう。
……まぁ、無理をしなければ君等の理想通りだがね。
 皆が無理をしなければ問題は顕在化しない。だが、
無理を続ければ確実に理想は夢と消える。いや、
それだけで済むのなら可愛らしい物かもしれない」
「……俺達の体には一体何が起こっているんだ?」
「それを私に聞くのかね。……まぁ、実際、君等は犠牲者かもしれない。
いや、そうなんだろう。何かを得る為に何かを失う……か。
その為に君等は未来を失っている様なものだ。
 君等の遺伝子操作には、ある共通した特性がある事を特定している。
これは数百サンプルを調べたからほぼ間違いは無い。これが誰の意図による物で、
何故いまだ続いているのかは分からないが、
意図してしなければ起こり得ないことだ」
「なんだよ、もったいぶるなよ」

 ミゲルはドクターの長い前置きにイライラが募り始めていた。
 ドクターからすれば、これからが一番の見せ所と言った所だが。

230 :量産型牛& ◆eVzLvfNS20BR :2012/08/10(金) 23:08:36.67 ID:???
14/16
「フフフ、核心部分はワクワクする物じゃないかね?
私はこの手の溜めが大好きでねぇ。あ、君等に言い忘れていたが、
私は君達の遺伝子を少々弄らせてもらった」
「はぁ!?」

 唐突な爆弾投下にミゲルは困惑した。そしてそれ以上にラスティが反応する。
 彼は後部座席から身を乗り出してドクターに問い掛けた。

「ちょっと待って下さい。成長後の遺伝子操作が可能なのですか!?」

 彼らの常識では、遺伝子操作は出生前以外は行えないと考えられて来たからだ。
 もしそれが可能であれば、コーディネイトミスによる不幸な社会問題等発生する筈は無い。

「私には可能だ。まぁ尤も、君等の手でも可能な筈だがね」

 ドクターは何ら躊躇いも無くサッパリと彼に告げた。
 あまりに簡単に言い切られてしまったが、これは大変なことだ。
 その話が本当であるとすれば、自分達が信じて来た事に重大な問題が生じる。

「あの……それって、もしかして……隠蔽……されてる?」
「考えても見たまえ、遺伝子を操作する技術があるんだ。何故出来ないと考える?」

 確かにドクターの言う通り、遺伝子配列を弄る技術があることは言えるが、
実際にこれまで事後にも行えるという話は聞いた事が無い。しかし、
もしそうであるなら、自分達は何の為に騙されなくてはならないのだろうか。

「さて、話を戻すが、君達のコーディネイトを私なりにアレンジさせてもらった。
いわば、私が再調整したコーディネイターが君達だ」

 ドクターは誇らしげに語るが、それを聞いている方はただどん引きする他にない。
 ミゲルはドクターの爆弾発言に、怒りを通り越して呆れを感じていた。

231 :量産型牛& ◆eVzLvfNS20BR :2012/08/10(金) 23:14:48.44 ID:???
15/16
「はぁ……。で、何をしたんだよ」
「なーに、幾つかの問題となる負荷を取り除いただけだ。
 無理のある調整を切って、バランスの良い範囲に戻し、
君等の生殖能力上の問題も改善しておいた。
 どうも、君等は生殖異常の染色体を持つ様に書き換えられている。
これはコーディネイター共通の問題のようでね。
故に自然交配では産まれずに人工交配で産むのだろう」
「え、ちょっと待て、んじゃ、俺達は元々子づくり出来ないように作られて来たってことか?」

 ミゲルの額から汗がこぼれる。先程まで乾燥し切っていたのが嘘の様に、
体中から嫌な汗が噴き出すのが感じられる。それはラスティもまた同じだった。

「……そのように考えて良いだろう。自然に生まれないから人工交配を頼む。
人工交配の際に再び異常を埋め込む。そうと知らぬ親はそのまま出産し、
次の世代は子供が産まれずに困る。そして、また人工交配を頼む……連鎖だ。
 まぁ考えても見たまえ、いくら致死遺伝が存在すると言っても、
サラブレッドの様な近親交配種ですら、遺伝子バラエティは交配時の混合具合で
新しく増えて行くものなのだよ。
 仮に絶対致死遺伝というものが有るとすれば、それは最早種の壁だ。」
「おい、でもそれじゃ自然交配するコーディネイターも少ないが居るんだぞ?
 そいつらはどう説明するんだよ。」

 ミゲルの話は当然出てくる疑問だ。
 コーディネイターは出生率は低いが自然交配も可能だ。
これまで産まれて来た第二世代の中には、少ないながらも確実に存在しているのだ。
 ドクターの説明では彼らが存在することは矛盾している。しかし、
その疑問への答えも彼は何ら顔色を変える事無く淡々と述べた。

232 :通常の名無しさんの3倍:2012/08/10(金) 23:15:04.97 ID:???
支援

233 :量産型牛& ◆eVzLvfNS20BR :2012/08/10(金) 23:17:35.14 ID:???
16/16
「ふむ、それは簡単なことだ。先程も言った通り『完全な調整』ではないため、
たまには自然交配もできる個体は表れる。だが、そうした第二世代を君等の社会はどう扱っている?
プラント内部での自然交配の第二世代は、いわばナチュラルと同じではないのかね。」
「……」

 ミゲルは何も言えなかった。実際その通りだったのだ。
 純粋なコーディネイターの両親から産まれたと言っても、
コーディネイトされない子供はナチュラルと変わらない結果になる。
それが行き着く先はハーフコーディネイターと変わらない境遇だ。

「そうした人々を君等は迫害し遠ざけ、
帰属意識を持つ第二世代は結局居場所を求めることになる。
そして行き着く先は連鎖への道だ。……コーディネイターで居続ける限りはね」

 二人はドクターの話に愕然とする他無かった。
 体全体から異様なほど力が抜けて行くのを感じる。
 
「……なんだよ。それ」
「……僕等が、野菜と一緒だなんて」

 自分達が信じて来た物が、音を立てて崩壊しようとしていた。

というわけで、投下終了致しました。
どうも有り難うございました。お楽しみ頂けましたら幸いです。
(誤字脱字無いと良いなぁ…)……次回は火曜日の夜の予定です。

234 :通常の名無しさんの3倍:2012/08/10(金) 23:35:26.73 ID:???
GJ!
さすがにNJC搭載機は強かったか…だがハルバートン提督の死は避けられなかったが残ったものも大きいな。
打倒にセブンがさらに奮起する予感wヴォイジャー側はスキャンしたならNJCの構造をすでに把握できたか?
そうえいばスタトレ側には核融合を止める物質はあったな、確かトライリチウム。
そしてドクターによって明かされた驚愕の事実!実際にCE技術で後から遺伝子操作できるかどうかが重要になってきそうだな

235 :通常の名無しさんの3倍:2012/08/11(土) 00:57:01.75 ID:???
乙です!
ニコルがwwwイイハナシダッタノニナー

遺伝子の話はなるほどと。
確かにコーディネイトする事に意味を見出しているなら自然に産まれない事に気付かないだろうな。

それにしてもホロデッキでも安全運転のドクターwww
確かにドクターらしいけどwww

236 :通常の名無しさんの3倍:2012/08/11(土) 10:11:38.23 ID:???
ロミュラン帝国と結んだアルジェオン条約で禁止されたのは、惑星連邦による遮蔽技術の開発と軍事利用の禁止でしたっけ。
守られているようで微妙に守られないことのある条約だけれど、確かにミラージュコロイドは惑星連邦が開発してないし、監視任務の為の使用であれば軍事利用じゃないとも言えなくはないか。

しかしハルバートン提督…彼には生存ルートは存在しないのか、なんでいつも助けられずに死んでしまうんだろう><

237 :通常の名無しさんの3倍:2012/08/11(土) 17:01:43.65 ID:???
おつおっつ
お春さん生きるか死ぬかは作中で使い道があるかどうかじゃまいか、とメタってみるテスト
しかしコーディネイトの問題に関する説明はわかりやすいな

238 :量産型牛& ◆eVzLvfNS20BR :2012/08/11(土) 19:03:27.27 ID:???
皆様労いの乙有り難うございます。
wikiの方を読んでいたのですが、17話のキラとイチェブの訓練シーン冒頭文で

「キラ」←これが無い

 シミュレーターの置かれた訓練ルームに入って行く彼を見て、イチェブが彼の名前を呼んだ。
 彼は呼ばれた方を振り向いて立ち止まる。

…纏めて頂けるのは有り難いのですが、訂正して下さると嬉しいなぁ。(キラキラ
ハルバートンについては生還路線も考えましたが、
悪魔艦長の仕事を奪っては問題あると思いましてボッシュートになりました。
まぁ、「僕はお春さんと添い遂げる!!!」という希望者が多い場合は考慮してみます。

239 :通常の名無しさんの3倍:2012/08/11(土) 22:17:25.16 ID:???
wikiなんだから自分で直せよ

240 :量産型牛& ◆eVzLvfNS20BR :2012/08/11(土) 22:20:57.69 ID:???
>239
 ん、直せるんですか?弄った事無いもので。直せるなら直すのですが。
 あと、ttp://com.nicovideo.jp/community/co1722789で放送始めてみました。

241 :量産型牛& ◆eVzLvfNS20BR :2012/08/11(土) 22:53:41.77 ID:???
wikiの編集して下さいました方、早速有り難うございます。お手数お掛けしました。

242 :通常の名無しさんの3倍:2012/08/11(土) 23:11:13.17 ID:???
コーディネイターは自分らを優秀優秀進化進化言っておきながら、自分らの現状把握もろくに出来ていないとは……
スタートレックは主人公組だと時間改変オチや夢オチが適用されるが、それ以外は死亡リスクが高すぎるからお春さんの死は仕方ないw

243 :通常の名無しさんの3倍:2012/08/12(日) 01:26:22.49 ID:???
ついに種世界の技術を導入か、VOY技術でえらい高度な装備になりそうだな。

244 :通常の名無しさんの3倍:2012/08/13(月) 08:08:47.77 ID:???
ヴォイジャー帰還後の最新鋭艦にはプラズマ魚雷対策にラミネート装甲が採用されたりするわけか
流石にミラージュコロイドをおおっぴらに採用するのは無理そうだけど

245 :通常の名無しさんの3倍:2012/08/13(月) 20:18:49.20 ID:???
ミラコロ搭載ヴォイジャーとか胸熱い。
これで目視対策も完璧だな。

246 :量産型牛& ◆eVzLvfNS20BR :2012/08/14(火) 21:23:47.10 ID:???
本日は11時頃に投下開始予定です。

247 :通常の名無しさんの3倍:2012/08/14(火) 21:57:49.86 ID:???
乙です!わくわく

248 :通常の名無しさんの3倍:2012/08/14(火) 22:58:27.56 ID:4MsHK0LJ
・・・配置よし・・・戦闘用意よし・・・

249 :量産型牛& ◆eVzLvfNS20BR :2012/08/14(火) 23:08:47.10 ID:???
投下開始させて頂きます。
1/12
第22話「テレパシー」

 アークエンジェル内部では、地球対流圏に降下が成功した段階で上部に着艦した二機を回収した。
 大気圏突入モード対応機とはいえその発熱は相当のもので、
自力で出て来たイチェブも満足に歩けず倒れ、
キラもコックピット内部で気絶したままの状態で発見され緊急搬送された。

 降下地点は当初予定のアラスカからは大幅に外れ、灼熱の砂漠が覆うアフリカに行き着いた。

 艦長日誌
 アフリカへ降り立った私達の前には様々な問題が山積みとなった。
 二人のMSパイロットが倒れ、着艦した領域はZAFTの勢力圏内のど真ん中だという。
 しかも、シャトルはトゥヴォックと共に宇宙にいる状況だ。
 アークエンジェルはシャトルのコンピューターの補助によってセンサー性能を強化できていたが、
現状では新しく整備したコミュニケータネットワークを維持する補助プロセッサユニットにより、
辛うじて様々なシステムを利用出来ているに過ぎず、センサー類は元の性能に戻ってしまった。
 幸いな事に、着艦して数日は平穏に過ぎた。このまま何事も無ければ良いが。

 いつもの様に私は作戦室で上級士官との定例の会議を開いていた。
 この場には私の他にラミアス中佐、フラガ少佐、バジルール大尉、そしてセブンが同席していた。
 彼らはこの数日不眠不休といっても良い程大忙しで様々なことに対応していた。
 人員も物資も足りているのは幸いしたが、武器は大問題だった。

「……ストライク及びデュエルの砂漠対応については調整が済んだそうね」

 私の問いにセブンが普段通りに答える。
 この状況下では、彼女のこの変わらなさ具合が救いに感じられる。

「あぁ。システムの調整はした。
 だが、パイロットが二人とも眠ったままでは動かし様が無い。
 デュエルは他の者を乗せることもできるが、ストライクはヤマト少尉と密接に同期している。
 彼が起きない限りは難しい」
「……OSの書き換えで対応する事は出来ないの?」
「それは勧められない。あのシステムは私が作るものより優れた性能を持っている。
 消すには惜しい。あれと同じものを個人に合わせて作り上げるよりは、
本人に使わせるのが最も効率的だ」

250 :通常の名無しさんの3倍:2012/08/14(火) 23:09:55.42 ID:???
よっしゃ15話以降がwikiに纏められて
やっと読むのが追いついた。

251 :量産型牛& ◆eVzLvfNS20BR :2012/08/14(火) 23:10:10.06 ID:???
2/12
 私は思わず溜息を吐いた。
 彼女の意見は確かにその通りだとしても、この状況で効率を優先するのは気が引けた。
 とはいえ、キラ少年は目立った負傷があって眠っているのではない。
 そのうち回復して起きてくる事を考えれば、可能な限り急ぐ必要は無いとも言える。

「フラガ少佐、貴方の方ではどう?スカイグラスパー……行けるかしら?」
「俺は行けるっちゃ行けますがね、ひよっこの方は……ちょっとねぇ」
「……カズイ・バスカークのことね。
 確かどちらかと言えばMAの適性に優れているという結果だったかしら」
「はい。でも、結論から言えばダメですね。訓練が浅過ぎてまだ飛べる段階に無い」
「……そう」

 上に挙がった彼にはスカイグラスパーに交代で乗ってもらう予定でいるが、
さすがにそう簡単にことは運ばない様だ。
 話題を変えてセブンに新型の方を聞いた。

「で、あれは出来ているのかしら?」
「新型か?……率直に言えば不満はある。だが、動かせる段階にある。
 素体を構造レベルで補強しているから、ストライクと同等程度の性能はあるだろう。
 装備も共通のものが使える。」
「それじゃ、何が不満なの?」
「……ZAFTの新型を見ただろう。あの程度のものに負けるのは、……納得が行かない」
「……セブン」

 彼女の立場に立てば無理も無い。
 彼女からすれば「かなり制限をして」作った産物だ。
 それがつい先日の機体によって一変した。
 彼女の気持ちからすれば、不満を感じても仕方が無かった。

252 :通常の名無しさんの3倍:2012/08/14(火) 23:11:03.82 ID:???
同化支援

253 :量産型牛& ◆eVzLvfNS20BR :2012/08/14(火) 23:13:58.70 ID:???
3/12
「艦長からは何か?」

 ラミアスはここ最近の近隣の情報の収集結果と、
自分の判断内容を記したデータの入ったパッドを私に渡した。
 私はそれに目を通し、彼女の判断を思案し質問した。

「この、明けの砂漠という組織は、ZAFTと反目しているようね。
 でも、規模からすると随分小さいわ。使えるかしら?」
「現状を考えれば使えるものは使うという判断の他に無いと考えます」
「でも、タダでは向こうも動かないでしょうね」
「それは、彼らの要求を実際に聞いてみなければ分かりませんが、交渉の余地はあるかと」
「バジルール大尉はどう考えるかしら?」
「私は、正直な感想で言えば、そのような組織との協力は無益と考えます。
 我々が得る利益より、彼らが我々を知る事で得る利益の方が大きく、
我々を売る事で得る利益も考慮に入れると……距離を置くべきかと」

 二人の意見は真っ向から反目するものだが、どちらも一理あるといえる。
 我々は孤立無援で、協力を得られるのであれば支援を受けられる体制が有る方が良い。
 しかし、そのことで彼らが情報の価値の誘惑に捕われ、
我々を政治的に売る判断を下すリスクもまた存在する。
 だが、私の答えは明確だ。

「中佐の考え、使ってみましょう。
 大尉の危惧を考慮に入れても、小さいなら私達が潰せるとも言えるわ。
 勿論、ZAFTが手を焼いているというのを留意してもね。これは十分な脅し材料に使える。
 相手も二正面衝突は望まないと考えれば、私達が交渉する価値はあるわ」
「大佐……」

 二人はあまりの話に呆気に取られていた。
 時々見せるジェインウェイの冷酷な一言は、味方ながら恐ろしいものを感じた。

 ZAFT軍ジブラルタル基地。
 地上に辛くも降下したZAFTの赤服を着た3名…イザーク、ディアッカ、ニコルは、
ブリーフィングルームのテレビ電話で会話していた。彼らの相手はラウ・ル・クルーゼだ。
 彼の隣にはアスランの姿も見える。

「いやはや、三名共無事にジブラルタルに入ったと聞き、安堵している。
 先の戦闘では御苦労だったな」

254 :通常の名無しさんの3倍:2012/08/14(火) 23:14:44.53 ID:???
支援

255 :通常の名無しさんの3倍:2012/08/14(火) 23:15:59.43 ID:4MsHK0LJ
支援砲撃斉射3連!

256 :量産型牛& ◆eVzLvfNS20BR :2012/08/14(火) 23:16:36.70 ID:???
4/12
 クルーゼの口調は普段通りの落ち着いた余裕のある声だ。
 彼の表情は仮面を付けている事からあまり伺えないが、
余裕のある……どちらかといえば陽気な時は口元に笑みを浮かべる。
 この時の彼の口もどうやら陽気なようだ。

「……死にそうになりましたけどね」

 苦笑混じりにディアッカが言い、両サイドに立つ二人を見回すと、
イザークもニコルも同様の表情を浮かべていた。
 そんな彼らの反応にクルーゼの口元がにんまりと上がっていく。

「残念ながら、足つき艦隊を仕留めることはできなかったが、
君等が不本意とはいえ地上に降りたのは幸いかもしれん。
 足つきは今後地球駐留部隊の標的となるだろうが、君達も暫くの間、
ジブラルタルに留まり共に奴等を追ってくれ。
 ……無論、機会があれば討ってくれてかまわんよ。なぁ、ザラ隊長」

 画面の横にいるアスランの表情に笑顔は無い。彼は淡々と告げる。

「君達の健闘を祈る」

 アスランはそう言い残し会議を終了した。

「はは、宇宙には戻ってくるなってことぉ?……俺達に駐留軍と一緒に、
足つき探して地べたを這いずり回れって言うのかよ。あん?って、おい…イザーク!」

 ディアッカの問いかけに、唐突に彼は目元を覆う包帯をほどき始めた。
 ニコルもどう反応して良いか困惑していると、程なく包帯は解かれ、
その顔に斜めに走る傷跡以外は綺麗に治っているイザークの顔が現れた。

「機会があれば、だと。
 ……討ってやるさ!次こそ必ず!……この俺がなっ!!」

 彼の表情からは固い決意が見て取れた。
 だが、そこに横からディアッカが申し訳無さそうに告げる。

257 :量産型牛& ◆eVzLvfNS20BR :2012/08/14(火) 23:20:34.99 ID:???
5/12
「……気合い入っているとこ悪いがな。お前の機体…ダメだってよ」
「えぇえええ!?!どぅじてぇえええ!!!」

 イザークの大仰な落胆振りに驚くディアッカだが、彼も最近はこの反応に慣れてきた。
 とはいえ、下手な発言をしたあとの反応が予想外過ぎて迂闊なことは言えないが。

「……あ、いやぁ、その、な?……お前、気を失ってたから知らないだろうが、
正直お前が無事なのがおかしいくらいに損傷がやばくてさ。機体の修復は不能だそうだ。
 あ、だけど心配するなよ!新しいのは司令部がよこすって回答来てるからさ。
 それまでお前の機体……無し……だけど気にすんな!お前が生きていただけでも良かったよ!」
「マァジィでぇえええええ!!!」

 イザークが盛大に叫ぶ。その様はムンクの叫びを思わせるほどの哀愁を漂わせながら。
 何となくこうなることは分かっていたディアッカだが、それでも何故か激しく納得が行かなく、
ディアッカは頭を掻きながらニコルの方へ視線を移す。だが、
そのニコルは早々に逃げる姿勢を鮮明にして視線を合わせない。
 彼は目前で大粒の涙をこぼして嘆く友を、為す術無く見守る他無かった。

 その頃、会議通話を終えたヴェサリウスでは、
アスランの自室でありクルーゼの元執務室の応接椅子に対面で座っていた。

「先の戦いは本当に助かりました。クルーゼ隊長」
「……フフ、今は君の隊長ではないよ。でも、嬉しいな。そう言って貰えるのは。
 何、礼は要らないさ。我々は同志だ。志を共にする者が助け合うのに理由は要るかな」
「司令部との連絡で初めて知りました。あなたが援軍として来るとは聞いていなかったので。
 いえ、そんなことは良い。アレは何です?
 ……技術資料を請求しても機密の一点張りで教えてもらえませんでした」
「……まぁ、そこに目が向くのは仕方の無い話だな。アレは…そうだな、司令部が隠すのも無理は無い。
 だが、君の父上は連合のXナンバーの危険性を強く感じておられた。それ故の決断の産物だろう。
 お父上を察して欲しい。軍とはそういう場所だ」
「……わかりました。そういうことでしたら、これ以上はその件には触れません。
 今後はどうされるおつもりです」
「命令に従うまでさ。ここの指揮は君が採るのだろう。
 ならば、君か……もしくは司令部が決めるだろう。違うかな?」

 クルーゼは応接椅子の背もたれにゆったりと背を付けて座っていた。
 この場を端から見たなら、立場上はアスランが上とは誰も思わないだろう。

 アークエンジェルのハンガーでは、
セブンのもとにフレイ・アルスターとトール・ケーニヒが招集されていた。
 彼らの目前には「新型」が佇んでいた。
 新しく整形し直された機体は、正式名をジン改めジーニーとされ、
ジン特有の尖ったデザインは廃されて、丸みを帯びたフォルムを採用していた。

258 :量産型牛& ◆eVzLvfNS20BR :2012/08/14(火) 23:23:39.58 ID:???
6/12
「Xナンバー風のモデルナンバーを付けるならば、ジンは元だからX-100だろうな。
 ジーニーの適性はお前達二人の他にフラガ少佐が適応すると出ている。
 お前達二人には、今後交代でこの機体を動かしてもらう事になるだろう」
「私……達の機体……ですか?専用じゃないんですね」

 フレイの言葉にセブンは片眉を上げて反応する。

「そうだな。『今の所』はな。予定は決まっていないが新しい機体は作るつもりだ。
 それまではこれで慣れる事だ。お前達の能力が上がらなければ、作った所で戦力にはならないからな」
「……はは、ま、そうっすよねぇ。でも、なんで俺も適性があるんですか?
 能力なら少佐やノイマンさんの方が上じゃ?」
「良い質問だ。お前とフレイ・アルスター、そしてフラガ少佐には拡張空間認識能力がある様だ」
「拡張空間認識能力?」
「簡単に言えば、そうだな……お前達の概念ではテレパシーの様なものだと考えれば良い。
 本来地球人にはそのような能力は自然発生しない。
 だが、宇宙空間に進出することで脳内活動が活発化し、
新しい回路が生じる事でテレパシー能力を獲得する個体が現れることもある。
 テレパシー自体は特別な能力ではない。脳量子を特別に感じ取れる個体が自然にも存在する。
 例えば双子の様な生体組織が同一の個体等だ。量子は物体を透過して亜光速で到達する為、
 遠く離れていても共感するテレパシー現象が発生するのだ」

 セブンの丁寧な解説だが、当の二人は混乱している模様だ。
 彼女はそんな二人の反応に溜息を吐きつつ、微笑んで続けた。

「ジーニーにはフラガAIを進化させたものを搭載している。
 お前達の脳波を感じ取って行動する神経リンクインターフェースにより、考えるだけで動く事が出来る。
 幾つかの挙動はモーションキャプチャーもするので、例えば手の指を動かすといった細かい動作は、
自分の手を実際に動かせば良い」
「す、すげー。どうやってそんなシステム作るんですか!?」

 トール・ケーニヒは機械技術を学ぶ身としても興味津々の様子だ。

「話せば長くなる。それはお前達の仕事が無くなった時にしよう。
 ……早く、平和な場所へ向かいたいものだな」

 セブンはそう言い、二人を順番に一人ずつ指導していった。

 ヴォイジャーでは急ピッチで新しい装備の設置に取り組んでいた。
 地球連合軍が開発した技術を元にヴォイジャーで完成されたそれは、
ヴォイジャーが地球軌道圏内に入る為に必須の技術と言える。

259 :通常の名無しさんの3倍:2012/08/14(火) 23:24:38.00 ID:???
支援

260 :通常の名無しさんの3倍:2012/08/14(火) 23:25:21.24 ID:4MsHK0LJ
反攻支援、撃ぇーーーーっ!

261 :量産型牛& ◆eVzLvfNS20BR :2012/08/14(火) 23:28:32.91 ID:???
7/12
「ブリッジから機関室。ベラナ、準備は良いか?」

 艦橋の艦長席よりトムが問い掛ける。
 機関室の方の彼女はワーププラズマ前のコンソールで待機していた。

「いいわ。始めて」
『わかった、始めるぞ!』

 トムの号令で艦内が非常照明に切り替わる。

「ドレス、起動!」

 彼の命令でドレスが起動された。すると、機体表面を薄く液体が覆い尽くす。
 全てが覆い尽くされた瞬間、それは宇宙空間に溶け込み、ヴォイジャーは闇の中に消えた。
 その様子を外部のプローブからの情報で確認する。

「よし、成功したぞ!」
『いや、だめよ……このままでは使えないわ』

 機関室でも確認していたベラナだが、確かに成功したのは間違いない。
 しかし、彼女はこの技術の欠陥に気付いてしまったのだ。
 その頃医療室のZAFTの少年達はドクターの先日の話に元気をなくしていた。

「ミゲル、ラスティ、君達の今後についてだが、喜びたまえ。
 いつかは君達の国に返してやれることになるそうだ。良かったなぁ、二人とも」

 にこやかに語りかけるドクターだが、当の二人はそんな気分ではなかった。
 先日自分達の国がしている驚愕の事実を聞かされて、そこに帰れると言われても、
内心素直に喜べる様な話でも無かった。

262 :通常の名無しさんの3倍:2012/08/14(火) 23:31:35.34 ID:???
支援

263 :量産型牛& ◆eVzLvfNS20BR :2012/08/14(火) 23:32:45.70 ID:???
8/12…放送で朗読しながら投下していると、さすがに口が回らなくなってきました。
「……ドクター、たぶん僕らはもう亡くなったことになっているよ」

 ラスティが暗い表情で返答する。
 ミゲルもちらっとドクターの方を見るだけだ。
 彼らはベッドの上に座りながらパッドで本国のアニメーション等を見ていたのだが、
それも半ば惰性行動に過ぎない。ここでは何もやる事がないのだ。

「そこを帰ってくるんだ。ご両親もさぞ喜ぶ事だろう」
「……そうかもしれないね」

 必死に笑顔で語りかけるドクターだが、彼らには全く効果が無い様だ。
 彼らのこの落ち込み具合を見て、さすがに情報を告げるのが早過ぎたかと感じていたが、
過ぎてしまった事は変え様が無い。この状況を打開する方法は無いか。
 このような状況の彼らを変える良い方法は……?

「……そうだ、君達、何か好きな事はあるかね」

 ドクターの言葉に二人は目をパチクリとしている。

「うーん、もっと体を動かしたいかなぁ。ここだとさぁ…」

 ミゲルが医療室の彼らの居る区画を遮断するフォースフィールドに触れ、
フィールドが発光して反発する。

「ってな具合だろ?……ここを出る事は出来ないのか?」
「君達の安全の為にこのフィールドは張られている。
 予め言っておくが、君達が何かアクションを取ろうと考えているなら止めた方が良い。
 ここに居るのは君等よりずっと強い人達だ。いくらコーディネイトされた君達でも、
彼らは天然で君等の能力より進化している。無駄な努力になるだろう」
「……へぇ、ナチュラルなのに強いってのか」
「ナチュラル?……あぁ、確かにそう言われれば、その通りだな。
 フフ、彼らをナチュラルというなら、確かに相当進化したナチュラルだ」

264 :通常の名無しさんの3倍:2012/08/14(火) 23:34:43.20 ID:???
支援

265 :量産型牛& ◆eVzLvfNS20BR :2012/08/14(火) 23:34:46.66 ID:???
9/12
 ミゲルはドクターの言葉に興味がくすぐられたが、実際これほどの技術を持つのであれば、
ドクターが遺伝子の再配列を施術出来ることも含めてお手上げだろう。それでも、
それがどのようなものなのかというのは興味深い。
 ラスティは彼の思惑とは別に自分のやりたい事を考えていた。
 考えてみれば、彼は最初のミッションで失敗して死んだ筈の身で、
必死に訓練して身につけたMS操縦の技術を一度も使う事無く終わってしまったのだ。
 一度死んでしまっているのに戦いたいと思うのもおかしいが、今は連合とかZAFTに関係無く純粋にMSの操縦を楽しんでみたいというのが頭にあった。

「ねぇ、ドクター、何でも好きな事ができるの?」
「ん、まぁ、可能な範囲であればだが」
「じゃぁさぁ、モビルスーツを操縦する……なんて事は出来る?」

 彼の言葉にドクターはしばし沈黙した。
 彼の要求に応える事は出来るだろうが、それが果たして良い事なのだろうか。
 ゲームセラピーとでも言うべきか。そうした前例がないわけでもない。
 プログラムについてはトム・パリスに頼めば考えてくれるだろう。

「……可能だろう。数日時間は貰うことになるだろうが、良いかね?」
「うん!操縦出来るなら待つ!……希望とかは聞いてもらえるのかなぁ?」
「それは構わないだろう。パッドの方に纏めておいてくれたまえ」
「分かった!有り難う、ドクター!」

 彼は患者を治療するのが仕事だが、患者が常に笑顔を返してくれるとは限らない。
 笑顔で礼をするラスティの明るい表情に、ドクターは彼を治療できて良かったと感じていた。
 この笑顔をこれからの人生の中でも維持して行ってくれれば、医者として幸せな事は無い。

 そう感じ入っている傍らでミゲルは、ラスティの提案内容にも興味が湧いていた。

266 :量産型牛& ◆eVzLvfNS20BR :2012/08/14(火) 23:35:51.28 ID:???
10/12
「なぁ、それ、俺も仲間に入れてもらってオッケー?」
「うん、ラスティも一緒だよ!」
「二人とも仲が良いな。希望は随時受け付ける。パッドに日誌と一緒に提出してくれ」

 二人は頷いて同意した。
 彼らの要求を聞き入れる事にしたドクターは、早速パリスのもとへ申請を入れるための作業に入った。

 アークエンジェルのハンガーでは大忙しで作業していた。
 新しく入ったスカイグラスパーの一つをバラす作業をしていたのだ。
 丁度視察に来たジェインウェイがセブンのもとへやって来た。

「あら、何やっているのかしら」
「あぁ、社長。見ての通り、分解している。幸い2機あるからな」
「えぇ、それはわかるけど、一体何をしようというの?」
「機体構造性能の評価と改造余地を見ている。このままの機体を飛ばしても限界がある。
 我々は数で劣るからな。だから出来る限り質で上を行かなくてはならない。
 だが、社長も知っての通り、我々には縛りが有る。その為にどこまで出来るか評価する必要が有る」

 セブンの技術者魂には驚かされた。
 彼女はこの極限とも言える状況でも飽くまでエンジニアとして最善を目指している。
 それも我々が課した条件の中でだ。神経インターフェースの件はヒヤリとさせられたが、
この戦闘機を改造する程度ならば問題は無いだろう。ただ、内容は知りたい。

「……あなたの努力にはいつも感心させられるわ、セブン。
 で、何が出来ると考えているのかしら」
「あぁ、それなら、これが私が評価した結果の報告書だ。ここにいるなら渡す手間が省ける」

 彼女は私にパッドを渡した。
 私はその報告の内容に目を通す。

267 :通常の名無しさんの3倍:2012/08/14(火) 23:35:59.59 ID:???
支援

268 :通常の名無しさんの3倍:2012/08/14(火) 23:47:43.77 ID:4MsHK0LJ
支援砲撃第XX射!どんまいです

269 :量産型牛& ◆eVzLvfNS20BR :2012/08/15(水) 00:03:39.43 ID:???
11/12
 そこには空間戦闘モビルアーマー改良予定書とあり、装甲、バッテリー、武装の3つが挙がっている。
 装甲は開発中の試作カーボン素材の完成版である、
表面結晶硬化機能性炭素素材『Carbond(カーボンド)』装甲を採用。耐熱、対光、
対ビーム性能を大幅に上昇させながら軽いという特性を持つ。簡単に言えば表面をダイヤモンド化することで、
耐久性能を上げながらコストを大幅に下げるという離れ業をやってのけたのだ。
 単純性能はラミネート装甲程度の強度だが、弱いビームやレーザーならば反射もするので、
今後の主流に採用されれば大幅なコスト削減に繋がるだろう。しかも、
この装甲はナノチューブ蓄電池としての機能性を持ち、バッテリー容量が大幅に増える結果にもなる。
 武装は空間ミサイルを4発搭載するほか、新開発のパルスビーム砲を2門搭載するという。
 パルスビームを採用するのは省電力化の他、モジュールの寿命自体を伸ばすためだという。

「……セブン」
「なんだ」
「これ、いつ頃できるのかしら」
「装甲は……設備が足りないのでもう暫く掛かる。その他は個々のコアモジュールは完成しているので、
規格に合わせて組み立てれば使えなくもない。だが、もう暫くかかるだろうな」
「……そう。まったく、あなたの才能には驚かされるわ。このカーボンドなんて、
ヴォイジャーでも使えるんじゃないかしら?」
「それはどうだろう。この技術はボーグが過去に同化したものだ」
「……なるほど」

 彼女の知識の中にはボーグが同化した人々の知識もある。
 この時代の技術レベルに合わせているという彼女の言葉をその通りに受け取れば、
それは確かに我々が遥か昔に通過して行く上で捨てた選択肢なのだろう。

 艦橋ではバジルールがラミアスの休憩時の交代として艦長席に座っていた。
 操縦席にはノイマンが座り、副操縦席には誰もいない。CICにはサイが一人で担当している。
 OSがアップグレードされて以来、CICの必要人数は大幅に減り、最悪1人でもデータを参照できる。
 そのお陰でシフトが格段に緩やかになった。現在の艦橋にはこの3人のみだ。

「ノイマン、お前は休まないのか」

 その声は唐突に彼の後ろから聴こえて来た。
 彼が振り向くと、そこには艦長席に居た筈の人物が前に立っていた。

270 :通常の名無しさんの3倍:2012/08/15(水) 00:04:10.39 ID:LCLOUltD
支援

271 :量産型牛& ◆eVzLvfNS20BR :2012/08/15(水) 00:11:40.92 ID:???
12/12
「大尉、私はここが落ち着くから良いんですよ」
「そうか?」
「えぇ。思えばヘリオポリス以来、ずっとこのシートに座ってきました。
 時間にすればそう長くない筈なのに、ここに居る事が半ば当然の様にしっくりきて」
「……フフ、そういう君が新型のパイロットに応募していたのは、何故かな?」
「そ、それは!?……正直、私も乗りたかったんですよ。モビルスーツ。
 パイロット選定にも挑戦した事がありました。でも、不合格で」
「ならば、この席は不本意なものなのか」
「だったら、ここに座っていませんよ。ここが好きだから座っている。
 結局、パイロットとしてここに立っている自分が好きなのかもしれません」

 ノイマンは笑顔で話していた。それは心からのものなのだろう。
 殺伐とした戦場の中において、普段は緊張の連続で無表情になりがちだが、
彼はそんな状況でも笑顔を見せた。何と強い男だろうか。

「ノイマン少尉、今度暇が出来た時は、私と一緒に過ごす気は無いか?」

 彼女の意外な申し出に彼の方が驚いていた。普段は全くそんなそぶりも無かったはずだが。

「えぇ、喜んで」

 彼は笑顔で承諾した。
 彼女は自分のしたことに恥じらいつつも、彼の目を見て微笑んだ。

 アークエンジェル医療室では、二人のパイロットが眠っている。
 暗い室内はカーテンで仕切られており、二人のバイタルメーターが動いている以外は無音だ。

「うっ」

 イチェブは目を覚ました。
 腹の辺りにチクリとする痛みを感じて起こされたのだ。
 彼はゆっくり起き上がる。……降下は無事成功したが、コックピットを出た後の記憶は無い。
 たぶん、その後ここには運び込まれたのだろう。どれくらいの時間が経過したのだろうか。
 彼はシャツをめくって先程痛みを感じたところに触れた。
 触れてみるとなんとなく固いものがある。
 彼にはそれが何で有るかはすぐに分かった。そして、その原因も。

投下完了です。支援有り難うございました。無事になんとか終えられました。
次の投下は金曜日の夜になります。放送にも来て下さいました方、有り難うございました。
あと、幾つか訂正が有ります。
9/12の 今は連合とかZAFTに関係無く→現在は連合とかZAFTに関係無く
10/12 「うん、ラスティも一緒だよ!」→「うん、ミゲルも一緒だよ!」
10/12 神経インターフェースの件は→神経リンクインターフェースの件は
本当に申し訳有りません。

272 :通常の名無しさんの3倍:2012/08/15(水) 00:15:25.86 ID:LCLOUltD
お疲れ様でした。
放送も併せて楽しませて頂きました。
果たしてジェンウェイと明けの砂漠、砂漠の虎との邂逅は・・・
そしてイチェブに何が!?

次回も楽しみにしています。おやすみなさい。

273 :通常の名無しさんの3倍:2012/08/15(水) 00:25:59.86 ID:???
ボーグインプラントの残骸でも残ってたかな?

274 :通常の名無しさんの3倍:2012/08/15(水) 00:39:16.41 ID:???
乙乙!
この程度の艦長発言でビビってちゃあデルタ宇宙域じゃ生き残れないぜ、お二人さんw
スタトレじゃテレパシー種族色々いるからやっぱ詳しい。
ベラナの気付いたミラコロの欠点が気なるな。CEのレーダーじゃヴォイジャーを感知不能なんだし少々は大丈夫な気はするが。
そしてセブンはなんてもん持ち込むんだwww

>ナチュラルなのに強い
いやまあ、ヴァルカン人もナチュラルといえばナチュラルだけどw
つか種世界でもバリーとかナチュラルだけどコーディネイターより遥かに強いんだよな。

275 :通常の名無しさんの3倍:2012/08/15(水) 21:35:48.78 ID:???
GJ!!
艦長の悪魔的交渉術が明けの砂漠に炸裂するwww
うーむ…スタートレック世界観だとNTにSEED、イノベイターすらも革新扱いはされないだろうな。
時間の流れから抜け出すなど存在を別次元に移せるようになったTNGのウェスリー・クラッシャーぐらいはないと。

276 :通常の名無しさんの3倍:2012/08/16(木) 22:16:48.85 ID:???
>例えば双子の様な生体組織が同一の個体等だ。量子は物体を透過して亜光速で到達する為、
>遠く離れていても共感するテレパシー現象が発生するのだ」

Xの変態兄弟が真っ先に思い浮かんだ。

277 :通常の名無しさんの3倍:2012/08/17(金) 01:02:11.30 ID:???
カテゴリーF…か

278 :量産型牛& ◆eVzLvfNS20BR :2012/08/17(金) 18:29:48.94 ID:???
主に体力と編集の都合で、早くて明日の朝方とかにズレそうです。すみません。
ご報告までに。あ、それと、wikiへ最新話の掲載有り難うございます。

279 :通常の名無しさんの3倍:2012/08/17(金) 22:25:05.00 ID:???
お疲れ様です。無理なさらず体調にはお気をつけ下さいね

280 :通常の名無しさんの3倍:2012/08/18(土) 19:27:10.58 ID:???
まずは体調第一です。

281 :量産型牛& ◆eVzLvfNS20BR :2012/08/18(土) 21:43:21.41 ID:???
1/15……本日も放送やりながらゆっくり投下開始します。
ttp://com.nicovideo.jp/community/co1722789
第23話「司令」

 保安主任日誌補足
 私は連合軍の応援艦隊と合流した。
 アーチャーは権限で立ち入りを禁じたが、この状況を続けるのは好ましくない。
 艦長は地球に降下されたが、無事との連絡は無い。

 宇宙では連合軍第八艦隊とプトレマイオス応援艦隊が合流していた。
 プトレマイオス基地応援部隊を指揮していたのは、
旗艦と言ってもドレイク級であるディファイアント艦長カルロ・ロッシ少佐だ。
 基地司令部は直前の組織改編でハルバートン准将を少将へ昇格することで宛てる昇進人事がされていた。
 彼の昇進理由はXシリーズ開発計画の推進者としての先見性を評価されてのものだが、
結果的には彼の死亡によりやり直しとなってしまう。(死亡により大将に昇進)
 司令部は彼の配下の幹部を充てる人事を考えるが、低軌道会戦でメネラオスと共に彼の参謀は全て死亡し、
 直属の部下となっている人物で佐官クラスのトップに立つのはシャノン・オドンネルのみとなっていた。
 しかし、彼女はアークエンジェルと共に降下し連絡が取れない。
 そこで、彼女の部下であり階級が中佐であるトヴォックに、
彼女の代理として基地指令官として指揮する辞令が下っていた。
 ……という話を彼はバーナードの会議室で知る事となった。

「…というわけです。我々はオドンネル大佐指揮下に入ることになりました」

 ロッシ少佐は小太り赤ら顔の人の良さそうなラテン系で、
年齢は55歳と退役していてもおかしくない…いわば窓際族だ。
 とはいえ少佐であるのは事務方としては優秀な人物で、
善くも悪くも従順に任務をこなす流され型なのだろう。
 トゥヴォックはパッドに出ている辞令に目を通すと、暫く目をつぶって考えてから口を開いた。

「ロッシ少佐、失礼だが司令部には他に適任の幹部はいなかったのかね」
「いやはや、これは連合司令部直々の命令です。
 何でもハルバートン閣下のやり易い様にという話でしたので」

282 :量産型牛& ◆eVzLvfNS20BR :2012/08/18(土) 21:47:55.23 ID:???
2/15
 彼の問いにロッシは陽気な顔でゆったりと返してくる。
 年齢の上では自分の方が上だが、彼の方がずっと年輩に思える程度には冴えない笑顔だ。
 それでも、窓際族という立場を卑下する事も無ければ、そのまま受け入れているのかもしれない。

「しかし、彼は殉職された。確かに論理的には直属の部下が代行することは理解出来るが、
……大佐は復隊されて間もない。他により経験のある指揮官を配置することはできたのではないのか?」

 彼女の復隊扱いはヘリオポリス崩壊時点からとなっているものの、
実際の正式な着任はつい昨日の低軌道会戦時点からだ。
彼女が軍部の中で新参といっても良いブランクが有るのは否めない。
 それも「本物」ならばの話であって、連合ではなく「連邦」の人間である彼女にとって正しくは入隊なのだ。
 だが、そんな疑問にも彼は何ら抵抗も無い様だ。

「そこら辺は私の与り知る範囲ではないですな。一つ言える事は…連合司令部の命令は絶対です。
 この命令に逆らって良い結果を引き出した指揮官は、…私の記憶にはありませんなぁ」

 終始陽気に話してはいるが、その言葉に含まれる意味は読み取れる。
 彼から言わせれば「そんな些末な問題は無意味だ」ということなのだろう。

「…ふむ。わかった。この命令は確かに受け取った。
 私が指揮官として就くことには各々異論はあるだろうが、
オドンネル大佐の考えは私が一番理解している。
 彼女が来るまでの間の組織固めはしっかりとやらせてもらう。
 私の命令は彼女の命令と思って受け取って欲しい」

 トゥヴォックは正式に基地指令代理に就任し、
プトレマイオス基地の総司令官として全権を掌握するのに着手する。
 就任早々に始めたのは、この指令を「誰が出したのか」だが、それはすぐに明らかになった。
 ムルタ・アズラエル本人が彼のもとに連絡をつけ、その謎解きをしたのだ。
 彼とトゥヴォックのビデオ会談は淡々と終わり、アズラエルからすると煮える前に終わった印象だが、
トゥヴォックからすれば必要充分以上の情報のやりとりは望まなかった。
それによるリスクを避けたかったからだ。
 特にアズラエルの様な欲望を持った人物と対峙するのは、彼自身もあまり好むところではなかった。

283 :量産型牛& ◆eVzLvfNS20BR :2012/08/18(土) 21:53:59.41 ID:???
3/15
 アズラエル側からは、ジェインウェイの無事を知り安堵したことと、
GAT-Xがアークエンジェルと共に地球に降下したことを知り、早急に対策をとることが伝えられた。
 そして、基地の采配については「自由にやって欲しい」と笑顔で言われ、
何か問題が有ったらとホットラインまで教わる事となった。
 どうやら軍の誰よりも彼の声は大きい様だ。
 ならば必要に応じてカードとして利用すれば良いと理解してからは、彼は自由に組織改革に手をつけた。

 彼の新体制は基地参謀として先程のロッシ少佐の他に、グライン/ブライトマン少佐の二名も入れ、
 その他数名の優秀な大尉クラスの事務官を揃えた総勢12名とした。
 基地事務方トップにロッシ少佐を、武官代表はグライン少佐に、そして開発部トップにブライトマン少佐を据え、
 彼らにそれぞれ補佐として大尉を3人ずつ付けた。

 全ての業務はアーチャーのコンピューターで監査し、不正な事例が出た場合は即座に処分した。
 これにより綱紀粛正され、かなりの無駄が省かれるはずだった。が、そう事は簡単ではなかったのだ。

 このプトレマイオス基地は月軍の本部がある基地であり、
連合の中で最大級であることは勿論、作られてからの歴史も古い。
 故に沢山のロッシ少佐の様な「窓際族」がいた。彼らは政治的に閑職へ追いやられた人物もいれば、
拘って自らの研究開発の為にやって来た人物もいる。月の基地は軍事基地であると同時に開発拠点なのだ。
 その為というか、基地の人間にも把握し切れていないくらいの膨大な量の開発計画が進行し、
それらが上手く行くのか行かないのかも分からず続行され、無駄に資金が垂れ流されていた。
 基地を有効に運用する為には、セブンではないが効率を上げる必要がある。

 トゥヴォックが目を通しただけでこれだけの計画があった。以下にそれを挙げる。
 ※()内はトゥヴォックのコメント。

1,「光波防御シールド開発計画」(同朋に技術が有るのに融通しあわないのは無駄と言える)
2,「無線式ガンバレル開発計画」(順当な進化とはいえ、兵器としての信頼は低いままだ)
3,「大型MA開発計画」(メビウスをそのまま大きくしているだけで、弱点の克服に至っていない)
4,「対Nジャマー開発計画」(研究する努力は認めるが、彼らは考える方向を変えた方が良い)
5,「モビルスーツ開発計画」(GAT-Xとは違うが、ベースは似た設計のものがこちらでも作られている様だ)
6,「小型核融合炉開発計画」(方向は悪くないが、完成はいつになるのか)
7,「新型合成金属開発計画」(基礎研究は正しい)
8,「ジン研究部」(敵を知ることは正しいが、その後が肝心ではないのか)
9,「メビウス友の会」(…彼らは一体何をしているのだろう。地球人の考えることは理解に苦しむ)

284 :通常の名無しさんの3倍:2012/08/18(土) 21:56:52.65 ID:???
支援

285 :量産型牛& ◆eVzLvfNS20BR :2012/08/18(土) 21:58:56.83 ID:???
4/15
 これらの開発部門を最終的に3つに絞る事にした。
 まず、1と2と6と7を統合して兵器開発部とした。次に3と5と9を統合してMS開発部とした。
 そして最後に残る4と8を統合して情報部と改名し、それぞれの部門の行動目標も定めた。
 兵器開発部には新しい装甲素材の研究をさせ、PS装甲の代替素材の開発に重点化した。
 MS開発部にはアズラエル氏の資金援助もあることから、集中投資し量産化を目指す事とした。
 情報部には何かと撹乱されるNジャマーを無視出来る通信の確立を急がせる事とした他、
様々な情報収集を専門的に行う専門集団として特化した。

 また、基地内部でのブルーコスモスは厳禁とし、アズラエル理事ともこの件では折り合いをつける。
 彼の答えは「使えるものは使ってください」だった。…言われる程主義者ではない様だ。
 この件の言質を確保したのはコーディネイターを堂々と使う為だ。
 地球人の言葉にある「毒をもって毒を制す」は、なるほど良い言葉だ。

 地球人との関わりは極力避けたいと考えていたトゥヴォックだが、
結果的に彼が一番彼らに接することになろうとは思っても見なかった。
 しかし、そういう立場に立たされた以上、それを拒否した所で何の意味も無い。
 彼は論理的正しさだけが正義とまでは考えない。論理的正しさはそれが必要条件に当てはまる範囲での話だ。
 不可能を可能にするほどバルカン人は傲慢でもなければ、可能を不可能とする程融通がきかないわけではない。
 どんな物事も合理的に実現出来なくては意味が無いのだから。

 さて、月軍の戦力については、現状はドレイク級が数隻ある程度しかない。
 旗艦と呼べるものはバーナード/ローのハイスピード型ドレイク級が2隻あるだけで、
月軍には満足な艦艇は残されていない。これは深刻な問題で、MS開発どころではない。
 まずは現行ドレイク級のハイスピード型への転換を進める事とし、
それと平行して現行ドレイク級を二隻分を繋ぎあわせたMS用コンテナ搭載型の建造を始める事とした。
…まずはこの一隻だけでも用意しておく必要がある。

 アークエンジェル級の開発にしなかったのは単純にコストだ。
 月軍に与えられている予算は限られている。
 しかも、地球からの物資の搬入はパナマのマスドライバーからの定期便に限られ、
その本数自体も戦況の悪化でかなり減り、場合によっては届く前に撃沈されている。
 この補給路の確保の為にも手っ取り早い高性能艦を開発し、防衛に出せる体制を確保するのは急務なのだ。

286 :通常の名無しさんの3倍:2012/08/18(土) 22:00:09.13 ID:???
支援

287 :量産型牛& ◆eVzLvfNS20BR :2012/08/18(土) 22:03:05.03 ID:???
5/15
 その他はメビウスが百数十機ほどあるが、それらをそのまま浮かべた所でZAFT相手には棺桶同然だろう。
 そのためフライへの改修を急がせることにした。現有の兵器数は半減するとしてもフライは使える兵器だ。
 また、フラガAI-OSをベースにMS用のOSも用意する事である程度操作性を共通化し、
いつでも即座にMS配備へ対応出来る様に計らう事にした。この開発は勿論VSTに発注を出している。

 彼が様々な改革プランを提示した中で、スポンサーであるアズラエル側が強く求めたのがコスト削減だ。
 しかし、コストを下げてやられていては話にならない。当然そのことを理事側へ反論するが、
アズラエルもほいほい出せる程資金的な余裕が有るわけではない。
 米国は大西洋連邦の盟主で確かに巨額の資金力があるが、
だからと量産しなくてはならない兵器を無尽蔵に作れる程の余裕が有るわけでもなく、
いくらデトロイトの工業王である彼らの一族にも出来る事には限界があった。
 ブルーコスモスを纏めたのも本来の理由は「資金力不足」故の苦肉の産物であり、
諸外国に付け回す事でなんとか帳尻を合わせているのだ。
 幾ら資源と量を確保出来る許容量があるといっても、現実とはなかなか自由にいくものではない。
 無い袖は振れないということだ。

 何はともあれスポンサーの要求は絶対である。
 彼らの要求するコストに見合わなければ量産化には至らないのも現実だ。
 そのためGAT-Xの半分程度のコストにするくらいの簡易化案は出した。要は帳尻が合えば良いのだ。

 トゥヴォックはこの場の開発部門を任せる為のチームを選定しヴォイジャーから派遣させる。そして、
セブンが研究開発していた装甲素材「カーボンド」の生産ラインの立ち上げに入らせる事にした。
 これに先立ち、アズラエル理事とは月軍の予算確保の策として、部門ごとの独立採算を打ち出す。
つまり、開発部門を営利企業として一部独立させ、半官半民の第三セクター扱いではあるが商売を出来る様にしたのだ。
 こうする事で開発コストを削減すると共に、営業利益を得る事も出来る。
 アズラエル側も開発物からの利益を早く手に出来ることもあり、この提案は了承され、
連合政府50%/アズラエル社29%/VST21%という出資比率で引き当てられた最初の企業、
マテリアルナ社が設立される。

 このような形にした真意は「我々」のコントロール下に置くという意味合いもある。
 出資比率上は議決権最低限しか保持しないが、この技術がVSTの技術力によって生まれることを考えれば、
一定の影響力を行使出来る状況を確保しておく必要がある。
 何よりこの権益によりVSTにも巨額の利益が入る。

288 :通常の名無しさんの3倍:2012/08/18(土) 22:05:02.35 ID:???
支援

289 :量産型牛& ◆eVzLvfNS20BR :2012/08/18(土) 22:07:25.60 ID:???
6/15
 このカーボンドが完成すれば大幅なコストダウンと高性能化の両立が出来る。
 現行のチタン合金系ラミネート装甲ではなく純カーボンの採用は当初驚かれたが、
理事側もその高性能振りに色めき立ち、この新しい装甲素材の可能性を、
他のロゴスを除外して独占出来るのは大きいと判断した。
 アズラエルとしてもVSTとの協力路線により利益を得始めていた。
 既にVSTのシステム開発力は、アズラエルグループの所有する様々な機械製品の性能を上げている。
省電力高性能を売りにした製品開発力は、現行製品に「単純適用」しただけでも降下が上がったのだ。
それほどの技術力を誇る技術集団「VST」を自陣営に引き込み離さない為にも、
この提案にVSTへの優遇を表明するのは利益になるとの判断が働いている。

 補足となるが、セブンがアーチャーに残した資料によると、
このカーボンドは本来の性能を出すには連合の技術力では無理の様だ。
 彼女は本来のカーボンドの性能を、およそ8割削ることでこの時代の技術水準に適合させている。
 本来の仕様通りに作った場合は確かにデュラニウムに近い高性能振りを発揮するが、
その代わり素材の精密な均質性を要求するなどの繊細さが高いコストとなってのしかかる他、
期待値程には高性能ではないという評価がボーグではされた様だ。
 それでも、この世界の技術レベルであれば最強と言っても過言ではないが。

 この装甲はフェイザーならばハンドフェイザー程度でも簡単に破壊出来ると考えられる。
だが、彼らのビーム兵器であればラミネート装甲程度の強度は確保出来るだろう。

 こうして開発される装甲を纏った新型機には「ダガー」という名が付くそうだ。
 完成予想のモデルは、全体が鏡面仕上げの黒で覆われた黒いダイヤモンドの結晶だ。
 命名の由来は地球の歴史上に登場する主にアジア地域に普及した曲刀をさすが、
それが使われた時代は汎用性で世界を席巻していたという。
 なるほど、…汎用機には相応しい名前なのだろう。

 艦長日誌
 アークエンジェルでは、気を失っていたキラ少年とイチェブが目覚めた。
 彼らは共にかなりの重力に押し付けられて全身打撲の様な状態だったが、
二人とも医者が驚異的と感想を漏らす程に早く回復した。
 キラ少年はコーディネイターだが、イチェブは違う。
 医者もさすがにイチェブの生命力には驚かされていたが、彼はボーグ故再生能力は高い。
 ただ、ここにきてさすがに彼らに必要な「再生サイクル」の問題が出てきた。
 イチェブは目覚めた後でその事をセブンに告げる。
 セブン自身も再生していないことで全体的な負荷が蓄積して来ていることを自覚していた為、
イチェブの申し出はすぐに私の耳に入る事となった。
 とはいえ、問題はシャトルも無いこのアークエンジェルではどうしようもないということだ。
 私は自室に彼ら二人を招き話をした。

290 :通常の名無しさんの3倍:2012/08/18(土) 22:09:05.07 ID:???
支援

291 :量産型牛& ◆eVzLvfNS20BR :2012/08/18(土) 22:20:49.55 ID:???
7/15
「どの程度動けそうなのかしら」

 彼女にこの質問をする自分はどうかと思うが、それでも限界は知っておかなくてはならない。
 本来であれば休ませてあげなくてはならないが、忙しさに失念していた自分の愚かさを呪いたい。

「…イチェブも私も本来の再生サイクルの限界を超えている。
 その限界を超えて動いている時点でも充分といえる状況で、
イチェブは身体に大きな負荷をかけた。…不完全なドローンの行動は不確定要素を伴う。
 しばらくMSを操縦させるのは控えるべきだろう」

 彼女は落ち着いてい話してはいるが、幾分疲労を感じさせる表情を見せた。
 彼女も我慢して来たのだろう。そこにイチェブが彼女の言葉に反対する。

「社長、僕はまだいけます。以前の遺伝子再配列でかなりの部分は生命活動で補えています」

 確かに彼はセブンよりはずっと生体組織に移行している。彼と彼女では中身が違うことは間違いない。
 それでも全くのゼロではないのだ。彼もまたボーグインプラントに支えられているのだ。

「……イチェブ、あなたの気持ちは嬉しいけど、ここはセブンの言葉に従うべきね。
 あなた達の再生サイクルをどう回避するべきかだけど、このままではどんどん悪化するばかり。
 シャトルとの通信はとれないの?」
「地球軌道上にはいない様だ。周回軌道上に居るならば転送で帰還する事は可能だろう。
 だが、転送収容後にヴォイジャーまで戻るには、ワープを使用しないのであれば時間を要するだろうな」

 私達の問題はもう一つある。ワープを迂闊に使えないということだ。
 もし使えば、それを辿って新たなる「我々」を誘き寄せる結果になりかねない。
 それだけは出来るだけ避けなくてはならないのだ。

「アステロイドベルトまではスラスターの最大船速でも7日はかかるかしら。
 その間にヴォイジャーと通信が繋がれば、シャトルごと転送してもらう事は可能ね」
「あぁ。しかし、そうなるとここにはあなた一人だけとなる。……良いのか?」

 健気な彼女は私のことを心配してくれる。本来は自分の方がよっぽど辛い筈なのに。
 以前から彼女は決して弱音を見せない様に行動しているが、人は支えあうもの。
 困っているときや辛いときは、出来れば素直に認められる人間関係を築いて欲しいものだが、
彼女がそれだけ人間性を取り戻した事で喜んでおくべきなのだろう。
 私は苦笑する他無かった。

292 :通常の名無しさんの3倍:2012/08/18(土) 22:22:26.98 ID:???
支援

293 :量産型牛& ◆eVzLvfNS20BR :2012/08/18(土) 22:24:42.70 ID:???
8/15
「……良いも悪いもそれしかないのだから、仕方ないわ」
「あの、良いですか?」
「なに?イチェブ」
「一つ方法が有ります。アークエンジェル内に再生ルームを作るんです」
「ここに?どうやって」
「セブン、ナノプローブをプログラムしてアークエンジェルの一部を同化すれば、
上手く再生ルームを形成する事はできないかな」

 彼の提案は確かに出来れば手っ取り早い話だ。
 だが、この時代の技術水準でそもそも彼らの再生ルームを形成させる事は可能なのだろうか。
 我々の時代と同レベルのエネルギー供給能力の無い文明を同化しないのは、そもそも彼らが活動出来ないからだろう。
 ボーグにとってのワープ未満文明に対する見方は、
活動可能限界と脅威度と未発見技術とのレア度に由来している様に考えられる。
 彼らにとっては同化しても、再生可能なエネルギー供給が受けられなければドローンは死滅する。つまり、
ドローンを維持可能な文明レベルが最低限無くては同化しようがないのだろう。
 勿論、スフィアやキューブで赴いてレア技術が有れば吸収することも有るだろう。しかし、
それには彼らのコスト感覚からするとロスが大きく、育った段階で刈り取れば良いと判断する為に、
ワープ未満文明への介入は無視されるのだろう。
 これから推測すると、彼の提案はかなりの困難が伴うと考えられるが…。
 当の振られた側のセブンはしばし考えていたが、徐に口を開く。

「……上手く行くかはわからないが、ナノプローブはその文明の技術に合わせた形で同化できる。
 だが、それを確実に完成させる事が可能かどうかまではわからない。そして、
 お前の言う通りにやれたとしても、この方法は船にどのような結果を招くか予想出来ない」

 イチェブの提案は彼女の言う通り不確定要素が強過ぎる。
 かつての『ワン』はボーグがどのような技術も同化できることを示す一つの事例と言えるが、
あれはプログラム無しのいわば「野生のボーグ」だ。プログラム後のナノプローブが思惑通りに動く保証は無い。
 特にヴォイジャー程のテクノロジーが無いアークエンジェルが同化された場合、それを遮断する技術も無いのだ。
賭けるには随分と大き過ぎる賭けと言える。しかし、彼らが再生サイクル無しで活動出来る限界もまた来るのだ。
 この先彼ら無しで戦い抜いたとしても、彼らの再生自体は必ず考慮しなくてはならない。
 時間が経過すれば、かつてセブンがなった様な複製の困難な『ボーグパーツの故障』が発生する危険が出てくる。
 定期的な再生サイクルは彼らの健康維持は勿論、寿命という点でも重要なことなのだ。

294 :通常の名無しさんの3倍:2012/08/18(土) 22:27:41.83 ID:???
支援

295 :量産型牛& ◆eVzLvfNS20BR :2012/08/18(土) 22:29:26.80 ID:???
9/15
「……セブン、ナノプローブのプログラム変更は可能かしら?」
「やるのか?……この環境でのプログラムはかなり難易度が高いが、不可能ではない。
 ただ、成功しても同化プロセスが正常に範囲指定した通りに出来るかは分からない。
 失敗すれば……全てが同化されるだろうな」
「……そう」

 さすがに艦全体を危険に晒すわけにはいかない。
 だがその時、イチェブが言った。

「……デュエルを、同化してはどうでしょうか」
「デュエルを?」
「はい。僕が操縦している間にコックピットを同化します。
 これによりデュエルに入ることで再生サイクルを受けられるようになります」
「……そうか、上空ならば同化はMSのみに限られる。
 それならば仮に同化範囲指定に失敗しても問題無いな」
「はい。デュエルのバッテリーでは足りないことを考慮し、
ナノプローブに融合炉を設計する様プログラムを組めれば、
 それでなんとか出来るかもしれません」

 なるほど、彼らの技術は何もその時代の技術水準に合わせる必要はないわけだ。
 24世紀の我々の時代のボーグの知識がこの世界の技術を導く事も出来るのならば、
この問題は解決可能かもしれない。

「……フフフ、ボーグのことはボーグに聞くべきみたいね。
 でも、デュエルの同化は少し問題ね。
 もう使わないものを使ったらどうかしら。大尉のメビウス・ゼロなんてどう?」
「飛ばすだけなら飛ばせるが、ただ飛ぶだけだ。……だが、必要充分だろう」

 私は決断した。
 少佐の使わなくなったメビウス・ゼロを同化し、再生ルームとして利用することにしたのだ。
 事を決めると行動は早い。少佐からはゼロの解体許可を取り、
セブンが流体力学の実証実験のために使うという口実で、パラシュートを付けて打ち上げ準備をした。
 しかし、まだ敵地のど真ん中。
 打ち上げが居場所を教えるに等しいだけに、タイミングが問題だ。
 とはいえ、いつでも実行出来る様準備だけは終えさせた。

296 :通常の名無しさんの3倍:2012/08/18(土) 22:31:20.21 ID:???
支援

297 :量産型牛& ◆eVzLvfNS20BR :2012/08/18(土) 22:33:08.39 ID:???
10/15
 日が落ちる手前、アークエンジェルからデュエルで外に運び出されたメビウス・ゼロ。
 その作業を元の搭乗者であるフラガ少佐が名残惜しそうに見ていた。

「…承諾したとはいえ、実験台に使うとはなぁ」

 彼は開かれたハッチから外へ運び出されたメビウスを見ていた。
 私も彼の隣でその状況を見ていた。

「この実験はあなたの新しい機体の開発用データにも活用されるそうよ。
 全くあなたと無関係というわけじゃないし、あの機体自体も無くなりはしないわ。
 何事にも試行錯誤が付き物。良い未来が待っていると思って見送ってはどう?」

 私の言葉に彼は頭をぽりぽりと書きながらこちらを見た。
 その表情は苦笑いといったところだろうか。

「いや、惜しいとかってのは正直無いんですが、相棒との別れってのは辛いもんですね」
「そうね。私も……自分の船との別れは辛かったわ。ごめんなさい。
 あなたの気持ちを考えたら、とても辛い決断をさせてしまったわね」
「いえ。大佐の仰る様に、良い未来のために使ってください」
「有り難う」

 私達がそんな話をしている頃、砂漠に下ろされたメビウスではセブンが作業していた。
 その作業をデュエル上で見守るイチェブ。
 同化の際のメビウスにはセブンが乗って作業することになっていた。

「(セブン、僕が代わろうか?)」
「(心配するな。この作業は私の方が慣れている)」

 セブンは一通りの作業準備を終えると、私にコミュニケータでそれを知らせた。
 あとは、タイミングを待つだけだ。私は少佐と共に艦内に戻った。

298 :通常の名無しさんの3倍:2012/08/18(土) 22:33:31.61 ID:???
支援

299 :量産型牛& ◆eVzLvfNS20BR :2012/08/18(土) 22:35:40.25 ID:???
11/15
 キラ少年は回復してからは、アルスター嬢が新型の訓練で忙しい事もあり、
ラクス・クラインの世話係を引き受けている。彼も彼女の事を気に入っているらしい。
 本来であれば問題視すべきことだが、彼のこれまでの貢献を考え不問にしている。
 彼女との交流が彼の精神的負担の軽減になるのであれば構わないとも言える。

「まぁ、キラ様。お体の具合はいかがですか?」
「はい。もう良くなりました。食事、持ってきたので、一緒に食べませんか?」
「はい!」

 彼女は満面の笑顔で彼の提案を受け入れた。
 その笑顔に彼の顔が赤らんだ。

 月面、連合軍プトレマイオス基地。
 ヴォイジャーからプトレマイオスへ派遣されたクルーは全部で7名になった。
 その内3名はシャトルを帰還させる任務に就くが、残りの4名は基地のVST社員として働くことになる。
 選ばれたのは以下の通り。

 基地開発部門
 ジェニー・メーガン、デラニー・メーガン、モーティマー・ハレン
 司令補佐
 ウォルター・バクスター
 シャトル・アーチャークルー
 ヴォーラック、ジュロット、マーラ・ギルモア

 基地開発部門向けに呼び寄せた3人の内訳は、デラニーの双子姉妹は科学士官であることから、
開発任務の主任として引っ張ることになる。また、ハレンは引きこもりクルーとして以前艦長が問題視していたが、
彼の頭脳はとても有能で、アーチャーが使えなくとも対応出来る能力の持ち主と判断し呼び寄せた。
 司令補佐として呼んだバクスター大尉は私の補佐として働いてもらう事になる。
 アーチャーの操縦クルーについては2名で良いが、彼らには軌道上でヴォイジャーの監視に当たってもらう事にした。
 私は早速アーチャーを出発させる許可を出した。

300 :通常の名無しさんの3倍:2012/08/18(土) 22:36:30.24 ID:???
支援

301 :量産型牛& ◆eVzLvfNS20BR :2012/08/18(土) 22:40:56.40 ID:???
12/15
『こちら司令部、トゥヴォックだ。君達にシャトルは預ける』
「アーチャーよりヴォーラックです。了解しました。あと、例の件ですが、実行に移されるのですか?」
『…これは私の推測に過ぎないが、どこかで可能性があるならば、選択肢から外すべきではない。
 君の意見はどう考えている」
「…推測ですか。天体測定ラボでの全地球スキャン結果では、その兆候は見られないとのことです。
 まだその起点となる技術開発も為されていない以上、一足飛びに結びつくとは考えられません」
『だが、既に幾つかの一致はあり、タイムライン上の誤差は収束する可能性もある。
 何より我々がこの場に居る事自体が不確定要素だ。それが引き金になる可能性もある」
「…留意しておきます。では、少佐、長寿と繁栄を」

 彼らはお互いにお決まりのジェスチャーをし、双方の無事を祈り通信を終えた。
 シャトルは軌道上に留まらず、一度ヴォイジャーに帰還してから任務に就くことになるが、
彼らは地球の空を改めて眺めていた。

「……嘘みたい。でも、違うのよね。あぁ、地球」

 U.S.Sイクワノックスのクルーだったマーラ・ギルモアはこのシャトルの中では唯一の地球人だ。
 彼女は罰として階級を降格され、現在は一般クルーとして働く身であるが、元は有能な士官だ。
 トゥヴォックの抜擢は、彼女の有能さに挽回の機会を設ける配慮と言える。

 アークエンジェルの食堂ではカズイ・バスカークが訪れていた。

「いらっしゃいませ〜」
「あ、どうも」

 食堂を取り仕切るのは民間女性達だ。最近は制服まで作っての念の入れ様で、
ここの主任として働く美白の調理人ソノッコ・スズキさん(50)さんの料理は絶品だ。
 これまで宇宙空間での調理は制約があったが、地上では制約無しに調理が出来る。
 地上に降りてからの彼女は、まさに水を得た魚もといスズキである。
 ちなみに彼女は元は化粧品会社をされていたそうだが、
ダイエット料理が当たり調理人として働いている。しかし、
その会社もヘリオポリスと共に消えてしまったのだが。

302 :通常の名無しさんの3倍:2012/08/18(土) 22:42:43.23 ID:???
支援

303 :量産型牛& ◆eVzLvfNS20BR :2012/08/18(土) 22:45:54.70 ID:???
13/15
 彼女は見るからにスリムボディで、一見すると中華鍋なんて扱えない様に見えるが、
和洋中なんでもダイナミックにこなすその調理は、傍目にハラハラドキドキさせられる程だ。
 とは言っても、具体的に何にハラハラさせられるかは秘密だ。
 新たに作られたカウンター席に座るカズイは、スズキさんに話しかける。

「スズキさん、何かお勧め有ります?」
「……えぇ、今日はミネストローネが有るわよ。砂漠の乾燥はお肌の大敵だから、
コラーゲンたっぷりのゼラチンで固めた煮凝り風にして冷やしてあるわ」

 彼女は冷蔵庫の中から固まったそのミネストローネ煮凝りを出してくれた。

「はい。召し上がれ」
「ありがとう、スズキさん」

 カズイは早速スプーンで角を切って口に運ぶ。

「う、まぃ〜〜〜〜」
「をほほ、遠慮は要らなくてよ。まだ、幾らでもありますから」

 彼女はそう言って冷蔵庫を開いた。そこには本当に売る程沢山の完成品が入っていた。
 彼はそれに苦笑しつつもその味をゆっくり楽しんだ。食べ終えると冷えた氷水が渡された。
 彼はそのコップを両手で握ると、しばし俯き加減で考え込む様な表情をしていた。
 コップから伝わる冷気が気持ちよいが、彼の心中は色々な意味で暑いままだ。
 ソノッコは食器を片付けながらチラチラと見ていたが、気になって話しかける。

「お兄さん、どうなさったんです。わたくしで良ければ、お話になりませんこと?」
「あ、すみません。暗いですよね」
「いいえ、いいわよ。遠慮しないで。誰にも考えたい時はあるわ。
 こんなおばさんで良ければ、聞かせてくれないかしら」

304 :通常の名無しさんの3倍:2012/08/18(土) 22:47:04.41 ID:???
支援

305 :通常の名無しさんの3倍:2012/08/18(土) 22:57:54.06 ID:???
同化

306 :通常の名無しさんの3倍:2012/08/18(土) 23:10:37.13 ID:???
美白ww

307 :通常の名無しさんの3倍:2012/08/18(土) 23:17:05.49 ID:???
クルーに白塗りが増えるぞw

308 :通常の名無しさんの3倍:2012/08/18(土) 23:19:34.78 ID:???
モンキーマジったか

309 :通常の名無しさんの3倍:2012/08/19(日) 00:04:53.30 ID:???
中断?

310 :量産型牛& ◆eVzLvfNS20BR :2012/08/19(日) 00:25:07.91 ID:???
14/15
「ソノッコさん…。笑わないで下さいよ。僕、パイロットになるんですよ」
「あら、凄いわね」
「…うん、でも……」
「……怖いわよね。戦いたいなんて思わないものね。でも、貴方達が戦ってくれるから、
私達は生き残ってこれた。それは紛れも無い事実よ。私は貴方達の勇気に感謝しているわ。
 だから、私は私の出来る事で戦うことにしているの。大丈夫、貴方1人を逝かせないわ。
 逝く時はみんな諸共吹っ飛ぶんですから。心配するだけ損よ」
「え"……あ、あはは、あ〜、確かに。そ、そうですね。負けちゃったらみんなで逝けますよね?
 あは、あははは、はぁ……」

 ソノッコさんは自分の台詞の決まり具合に一人喜んでいた。
 カズイは正直話す相手を間違えたと思ったが、それもまた人生と割り切る事にした。

 車の上で双眼鏡で覗く視線があった。彼らの視線の向こうはアークエンジェルだ。
 砂漠の夜はとてもよく冷える。
 コートを着込んだ彼は双眼鏡を片手に、
もう片方の手には暖かい湯気の揺らぐ珈琲カップが握られていた。

「どうかなぁ、噂の大天使の様子は」
「何かハッチを開けて運び出しているのが確認されましたが、それ以外は何も」

 彼の副官は運転席でハンドルを握りながら彼に答える。
 赤い髪をした年齢的にも若い士官だ。

「地上はNジャマーの影響で、電波状況が滅茶苦茶だからなぁ。
 彼女は未だスヤスヤとおやすみか。ん!?」

 上官が突如不審な声を発したの聴き、副官は驚いて彼の顔を見た。

「うっ!何か?」
「いや、今回はモカマタリを5%減らしてみたんだがね、……こりゃぁいいなぁ」
「あぁ……」

311 :通常の名無しさんの3倍:2012/08/19(日) 00:26:18.78 ID:???
支援

312 :量産型牛& ◆eVzLvfNS20BR :2012/08/19(日) 00:29:30.47 ID:???
15/15
 何を言うのかと思えば珈琲の感想だ。
 この上司は頭は切れるし、とても有能であることは誰もが認めるが、
ちらほら見せるこのマイペース加減には少々調子を狂わされる。
 だが、そのまま調子を狂わされたままでは彼の副官は務まらない。
 彼の上司はこの瞬間も冷静に物事を分析しているのだ。……と、唐突にその上官は双眼鏡を彼に放った。

「あ、あぁ!?」

 副官の青年は慌ててそれを受け止める。
 無事に受け止めたのを横目にニヤリと微笑む上官は、後方に待機する兵達を見た。

「ではこれより、地球軍新造艦、アークエンジェルに対する作戦を開始する。
 目的は、敵艦、及び搭載モビルスーツの戦力評価である」

 上官の命令に一人の兵が質問した。

「倒してはいけないのでありますか?」

 その言葉に他の兵達が思わず笑い声をあげる。
 質問した兵には悪いが、受けた上官も苦笑しつつ話す。

「ん〜、その時はその時だが、……あれはクルーゼが敗退し、遂にザラ隊も仕留められず、
 ハルバートンの第8艦隊がその身を犠牲にしてまで地上に降ろした艦だぞ?
 ……それを忘れるな。一応な。では、諸君の無事と、健闘を祈る!」
「総員、搭乗!」

 彼の命令下、兵士達が自身の愛機へと乗り込んでゆく。
 澄み切った夜空に輝く星空を見上げながら、彼らの上官は珈琲を口にした。

「ん〜、コーヒーが旨いと気分がいい。……さ、戦争をしに行くぞ」

 夜の闇夜にモノアイの光が蠢く。
第23話終わり、24話へ続く。
訂正
 6/15 現行製品に「単純適用」しただけでも降下が上がったのだ。
   →現行製品に「単純適用」しただけでも効果が上がったのだ。…に訂正。
 12/15 デラニーの双子→メーガンの双子…に訂正します。申し訳有りません。脳内訂正ry

313 :通常の名無しさんの3倍:2012/08/19(日) 20:51:24.26 ID:???
GJ!!
味方になった時の盟主王はやっぱ頼りになりますね。
ブルコスが資金稼ぎのために作られたというのが新鮮な設定です。
20%の性能でもこれとはカーボンド製MSのお披露目が楽しみです。
商売ならフェレンギ人もヴォイジャーに乗っていれば面白いことになっていたでしょう。
そういえばトゥヴォックはヴァルカン人の耳はどうやって隠してるのでしょうか?
スポックは鉢巻、トゥポルは帽子で隠してましたが。

314 :通常の名無しさんの3倍:2012/08/21(火) 19:25:25.75 ID:???
乙!
大西洋連邦が底上げされている、ダガーは性能が大幅アップしそうだな。
虎さんとの戦いが来たということは、カガリもそろそろ登場か。艦長と二人との会話が楽しみ。

315 :量産型牛& ◆eVzLvfNS20BR :2012/08/21(火) 22:39:33.44 ID:???
投下予定は0時から開始予定。
放送もたぶん、それくらいにひっそり予定。

316 :量産型牛& ◆eVzLvfNS20BR :2012/08/22(水) 00:14:04.50 ID:???
1/14
第24話「狂人」

 デトロイト、アズラエル社本社屋、社長兼最高経営責任者執務室。
 ここは連合の盟主である工業王アズラエルの中枢であると同時に、
この世界の最高指導者の執務室であると言える。
 
「…理事、今期の我が社の純利益は前期比293%、総売上も前期比140%以上の増加となっております
 これは当社が経験する売り上げとしては社の歴史上初の快挙です。
 株価も前期比で70%以上の上昇を見せています。
 上手くすれば、我々で他を圧倒する時価総額を目指すのも難しくないかもしれません。お見事です」

 本社上級副社長が報告する業務報告をアズラエルは満足げに聞いていた。
 この成績の内訳は、単純にコストダウンした事による経費が浮いた事と、人気が出た事にある。
 VSTとの提携でシステムが最適化されたシリーズは、そのものの性能自体は全く弄っていないのにも関わらず、
単純性能が7割以上、ものによっては2倍以上の性能向上を果たしたのだ。
 アズラエル社はそれらを新しいパッケージとして販売すると共に、旧来製品にもアップグレードパスを用意し、
アップグレード版の性能を若干下げる様VSTに調整を依頼して販売したのだ。
 結果は性能で競合他社製品を圧倒した他、旧製品が新製品並になった事から買い控えも起こらず、
旧製品の在庫一掃と新製品の完売達成を実現した。実際に彼らの社史ではここ暫く見た事が無い状況であった。

「ライバルの動向は?ジブリールやモルゲンレーテに技術で負けている我々が勝つには、
VSTを取り込む必要がありそうですが、その首尾はどうなっています?」
「はい、両社とも現状は売り上げを微減させた程度、株価もあまり変化はありません。
 彼らは他のロゴスが支援していることもありますから、そう変化は無いと思われます。
 VSTの件については、同社は本社株の非公開化に踏み切り、システム大手のオラクレの買収を成功させ、
 業界ではパイナップル、ゴーグル、ミラクルソフトのビッグスリーを抜きました。
 現在のVSTはミラクル株を30%保有、パイナップル株を21%、ゴーグル株も21%保有しています。
 予想時価総額だけを考えても、同社を単純買収するのは不可能な段階に入りました」
「…そうですか。わかりました。買収の線は消えましたね。業務提携を中心にお願いします」
「はい、では、失礼します」

317 :通常の名無しさんの3倍:2012/08/22(水) 00:15:27.13 ID:???
支援

318 :量産型牛& ◆eVzLvfNS20BR :2012/08/22(水) 00:17:50.38 ID:???
2/14
 副社長が恭しく一礼して部屋を出て行く。
 一人になった彼は溜息をついた。

「はぁ、さすがに気付きますか。優秀ですねぇ」

 チャコティはアズラエルの動きを既に察知していた。
 VSTグループ企業への株取得攻勢が出たと同時に自社株買いと非公開化を進め、
資金調達方法を収益と内部留保に切り替えた。
 既にアズラエル社や他のロゴス系企業との提携業務で相当の資金が調達出来ており、
彼らがこちらを必要としている以上、切られて干上がる心配もないことから、
本社非公開後は積極的にグループの議決権保有51%取得に切り替えた。
 VSTグループは更に業界システム王手の一角であるオラクレを買収し、システム業界の地図を塗り替える。
 この買収劇でシステム業界のトップに躍り出たVSTは、そのまま競合3社の議決権制限株を保有。
単独で巨大企業に対抗出来る程度には資金的余裕ができていた。
 現在はその資金を素材開発等の機械産業向けに重点投資を始めている。
 その矛先はIDEX、アドヴァンスト・スペース・ダイナミック、PMP、フジヤマの4社だ。
 これら4社は連合で計画されていたコスモグラスパーを共同開発しているが、
現在の連合は新型MSであるダガーの開発に舵を切る決断をしており、
コスモグラスパー開発計画はほぼ消滅に等しい状況に置かれ、株価は暴落していた。
 VSTはこれら企業の買収工作を進め、既に議決権ベースで51%以上の株式を取得し傘下に収めている。
 勿論、この動きはアズラエルの知る所となっている。

「…彼も食えない人だ。こんな死に損ないを集めて何をする気なのか」

 アズラエルはチャコティ率いるVSTが、
破竹の勢いでロゴス内部で頭角を現していることを苦笑しつつ見ていた。
 実際の所は彼に損になる事は全く無い。VST側はアズラエルと共同歩調をとり、
ロゴス内部ではアズラエル側についている。
 現在はアズラエルの権勢はかつて無い勢いで拡大しており、彼に出来ない事等無いに等しい。
 このままの勢いで一族とも対等に張り合える程度には権力を盤石にしているともいえる。
 彼の立場からすれば、VSTは天使や妖精とでも言うべきだろうか。
 唐突に現れ、彼に大権をもたらしたのだから。

319 :通常の名無しさんの3倍:2012/08/22(水) 00:18:51.08 ID:???
支援

320 :量産型牛& ◆eVzLvfNS20BR :2012/08/22(水) 00:23:37.27 ID:???
3/14
 アラート音が鳴り響く。
 デュエルのセンサーは10時の方角からミサイルの接近を知らせていた。
 時を同じくしてアークエンジェル艦橋でもCICが攻撃を察知していた。

「総員、第一戦闘配備。パイロットの皆さんは至急出撃用意を。
 非戦闘員の皆さんは戦闘態勢へ移行。
 各自避難エリアに退避し衝撃に備えて下さい。繰り返します……」

 ミリアリアの声が艦内に響き渡る。

「……ラクスさん、僕、行ってくるよ」
「……はい。キラ様。ご無事で」

 二人は夕食後暫く話していた。
 話していた内容は他愛も無いものだが、最近の彼にとっては一番の楽しみだ。
 しかし、楽しい時間は続かない。
 この部屋にも伝わった放送の声を聴き、キラの表情が引き締まる。
 どんな事があっても彼女を守る。
……彼の中ではこれまでも友人や仲間を守るという意識はあったが、
彼女との関わりの中で自分の中に新たな感情が芽生えている事に気が付いていた。
 それは彼自身の一方的な想いでしかないが、現在の彼にとってはそんなことはどうでも良かった。
 何より守る事。そして、無事に帰還して一緒に話す貴重な時間を大事にしたいのだ。

 更衣室でパイロットスーツに着替えた彼は、ハンガーへ向かう途中にフラガと出会った。
 通路を走りながら語りかける。

「フラガ少佐、外の状況は分かりますか?」
「お、坊主。っつか少佐とか堅苦しいよな。よし、俺の事はムウで良いからな。キラ!」
「ぇえ!?あ、…はい。ムウ…さん…で良いですか?」
「あー、まぁ…いっか?さてと、敵のことなんてわからないっしょ。
とりあえず自分の機体に乗って指示を待つまでさ」

321 :通常の名無しさんの3倍:2012/08/22(水) 00:25:12.10 ID:???
支援

322 :量産型牛& ◆eVzLvfNS20BR :2012/08/22(水) 00:26:44.20 ID:???
4/14
 その時、艦内を激しい衝撃が伝わる。二人は突然の衝撃によろめいて壁に激突した。
 近くに第一波が着弾したのだろう。

「っつー、人が急いでいる時に。行くぞ、キラ!」
「あ、はい!ムウさん!」

 二人はハンガーへと駆けて行った。

 その頃、ZAFT側では双眼鏡を両手で持って眺める男の姿があった。
 彼の目にも第一波が着弾したのが確認出来た。しかし、敵側に動きはない。

「……初動が遅いねぇ。
 それとも、この程度じゃびくともしないと侮られているかな?」

 事前に聞いていた情報では「まるで先に知っている」かの様な対応能力という触込みだっただけに、
この動きの遅さには肩すかしを食らった様な感覚すら有った。とはいえ、まだ始まったばかり。
 事前の情報が真実を語っているとは限らないとしても、そうした備えがあることはずっと重要だ。
 戦争は情報力の差が戦力の差を覆す事もある。実際、宇宙で彼らは勝ち残ってきたのだ。
 この程度で修正する程には甘い考えを持ち合わせていない。

「お、出てきたな」

 アークエンジェルからスカイグラスパーが飛び出した。
 その後をエールストライクが出撃する。
 先行したスカイグラスパーがアークエンジェルへと迫る敵MAの群れを確認した。
 彼は搭載しているビームライフルで牽制射撃を放つ。
しかし、思っていたより着地点が逸れていた。

「……なんだこりゃ。って、言っても合わせるしか無いか。
 どうやって的を絞ろうかねぇ」

 無闇に撃ってはエネルギーの無駄だが、そうも言っていられない。
 彼のMA乗りの感とでも言うべきか、経験を元にしたいわば目見当で的を絞る。
 二射目は一機のバクゥの脚部に直撃した。

323 :通常の名無しさんの3倍:2012/08/22(水) 00:28:59.87 ID:???
支援

324 :量産型牛& ◆eVzLvfNS20BR :2012/08/22(水) 00:31:27.89 ID:???
5/14
「おっし!さすが、しょ・う・さ♪」

 フラガ少佐からの情報はアークエンジェルにも届いていた。
 緊迫する艦橋の中へジェインウェイが入って行く。

「状況は?」

 彼女の呼びかけにラミアスは軽く敬礼をして答えた。

「大佐、はい、現在、フラガ少佐が先行して敵の配置状況の確認が取れました。
 敵は獣型のMSバクゥでこちら側へ向けて走行中です。少佐が一機仕留めました」

 ラミアスさんの話を聞いた私は、CICに入り情報を自分の目でも調べた。
 彼女の話した通りにこちら側へ向かってくる機影。
 機体数はバクゥと呼ばれる機体が6機。
 その内一機は少佐が撃墜し5機ということだった。
 距離を考えると、最初の射撃は攻撃というには手緩いものだ。
 牽制射撃というべきだが、この状況で牽制をする意味がわからない。
 敵の指揮官はわざわざ我々に攻撃の存在を知らせたのだ。
 これをどう見るべきか……?シャトルが無いため、
簡易システムでのセンサーエリアは狭く、
しかも分析能力も高くないため初動の反応には遅れたが、
彼らの武装ではアークエンジェルは貫けない。
 敵の目的は別のところに有ると見るべきか。

「ラミアスさん、私達も舐められたものね。
 彼らの武装では我々を貫けないわ。
 攻撃部隊が劣勢の様なら、躊躇わず艦を動かせる様にしておいて。
 彼らが引かない場合はこちらから攻撃に向かいます」
「はい」
「では、私は作戦室に居ます。何か有ったら言って頂戴。
 この場はあなた達に任せるわ。焦らずに、じっくり敵を観察するのよ。じゃ」

325 :通常の名無しさんの3倍:2012/08/22(水) 00:33:24.65 ID:???
支援

326 :量産型牛& ◆eVzLvfNS20BR :2012/08/22(水) 00:35:50.74 ID:???
6/14
 私は艦橋を出た。

 ストライクはエールで出撃したものの、砂漠へ着地したはずがバランスを崩しかけていた。
 砂の接地圧が流動的過ぎて、機体が十分なバランスを維持出来ないでいるのだ。
 しかし、現在のストライクはこれまでのものとは違った。

「ガンダム、ファイティング、デザートモードにチェンジ。
 ナイトコンディションでターゲティングサポートをオン」
『命令、を、受け付けました。
 GUNDAM、は、デザートモード、ナイトコンディションサポート、に、入ります』

 セブンが調整した新しいOSは、キラの声で命令を出せるボイスコントロールに対応し、
様々なモードオプションによりパイロットの操縦をサポートする。
 ファイティングは格闘等の近接戦闘サポートで、より機敏に動く様に格闘支援する。
 デザートモードは砂漠等の砂地に適した設置圧に修正し戦闘をサポートするモードで、
攻撃モーション時のズレの自動補正の他、環境効果の補正も自動で計算しフィットさせる。
 ナイトコンディションは地球上の夜間戦闘モードで、昼間の様に情報を処理する暗視スコープや、
パイロットがターゲットを固定せずとも、
自動で近い機体を中心に狙いを定めるターゲティングサポート、
更に必要に応じて自動で射撃するオートカウンターモードも利用出来る。
 サポートがオンになった途端、ストライクのバランスは調整された。
 今度は踏み込んでも問題無く接地されている。
 ……システムが如何に重要かということを思い知らされる場面である。
 だが、これで考える事無く戦える。
 センサーが表示する機影は5機。
 そのうち先行する2機がアークエンジェルに近づきつつあった。
 周囲の情報ではデュエルがアークエンジェル前に陣取っている。
 少佐からのメッセージではイチェブが守りに入り、自分が前に出るとなっていた。
 そうと決まればキラの覚悟は決まった。
すると、頭の中で何かが弾ける様な衝撃が走る。
 焦りや恐れが消え、視界も頭も嘘の様に静かでクリアな気分に没入した。

 ストライクが跳躍する。
 エールのエンジンを最大限に出力して上空に飛び立つと、そのままの勢いで瞬時に狙いを定め、
先行する一機へ下降する重力に、更にエンジンの加速を加えてシュベルトゲベールを構える。
 鈍い衝撃がコックピットに走る。
 バクゥの胴体に深々と突き刺さった剣を瞬時に抜き放ち飛び立つ。

327 :通常の名無しさんの3倍:2012/08/22(水) 00:37:57.47 ID:???
支援

328 :量産型牛& ◆eVzLvfNS20BR :2012/08/22(水) 00:41:34.50 ID:???
7/14
「……まずは一機。ガンダム、シューティングもオン」
『シューティングサポート、オンライン』
「アーマーシュナイダーにターゲティングサポート」

 爆発が上がる。
 味方の機体がやられたのを見て、後方からやってきた3機が上空へ向けて射撃する。
しかし、それらは全て絶妙なタイミングで吹かして避け、右膝からアーマーシュナイダーを出すと、
後方の3機の内の中央の機体目掛けて投げはなった。
 投げ放たれたアーマーシュナイダーはシステムの自動補正で寸分違わぬ照準で飛び、
敵の頭に深々と突き刺さり爆発した。

「……2機。ガンダム、フライトサポートオン」
『フライトサポート、オンライン』

 フライトサポートがオンラインになり、跳躍時のバランスの自動補正が入る。
 キラの視線の向こうには既に次の獲物の姿があった。
 後方の味方がやられたのを見て驚いていた先行2機の片割れのパイロットは、
他人の心配をしているうちに爆散した。
 彼が仮に注意を払っていたとしても、砂漠を這う様に進むバクゥと、
上空から飛来するストライクでは勝負にならなかっただろう。
 そして、一矢報いることなく散った彼の機体は踏み台となった。

「3機目。あと2機」
『警告、エネルギー残量、が、残り僅か、です』
「くそ、さすがにフルブースト状態は辛いか。踏ん張れ!ガンダム!」

 遠くから覗く側からすれば、当初予想とは大きく外した結果になっていた。
 いや、事前の情報からすれば、これくらいの損害は出ても不思議ではないのだが、
それでもやりたい放題にやられるのは面白くない。

「……踏み込みが修正されてから、何があった?まだ出て来て数分。
 こりゃ、とんだバーサーカーだ」

329 :通常の名無しさんの3倍:2012/08/22(水) 00:42:34.54 ID:???
支援

330 :量産型牛& ◆eVzLvfNS20BR :2012/08/22(水) 00:46:44.90 ID:???
8/14
 跳躍したストライクは上空で残りの二機のうちの一機に定めて滑空姿勢をとると、
左膝からもう一本のアーマーシュナイダーを投げ放つ。
 そして、そのまま落下スピードに加速を加え、シュベルトゲベールを構えて突っ込んだ。

「……全機、クリア」

 ストライクが深く突き刺さったシュベルトゲベールを手放して後方へ着地する。
 着地と同時に2機のバクゥが爆発し炎上した。

『エネルギー、が、0、になりました。フェイズシフト、オフライン』

 エネルギー残量がゼロになり、フェイズシフトが解除された。
 しかし、その時上空を何かが走った。
 それは瞬く間にアークエンジェル周辺に着弾した。敵の第二波が有ったのだ。
 そこにスカイグラスパーからのメッセージが入る。

「受け取れ?……!ナイス、タイミング!!ガンダム、ゲット!」

 スカイグラスパーからパージされたビームライフルが飛来する。
 キラはそれをセンサーで確認し、システムをゲットにセットした。
 ゲット命令はストライクのオプション装備を自動で追尾するプログラムだ。
 ストライクが走り跳躍する。
 右腕を大きく伸ばして飛来するビームライフルを手にした途端、
ストライクのフェイズシフトがオンになった。

『フェイズシフト、オンライン』
「ムウさん、ありがとう……って、え”、こんだけ?」

 残量メーターを見て思わず目を疑った。
 そこにはフェイズシフトダウンに二目盛り手前という量が表示されていたのだ。
 しかも、彼からご丁寧にテキストメッセージが入っていた。

『キラ、スマン。スグモドレ』
「……はぁ、勘弁してくださいよ。何の冗談ですか」

331 :通常の名無しさんの3倍:2012/08/22(水) 00:48:12.32 ID:???
支援

332 :通常の名無しさんの3倍:2012/08/22(水) 00:51:28.15 ID:???
シエン

333 :量産型牛& ◆eVzLvfNS20BR :2012/08/22(水) 00:51:31.87 ID:???
9/14
 ストライクは仕方なくアークエンジェルへ移動を開始した。
 その間もミサイルが飛来する。敵の第二波の詳細な情報はまだ無い。
 肝心のムウもビームライフルを手放してしまい、
攻撃オプションが無く引き返しているのだ。

「さて、どう出るかなぁ。ここで潰れてくれるなら嬉しいがねぇ」

 砂漠の向こうでは相変わらず監視する姿があった。

 アークエンジェル艦橋でも状況の変化を察知していた。
 バジルールがコリントスを装填し迎撃へ向かわせる。
 いかにアークエンジェルの装甲が硬かろうと、
ミサイルを何発も同時に受ければ問題が出る。
 それをそのまま受け取る程に彼女はお人好しではない。
 ラミアスは敵側の第二波の動きを考えていた。
 第一波が陽動だとすれば、これまでの攻撃は全てこちら側の攻撃を見る為のもの。
 第二波が本命であると考えれば、こちらの消耗した状況はまずい。
 ジェインウェイがじっくり観察しなさいと言っていたのは、この為か。

「……アークエンジェル、上昇用意。総員、離陸に備えよ」

 ラミアスの命令下、アークエンジェルの上昇が始まろうとしていた。

 その頃、外に出ていたセブンはメビウス・ゼロのコックピットにいた。
 システムの最終チェックは終わり、設定も問題無く動く事がわかった。
 メビウスは空へ向けた形で固定されている。

「セブンから社長。準備が整った。何時でも打ち上げ開始できる」
「作戦室からセブン。良いわ。やって頂戴」
「了解した。通信終了」

334 :通常の名無しさんの3倍:2012/08/22(水) 00:52:04.71 ID:???
支援

335 :通常の名無しさんの3倍:2012/08/22(水) 00:52:47.15 ID:???
シエンン

336 :量産型牛& ◆eVzLvfNS20BR :2012/08/22(水) 00:54:32.10 ID:???
10/14
 メビウスのエンジンを起動させる。
 打ち上げの為に予備のメビウスのブースターノズルを付けた多段式に改造されている。

「第一ブースター、正常稼働を確認。出力、60…70…80…90…」

 同化のために事前に準備した様々な構成物が正常に起動を開始している。
 その時、アラート音が鳴り響く。敵機が接近していた。
 距離が近い。しかし、エンジンは上昇に必要な満足なレベルに達していない。
 一体のバクゥがメビウスをその視界に捉え襲いかかる。
 だが、それは横からタックルをぶちかましたデュエルによって防がれた。

「発進」

 メビウスが急発進し上昇する。

「ん、なんだ?」

 遠くで双眼鏡を覗いていた男も異変に気付いた。
 足付きから何かが打ち上げられている。こんな所からロケットを打ち上げるというのか?

「フェイザーバンク、エネルギー充填。
 同化許容エネルギーリミットへ最大出力。AI起動」
『AIが起動されました。初めまして、セブン。
 現在、システムは正常に稼働しています』

 コックピットに強烈なGが掛かるが、そんな中でも焦る事無くセブンはコンソールを操作する。
 機体の上昇高度は一万mまで上がる必要があるが、細工をして推力を上げたと言っても、
 この時代の宇宙用のエンジンの出力レベルは厳しいものがある様だ。
 高い高度が必要なのは、同化時にエンジン等の機関が一時的に停止するため、
操作不能な時間をある程度滑空によって凌ぐ必要があるためだ。
 低軌道上での戦闘用に付加した翼によってある程度の滞空時間を稼げる計算だが、
予定通りでないということは不確定要素があるということだ。

337 :通常の名無しさんの3倍:2012/08/22(水) 00:55:25.79 ID:???
支援

338 :量産型牛& ◆eVzLvfNS20BR :2012/08/22(水) 01:02:41.42 ID:???
11/14
「……コンピューター、ボーグ、同化アルゴリズム同期先行プログラム、セブン1を実行せよ」
『セブン1開始します』

 セブンは高度が8000mを超えた段階で、予め調整したナノプローブを注入した。
 同化が始まる。

 地上ではデュエルが先程の襲いかかっていたバクゥを仕留めたところだった。
 スカイグラスパーがその間に帰還し、補給を終えて再び出撃する。
 空からの監視により新たな敵の数が判明した。

「敵の数はバクゥが5機。それにジン・オーカーか?が3機。
 イチェブが仕留めたのも含めれば9機か。こりゃまた大軍勢だぜ?」
「少佐は監視に留めて警戒してください」

 バジルールの言葉に了解と答えて通信が切られた。
 砂漠用機体のジン・オーカーはこちらの陣容からすれば充分に戦えるはずだが、
 ストライクはエネルギー残量が切れる寸前でこちらに向かっている状況では、
戦えるのはデュエル一機である。援護してどうこうという話ではないが……。

 イチェブは戦場へ向けて突進する。
 ジャンプしながら確実に敵の攻撃を手に持ったシュベルトゲベールでなぎ払う。
 視界前方近傍にいるのは足の速いバクゥが5機。
 バクゥは先程の部隊同様に3機編隊となっている様だ。
 既に一機失った小隊の方目掛けて狙いを定める。
 キラがしていた様に、跳躍しながら獲物へ向かって突進する様に吹かして降下し止めを刺す。
 まず一機が胴を深く貫かれた。
 そのまま躊躇わず次の獲物へ向けて跳躍し様、
アーマーシュナイダーを投げ込んでもう一つの小隊側のバクゥを頭部から貫き、
小型ミサイルを飛ばしながら急降下し、最初の小隊の最後の機体の胴に突き刺した。

339 :通常の名無しさんの3倍:2012/08/22(水) 01:03:29.35 ID:???
支援

340 :通常の名無しさんの3倍:2012/08/22(水) 01:06:02.33 ID:???
しえん

341 :量産型牛& ◆eVzLvfNS20BR :2012/08/22(水) 01:07:32.79 ID:???
12/14
 小型ミサイルが残りの二機に襲いかかる。
 所々被弾した2機は果敢にもデュエルへ挟み込む様に攻撃を仕掛けるが、
デュエルはそれを跳躍して躱すと、
片方へ馬乗りになりアーマーシュナイダーを片手で突き刺し、
主要構造部へ向けて叩き込み終えると、跳び箱を跳ぶ要領でその背から飛び降りる。
 爆発が上がり、その炎に照らされて最後の一機へ向けてゆっくりと歩く。

 最後のバクゥのパイロットは、
夜の闇の中を炎に照らされて近づくその姿に死神のイメージを重ねていた。
 その時、その前方の死神が突如激しい衝撃音と共に煙に包まれた。
 デュエルは砲弾の直撃で左腕が吹っ飛び機体が衝撃で飛ばされたのだ

「!?」
『……バーサーカー諸君、好き放題にやられ放題は気に入らないんでねぇ。
 そこの君、撤収だ』
「は、はい!」

 ジン・オーカーに乗った彼らの隊長は、無反動砲を手に持ち狙撃した。
 その正確な射撃はデュエルを損傷させ、バクゥのパイロットに動く時間を与えたのだ。
 デュエルに乗るイチェブはエネルギー残量が残り僅かなことに気が付いた。
 砲弾の直撃で激しくPS装甲のエネルギーを消耗したのだ。
 いくら省エネルギーに努めてもバッテリーの限界に阻まれるのでは効率が悪い。
 潮時だが、敵側は無反動砲の雨を降らせる気だ。
 先程の射線上から熱源反応が多数近づくのが分かるが、
左腕の損傷で思う様な出力が得られない。
 システム側で左腕へのエネルギー供給は停止したが、状況は芳しくない。

『援護が必要の様だな』

 通信が入る。識別信号には無い機体だ。
 だが、彼にはそれが友軍だと分かった。

「頼む」
『よろしい。了解した』

342 :通常の名無しさんの3倍:2012/08/22(水) 01:08:23.59 ID:???
しえん

343 :量産型牛& ◆eVzLvfNS20BR :2012/08/22(水) 01:15:41.36 ID:???
13/14
 機体のセンサーにはエリア内の全ての機影が確認されていた。

『空間グリッド、402、274052、対象を確認。命令を待機する』
「我々は個人だ。そして、我々が付属するのはヴォイジャーだ。
 対象は我々に属する付属物だ。グラップラーを用意して対象を確保しろ」
『……損傷している。テクノロジーレベルが我々の必要とするレベルに適合しない。
パージと判断する』
「駄目だ。私はヴォイジャーのユニマトリクス01の第三付属物だ。
その私から生じたお前は私の付属物だ。……命令に従え」
『……命令を確認。グラップラー、対象接近と同時に確保する』

 同化され豹変したメビウス・ゼロは、
低軌道会戦前に組み込んだフェイザーをベースにコアを形成し、
意志を持った機体としてボーグとなった。
 上空を滑空していたメビウスは可動翼が形成されて揚力を確保出来る様になり、
ガンバレルは物を掴む有線式グラップラーとしての機能を獲得している。

「…なんだあれは?連合の新型?」

 上空から飛来したそれは、グラップラーを出してデュエルの肩を掴んだ。
 セブンのコックピットにはデュエルからの通信が入っていた。

「……セブン、助かった」
『礼には及ばない。我々は仲間だ。当然の事をしたまでだ』
「……ありがとう」
『……イチェブ?……どうした?』
「……」
『おい、イチェブ!聴こえているか!?
私の声に答えろ!イチェブ!!』

344 :通常の名無しさんの3倍:2012/08/22(水) 01:16:42.89 ID:???
支援

345 :量産型牛& ◆eVzLvfNS20BR :2012/08/22(水) 01:22:28.25 ID:???
14/14
 セブンはメビウスに撤退命令を出す。
しかし、それをそのまま許す程に敵も甘くない。
 無反動砲が火を噴く。その砲弾は上空を飛ぶメビウスに対し、
針の穴を通す程の正確な射線を描いて直撃した。

「犠牲は大きいが……一矢報いたかな。全軍後退!」

 爆風の後は何も存在せず、それを確認したZAFT側は撤退していった。

「……セブン……イチェブ」

 私は作戦室のモニターの前で暫く動く事が出来なかった。
 全てが凍り付いた瞬間だった。

第24話終わり。第25話へ続く。
投下終了です。ご支援有難うございました。
放送へ来て下さいました方も、どうも有り難うございます。

346 :通常の名無しさんの3倍:2012/08/22(水) 01:24:42.59 ID:???
支援

347 :通常の名無しさんの3倍:2012/08/22(水) 01:30:32.32 ID:???
GJ!!
いきなりの盟主王大儲けに吹いたwww
そしてまさかのアーマーシュナイダー無双。
最後にまさかの二人がヤバイクリフハンガー展開、いったいどうなるのか!?

348 :通常の名無しさんの3倍:2012/08/22(水) 02:17:05.71 ID:???
>パイナップル、ゴーグル、ミラクルソフト
わかってても噴くwwww

349 :通常の名無しさんの3倍:2012/08/22(水) 08:06:58.40 ID:???
ゴーグルはグー…w
まぁいいw、けどあと二つは俺マジわかんないんだけど…(汗

あと二つ何か教えて知ってるエロい人!w

350 :通常の名無しさんの3倍:2012/08/22(水) 12:12:47.16 ID:???
>>349
アップルとマイクロだろw 確かにこれは噴くw

351 :通常の名無しさんの3倍:2012/08/22(水) 13:06:15.81 ID:???
さすがチャコティ優秀、艦長への提言はいつも聞き入られてなかったけどw

352 :量産型牛& ◆eVzLvfNS20BR :2012/08/24(金) 19:07:45.41 ID:???
本日は七時より放送しながら投下開始です。2〜3回にわかれるかな。
1/17
第25話「彼女」

「派手にやられたようね」

 背もすらっと伸び、誰の目にもモデルの様に映る艶やかな彼女は、
 愛する男の帰還を青く細かな刺繍の施された見事なチャイナドレス姿で出迎えた。

「……あぁ、その通りだよ。あいつらの遺族に合わせる顔が無いねぇ」

 彼女の指摘にも悪びれる事無く認める彼は、
自分自身の発した言葉にすら溜息の混じる思いだった。
 この戦いで失った兵士は11名。
 いずれも腕利きの選りすぐりで簡単にやられる様な奴らではなかった。
……いや、そのはずだった。しかし、結果を見てみればこれだ。

「クルーゼを誑り、グラディスが追い込まれ、ザラが取り逃がす敵ですもの。
 司令部はあなたを責めたりしないわ。勿論、遺族もね」
「フ、怖いねぇ。君の言葉を聞いていると、ついつい自分の気を緩めてしまいそうになるよ。
 君は悪い女だ」
「あら、アンディ。フフ、そうね。私は悪い女。だから、あなたの良い子ぶりっこなんて、
ただの無駄と思ってるわ。一思いに自由にやってしまえばいいのよ」
「……そうだな。悪者じゃなきゃ怖くないだろうな。まったく、砂漠の虎が聞いて呆れる」

 砂漠の虎とは他人が勝手に呼び出した物をプロパガンダに利用しただけであって、
自分自身がそう望んで使っているわけではない。
 使っている彼からすれば、虚像を使って納得するなら安い物といったところだ。
 彼女は気遣いは嬉しいところだが、目下この戦闘結果をどう見るべきか。

353 :量産型牛& ◆eVzLvfNS20BR :2012/08/24(金) 19:11:28.42 ID:???
2/17
 自分の執務室に入った彼は、コンピューターにアクセスして自分のアカウントのデータを呼び出す。
 そこには本国に請求していた資料がメールとして送られてきていた。
 本国から送られてきた資料には、連合が開発したこれまでのソフトウェア開発とは全く違う、
いわば「ゼロベース」から作られた新OSと、それを運用するXシリーズについての資料、
そして、諜報部が探し当てたとある人物の写真があった。

「……OSの開発も、システム運用も、操艦も全部彼女が関わっているわけか。
 彼女はナチュラルなんじゃなかったの?……少なくとも、先見性は僕達を超えている。
 いるんだよなぁ。……天然物ってのは怖いもんだ」

 その写真には、シャノン・オドンネルという名が表示されていた。

 艦長日誌
 昨夜の戦闘は我々が押していたとはいえ、様々な課題が浮き彫りにもなった。
 まず絶対的に戦力が不足している。
 低軌道会戦から回復したばかりのキラ少年やイチェブに頼り過ぎる状況が続いた結果、
我々はイチェブとセブンの二人を失う事態を招いてしまった。
 彼女達の無事を祈りたいが、一方で万が一の不安は払拭し切れない。
 だが、問題はそれだけではない。これで戦力が一つ減ったのだ。
いや、彼女のサポートも失った事で、我々の置かれた状況はより深刻に悪化するだろう。
 二人の扱いはMIAとして処理する他無かったが、その意味がもたらした心理的影響は大きく、
これまで彼らがクルー達に与えていた影響の強さを実感する事となる。

 作戦室にはラミアス中佐以下、フラガ、バジルール、ヤマトの4名を招集し会議を行った。

354 :量産型牛& ◆eVzLvfNS20BR :2012/08/24(金) 19:17:54.66 ID:???
3/17
「……戦闘には勝ったけど、我々も大きな犠牲を払う結果となった。
 それもこれも、彼女へ実験の許可を与えなければ、
…犠牲が増えるはずは無かったことは認めるわ」

 私は努めて冷静に彼らに語りかけた。
 事実を語り率直に彼らの反応を見る他にない。
 バジルールが挙手し私に発言の許可を求めたので同意した。

「大佐の判断は状況的に適切であったかは議論の余地があるとはいえ、
タイミングとしては間違いではなかったと私は考えます。
 打ち上げるという内容を考慮に入れると、平時に行えば敵襲を誘うだけに、
攻撃時に行うのは一つの考え方として分からなくはありませんから。
 ただ、問題はそこではありません。何故、あの実験をする必要があったのですか?
 しかも、あの飛来した物体は?」

 彼女の指摘は鋭い。
 センサー情報は予め作戦室からNジャマーによる妨害に見せかけて撹乱しておいたが、
目視で見えた物まで否定する事は難しい。
 たぶん、ここにいる者は皆その疑問を持っているに違いない。

「……彼女の実験は、最先端のナノテクノロジーの検証だったそうよ。
 成功すればナノマシンによる機体の補強が行われて、
予めプログラムした構造に補強される……という予定だったそうよ。
 それで、そのデータを元に新しいモビルスーツを開発し、
ZAFTの新型に対抗しようと考えていた様ね。
 彼女はあの新型の登場をとても屈辱的に感じていたから、
私の長年の付き合いからの経験的に、許可しなかったら意地でも強行したでしょう。
 だからこそ、許可を出して最適なタイミングを計ったのよ」

 私の話に半信半疑という印象の彼らだが、その中でキラ少年が私に発言の許可を求めた。

355 :量産型牛& ◆eVzLvfNS20BR :2012/08/24(金) 19:20:41.51 ID:???
4/17
「……あの、大佐の言うナノテクノロジーとか、
失礼ですけど普通の人が聞けば怪しい話かもしれません。
 でも、大佐達のこれまでの技術力を考えると、僕は本当の事だと感じます。
 僕もイチェブがやられる時の状況は見ていました。
 あの飛来した物がメビウスだとすれば、
確かにメビウスの痕跡を残しつつ新しい何かに変わっていた様に思います。
 質量も若干増えていたかもしれません。
 たぶん、無事なら実験は成功しているのかもしれませんね」

 彼の発言にフラガが苦笑混じりに言う。

「……成功しても、無事に帰ってきてくれないと残念だよなぁ」

 確かにその通りなのだが、全員の沈黙に彼も流石にまずい事を言ったと思い恐縮する。
 クルー達は皆沈んでいた。
 この状況を長引かせると全体の指揮にも影響しかねないと感じたジェインウェイは、
話題を進める事にした。

「……まだ希望は捨てないでおきましょう。
 彼らが帰ってくる事もあり得るのだから。
 誰も爆発した破片を見ていない以上、生存の可能性も残されていることを忘れないで。
 さて、それでも問題は戦力よ。
 デュエルを失った以上、現状の戦力はストライクとスカイグラスパーの2機のみ。
 正直まだ投入すべき段階ではないけど、ジーニーを出さざるを得ない状況ね」

 どんな手を使うにしても生き残らなくては意味が無い。
 彼らの望みを繋ぐ為にも、帰る場所は健在でなくてはいけないのだ。
 私はここに来て半ば楽観的に進めてきた自分を反省した。
 暫く忘れていたが、私はまだ旅を終えていないのだ。
 ここは地球であって地球ではない。
 こんな場所で彼らを失うわけにはいかないどころか、私にはまだ守るべきクルーが沢山いるのだ。
 彼らを指導することは勿論だが、帰らなくてはならない。

 その後の会議ではジーニーの実戦投入を決定し、次の戦闘に備えることとなった。

356 :量産型牛& ◆eVzLvfNS20BR :2012/08/24(金) 19:24:23.75 ID:???
5/17
 デルタフライヤーはようやくオールトの雲を抜けた所だった。
 彼らはこれからワープ航法での推進に入る予定で航行している。

「デルターフライヤーからヴォイジャー、これから我々は、ハイパードライブに入ります」
「ヴォイジャーからキム、君の実験の成功を祈る」
「大丈夫さ。僕の操縦でも上手くやれるよ」
「ははは、あぁ、ハリー。君は大丈夫だ。オドンネルさんもいってらっしゃい」
「えぇ、ありがとう。行ってくるわ」
「通信終了!ってわけで、行きましょう」
「えぇ、それにしても、ハイパードライブシステム搭載艦だなんて、凄い時代になったわね」

 彼女はデルタフライヤーが「初のワープ飛行実験艦」だと思っている。
 そして、その秘密任務を引き受けていると受け止めているのだ。
 その為にキムはワープの事をハイパードライブと言い換えている。

「さて、行きますよ。通常エンジン停止、シールド展開、ハイパードライブ準備カウント開始。
 カウント10…9…8…」

 彼が大袈裟に出発準備を始める。
 わざわざ彼女をそれらしく思わせる為にトムと二人で作り出した準備モードは、
ご丁寧に効果音まで付いているほどだ。
 船内は擬似的に作り出されたエンジン音が鳴り響き、振動まで伝わってくる。
 スイッチ類も新たに全く関係無いハイパードライブモードスイッチを用意し、
それらをチェックすることで「ハイパードライブするぞ!」という臨場感が伝わる寸法だ。
 オドンネルは神妙な顔で前方を凝視している。彼女は人類初の偉業に関わっているのだ。

「3…2…1…発進!」

 デルタフライヤーがワープに入る。
 彼はワープ1で僅かに飛行してワープを抜けた。ほんの一瞬だった。

357 :量産型牛& ◆eVzLvfNS20BR :2012/08/24(金) 19:27:28.53 ID:???
6/17
「……え、もう終わったの?」
「はい。ハイパードライブは無事成功しました。星図をご覧下さい」

 彼女は彼に促され星図をモニターチェックする。
 確かに太陽系から相当の距離を飛んだ様だ。
 ちなみに彼女が見ている星図は「彼女用」にアレンジされたものだ。
 具体的には周囲の星系情報等の詳細な情報は表示されない。
 まぁ、尤も、この宇宙とどの程度互換性があるかは定かじゃない。
 実の所、この飛行のもう一つの目的が「周辺調査」を兼ねている。
 だが、その時センサーが何かをキャッチした。

「キムさん、何か反応しているわよ」
「え、あぁ、本当ですね。調べてみます」

 彼は長距離センサーで反応した領域に向けて詳細なチェックを入れる。
すると、何かの熱源が宙域に存在していた。
 その熱源は複数存在しているが、恒常的に反応しているというよりは、
突発的に発生したあとの様にものだ。……それが意味する所を彼は知っている。
 彼の表情がそれまでの陽気なものから真面目な表情に変わった。

「……これは、船の残骸だ」
「……なんですって。私達以外に船が。この計画には私達以外にも飛んでいるの?」
「いいえ、それは有りません。我々のみです。……この船の残骸は、異星人のものでしょう」
「……地球外生命体……本当に居たのね」
「とりあえずまずは付近の情報を調べてみます。迂闊に近づいて何かが有っても大変ですから」
「えぇ、そうね。それが良いわね」

 キムはこれまでこの世界で無反応だった「異星人」の痕跡を発見した事に緊張していた。
 しかも、これは考え得る遭遇の中では最悪な部類になるかもしれない。
 こんな破壊的な結果を目の当たりにしては、そう思わざるを得ないと言える。
 先日の「羽鯨」と良い、この世界の宇宙はまだ未知の世界だ。
 デルタフライヤーが進む道は、彼女だけでなく彼らにとっても未踏の道なのだ。

358 :量産型牛& ◆eVzLvfNS20BR :2012/08/24(金) 19:32:14.50 ID:???
7/17
 セブンが居なくなったハンガーのクルー達は、
さすがにプロ意識を忘れずに頑張ってくれているが、
彼らの中にも暗い影が射していることには変わりない。
 私は彼女のイメージに浸る暇を与えるより、
出来る限り明日を勝ち取る道を選ばせたい。
 そうでなくては、第二第三の彼女等を作ってしまう。

「マードックさん、ジーニーの整備状況は?」
「はい大佐、実戦投入には申し分無い状態には仕上がってますぜ。
 こいつでZAFTの奴らに目にもの見せてやりたいもんだ。」

 いつもは陽気な彼も、今日ばかりはその表情に怒りが感じられた。
 私の面前と言う状況に有っても、彼自身悔しい思いを強くしているのだろう。

「そう、有り難う。こんな状況だけど、あなた方の仕事に敬意を表して、
 全整備クルーの階級を一つ昇進させたいと思うの。勿論あなたも含めてよ。
 受け取ってくれるかしら?」
「えぇ!?」

 マードックは突然の話に驚いていた。
 先日曹長に昇進したばかりで、次は唐突に准尉だ。

「あの、大佐、それじゃまるで俺が殉職したみたいじゃないですか。
 あいつ等の昇進は素直に喜んでくれると思いますが、私もでは……」
「気兼ねする?」
「えぇ、まぁ」
「正直な話、クルーの士気を落としたくないの。
 特にアニカと長く触れ合ったあなた達の心理面へのショックは大きかったはずよ。
 私もショックだけど、それを乗り越えて頑張ってもらいたいの。そうじゃなくては、
第二第三の二人を生んでしまうことになる。ジーニーに乗る少年達を守る為にもね。
 それと、実務的な意味もあるの。
 あなたを准尉にすることで、上級士官としてクルーを率いて欲しいのよ」

359 :量産型牛& ◆eVzLvfNS20BR :2012/08/24(金) 19:35:36.35 ID:???
8/17
 マードックは腕組みして暫く考えるが、考えているうちに頭が混乱してきた。
 いや、言われている事も分かっているし、期待されていることも理解出来ているが、
それを自分が担うものという実感が正直湧かないでいたのだ。

「大佐、それは俺みたいな下っ端が頑張ることなんですかい?
 もっと、こう、なんていうか、他に管理職に向いた奴ってのがいるんではないですかい?」

 彼の戸惑う気持ちは仕方ない。
 本来であれば確かに彼の言う通りに他の上級士官が担う仕事だ。
 だが、この船はそうしたクルーを最初から欠いていた。
 そして、最新鋭の新型で運用方法からしてこれまでの艦艇とは根底から違う。
 彼らは既に「掛け替えの無い」経験を有しているのだ。

「……曹長、いえ、准尉。これはめ・い・れ・い・よ?
 それに、私だって最初から大佐じゃないわ。そして、色々なクルーを見てきている。
 あなたの様なクルーだって、立派な士官として成長している。大丈夫。
 あ、勿論、彼女が帰ってきたら、あなたの肩の荷を降ろすのは自由よ。
 それでも階級は有って損をするものじゃないわ。クルーへの説明、宜しく頼むわよ」
「うへぇ、命令ですか。……わかりました。その代わり、どうなっても知りませんよ?」
「ウフフ、大丈夫。期待しているわ」

 私は微笑んで彼の肩に触れた。
 マードックは照れ笑いを浮かべながら頷いた。そして、一礼してクルー達のもとへ戻って行った。
 ハンガーからの去り際に、クルー達の驚く声と喜ぶ声が聞こえた。
 私はそのままの足でパイロット達のトレーニングルームへ向かう。
 これからジーニーに乗ることになる二人に会う為だ。

 ZAFT本国へ戻ったヴェサリウス。
 クルー達は暫く振りの帰還に喜んだが、司令部は次の大規模作戦へ向けての準備が着々と進められていた。
 というのも先頃最高評議会は一つの重要な決断を下した。
 それは地球軍総司令部への総攻撃だ。

この辺で中断します。次は8時の放送時に投下します。
では、有り難うございました。

360 :量産型牛& ◆eVzLvfNS20BR :2012/08/24(金) 20:06:36.71 ID:???
9/17
 表向きはパナマへ向けての攻撃を計画するが、
最終攻撃予定地はアラスカのジョシュアと定めたのだ。
 この計画を表明したのはシーゲル・クライン最高評議会議長によるものだった。
 彼の提案はクルーゼ隊が持ち帰った、ブリッツ及びそのOSの解析により明らかになった
「大幅な技術格差」が理由だ。
 他の評議員達は最初はパナマ攻撃計画を優先すべきだと反対論を張ったが、
議長は彼の決断した根拠となった資料403を提示した。

「……諸君、これでも我々が勝てると思える理由があるかね」

 彼の提示した資料403には、連合の新OSが現在に至っても解析不能で、
これは公表されている世界最高クラスのスーパーコンピューターを、
数台クラスター化した現在でも突破出来ない状況にあるということ。
 そして、その理由がこれまで考えられてきたコンピューター処理の仕方の根底を覆した、
全く新しい基盤を築いてCPU性能を100%引き出す様にする、
いわば完全オーダーメイドと言ってよい仕様で作られていることだ。
 これまで連合のどのような技術でも自分達のものにしてきたどころか、
それを凌駕してみせたZAFTだったが、
このOSの存在は越えられない壁として彼らの前に立ち塞がったのだ。
 しかも、連合はMSの量産体制に入ろうとしている。
 彼らがこのOSを「自由に」インストール出来るのに対して、ZAFTはそれが不可能なのだ。
 このシステムは次元の違う操作性をナチュラル達に与え、
コーディネイターである自分達の戦場での優位性を大幅に後退させるだろう。
 自分達には絶対的な数が不足しているのに対し、
彼らには億単位の交代可能な人員と膨大な資源があるのだから。
 この提案に真っ先に同調したのは、
黄道同盟を結成する時からの同志であるパトリック・ザラ国防委員長だ。

「……まさかここに来て全会一致するとはな」

 私邸に戻ったパトリックは書斎の椅子に座り、久々の休息をとっていた。
 ドアをノックする音が聞こえる。彼は入れと入室の許可を出した。

「……父上、帰りました」
「アスランか。よく帰った。たまには話でもしようか」

361 :通常の名無しさんの3倍:2012/08/24(金) 20:14:59.63 ID:???
支援

362 :量産型牛& ◆eVzLvfNS20BR :2012/08/24(金) 20:20:16.29 ID:???
10/17
 パトリックは立ち上がり、息子を応接椅子へ座る様に促す。
 彼は戸棚からグラスを2つ持ってきて息子の対面に座ると、
テーブルの上に置いてあるガラスのポットから水を注いで渡した。

「……さて、実際に戦ったお前のレポートは見た。
 OSはトロイの木馬としても機能し、敵の指揮官もかなり有能だ……と。
 そして、クルーゼが来なかったら、お前達は鹵獲機共々敗北していたかもしれない……と」

 パトリックの目は笑ってはいなかった。
 そこに有るのはいつもの厳しい国防委員長の目だ。
 アスランはその目を怯む事無く真っ直ぐ見据える。

「……父上、率直な感想を話しても宜しいですか」
「ほぉ、良いだろう」
「まず、戦力が圧倒的に足りません。
 足付きを仕留めるに足る戦力をお与え下さるのかと期待していましたが、
 結果を見てみれば、キグナスとツィーグラーの二隻で全く足りません。
 そして、あのクルーゼの新型機は何ですか。
 あの様な兵器があるなら、さっさと支給して頂きたいものです」

 パトリックは静かに聞いていた。そして徐に口を開く。

「……何も出し惜しんでいるわけではない。
 私とて、お前に充分な戦力を与えたいのはやまやまだった。
とはいえ、あの時点では評議会に危機感が無かったのは確かだ。
 それは、OSは程なく解析され、我々の新たな戦力となると考えていたからだ。
だが、そうはならなかった。
……あの機体は私が独断で許可を出した禁忌の兵器だ」
「禁忌……まさか」
「そう、そのまさかだ。まだ試作段階で、
はっきり言えばテストすらしていない、動くのも不思議な程の代物だった。
 結果的には動いた様だが、薄皮一枚剥げばバッテリーだらけで、
一発でも被弾すれば終了のお知らせだ。……あの男は正直好かん。
 あいつがどうなろうと知った事ではないが、良い腕なのは間違いない様だな。」
「父上……」

363 :量産型牛& ◆eVzLvfNS20BR :2012/08/24(金) 20:25:35.44 ID:???
11/17
 アスランは絶句した。
 父は冷酷な人に変わられたとは感じていたが、まさかそんな棺桶同然の機体を出したとは。
 ……自分に押し付けられなくて良かったが。

「……私が独断であの時に許可を出していなければ、ここにお前は居ないし、評議会に考える暇もない。
 あのOSを普及させるわけにはいかんのだ。
 幸い足付きは我々のエリアに落ちたということだ。
 ジョシュアに入られる前に撃てれば良いが、……無理なら元を叩く他あるまい」
「新作戦ですか?」
「……我々の勝利には2つの道がある。連合を地球に封じ込めるか、潰すかだ。
 潰せる物なら潰しておきたいが、問題は潰せなかった時だ。我々は数が足りんのだ。
 圧倒的な数の不足を埋められる、圧倒的な力が必要なのだ。その為に作戦とは立てる物だ。
 軽々しく私に聞くな。お前はお前の仕事をすれば良い。必要な要望は聞く。それだけだ」
「……はい」

 パトリックはそういって水を飲み干すと椅子に深く身を沈めた。
 そして、話題を変える。

「……クラインの娘の件だが、気の毒な話になったな。
 お前はそれほど好きでは無さそうだが、あれでなかなかの娘だ。
 シーゲルとは今後も仲良くやって行かなくてはならない以上、
あの娘を出来れば無傷で返してやらなくては面目が立たんというものだ。
 そこでだ、お前の部隊の3人が地上に降りたそうだな?」
「はい、彼らの内、イザーク・ジュールは機体を失っていますが」
「……ならば丁度良い。シーゲル傘下の工廟がお前の部隊に新型をよこすと言っている。
 開発中の新型ということだが…、なかなか面白い物になっているようだ。
 部隊の構成はこれまで通りにヴェサリウス、キグナス、ガモフ、ツィーグラーが所属艦になるが、
 地球上ではバルトフェルドの部隊にも協力してもらう形をとろう」
「アンドリュー・バルトフェルドは信頼出来る人物ですか。
 有能だとは聞いていますが、手緩いとも聞いています。」

364 :量産型牛& ◆eVzLvfNS20BR :2012/08/24(金) 20:29:13.10 ID:???
12/17
「手緩い……?あいつはクラインの一派になるが、あの条件で必要十分な働きをしている。
 むしろ、お前の与えられた条件ならば、奴は十分以上の働きをするだろう。
 フフ、手緩い者同士だ。気が合うんじゃないか?」
「父上……その代わり、相応の要求はさせて頂きますよ」
「好きな様にするが良い。クラインと手を携えている今なら何でも通るだろう。
 何よりお前は婚約者だ。立場を有効に使う事だ。」

 パトリックは徐に両手で頭を抑えると、まるでカパッという音でも鳴った様な具合に、
すっぽりと髪の毛が取れた。その下には、にわかに汗ばんだまっさらな頭皮が光っている。
 彼はカツラを片手で持ち、胸ポケットからハンカチを出して拭っていた。
 その様子を息子はただ黙って見ている他無かった。

 食堂から陽気な鼻歌が聴こえてくる。
 白いエプロンに三角巾で桃色の髪を束ねた彼女は、モップを持ってごしごしと床を拭く。
 その動きはさすがコーディネイターだけあり、腰つきも軽やかでいて綺麗に拭き取られている。

「ふんふふん、ふん♪」
「あら、ラクスさん、今日も精が出るわねぇ」

 ソノッコが食堂に入って来た。
 彼女は仕込みのためにやってきたのだ。

「まぁ、スズキさん!こんなお時間から始められるんですね」
「うふふ、料理にはねぇ、愛情を注げば注ぐ程美味しくなるのよ」
「そうなんですか〜。では、私も掃除に愛情を注がないといけませんね!」
「大丈夫よ。あなたの掃除は最近の若者にはなキレがあるから。
 特にその腰つき!……地球に置いて来た私の息子達に見せてあげたいくらいよ。
 あなた、良いお嫁さんになれるわよ?」
「まぁ〜!お嫁さんだなんて!……そんなぁ〜、わたくしまだ考えていませんわ〜」

365 :量産型牛& ◆eVzLvfNS20BR :2012/08/24(金) 20:46:36.09 ID:???
13/17
 彼女は頬を染めて恥ずかしがった。
 そんな彼女の表情に意中の人がいると見て取ったソノッコは、きらりと目を光らせる。

「ヤマト中尉との仲はどうなの?」
「えぇ!?もう、何もありませんわ〜。恥ずかしいじゃないですか〜」
「そうかしら〜?良いのよ?青春は今だけよ。若いうちは恋の一つや二つはして当たり前」
「でも〜、わたくし、婚約者がおりますのよ?」
「そんなもの、親が決めたことでしょう?大事なことは、貴方の気持ちよ。
 勿論、その相手が貴方の意中の人なら良いのでしょうけどね」
「そうですわねぇ〜。殿方って、どなたも難しいですわ。でも、そんなことを言ったら、
わたくし達も誰一人として簡単じゃないのでしょうけど」
「そうだねぇ。まぁ、少しくらい悪い男じゃないと、人生は楽しくないかもしれないわねぇ」

 唐突に出て来た彼女の言葉に、ラクスは人生の先輩を感じていた。

「あの、師匠とお呼びしても良いですか?」
「え、わたしを?」
「はい。スズキ様はとっても格好良い人生の先輩ですわ!」
「そう?じゃぁ、今度料理でも教えて上げようかしら。…私の指導はきついわよ?」
「是非!宜しくお願いしますわ!」

 ラクスとソノッコは固い握手を交わした。
 ここに新たな師弟関係(?)が結ばれたのだ。

 シミュレーションルームでは三人のパイロット候補生が訓練に励んでいた。
 この訓練施設もセブンが設計し直して大幅に強化され、現在は4機のシミュレーターが稼働し、
 1機はMA用、他3機はMS用の訓練モデルで、1機は元からあるGAT-X用のシミュレータで、
残りの2機は新型モデル用のコックピットを模したものとなっている。
 現在はMA用にはカズイ・バスカークが入り、
GAT-X以外のシミュレータにはフレイとトールが入っている。

366 :量産型牛& ◆eVzLvfNS20BR :2012/08/24(金) 20:50:33.47 ID:???
14/17
 中の様子は外のモニターで見る事が出来、現在は二機で模擬対戦をしている様だ。
 シミュレーターはこれまでのものの数十倍高速なプロセッサで動作しているため、
ホロシミュレーションまでは行かないが、かなりリアルな動きをしている。
 彼らには加速重力も感じる様な特別なスーツを着用の上で利用させている為、
実戦とほぼ変わらない環境を体感している。

 シミュレーター内部では3人のパイロットが同一のフィールドで訓練していた。

「うぉわあぁああああ!!?」

 スカイグラスパーが高速で空を貫いて行く。
 カズイはとにかく飛行に慣れる為に空を飛び回るメニューが課されていた。
 彼にはまず加速Gに慣れてもらい、普通に動き回れる様にする必要がある。
 フラガ大尉が実際に乗ったデータを元に割り出した動作データに、
 セブンがそれぞれの成績を加味して調整しているこのシミュレーションは、
実の所を言うと本来の1.5倍は高速に動作している。
 当然通常のGよりも負荷が掛かっているのは言うまでもない。
 だが、このスピードで慣れてしまえば実際の戦場で焦る事は無いだろう。

 そして、その下のフィールドでは2機のジーニーが交戦していた。
 フィールドは砂漠で、現在の実戦フィールドとほぼ同じ条件だ。
 ブルーとピンクに塗装されたジーニーの2機は、ブルーにはトール・ケーニヒが、
ピンクにはフレイ・アルスターが搭乗している。
 ブルーのジーニーにはソードストライカーが装備され、ピンクにはエールが装備されていた。

「飛び回っていてばかりでは試合にならないだろ!」
「いやよ!私のピンクが傷付いちゃうじゃないの!」

 ケーニヒからすれば、まさか逃げる理由がそんなことだとは思っても見なかっただけに呆れた。
しかし、彼もその程度で逃げ切られる程に甘くはない。

367 :通常の名無しさんの3倍:2012/08/24(金) 20:52:37.48 ID:???
支援

368 :量産型牛& ◆eVzLvfNS20BR :2012/08/24(金) 20:53:57.00 ID:???
15/17
「ジーニー、シューティングサポート、アーマーシュナイダー」
『サポート、オンライン』
「えい!」

 ブルーのジーニーが加速を付けて跳躍する。ピンクはエールを噴かして後退。
 そこにすかさず腰から出したアーマーシュナイダーを投げ放つ。

「…甘いわ!!」

 彼女には半歩先が見えていた。アーマーシュナイダーの射線を紙一重で避けると、
ビームライフルで反撃する。彼女には相手がビームも避けると予測していたが、何と直撃した。

「え!?」

 その時、彼女は自分の判断ミスを呪った。
 ブルーはあえてビームに被弾しつつ、シュベルトゲベールを投げていたのだ。
 その一撃は彼女の胸に当たり、敢え無く撃沈。システムフリーズした。

「あーーー!!!んもぅ、女の子なんだから手加減しなさいよ!」
「あはは、それやったら訓練にならないだろ」
「そ、それはそうだけどぉ、でも、少しは考えても良くない?」
「そんな事言っていたら、俺がジーニー貰っちゃうもんね!」
「あぁ!!狡い!見てなさいよぉ。今度は勝つんだから」

『敵、が、現れました。
 ターゲットロック、が、掛かっています。緊急回避行動、を、始めます』
「えっ!?」
「えっ!?」

 彼らが話していると、唐突にOSがアラートを出して動き出した。
 フレイがシステムフリーズしたはずのシミュレータが正常稼働しているのを見て驚く。

369 :通常の名無しさんの3倍:2012/08/24(金) 20:55:10.86 ID:???
支援

370 :量産型牛& ◆eVzLvfNS20BR :2012/08/24(金) 20:57:34.66 ID:???
16/17
「どうなっているの!?」
「フレイ、前見ろ!」
「え!?」

 そこにはビームライフルを打ってくるストライクの姿があった。

「ちょ、キラなの!?」
「……」

 彼からの返答は無い。
 それどころか止まる事無く二人を攻撃してきた。

「速い!?」

 トールはシールドでビームを防ぐが、相手は的確に砂丘の影に隠れながら近づいてくる。
 このような動き方はこれまでのキラの戦闘では見た事が無い。

「誰だ、誰が乗っているんだ!?フレイ、下に降りろ。的になる!」
「キャァ!!!」

 そうこう話している間にフレイに向けてビームライフルが狙撃され、
的確に機体の両手とカメラが打ち抜かれる。

「…まずは、一機」
「な、なんなのよぉ」

 損傷したピンクは再びシステムフリーズ扱いで操縦がオフになった。

「言わんこっちゃない。っちくしょう」

371 :通常の名無しさんの3倍:2012/08/24(金) 20:58:09.25 ID:???
支援

372 :量産型牛& ◆eVzLvfNS20BR :2012/08/24(金) 21:03:03.19 ID:???
17/17
 トールは頭部イーゲルシュテルンにオートファイアモードを設定し、
シールドを構えながら相手の行動を真似る。ここにフレイが健在であれば、
空から戦場を俯瞰しながら進めるのだが、条件は相手も同じ。負けるわけにはいかない。
 ストライクが跳躍する。

「あ、やばい!」

 ブルーのイーゲルシュテルンがオートで射撃を始めるが、
これでは相手にこちらの居場所を教える様なものだ。
 イーゲルシュテルンの被弾をものともせず豪快に噴かして飛び上がったストライクは、
上空でも姿勢を崩す事無く引き金を引く。
 その一撃は正確にカメラを撃ち抜くと、残り二発でコックピットをピンポイントに撃ち抜き、
 ブルーのシステムはフリーズした。

「……くそぉ、やられた。誰だ、一体」

 二人がシミュレーターから外に出た。
 そこには既にシミュレーターから出ていたカズイの姿があった。

「おい、カズイ、この中誰が入っているんだ?」
「知らないよ。僕も今出たばっかりだし」
「ちょっとぉ、キラぁ!あんまり…じゃ………」

 シミュレーターブースのハッチが開き操縦者が現れた。
 3人が見守る中、その人物はヘルメットを脱いだ。
 その人物の存在に驚いている暇無く、なんと本物の警報が鳴り出した。
 上部スピーカーから声がする。

「総員、第一戦闘配備!」

 再び戦闘が始まる。

第25話終了、26話へ続く。
誤字脱字すみません。

12/17の
「大丈夫よ。あなたの掃除は最近の若者にはなキレがあるから。
「大丈夫よ。あなたの掃除は最近の若者にはないキレがあるから。

その他、前の方に間違い見つけたのですが、自分の方を修正しちゃって見つけられてません。
あとで見つけたら書き込みます。
次は火曜日の夜8時くらいからを予定。

373 :通常の名無しさんの3倍:2012/08/24(金) 22:42:02.64 ID:???
GJ!
セブンとイチェブはスタートレックによくある幻覚オチではなかったか…
ボーグパワーで助かってることを祈りましょう。イチェブとデュエルは月に残しても良かったかも。
気落ちしてるクルーを元気づける上手さはさすがジェインウェイ艦長です。
プラントはOSのヤバさのせいで一致団結するとは意外な展開、でもAA潰してもOSが広がるのは止められないよなー。
そして、ヘルメットの人物はいったい何者か?

374 :通常の名無しさんの3倍:2012/08/25(土) 00:48:57.30 ID:???
ザラパパは既に手遅れだったか

375 :通常の名無しさんの3倍:2012/08/25(土) 01:12:56.84 ID:???
アスラン・ヅラは運命か。

376 :通常の名無しさんの3倍:2012/08/25(土) 09:01:07.43 ID:???
更新速度はえーw
セブンとイチェブ心配だ
このまま敵の手に落ちたら面白くなりそうだけどwww

377 :通常の名無しさんの3倍:2012/08/25(土) 10:04:32.26 ID:???
虎さんたち大怪我負いそうな人たちもちょとした事故で同化されれば安心・・・出来ねぇっスネ、サーセンw

378 :通常の名無しさんの3倍:2012/08/25(土) 18:54:12.67 ID:???
もういろんな技術がプラント負けてるじゃんwww

379 :通常の名無しさんの3倍:2012/08/25(土) 20:11:09.23 ID:???
やっぱ変態仮面の評価は低かったんだな。

380 :通常の名無しさんの3倍:2012/08/26(日) 20:26:34.68 ID:???
このまま二人が帰ってこなかったら、また未来の艦長がチート技術もってやってきちゃうぞ☆

381 :通常の名無しさんの3倍:2012/08/27(月) 21:05:51.85 ID:???
そういやこの地球連合がENT並みの技術水準まで成長して外宇宙に進出したら
NJが有る分、ロミュラン戦争が有利になるわけか

382 :通常の名無しさんの3倍:2012/08/27(月) 22:53:47.46 ID:???
NJは核融合弾には効かないし、ロミュランならNJCの開発も余裕だろう。

383 :通常の名無しさんの3倍:2012/08/27(月) 23:02:13.83 ID:???
まず相手に殴らせてから正当防衛を主張するのがロミュラン流
まぁ速攻でNJCを開発されそうなのは確かだが

384 :通常の名無しさんの3倍:2012/08/27(月) 23:22:59.79 ID:???
種でNJ→NJC開発までが結構な短期間だったし、諜報戦でタルシアーとやりあわないといけないしなあ。

385 :通常の名無しさんの3倍:2012/08/27(月) 23:48:28.22 ID:???
スキャンされたら一発で解析されるな
核ミサイルの応酬までNJとNJCを温存する必要があるだろう

386 :通常の名無しさんの3倍:2012/08/28(火) 00:14:04.88 ID:???
ENTの時点で反物質弾頭の光子魚雷や核融合のインパルスドライブが使われてるし、
核分裂にしか効かないニュートロンジャマ―では……

387 :通常の名無しさんの3倍:2012/08/28(火) 00:39:20.33 ID:???
ところがギッチョン、地球とロミュランの戦争で使用されたのは「原始的な核兵器」とされている
当時、地球では光子魚雷は開発されたばかりだしな
それに水爆は起爆に原爆を使用しているぞ、レーザー水爆ならNJは関係ないが

388 :通常の名無しさんの3倍:2012/08/28(火) 00:48:16.14 ID:???
>>387
ENTの設定とか見るとそれらの設定はなかったことになったんじゃないの。

389 :通常の名無しさんの3倍:2012/08/28(火) 00:51:15.05 ID:???
そもそもロミュランは光子魚雷等反物質兵器は使用してないよ
地球側も空間魚雷に核弾頭を装填して使っていた可能性はある

390 :通常の名無しさんの3倍:2012/08/28(火) 00:55:44.35 ID:???
核兵器自体が原始的という解釈もできる。

391 :通常の名無しさんの3倍:2012/08/28(火) 00:59:20.05 ID:???
まぁTOS当時のロミュランがまだ核兵器を使用してたからなぁ
TNGでは光子魚雷を使用しているがクリンゴンからの技術供与だろうか

392 :通常の名無しさんの3倍:2012/08/28(火) 01:02:13.52 ID:???
スタトレ作品間の矛盾はよくあることだ、気にするな。

393 :通常の名無しさんの3倍:2012/08/28(火) 09:11:30.87 ID:???
レーザー核融合って確かGP-02Aのアトミックバズーカの弾頭がそれだっけ?

394 :通常の名無しさんの3倍:2012/08/28(火) 12:59:22.90 ID:???
mk-82型核弾頭はレーザー核融合だったはず。
C.E.の核兵器の方はNJで無力化されてるから純粋水爆は実用化されてないんだろう。
原爆しか使ってないってことはちょっと考えられないし。

395 :量産型牛& ◆eVzLvfNS20BR :2012/08/28(火) 20:01:06.84 ID:???
1/18…2回に分けて投下になるかもです。放送やってます。
第26話「変革の波」

「ちょっと、一体何やってるのよ。あなた一応艦長代理よ?」

 ベラナはコミュニケーターの呼びかけにも応じずにいたトムを探し出した。
 彼はホロデッキに入り浸っていた。
 よく見れば、他にもムルケイ少尉にチャップマン中尉、そしてボリアン人のチェルも居た。
彼らはホロデッキの中である物を作っていた。
 彼女はそれを見て思わず溜息をついた。

「……これはどういうことかしら?」
「あ?あぁ、いや、ドクターがさ、例の少年達がいるだろ?彼らの遊び道具にってことでさぁ」
「それでこんなものを?モビルスーツよ?戦争でもさせる気?」
「いや、ホログラムの中だけの話さ。何ら問題無い。それに、面白そうだろ?どうだい?
 俺達なりにこの世界の技術をしっかり勉強したんだぜ?何よりこいつは俺達の為にもなる。
 単純にコンピューター任せにシミュレートせずに、自分達で組み立てれば論理的理解に繋がる。
 そうすりゃ、何か有った時にも応用が利くだろ?」

 彼は必死に彼女の説得を試みた。
 普段ならこの程度の説得では折れない彼女なのだが、
意外にも彼女はモビルスーツを見つめたまま言った。

「……そうね。一理あるわね」
「だろ?!じゃぁ…」
「それとさぼりは別よ。でも、考えない事もないわ」
「本当か!?」
「えぇ、その代わり、育児放棄と職務放棄の罰は受けてもらうわ。罰として」
「罰として?」

 彼は彼女の次の言葉に息を飲んだ。

「……私を仲間に入れる事。そして、ちゃんと職務を全うすることよ」

 トムは彼女の答えに身構えていたが、
その内容が思っていたより軽くて安堵の溜息が漏れた。

「はぁ〜〜、OK!やるよ。俺が悪かった。すまない」

396 :量産型牛& ◆eVzLvfNS20BR :2012/08/28(火) 20:11:39.70 ID:???
2/18
「……今度こういう事をしたら、艦長に言いつけるからね。職務放棄は厳罰よ。
 で、どうなっているわけ?見た所、あのモビルスーツに似ているけど」

 彼女はそびえ立つモビルスーツを眺めていた。
 全長は若干小さいくらいか、フェイスデザインは連合のGAT-Xと似ている。
 後部にフィンの様なものが付いている他は何も付いていない。
 ちなみに、工房は独自に彼らが設計した開発工房で行われている。
 ゲート部以外はわざわざ無重力に設定されているため、
空間内部では体が浮き上がる様になっている。
 ゲート部の制御コンピューターで調整していたため、現在は誰も浮いていないが、
作業用ロボットがフワフワと空間を浮いている異様な風景だ。

「全長は15m、核融合バッテリー搭載、全方位ビームシールドジェネレータ搭載、
ビームはフェイザー仕様だ。おまけにスピードは亜光速ドライブだぜ!」

 無邪気に笑いながら得意げに語るトムを見て、
ベラナはいつもの事と溜息を吐きつつ率直に感想を語る。

「それじゃ、完全なオーバーテクノロジーじゃない」
「そりゃ、俺達が作るんだ。有っても悪くないだろ?なにより遊び道具だぜ?」

 言われたトムはまったく意に介する気配はない。

「……ほんとに馬鹿ね。で、装甲やその他には?」

 こんなものを本気で少年達に使わせるのだろうか。
まぁ、ただのゲームと言われれば間違いではないが、問題はあると思われる。
 とはいえ、彼女も一人の技術者として中身には興味があった。

「装甲はチタン合金だ。装甲表面をフェイズシフトビームで覆うから問題無いだろ。
 武装はアームにソードクローとパルスフェイザー砲が付いている」

 彼女はトムに詳しい設計仕様のデータを自分のパッドに転送させた。
 その中身を見て暫く考え込んだ様に腕組みしていたが、何やら答えが出たのか彼に言った。

「これでデータ取るわよ」
「はぁ?何の?」
「ミラージュコロイドのよ。装甲はデュラニウムに変更、
背面のコネクターから換装パーツとしてワープドライブを付けて。
 ディフレクターを搭載するにはサイズが小さいから、20mに素体を増量する必要がありそうね。
 勿論、シールド展開させるわよ。あ、ドライブは私が小型シャトルクラスのものを再設計するから、
それにして頂戴」
「はぁ!?おい、そんな化け物作ってどうするんだよ!」
「あら、遊びでしょ?良いじゃない」

 彼女の表情は至って真面目だ。
 彼女は開発中のドレスの改良にこのデータを活用する事に決めたのだ。

397 :量産型牛& ◆eVzLvfNS20BR :2012/08/28(火) 20:15:00.64 ID:???
3/18
 夜の闇に染まり、それは零れ落ちそうな程に輝く星空の下、
数機の獣型のMSが砂漠を疾走して行く。

「……さーて、今宵はどんなご機嫌かな?」

 バクゥを駆る彼の目指す場所は足付き。
 5機のバクゥを引き連れた隊長機は、彼らの旗艦に命令を出す。
 遠方に陣取ったZAFTの地上用母艦レセップスの主砲が砲撃を開始した。

「回避!アークエンジェル上昇後退!」

 ラミアスは敵側が母艦も出してきたのを見て動く事を決意。
 バジルール少尉はMS部隊の発進を命令する。

「キラ・ヤマト、ストライク、行きます!」
「ムウ・ラ・フラガ、スカイグラスパー、出るぜ!」

 エールストライクとスカイグラスパーが発進した。
 そして、残るは新型ジーニーだ。
 ミリアリアは新型で初陣となるフレイにエールを送る。

「フレイ、無理しちゃだめよ。発進はあなたのタイミングで行って良いからね」

 彼女はコクリと頷くと通信を切った。
 ジーニーはストライカーパックにランチャーストライカーを装備し、
シュベルトゲベールも片手にリニアカタパルトを滑走して行った。

 プラント、アップリリウス市某所。
 ここはZAFT内部でもクライン派の人々が集う事務局の様な場所だ。

398 :量産型牛& ◆eVzLvfNS20BR :2012/08/28(火) 20:21:07.65 ID:???
4/18
「ザラ隊キグナス艦長、タリア・グラディスであります」

 グラディスが敬礼する。
 彼女はこの事務局の中枢に案内されていた。
 その部屋への入室が許されるのは、通常は評議会上層に務める者以外にはまず無い事だ。
 そして、彼女を呼んだ張本人が応接椅子に彼女を手招きした。
 彼女はそれに一礼をして応じる。
 彼は彼女が席に着いたのを見て話し始めた。
 その表情は普段にこやかに語る姿の多い彼らしくはないと言える。

「……君を呼んだのは他でもない、今後の戦闘に備えて新たな物資を携えて行ってもらう為だ」
「物資、でありますか」
「そうだ。君も所属するザラ隊には我々も全面的に協力することに決まった。
 そこで君には新造艦を託すことにした。これは白服に昇進した君への恩賞と思ってもらって良い」
「新造艦ですか。それはどのような?」
「我が軍の中では最速の船となる。そこには3機の新型を乗せる。
 詳しくはコレを見てくれたまえ」

 彼はテーブルの上のパッドを彼女のもとへ渡す。
 彼女はそのパッドを手に取り目を通した。そして、その内容に思わず目が点になった。
 そこには新型戦艦エターナル号と新造MSの名が出ていた。
 特に、その新造MSには特秘と有り、誰もが見れば分かる「あの」ロゴマークが載っていた。

「……ニュートロン・ジャマー・キャンセラー!?
しかも、これらはフェイスデザインが連合のものと似ていますね」

 パッドに映るフェイスデザインは連合からダッシュしたものとそっくりだ。
 カラーは何も塗装されていない所を見ると、この機体はフェイズシフトするのだろうか。

「見ての通りだ。クルーゼに渡した試作とは違い、大気圏突入可能な設計になっている。
 ZGMF-X06A-Anfang(アンファング)、07A-Vertrauen(フェアトラウェン)、
08A-Erfolg(エアフォルク)……この三機にはそれぞれ実験的要素がある。
 アンファングはクルーゼの機体の完成型だ。これは奴に乗ってもらう。
フェアトラウェンはイザーク・ジュールへ、エアフォルクにはアスラン・ザラを乗せる」

 単独で飛行能力を獲得している機体は既にディンが存在するが、
この機体はディンが赤子に思える程の性能を持っているだろう。これが3機も投入される。
……これならば連合との差を縮められるどころか、力では凌駕出来るに違いない。
 中身の問題は感じつつも、純粋に軍人としてこの機体を評価するならば、
これは充分に勝負出来る内容の機体だ。

「……随分、物々しい内容ですね。大気圏突入可能ということは、機体を下ろすので?」
「あぁ、そうなるね。君にはその後別の仕事をしてもらう事になるがね」
「別の仕事と言いますと?」
「はっきり言えば、これらの兵器なぞどうでも良い。パトリックがそれで満足するならば、
我々としては安い物だ。君に預ける機体はもう一つある。ZGMF-X09NF-Justiceだ」

399 :量産型牛& ◆eVzLvfNS20BR :2012/08/28(火) 20:24:29.40 ID:???
5/18
 彼女の持つパッドの一番最後の段に、それは掲載されていた。
 そこには上記にあった3機も通常のMSの5倍以上の出力が有り、充分に驚異的な性能であったが、
この最後の機体は……彼女も絶句する程のものがあった。

「議長……これは」
「我々の正義を守る剣だ。これらはまだ開発中だが、完成次第指令を出すことになる。
 そこでの扱いは3機以外は公式には『存在しない』ものとして理解してくれ。
 データ上はZGMF-X09A-Justiceとしてある。……意味は分かってくれるね?」
「……了解致しました」

 彼女はただ敬礼し了承する他に無かった。

 副長日誌
 私は数日振りにヴォイジャーに帰還した。
 アズラエル理事との友好関係は良好に推移し、彼の支援でVSTは巨額の利益を得る事が出来、
必要物資を何でも自由に買える程度に成長した。
 当初目的は達成したと言えるが、艦長達の安否が気遣われる。

「副長!お帰りなさい」

 転送ルームに到着したチャコティを出迎えたのは艦長代理のトムだ。
 穏やかな表情で彼は代理を務めたトムを労う。

「あぁ、トム。ご苦労だった。報告は読んだ。
 Nジャマーの無効化方法を幾つか完成出来たそうだな」
「はい。ジャマーが自由中性子運動を阻害するのを防ぐための方法は確立しましたが、
ジャマーの抑制を完全に無力化するには、大規模なフィールド発生装置が必要になります。
それだとかなりのコストが掛かるので、もう一つの方法を考えてみました」
「もう一つの方法?」
「はい、それがNジャマーキラーです」

 トムの説明では、NジャマーキラーとはNジャマー干渉波を発生させる機器を追尾して破壊する装置で、
衛星軌道上から投下する事で地中深く潜り込み、着地点からNジャマーに向けてドリルで掘り進み破壊する。
 要はNジャマーの散布方法と同じやり方で、Nジャマーそのものを破壊して無力化するのだ。
 この方法であれば不必要な技術開発をせずとも良く、彼らに我々の技術が必要以上に渡る事も無い。
 また、Nジャマーを発生させる技術を持つシステムに対する追尾は、
そのまま自動追尾に利用も出来、ZAFTの艦艇を狙い撃ちする形で利用する事もできる。

400 :量産型牛& ◆eVzLvfNS20BR :2012/08/28(火) 20:27:07.84 ID:???
6/18
「その方法は完全に核分裂反応の抑制は消える事になるが、それが引き金になりはしないか?」
「それは、核戦争へのってことですか?」
「あぁ」
「そうですね。使い方次第では。ただ、それでしたら、Nジャマーを維持する事もできます。
プラント側はもう一度Nジャマーを打ち込めば良いわけですから」
「……なるほど、Nジャマーそのもののキャンセラーを渡すよりはよっぽど現実的か」
「はい」
「わかった。準備はしておけ。それと、考えたな」
「はい?」
「遮蔽装置だ」
「あぁ、はい。ベラナが中心になって開発中ですけどね。完成すれば普通に使えると思いますよ」
「ん?完成していないのか」
「えぇ。どうも、あの技術のままだと単純鏡面反射に近いから地形条件に左右されるんで。
しかも、使用時の速度や様々な条件問題を抱えているんで、まだ研究中といったところです。
 ただ、完成すれば単純に姿を隠すだけじゃない使い方も出来るかもしれません」
「…なるほど、下手に隠すよりはずっと現実的かもしれないな」

 その時、唐突に通信が入った。

『ブリッジからトレス。副長、デルタフライヤーが帰還したいと要請が来ています。
 どうしますか。……その、例の……』
「こちらチャコティ。どういう事だ。彼女には暫く宇宙を旅させるはずだろう」
『はい。……それが、その、面倒な物を拾ってきてしまった様で』
「面倒な物?」
『はい。……詳しくはブリッジへ来てください』
「分かった」

 彼女の言う面倒な物が何であるかは正直期待したくないが、冗談で済むものではないのだろう。
 二人は急ぎブリッジへ向かった。

 砂塵が舞う。
 上空を貫くスカイグラスパーが牽制射撃を行う。
 だが、バクゥは被弾しつつも物ともせずに突き進んだ。

「さぁ、狩りの時間だ。たっぷり礼は返させてもらおう!」

401 :量産型牛& ◆eVzLvfNS20BR :2012/08/28(火) 20:28:27.74 ID:???
7/18
 彼らの部隊長であるバルトフェルドは、昨夜の戦闘から間髪入れず翌夜も攻撃を開始した。
 日が暮れてからすぐの攻撃に、アークエンジェル側の整備陣のスピードを試す意味もある。
 ストライクはエール装備で暗い闇の中をシュベルトゲベールを構えながら臨む。

「昨夜の無敵振り、今宵はどうかな」
「来る!?」

 闇の中センサーが機影を検出するも、後方から砲撃が走り周囲に着弾する。
 熱の籠った砂が拡散し赤外線センサーは撹乱され、思う様にデータでは追えない。

「くそぉ、向こうも考えてきている」

 バクゥが左右から飛びかかる。
 跳躍して躱そうとしたその時、前方からやってきたバクゥに飛びつかれた。

「ぐあっ……くぅ」

 強い振動が伝わり後方へ押し倒されるが、ストライクはバクゥを膝蹴りしてはね除けた。
 蹴り上げられたバクゥは、まるで動物の様に見事に姿勢を直して着地。
 勢いを残して再度飛びかかる。だが、そこを一筋の光線が貫いた。
 ジーニーが放ったアグニはバクゥの動きを牽制し、
飛びかかろうとしたバクゥは回避運動せざるを得なかった。

「何、新型だと!?」

 バルトフェルドが驚いたその時にはもう一撃が放たれ、
最初にストライクに襲いかかった片方が貫通、
もう片方へも連続して射撃し、右前足を損傷した。

「……まだ温存出来る戦力が有ったとはな。迂闊だった。
 だけど、僕もそれくらいの隠し球が無いと、張り合いが無いというものだ」

 彼が母艦へ合図を送る。
 すると、その後すぐに光線が上空を貫いた。
 
「回避!!!」

402 :量産型牛& ◆eVzLvfNS20BR :2012/08/28(火) 20:30:22.17 ID:???
8/18
 ラミアスが回避運動をとらせるが、アークエンジェルの艦橋すれすれの所をかすめて行った。

「今のは……スキュラ!?」
「はい!先程から攻撃してきていた敵母艦からの物と思われます」

 ラミアスの問いにバジルールが答える。
 スキュラが放たれたという事は、彼らも来ているという事だ。

「……あの部隊も降りてきているのね。スキュラは受けて良い攻撃じゃないわ。
 アンチビーム爆雷も効果は薄いけど、やらないよりマシね。
 アークエンジェル微速後退!アンチビーム爆雷前方照準。
 爆雷発射後コリントス、スリッジハマー装填、目標、迎撃及び対モビルスーツ。
 バリアント、ゴットフリート照準、敵艦!」

 アークエンジェルが後退しつつアンチビーム爆雷で防御幕を敷く。
 レセップス側からは砲撃も飛び、爆雷の霧を払う様に打ち込まれる。
 それらはコリントスが迎撃するが、射撃速度はレセップスが上回った。
 敵MSへスリッジハマーが襲いかかるも、バクゥの進路を妨害する程度にしか効果は無かった。
 それでも相手の攻撃方法を妨害する程度の効果はあった。
 地上では新手の攻撃と共にバルトフェルドは隊を立て直し、二手に分かれて攻撃を開始。
 ストライクとジーニーにそれぞれ2機のバクゥが襲いかかる。

「さぁ、バーサーカー諸君、今宵は狂わないのかい」
「ちぃ」

 二機のバクゥは連携してストライクを翻弄する。
 周囲を回る様に背後を取り攻撃を仕掛けるバクゥに、
キラはエールで上昇して位置を取ろうにも上手く飛び上がれず、背後から突き倒されていた。
 後方のフレイの事が気になるが、この状況では自分自身の自由もままならない。

「フレイ、大丈夫か!」
「……」

 彼女からの返答は無い。
 センサーモニターには二機のバクゥが対峙しているのが見えるが、やられている様子はなかった。
 それを見てホッとするが、そんなことをしている暇はない。
 エールのブーストの失敗が悪戯にストライクのエネルギーを削っていた。

403 :量産型牛& ◆eVzLvfNS20BR :2012/08/28(火) 20:32:38.54 ID:???
9/18
「……ジーニー、エコノモーション。グリッド41の533と538のターゲットロック。
 回避モードα1でスタンバイ。シュベルトゲベールのビームをカットして打撃中心で行くのよ」
「ジーニー、エコノモーション、ターゲットロック、回避α1、オンライン。
 ビームカット、を、承認。シュベルトゲベール、の、耐久性能、80%、で、維持」

 ジーニーはアグニを早々に手放すと、近くに置いていたシュベルトゲベールを手に取って構えていた。
 正眼の構えをするジーニーにバクゥが代わる代わる襲いかかるが、彼女のジーニーはするりとそれを躱した。
 その動きは紙一重ではあるが、擦る事無く流れる様な動きで躱し、躱し様に更に一撃を叩き込んでいた。

「な、なんだコイツ!?」

 バクゥのパイロットは敵の無駄無い動きに戸惑っていた。
 相手側はビームすらカットしているため、バクゥのビームサーベルの光が無ければ、
闇夜に隠れてしまう程に真っ暗だ。そんな機体の静けさに溶け込む様な的確な攻撃に、
先程のアグニの射撃能力も想起され言い知れぬ恐怖を感じていた。

 その時、後方から砲弾が複数飛来した。
 それらはストライク及びジーニーの周囲に着弾し、バクゥは回避するために後退を余儀なくされた。

「なんだぁ………チッ、明けの砂漠だと。良い時に邪魔をしてくれるねぇ。
 僕はそういう悪い子が大嫌いだ。……(レセップス、奴らを追い払へ)」

 バルトフェルドはレセップスからの牽制射撃を命令するが、予想外の返事が返ってきた。

『こちらレセップス、ダコスタです。
 隊長!明けの砂漠の奴らがこちらに攻撃を仕掛けてきています』
「なら、ザラの部下にやらせれば良いだろう!」
『そ、それが、その彼らが砂にハマっていまして、……奴らに集中砲火を受けています』

 彼は目眩が起こりそうな気分だった。
 だが、状況は明らかにこちら側に不利と悟った彼は無理をしない。

「……はぁ。分かった。全機撤収!作戦は終了だ」
『はい!』
「こちら、バルトフェルド、全機撤収!繰り返す、全機撤収だ!」

 バクゥが後退を始める。
 その姿を見てストライクが体制を立て直して追う。

この辺で切ります。
残りの投下はこの後23時位を予定しています。では、有り難うございました。

404 :通常の名無しさんの3倍:2012/08/28(火) 20:34:50.08 ID:???
支援

405 :通常の名無しさんの3倍:2012/08/28(火) 22:44:46.30 ID:???
乙!
一体何を拾ってきたのやら・・・

406 :通常の名無しさんの3倍:2012/08/28(火) 22:59:46.48 ID:???
まさかのボーグか?

407 :量産型牛& ◆eVzLvfNS20BR :2012/08/28(火) 23:01:01.93 ID:???
10/18…続きです。放送も
http://live.nicovideo.jp/watch/lv105930221にてやってます。

「まて!!!」

 その時、彼らへ向けて追撃彼に唐突に通信が入った。

「…引きなさい」
「え!?」

 彼は自分の目と耳を疑った。
 モニターに表示されている発信元はジーニーからだが、
 その声は彼が予想していた人物とは全く別の声だったからだ。

「もう一度言うわ。引きなさい」
「……はい」

 明けの砂漠がバクゥへ向けてロケット砲を打ち込みながら勝利の声を上げている。
 戦闘は新たなる勢力の介入により終了した。

「……ブルーコスモス、ここまで来てもまだ僕の理想には届きませんか。
 しかし、めげませんよ。世界は一族の好きな様になると思うなら大間違いです」

 彼はとある施設へ来ていた。
 そこは大西洋連邦首都ワシントンD.C.市内の地下にある古い防空施設で、
基本的には一般に開放されている。だが、この中にまだ秘密の部屋が隠されていた。
 そこでは現在も政治的な力が残されていた。
 彼ら大西洋連邦ブルーコスモス理事会は定期的にこのワシントンに集まっていた。
 その会合では各国の状況が報告され、それぞれの活動内容が検討される。
 この会合でアズラエルはパナマ攻撃に備えた対策と、月基地との交流ラインの回復、
ユーラシア、東アジア共和国との関係の見直しが話されていた。
 アラスカからプロジェクション映像で参加したウィリアム・サザーランドは、
アラスカで建造中のサイクロプスの進捗状況を報告し、こう続けた。

408 :通常の名無しさんの3倍:2012/08/28(火) 23:03:55.31 ID:???
支援

409 :量産型牛& ◆eVzLvfNS20BR :2012/08/28(火) 23:06:18.70 ID:???
11/18
「盟主、我々が何故ハルバートンの肝いりで作らせたアークエンジェル等に依存せねばならんのですか。
 聞く所によれば、それにはコーディネイターの少年が操縦して戦闘しているとか。
オドンネルが戦功を上げる事は構いませんが、コーディネイターの功績が積み上がるのは認められない。
 我々はデータさえあれば良いはずです。今後の我々にとって彼らは得になり得ますか」

 サザーランドからすれば退役軍人が唐突に復隊して功績を上げていることも気に食わないが、
それ以上に盟主のお気に入りとなっている現実が解せなかった。彼女はブルーコスモスではないどころか、
彼から言わせれば『積極的に』コーディネイターを使う人間だ。そんな者は同志とは呼べない。
 彼の話を静かに目を閉じて聞いていた盟主は、ゆっくりと穏やかに答えた。

「では、消しますか?」

 その答えはサザーランドの望む通りのものだった。だが、盟主は直接的な言動はこれまであえて控えている人だった。
 故にこの直接的な言葉の裏に込められた意味を計りかね、幾分自重気味に自分の希望として同意する。

「…出来ればですが」

 アズラエルからすれば彼の意図等お見通しであった。少なくとも『そういう』メンバーをこれまで集めて来た。
この場でこのような希望が出る事自体は不思議ではない。だからこそ、彼はあえて過激な発言をしてみせたのだ。
 しかし、それをそのまま放っておく気など更々なかった。
 彼は目を開けてサザーランドの方を見ると、穏やかな表情を維持しながら口を開く。

「フフフ、サザーランドさん、私は貴方のそうした真っ直ぐな姿勢は好きですよ。
 でも、指揮官たる貴方がその視野では困りますねぇ。良いですか?貴方もご存知の通り、
我々の当面の目標はコーディネイターに勝つ事です。
 青き清浄なる世界とは、我々が完全かつ完璧にナチュラルとして勝利する事ですが、
では、存在するコーディネイターを全員殺すことが、勝利足り得ますか?」

 サザーランドは盟主の言わんとする意図が見えなかった。
 この部屋は空調も利いて涼しいくらいに管理されている筈だが、額に嫌な汗が沸き出すのを感じる。

「……少なくとも、それが我々の目標と……」

410 :通常の名無しさんの3倍:2012/08/28(火) 23:08:26.10 ID:???
支援

411 :量産型牛& ◆eVzLvfNS20BR :2012/08/28(火) 23:10:06.16 ID:???
12/18
「ノン、ノン、ノン、違いますよ。我々は彼らとは違う。そんな事をして誰が我々を支持します?
 良いですか?我々が支持されるのもエイプリルフールあってのこと。それを忘れてはなりません。
我々は飽くまで『凶悪な虐殺者を倒す正義の味方』でなくては駄目なのですよ。
 そして、もう一つ大事な事は、プラントは元々我々のものだということです。砂時計に罪は無いのです。
 我々が目指すのはコーディネイターを完全な管理下に置くことであって、抹殺する事ではありません。
 お忘れの様ですが、コーディネイターなどいずれ滅びる運命なのですから。
 第一、そんな処分の手間とコストを出せる程、我々も余裕は無いですしねぇ」

 盟主の言葉にサザーランドはしばし言葉を失った。
 彼の言葉通りだとすれば、盟主はここにきてコーディネイターを容認するというのだ。
 ブルーコスモスの鉄の誓いは自然に反するコーディネイターの抹殺であり、容認ではない。
 表情を硬くした彼は、これまで見せた事は無い強張った表情で盟主を見据える。

「それでは我々の求心力は著しく低下するのでは。
 ジブリール氏率いる欧州陣営が我々に取って代わられては、盟主も立つ瀬無くなりますよ」

 彼の出したジブリールとは欧州を統べるロゴス筆頭格「ロード・ジブリール」のことだ。
 彼の背後には一族の影もあり、アズラエルからすればライバルとも呼べる勢力を有している。
 実際、現状のブルーコスモスは筆頭八家(ヴァミリア、リッター、ネレイス、グロート、
モッケルバーグ、アズラエル、マクウィリアムズ、コーラー…計、筆頭8家)の内、4家の信認を得ているが、
残りの3家はジブリールを押しているのだ。独自の路線を行くモッケルバーグが棄権したことで信認を得たが、
いつ覆ってもおかしくはないとも言える。
 サザーランドが彼を脅してくるなど鼻で笑う様な話だが、それでもそれを表に出す程愚かではない。
 この程度の言動は想定の範囲内とポーカーフェイスを決め込む。

「……フフ、ジブリールのユーラシアとの関係は、飽くまで我らの利益と合致する範囲においてです。
 ここ暫くの彼らの原理主義には私も辟易していましてね。このまま彼が突っ走ったとしましょう。
その先が何処に行くか、貴方は想像出来ませんか?」
「先……ですか。それは、私の様な軍人が考える範囲を超えているかと…」

 サザーランドは言葉に窮していた。
 仮にここで答えるということは、自分の立場をハッキリさせてしまうことになる。
 そうなればこれまで築き上げて来た地位も全て水の泡になる可能性が考えられた。
 何より全く表情を動かさないどころか、余裕すら見せているアズラエルとやり合える程に彼は度胸が無かった。
 そんな彼のことを見透かしていたアズラエルからすれば、全く恐れるものは無かった。

412 :通常の名無しさんの3倍:2012/08/28(火) 23:10:30.54 ID:???
支援

413 :量産型牛& ◆eVzLvfNS20BR :2012/08/28(火) 23:14:17.04 ID:???
13/18
「フフ、シビリアンコントロールですか。優等生の回答ですね。まぁ、仰る通り、軍人はそれで良い。
 まぁ、砂時計と熱くなることは構いませんが、あれらを壊してもらっても正直困るんですよ。
 そうじゃなくては、私は皆さんにどのような報酬を提示出来ると思います?」
「……」

 彼もこの場でジブリールの動向を論評する必要性を感じていなかったため、あえて話題を変えた。
 そうすることでサザーランドの非礼に恩を売ったのだ。
 サザーランドもさすがに黙る他無かった。それを見たアズラエルは微笑みを浮かべて続ける。

「何事も限度があるのです。地球人として、我々は地に足を付けて考えて行かなくてはなりません。
 さて、我々が今後有利に展開して行く為には、幾つかの要点がありますよ。
 まず一つはマスドライバー。そして、もう一つは優秀な精密加工技術です。
 パナマの死守は既定路線として、そろそろカオシュンを頂きましょうか」

 サザーランドは盟主の唐突な提案に戸惑った。
 カオシュンはビクトリア前に失ったマスドライバーで、ZAFTもかなりの軍勢を派遣している。

「カオシュン?ZAFTを攻撃出来る準備が整ったのですか?」
「いえいえ、まだですよ。ですが、そう遠くない先に整いそうですねぇ。
我々はそれを単独で実施してそのまま台湾を併呑し、その足で日本も取り返しましょう」

 彼は盟主の意図がいよいよ分からなくなった。
 彼の言う事をそのまま受け取れば、ブルーコスモス内部での亀裂を誘発する結果を招くのだ。
 それでも聞かずにはおれなかった

「……盟主、東アジア共和国との同盟を切られるのですか?」

 おそるおそる尋ねる彼に、問われた側は何ら悪びれる事も無く呆気なく答えた。

「えぇ。そうです。世界に三つも指導者は要りません。ですから、私は整理する事にしました。
最初に潰すのは東アジアです。考えても見て下さい。我々が勝利したとしましょう。
その後の世界はどうなりますか?」

414 :通常の名無しさんの3倍:2012/08/28(火) 23:15:33.56 ID:???
支援

415 :量産型牛& ◆eVzLvfNS20BR :2012/08/28(火) 23:17:55.60 ID:???
14/18
 一同がアズラエルの問い掛けに思考する。
 普通に考えれば、これまでの経緯を考えればやっとの思いで地球連合政府を作ったのだ。
 地球連合でそのまま統一されると考えていた。
 その考えをそのままサザーランドが代表して答えた。

「……地球連合政府により統一されるのでは?」
「いいえ、違います。良いですか?まず私は予言しましょう。仮にこの戦いに現時点で勝ったとしたならば、
まず間違いなく第四時世界大戦が起こりますよ。これは断言しても良い、世界とはそう言うものなんです。
 我々が何の為に戦っているのか、そろそろ皆さんも理解するべき時でしょうかね。
 我々が求める世界の在り方とは、青き清浄なる世界を標榜する、
我ら大西洋連邦を盟主とする統一世界の樹立ですよ。違いますか?」

 一同は絶句していた。
 彼は無理をしてまで統一を成し遂げた連合をあっさりと否定したのだ。

「盟主、このような話が……この中に仮にスパイが居たとして漏れ出したら、一大事ですよ」

 確かに彼の言う通りだろう。この場に居る誰かが彼の話を外部に漏らしたならば、
アズラエルの立場は間違いなく危うくなるに違いない。それは彼自身御免こうむりたい。
 アズラエルの表情から笑みが消える。先程まで穏やかに笑みを浮かべていたのが嘘の様に。

「……ほぉ、この場にそのような方がいらっしゃるのですか。それはそれは。どうぞ、ご自由に為さると良い。
 私に逆らうというなら、全力で潰すまでです。私は主義に反する行動をされる方は大嫌いですが、
それ以上に裏切り者は許しませんよ。私を盟主と仰ぐ以上は……んふふ、皆さんも覚悟を決めて頂きましょうか」

 彼はその視線でその場の衆目を射抜く。張りつめた薄氷を感じさせる危うい空間に放たれた矢は、
その氷に絡めとられて固まった者達を容赦なく射抜いたのだ。
 この日の秘密会議で大西洋連合は、彼の方針転換に従い連合内の融和優先路線から舵を切ることを決めた。

 アークエンジェルは戦闘終了後着陸し、地上の明けの砂漠と交信していた。
 彼らの側の要求はこちら側との交渉を要求していた。
 その要求はこちらも願ったりなので受諾し、ラミアス達が代表として船外に出ることにした。
 一応は用心して武器は携帯したのは言うまでもないが、こちら側から出て行かなくてはな、
相手も誠意を感じてはくれないだろう。

416 :通常の名無しさんの3倍:2012/08/28(火) 23:19:43.67 ID:???
支援

417 :量産型牛& ◆eVzLvfNS20BR :2012/08/28(火) 23:20:56.27 ID:???
15/18
 彼女は覚悟を決めて外へ出る。

「助けていただいた、とお礼を言うべきでしょうかね。
 私は地球軍第8艦隊所属、艦長のマリュー・ラミアス中佐です。」

 彼女が手を差し出す。
 その時、前方に立つ如何にもアラブ人といった風体の中年男性の背後で声がする。

「あれー?第8艦隊ってのは全滅したんじゃなかったっけ?」
「……」

 その声は少年の声だが、なかなか痛い所を突いてくる。
 彼の言葉に前方の男が口を開いた。

「アフメド、お客さんの前で失礼だぞ。口を慎め」
「……はい」

 彼に叱られ、少年は素直に従った。
 アラブ人の男は差し出された手に握手をして名乗った。

「俺達は明けの砂漠だ。俺はサイーブ・アシュマン。
 礼なんざ要らんが、分かってんだろ?別にあんた方を助けた訳じゃない」
「……」
「はん!こっちもこっちの敵を討ったまででねぇ。」

 ラミアスは静かに彼の言葉を聞いていた。
 そこに彼女の隣に立つフラガが尋ねる。

「へぇ〜、砂漠の虎相手に、ずっとこんなことを?」
「お、あんたの顔はどっかで見たことあるなぁ」
「ムウ・ラ・フラガだ。この辺に、知り合いは居ないがね」
「ほぉ、エンディミオンの鷹とこんなところで会えるとはよぉ」

418 :通常の名無しさんの3倍:2012/08/28(火) 23:21:56.41 ID:???
支援

419 :量産型牛& ◆eVzLvfNS20BR :2012/08/28(火) 23:24:29.72 ID:???
16/18
 彼の言葉にその場の連合クルーは皆驚かざるを得なかった。
 彼らはどの程度のことを知っているのだろうか。

「情報も色々とお持ちのようね。私達のことも随分とご存知の様で?」
「……地球軍の新型特装艦アークエンジェルだろ。
 ザラ隊に追われて、地球へ逃げてきた。そんで、あれが……」

 彼が言いかけた時、背後の少女が話した。

「X-105。ストライクと呼ばれる、地球軍の新型機動兵器のプロトタイプだ」

 彼女の声は隣に居た長髪の屈強そうな男が嗜める。
 それを見てサイーズは話を続ける。

「さてと、お互い何者だか分かってめでたしってとこだがな、こっちとしちゃぁ、
 そんな厄の種に降ってこられてビックリしてんだ。
 こんなとこに降りちまったのは事故なんだろうが、
あんた達がこれからどうするつもりなのか、そいつを聞きたいと思ってね。」
「……それは、力になって頂けるのかしら?」
「へ!話そうってんなら、まずは銃を下ろしてくれ。あれらのパイロットも」

 ラミアスはしばし思案したが、この場は彼らの言葉に従う事にした。
 力の上ではこちらが上なのだ。
 こちらが誠意を見せなければ折れ様も無いのは仕方の無い話だ。

「……ふぅ。分かりました」

 彼女の動きにバジルールは溜息を吐くが、隣のフラガも彼女に続いたため、
自分も倣わざるを得なかった。

「ラミアスからストライク及びジーニー、二人とも、降りてきて」

420 :通常の名無しさんの3倍:2012/08/28(火) 23:24:51.64 ID:???
支援

421 :量産型牛& ◆eVzLvfNS20BR :2012/08/28(火) 23:27:12.98 ID:???
17/18
 彼女の呼びかけに、二機のパイロットがコックピットのハッチを開けて出てくる。
 サイーブは両機から降りてきたパイロットの背格好を見て、小柄なことに驚いていた。
 その内一人は女性であることにもっと驚いていたが、彼らがやってくるのを静かに待った。
 そして、二人が彼らのもとにやってきた。
 少年がまずヘルメットを脱ぐ。

「ああっ!」

 先程のブロンドの少女が大声で驚きの声を上げた。
 他の明けの砂漠の構成員達も、パイロットが少年だった事に動揺している。

「あぁ……ぁぁ……くっ!」

 少女がカリカリとした雰囲気でキラの前に来ると、唐突に平手打ちを放とうとした。
 しかし、その手はキラによって受け止められてしまう。
 突然の行動に両サイドの面々が冷や汗をかいていた。

「お前……」
「ぇ?」
「……お前……お前が何故あんなものに乗っている!?」
「う゛ぅっ」

 彼女の言葉は自分自身でも疑問に思っていることだった。
 本当に何故こんな事になったのだろう。
 彼女に言われるまでもなく、出来る事なら乗りたくなんてなかった。
 そうこう思っていると、彼女は唐突に瞳に涙を浮かべていた。

「っう゛……う゛う゛っ……ぇぇ……くっ」

 その顔を覗き込んで、何やら既視感を感じた。
 いや、確実に会った事があった。

「ぁっ!?君……あの時……モルゲンレーテに居た」
「っえぃ……離せこのバカっ!」

422 :通常の名無しさんの3倍:2012/08/28(火) 23:27:35.13 ID:???
支援

423 :量産型牛& ◆eVzLvfNS20BR :2012/08/28(火) 23:29:59.57 ID:???
18/18
 急に動かれたために、彼女を掴んでいた手がほどけ、
そのまま平手打ちを食らってしまった。

「うっ!」

 とうとうやってしまった彼女の動きに、連合クルーは勿論、
明けの砂漠の面々も一瞬凍っていた。
 そこに先程彼女の隣に居た長髪の男が彼女のもとへ行き嗜める。

「いい加減にしなさい!……連合の皆さん。申し訳ない。
 彼女の行為は私が責任を持って叱責する。交渉を続けて欲しい」

 そう言い彼は彼女の手を掴むと、強引に後退させた。

「何なんだ?」

 フラガは苦笑する他無かったが、
打たれたキラの表情が面白かったので全く構わなかった。
 そこにもう一人のパイロットが彼らの前に立ち、徐にヘルメットを脱いだ。
 それを見た彼は思わず目を疑った。

「えぇえ!?!あ、た、大佐!?」

 フラガの驚きの声にその場の衆目が集まる。

「……驚かせたかしら。交渉は我々も望むところ。申し遅れたわね。
 私は地球連合軍第八艦隊大佐、シャノン・オドンネルよ」

 ジェインウェイの登場に、その場の皆が息を飲んだ。

第26話終了。第27話へ続く。
投下完了です。支援書き込み有り難うございました。いつも助かります。

424 :通常の名無しさんの3倍:2012/08/28(火) 23:50:22.95 ID:???
GJ!
やはり種SSおいて盟主王は重要だな、世界レベルで影響及ぼせるポジションにあるのは大きい。
そしてまさかのNJキラー、こういうやり方で対処するのは新鮮だな。ザフトはNJCMSを一気に投入予定とは。
明けの砂漠が出てきたと思ったら艦長がパイロットw

425 :通常の名無しさんの3倍:2012/08/29(水) 01:24:57.55 ID:???
社長www何してるんですか社長wwwww

しかしNジャマーキラーって考えてみれば簡単な発想な気がした。
どうしてだれも思いつかなかったんだろう?

426 :量産型牛& ◆eVzLvfNS20BR :2012/08/29(水) 02:16:43.04 ID:???
10/18の
その時、彼らへ向けて追撃彼に唐突に通信が入った。
その時、彼らへ向けて追撃しようとするキラのもとに唐突な通信が入った。
…と変更させて頂きます。脱字申し訳ありません。

12/18の
…ジブリール氏率いる欧州陣営が我々に取って代わられては、盟主も立つ瀬無くなりますよ」 は
 ジブリール氏率いる欧州陣営に我々が取って代わられては、盟主も立つ瀬無くなりますよ」 と
変更させて頂きます。申し訳ありません。

427 :量産型牛& ◆eVzLvfNS20BR :2012/08/29(水) 03:02:19.99 ID:???
14/18
 普通に考えれば、これまでの経緯を考えればやっとの思いで地球連合政府を作ったのだ。 は
 普通に考えれば、これまでの経緯を考えてもやっとの思いで地球連合政府を作ったのだ。 に
訂正します。申し訳ありません。

>424 >425 他乙下さいました皆様へ
 労いの乙有り難うございます。いつも励みになります。
 残り4話で一時投下休止ですが、お楽しみ頂けましたら幸いです。

428 :通常の名無しさんの3倍:2012/08/29(水) 17:31:55.09 ID:???
乙です

>「全長は15m、核融合バッテリー搭載、全方位ビームシールドジェネレータ搭載、
ビームはフェイザー仕様だ。おまけにスピードは亜光速ドライブだぜ!」
    ↓
>「ミラージュコロイドのよ。装甲はデュラニウムに変更、
背面のコネクターから換装パーツとしてワープドライブを付けて。
 ディフレクターを搭載するにはサイズが小さいから、20mに素体を増量する必要がありそうね。
 勿論、シールド展開させるわよ。あ、ドライブは私が小型シャトルクラスのものを再設計〜」

…ちょっと妄想して鼻血ふいたw
スタトレ技術のモビルスーツ凄すぎw…

正直「ガイア・ギア」の「マン・マシーン」と比較してみたら?…w

429 :通常の名無しさんの3倍:2012/08/29(水) 20:11:33.53 ID:???
最高レベルのマンマシーンでも最小タイプの2人乗りタイプ15シャトルポッド(長さ3.6m幅2.4m高さ1.6m)にすら歯が立たないと思う。
そのくらい恒星間文明とは圧倒的格差がある。

430 :通常の名無しさんの3倍:2012/08/29(水) 21:24:10.43 ID:???
ザフトが核エンジン機体投入しすぎワロタw

431 :通常の名無しさんの3倍:2012/08/29(水) 21:53:06.09 ID:???
>>428
正直428仕様のガイアギア作ったら
これ一機でどれだけ無双可能かな?w

(この機体&母艦が一年戦争時に転移…な流れでw)

432 :量産型牛& ◆eVzLvfNS20BR :2012/08/29(水) 22:19:18.03 ID:???
皆様、乙有り難うございます。

ガイア・ギア知らなかったんですが、ちょっと調べてみましたら御大原作ですか。
公式でクローンやっていたんですね。なるほど、これは良い事聞いたw
このVoy in Seedが終わったらですが、UC世界もどきの2次やる予定です。
世界観としてはクロスボーンとVの間の物語ですが、かなり違う解釈にしてます。
だから厳密にはUCじゃないですね。割と痛いくらい突き抜ける感じやれたら。(え

433 :通常の名無しさんの3倍:2012/08/29(水) 22:24:43.46 ID:???
>>431
コクピットにレプリケーター付けとけばジオン&連邦の全戦力壊滅ぐらいできるんじゃね。
ちなみにスタートレックでは20mサイズだとランナバウトという艦種がある。

434 :通常の名無しさんの3倍:2012/08/29(水) 23:14:04.07 ID:???
デルタ宇宙域や未来の技術持ってるヴォイジャーがその全力を傾けてガチ戦闘MS作ったらか。
デルタフライヤーとかあれでも戦闘用じゃないんだよなあ。

435 :通常の名無しさんの3倍:2012/08/30(木) 00:53:03.29 ID:???
ガイアギアまでいかなくてもプルシリーズはクローンだよ
プルも含めるのかは知らんけど

436 :通常の名無しさんの3倍:2012/08/30(木) 01:07:46.97 ID:???
>>432
ガイア・ギアは今はなかったことにされていてGセイバーが公式になってます。

437 :量産型牛& ◆eVzLvfNS20BR :2012/08/30(木) 02:04:16.37 ID:???
14/18
「…まず間違いなく第四時世界大戦が起こりますよ。…」は
「…まず間違いなく第四次世界大戦が起こりますよ。…」に訂正です。時→次です。うぅ…

>435
 なるほど、確かにプルシリーズはクローンでしたね。忘れてました。
>436
 そうなんですか。一応wiki確認ですが、本人が絶版希望(?)だそうなんですねぇ。
 GセイバーはあのCGの奴ですよね………、あれVの未来の話だったのか……。

 ただ、何となくここ最近のガンダムの方向性的には「恒星間文明化」が一つのポイントで、
たぶん、種のエビデンス01もその為の布石の一つとしても考えられたんだろうと愚考してます。
 そういう需要があるかどうかは別として、作品を作る側からしたら、違う道を模索する冒険は
やりたかったんじゃないかなぁって。でも、結局やる事は、既に他のハードSFがした事の後追い
ではあるんですけど、見てる側からすれば「ガンダム」は別腹的な。
 とはいえ、それが実際に出て来たら袋叩きにあったりするんでしょうね。難しいなぁ。

438 :通常の名無しさんの3倍:2012/08/30(木) 03:43:03.49 ID:???
もうファーストの焼き直しやテロガンダムは食傷してるので外宇宙に出るなら歓迎したい

でも結局は太陽系政府と他星系の独立戦争記になっちゃうんだろうな

439 :通常の名無しさんの3倍:2012/08/30(木) 09:14:54.54 ID:???
デルタフライヤーさんは墜落して地下3kmまでめり込んでも大丈夫な強度。

440 :通常の名無しさんの3倍:2012/08/30(木) 17:38:50.07 ID:???
俺的に「GセイバーシリーズのMS」は
なんか「陳腐・チョダサ」過ぎて好みでないw

ガイア・ギアのマン・マシーン、
(俺的にブロン・テクスター量産型、ゾーリン・ソール
ギッズ・ギースは見てるだけで逝き捲りそうだ…w)

正直仮に今アニメ化しても十分通用すると確信するレベル


441 :通常の名無しさんの3倍:2012/08/30(木) 17:50:11.27 ID:???
ギャラクシー級の巨大な船体ですら、コントロール不能になって宇宙空間から惑星上に落下してハードランディングしても原形止めてたからなぁ
まあ、恒星間宇宙文明の宇宙船とすればこれくらいの性能は必要なんだろう

442 :通常の名無しさんの3倍:2012/08/30(木) 20:24:28.99 ID:???
スタートレックの装甲だとヴォイジャーの展開装甲、8472のバイオシップの生体装甲(改良ナノプローブには弱い)、
ダイソン天体のカーボンニュートロニウム装甲が最高レベルといったとこかね。

443 :通常の名無しさんの3倍:2012/08/30(木) 22:35:20.91 ID:???
>>440
ゲームのGセイバーのMSはちょっとはカッコ良くなってる。

444 :量産型牛& ◆eVzLvfNS20BR :2012/08/31(金) 19:01:18.14 ID:???
本日の投下は11時頃を予定。

445 :通常の名無しさんの3倍:2012/08/31(金) 20:20:40.76 ID:???
待ってます!

446 :通常の名無しさんの3倍:2012/08/31(金) 23:07:49.05 ID:???
生放送はじまた


447 :量産型牛& ◆eVzLvfNS20BR :2012/08/31(金) 23:38:37.82 ID:???
1/14…ttp://com.nicovideo.jp/community/co1722789で放送しながらです。
ちなみに、一枠目来て下さいました方、有り難うございます。作業枠で申し訳ないです。
2枠目以降は投下しながら雑談枠ということで。分割量から投下は2回に分かれるかと。
第27話「契約」

「サイーブ!どういうことだよ、これは……」
「客人だ!行儀良くしろよ。」

 サイーブはつれて来た「大きな客人」を仲間達に紹介する。
 彼らのアジトは砂漠の中の岩山に囲まれた地形の中にあった。
 元は渓谷の様な場所だったのかもしれないが、この乾燥の中にあっては単なる岩の塊だ。
 アークエンジェルはその渓谷を両翼をこするスレスレの所を後退しながら入って行く。
 この操縦はパイロットの腕が試されるが、アーノルド・ノイマンは完璧にこなしてみせた。
 明けの砂漠のメンバー達は、その操縦技術の高さに感心してみていた。

「OK、二人とも引っ張って!」
「了解」

 サイの合図でキラとトールはストライクとジーニーでシートを引っ張った。
 大きく繋ぎあわせた布は、丁度砂漠の色に同化する程度の汚れたベージュの布だ。
 3人がアークエンジェルを隠す作業をしている頃、
上級士官達は彼らのアジトの中へ案内されていた。

 艦長日誌
 我々はサイーブ・アシュマン氏率いる「明けの砂漠」の本拠地に案内された。
 彼らとの交渉を進める上でも落ち着いた場所が必要だったこともあり、
彼ら側からの申し出に甘える形となった。
 これだけの譲歩を見せるのだから、彼らの欲するものも相当のものだろう。
 私はラミアス、フラガ、バジルールの3人を引き連れて彼らのアジトに入った。

「ひゃー、こんなとこで暮らしてるのかぁ…」

 フラガは彫り貫かれた岩穴の通路を見て興味津々といったところだった。
 だが、この場所で暮らすのは正直御免被りたい。
 程なく彼らのアジトの事務所としている場所に着いた。
 そこには所狭しと様々な通信機器等の機械が置かれている。
 それらの機材はいずれもレジスタンスのレベルで持てる様な物ではない。
 彼らの支援者が気になる所だ。

「ここは、前線基地だ。
 皆家は街にある。……まだ焼かれてなけりゃな」
「街?」
「タッシル、ムーラン、バナディーヤから来てる奴も居る。
 俺達は、そんな街の有志の一団だ。コーヒーは?」

448 :量産型牛& ◆eVzLvfNS20BR :2012/08/31(金) 23:43:36.23 ID:???
2/14
 ラミアスの問いにサイーブは素っ気なく答えたが、
彼の言葉の向こうには、肉親の無事は諦めていることが伺われる。
 彼女は彼の勧めに謝意を伝えるが、どうやらセルフサービスの様だ。
 その反応に戸惑ったが、無理して飲む必要も無いので席に着く事にした。
 ジェインウェイとラミアスを真ん中に、ラミアスの隣をフラガが、
ジェインウェイの隣をバジルールが座る。
 対する明けの砂漠側はサイーブがジェインウェイの対面に陣取る形で着席した。
 口火を切ったのは彼らだ。

「まずはお互いの無事を祝おうじゃないか」
「えぇ、お互い無事に出会えた事、運命的に感じさせて頂きますわ。
 船のことも助かりました。正直ここへは独りぼっちでしたから」

 ジェインウェイが代表して彼の言葉に謝意を告げる。

「あの、ちょっと良いですか?あの彼女は?」

 そこにフラガがサイーブに問い掛けた。
 問われた彼は、頭の中で先刻の事を回想していた。

「私も話が聞きたい」

 少女が小声で話しかける。
 彼は周囲に気付かれない様に自然を装い答える。

「でもここじゃな」
「連中なら、キャンプに入れても問題ないと思うが」
「…知っているのか?」
「…少しだけ…な」
「……そうか。作業している分には問題無いだろう」
「有り難う。サイーブ」

 彼女は事情有って預かっているが、最初は厄介なものを引き受けたと思っていた。
 しかし、実際に接した彼女は自分の感情に素直でめまぐるしくは有るが、
彼女の泣いたり笑ったり怒ったりする姿が微笑ましくもあった。
 気取った所も無い彼女はすぐに打ち解け、彼らの仲間の中に深く溶け込んでいる。

449 :通常の名無しさんの3倍:2012/08/31(金) 23:43:43.18 ID:???
支援

450 :量産型牛& ◆eVzLvfNS20BR :2012/08/31(金) 23:47:05.24 ID:???
3/14
「…俺達の勝利の女神」
「へぇ〜。で、名前は?」
「……」
「ん?いやぁ、女神様じゃぁ、知らなきゃ悪いだろ」
「……カガリ・ユラだ」
「そう、カガリちゃんか。さっきは見事な平手打ちでしたねぇ。
 びっくりしたけど、元気が良いってのは良いねぇ。健康的だぁ」

 彼は戯けてみせているが、彼女の素性はジェインウェイも気になっていた。
 キラと接点が有るという事は、元々はここの人間ではないのだから。
 やんわり名前を聞き出した彼は、端から見れば単なる軟派者といったところだが、
この場でこの仕事は充分に良く出来ましたと言いたい所だった。

「ところでオドンネルさんと言ったな。あんたはいつもMSに乗って戦っているのかい?」
「…いいえ。あの戦闘が初めてよ」
「ほぉ、そいつはすげぇ。
 俺は女って奴は信用しねぇたちなんだが、あの戦いを見せられちゃぁ、
さすがに信用しないわけにはいかねぇと思ったよ」
「それはどうも」
「で、……あんたたちゃぁ、アラスカに行きてえってことだよな」
「えぇ。ゴールはそこよ。でも、正直な所でいえば、一心不乱に目指せない事情もあるわ」
「……先日の戦闘か」
「あら、そちらも覗いていらしたのね。……あの戦闘でクルーを2名見失っているの。
 戦闘後に調査したけど撃墜された形跡はないから、何か知っているなら知りたいところね」
「……俺達が知っているのは、あんた達が知っていることと同じだと思うぜ。
 何しろ遠くから見ていたからな。あんた達に分からないことは、俺達にもどうしようもないさ。
 まぁ、何か手掛かりに繋がる情報が有れば教えよう。勿論、交渉が成立したらだがな」
「良いわ。聞きましょうか。あなた方の欲する条件とやらを」

 私は微笑みながら彼の目を見据えた。
 彼もまた不敵に笑い、私の視線に合わせてきた。

451 :通常の名無しさんの3倍:2012/08/31(金) 23:48:53.14 ID:???
支援

452 :量産型牛& ◆eVzLvfNS20BR :2012/08/31(金) 23:54:07.18 ID:???
4/14
 プラントではクライン派の秘密会合が頻繁に開かれていた。
 彼らは今後のプラントの未来に対して重大な決定を下して以降、内部での活動を活発化させていた。
 今回の主催はセクスティリス市のオーソン・ホワイト邸で行われていた。
 彼の私邸の地下深くに研究施設があり、そこではZAFT内部でも最先端の技術研究が日々行われている。
 屋敷に招待されたのはクライン派議員の筆頭であるシーゲル他、以前のメンバーだ。
 彼らは地下ドックの見える部屋に通されていた。

「オーソン、君の仕事は実に早い。もうここまでのものが出来ているとは」

 シーゲルは驚いていた。確かに先日話には聞いていたが、それが形になっているとは。
 彼の驚きは他のメンバーも同様で、その反応にオーソンは満足げだ。

「驚く程のものはない。私に言わせれば当然の結果だ」
「いや、しかし、これはもう動かせる段階にあるのだろう」
「そうだ」
「だが、君がこれだけの為に呼んだのではないのだろう。
 でなければ君がここに我々を招く筈も無い」
「そうだな。これを見てくれるかな」

 彼はそう言いパッドを操作すると、先程までドックが見えていた窓がスクリーンに変わった。
 そして、そこには彼の提案するプランが書かれていた。

「……Project Exodus?……これは」
「計画のポイントは三つだ。地球を黙らせる事、身内に気取られぬ事、そして勝てる戦力を持つことだ」
「……地球を黙らせる為にマスドライバーを落とす重要性はこれまで通りだが、
身内に気取られぬことが可能だろうか。我々は国民に選択を迫るべきではないか?」
「いずれはそうした機会を設けるべき時も必要かもしれないが、
現状のザラに理解が出来るとは思えん。私は完璧主義者故に、不純物が入るのを好まない。
 それが無理だというならば、私はこの計画から降りよう」

453 :通常の名無しさんの3倍:2012/08/31(金) 23:55:02.13 ID:???
支援

454 :量産型牛& ◆eVzLvfNS20BR :2012/08/31(金) 23:56:21.94 ID:???
5/14
 オーソン・ホワイトは既にこのクライン派の面々を圧倒していた。
 この計画の要が自分であるうちは、彼に全ての主導権が握られているといって過言ではない。

「オーソン、あなたの研究成果にはこれまでも助けられた。貴方を信頼もしている。
だが、我らは国民の代表であり、いくらザラと路線が違えども、国民には知る権利がある。
 それを承知で申されるべきではありませんか」

 アイリーン・カナーバの指摘にもオーソンは動じる様子は見せない。
 そこにアリー・カシムが口を開く。

「ホワイトさん、あなたの計画では失礼ですが『不完全な想定』がある様に思いますが、
あなたはそれを半ば容認している様に感じられる。
 貴方はどの程度のラインで実現可能と判断されていますか」
「……50%……いや、40%が良い所だろうな」

 彼の言葉には全員が絶句する他無かった。それでも彼は表情一つ変える様子は無い。
 いや、変える必要すら感じている様に見えなかった。そうした考えは、
既に彼の中では終わった話なのだ。

「私がここにあなた方を集めたのは、乗るか反るかだ。
 別に私は君等だけを相手にする必要は無いわけだからな。
 何より、この話は遅いか早いかだ。決めなくともいつかは時がやってくる。
 要は…我々はいつまでこの場に留まるべきか。あなた方はそろそろ考えるべきだ」

 彼らは重大な決断をこの場で下さなくてはいけない事に悩んでいた。
 彼の提案は、間違いなく今後のプラントをハッキリと変えてしまうのだから。
 そして、その決断は短期的には決して優れた決断とは判断されないだろう。
 それはとても長い年月を要する作業の始まりなのだから。

455 :通常の名無しさんの3倍:2012/08/31(金) 23:57:15.91 ID:???
支援

456 :量産型牛& ◆eVzLvfNS20BR :2012/08/31(金) 23:58:44.04 ID:???
6/14
 3人はシートを被せる作業を終えた。
 MSを格納したキラは岩山の上に来ていた。
 砂漠の直射日光は堪えるが、渓谷に吹き上がる風は気持ち良い。
 風に当たっていると、先程平手打ちしてきた少女が登ってくるのが見えた。
 彼女は真っ直ぐこちらに向かってきた。

「……あぁ、えーと」
「さっきは……悪かったな。殴るつもりはなかった」

 彼女の登場に戸惑っていた彼だが、予想外の素直な謝罪に拍子抜けした。

「あぁ」
「訳でもないが…あれは…弾みだ。許せ…」

 ……と思ったのも束の間。彼女はやっぱり彼女だった。
 そう思うと何故だか笑いが込み上げて来た。

「え?……あははは」
「何が可笑しい!」
「いや……だってさ」
「ずっと気になっていた。あの後……お前はどうしただろうと」
「……ん」

 キラは思い出していた。彼女と出会ったあの場所のことを。
 彼女が何故あの場所に居たのかはわからないが、またこうして出会えた事を数奇に思う。

「……なのに、こんなものに乗って現れようとはな」
「ぇえ!?」

 正直この流れはここに繋がらないと思っていたキラは、唐突な路線変更に戸惑った。
 彼女の表情は険しい。

「おまけに今は地球軍か」

457 :通常の名無しさんの3倍:2012/08/31(金) 23:59:54.80 ID:???
支援

458 :量産型牛& ◆eVzLvfNS20BR :2012/09/01(土) 00:02:11.96 ID:???
7/14
 彼女からすれば、あの場所に少年である彼が居る事自体が不自然であるが、
それ以上にパイロットとして現れた事が解せなかった。正規兵にしてはひ弱そうな外見だが、
それでいて彼はあの非常時でも冷静に判断し、自分を強引にシェルターへのエレベーターに押し込んでいる。
 自慢ではないが、そこらの男に軽くあしらわれる程にひ弱に生きているつもりは無い。
 だが、彼は彼女の言葉にしどろもどろになるでもなく、穏やかに言った。

「……色々有ったんだよ」
「ぇ?」

 幼なじみとの遭遇、そして戦闘。
 彼との別れからこのような未来を誰が予想出来るだろうか。
 しかも彼は敵軍の将として現れ、自分達の艦を執拗に狙い、一時はやられる寸前までいった。
 戦争という現実は自分を人殺しを無感情に行える人間に変えて行く。
 それでも、その鈍感さが愛する人達を守るのであれば、自分は強くならねばならない。

「色々とね。……君こそ、なんでこんなところに居るんだ?」
「あ…」
「オーブの子じゃなかったの?」
「……んっ……そ、それは……私も、色々有ったんだ!」

 こんな筈ではなかったのだが、彼女は自分が問いつめるつもりが、逆に追いつめられてしまった。
 いや、そもそも自分にはこういう知能犯の様な頭脳戦は向いていないと理解していた。
 それでも好奇心や疑問がスッキリしないのは、性格的にどうにも納得が行かない。
 そうして墓穴を掘っていてはミイラ取りがミイラ同然だが、彼は何か他の奴とは違うと感じていた。
 それは雰囲気なのか性格なのか受け答えの妙なのか、それが何かは定かではないが、
 彼女は動物的とも言える感は働く方で、これまで自分の感が間違っていた事はそれほど無い。
…だからこそ、この直情的とも言える性格が成立すると言えるのだろうが。

「ぷっ、あははは、あ〜……そっか。お互いに、色々有ったんだね」
「……そういうことだな」

 彼が穏やかな表情を投げかける。
 彼女は何故か彼に自分の考えが見透かされた様な気がして悔しかった。

459 :通常の名無しさんの3倍:2012/09/01(土) 00:03:13.85 ID:???
支援

460 :量産型牛& ◆eVzLvfNS20BR :2012/09/01(土) 00:05:13.51 ID:???
8/14
 その時、下から声がする。
 声の主はトール・ケーニヒのものだ。

「キラー!そんなところで突っ立ってないで、こっちの作業手伝ってくれよぉ!」
あ、うん!悪い!今行くよ!……じゃぁ、また」

 キラが駆け足で降りて行く。
 それを彼女はじっと見ていた。むさい奴だと思っていたが、案外好かれているじゃん。
 そんな事を思いつつ、彼女も自分のすべき仕事を思い出しその場を去った。

 その頃、ZAFT軍バルトフェルド隊旗艦レセップスでは、
彼の副官がブリッジに駆け足で入ってきた所だった。

「はぁ、はぁ、はぁ、ダコスタです」
「んー?」

 気怠い返事が聞こえる。
 艦長席に座る彼の姿が見えたが、彼は振り向く様子は無い。

「あの、失礼します。んっ!うは!?……っていうか隊長……換気しませんか?」

 息を荒らして入ってきた彼だが、少し落ち着いてくると鼻につく臭気に気付いた。
 隊長が大のコーヒー党で、そのブレンドに並々ならぬ拘りがあるのは知っているが、
まさかこんなところまで持ち込んでくるとは思っていなかった。
 その隊長は何ら動じる事も無く、珈琲カップを片手に語りかける。

「そ〜んなことわざわざ言いに来たの?」
「い、いえ…そう言うわけでは。出撃準備、完了しました!」
「そうなんだ。ご苦労様と言わせてもらおうかな」

 副官が敬礼しながら報告する。
 その報告を聞いて頷くと、彼は自分の膝の上にあるパッドを手に取り、
その内容を凝視する。

「さてと、……あんまりきついことはしたくなかったんだけどねぇ。ま、しょうがないか」
「ぁはぁ?」

 隊長の言葉に困惑する副官。
 彼からすれば、この作戦の立案は隊長自身が決めた事だ。
 感情で躊躇う様な状況でもなければ、これまでの作戦が温情であったとも思えない。

461 :通常の名無しさんの3倍:2012/09/01(土) 00:05:56.11 ID:???
支援

462 :量産型牛& ◆eVzLvfNS20BR :2012/09/01(土) 00:12:52.22 ID:???
9/14
「んーいいねぇ。今度のには、淡い粉を少し足してみたんだが、これもいい」

 当の隊長からすれば、これから自分が下す命令の重さを思うが故の逃避であった。
 本来はこんなことをしたいわけではないが、戦いとは無情なものであり、
人間の非人間性を強く感じる瞬間でもある。
 だが、一方でこれこそが人間だとも感じるジレンマは始末に負えない。
 つくづく人間とは矛盾を抱えた存在だと自重することを忘れた時が、
たぶん、本当のマシーンとの境目なのだろう。現在の自分は何割目だろうか?

 明けの砂漠のアジトの中では、アークエンジェル幹部との会合が続いていた。
 サイーブが現状の周辺情報を離してくれていた。

「…そらぁザフトの勢力圏と言ったって、こんな土地だ。砂漠中に軍隊が居るわけじゃぁねぇがな。だが、
3日前にビクトリア宇宙港が落とされちまってから、奴等の勢いは強い」
「ビクトリアが?」
「 3日前?」
「あ〜らら」

 ジェインウェイ以外の連合士官達は一様に驚かざるを得なかった。
 それだけサイーブからもたらされた情報はショッキングなものだった。
 これまで連合とZAFTはこの領域では充分に拮抗しているはずであったが、
ここを支配するバルトフェルド隊は連合部隊を一掃していたのだ。

「ここ、アフリカ共同体は元々プラント寄りだ。
 頑張ってた南部の南アフリカ統一機構も、遂に地球軍に見捨てられちまったんだ。
ラインは日に日に変わっていくぜ?」
「そんな中で頑張るねぇ、あんたらは」

 フラガの言葉にサイーブは押し黙った。
 その反応に不味い事を言ったかと思ったが、徐に彼の口が開く。

「俺達から見りゃぁ、ザフトも、地球軍も、同じだ。どっちも支配し、奪いにやって来るだけだ」
「あっ……」

 彼の言葉にラミアスは自分達の置かれた立場を知った。
 彼らからすれば自分達も明確に「敵」なのだ。
 いや、この言葉はこの場の全員がお互いの立場をハッキリさせる言葉とも言えた。

「あの船は、大気圏内ではどうなんだ?」

 彼女の反応を知ってか知らずか、彼は無反応に尋ねた。
 バジルールが技術的なことについては回答する。

…この辺で切ります。次は1時過ぎに投下開始です。放送もたぶんやります。

463 :通常の名無しさんの3倍:2012/09/01(土) 00:29:21.81 ID:???
乙!
続き待ってます!!

464 :量産型牛& ◆eVzLvfNS20BR :2012/09/01(土) 01:03:52.28 ID:???
10/14…http://com.nicovideo.jp/community/co1722789で放送しながら投下開始です。

「そう高度は取れない。条件次第だがな」
「山脈が越えられねぇってんなら、あとはジブラルタルを突破するか」
「おいおい、この戦力で?無茶言うなよ」

 フラガの反応に、サイーブは淡々と答えを返す。
 彼らからすれば所詮他人事だ。

「……んー。なら頑張って紅海へ抜けて、インド洋から太平洋へ出るっきゃねぇな」
「太平洋。」

 ラミアスは太平洋航路の道のりの遠さを思い、頭痛がする思いだった。
 単純な直線距離で一万kmを軽く越える。実際はその倍の距離を迂回する必要があるのだ。

「……補給路の確保無しに、一気にいける距離ではありませんね」

 バジルールの言う補給路の確保も、補給が望める勢力圏ではない道を進むという絶望的な条件だ。
 せめて高度が取れるならば、ユーラシア連邦を目指す道もあるが、それも茨の道に違いない。
 いくら連合といっても、大西洋連邦はユーラシア連邦と仲が良いわけではない。

「大洋州連合は完全にザフトの勢力圏だろ?赤道連合はまだ中立か?」
「おいおい、気が早ぇな。もうそんなとこに心配か?」
「ん?」

 フラガの話にサイーブが鼻で笑う様に告げる。
 彼には何故そんなことを言われるのか分からない。

「……ここ、バナディーヤにはレセップスが居るんだぜ」
「あ……頑張って抜けてって、そういうこと」
「ハァ…」

 二人のやりとりに、思わずラミアスは溜息を吐いた。
 そう、彼らが相手にしなくてはならないのは、ビクトリアを叩き落とした砂漠の虎だ。
 彼らと真正面に衝突する他に道は無いのだ。

「ハァ……。レジスタンスの基地に居るなんて……なんか、
話がどんどん変な方向へ行ってる気がするよ」
「ハァ……。砂漠だなんてさ……あ〜ぁこんなことならあん時、
残るなんて言うんじゃなかったよ。」

465 :通常の名無しさんの3倍:2012/09/01(土) 01:06:00.80 ID:???
支援

466 :量産型牛& ◆eVzLvfNS20BR :2012/09/01(土) 01:07:48.60 ID:???
11/14
 サイとカズイが現在の状況をぼやく。
 二人はここ最近妙に気が合う様で、割とよく話したりしているのだが、
どうもカズイの皮肉屋加減がサイに伝染してきている様で、
話している内容が悲観的な方向で意気投合している。
 それもこれもフレイに振られて以来のことだ。
 トールは二人の反応に苦笑しつつ、カズイの発言を嗜める。

「でも、どのみちここに来るわけだから一緒だろ。
 そりゃ、民間人扱いなら、こんな手伝いしなくて済むだろうけどさ」
「これから、どうなるんだろうね。……私達」

 ミリアリアが空を見上げていた。
 抜ける様な晴天の夜空には、零れ落ちそうな程の星空が広がっている。

 その光は幻想的ではあるが、どこか寂しく寒々しく感じた。
 そこに一緒に食事をとっていたフレイが立ち上がる。

「……私、トレーニングに行くわ。トール行く?」
「おう。つか、キラはどこ行ったんだ?」
「知らないわ。大方『彼女』の所でしょ。じゃ、ミリィ、トール借りて行くわね」

 フレイの言葉にミリアリアが悪戯っぽい笑みを浮かべて忠告する。

「うん、あ、フレイ、私のダーリンを誘惑しちゃだめよぉ?」
「あら、やめてよねぇ。私が本気になったら、誰も私の美貌には勝てないんだから〜。ンフ」

 彼女はポージングを決めて堂々と言い放った。
 どうやら、これが彼女の本来の性格らしい。
 ミリアリアは彼女の反応にくすくすと笑って笑顔を向けた。

「もう、フレイったらぁ。フフ、行ってらっしゃい。二人とも」

 二人がアークエンジェルへ戻って行く。
 それを見送った彼女は横で暗く沈む男達を急き立てて、食事の後始末を手伝わせるのだった。
 その頃、アークエンジェルのとある一室では食事をとり終えた二人の姿があった。
 照明は暗めに落としてある室内の窓からは、岩壁に隠れて真っ暗な景色しか見えない。

467 :通常の名無しさんの3倍:2012/09/01(土) 01:08:21.17 ID:???
支援

468 :量産型牛& ◆eVzLvfNS20BR :2012/09/01(土) 01:17:03.67 ID:???
12/14
「キラ様、今日はスズキ様の料理のお手伝いをさせて頂きましたのよ」
「ラクスさんは頑張り屋さんなんですね。
「そう思いますか?フフ、私、ずっとじっとしている生活は嫌ですわ」
「でも、それで掃除をしたり、料理をしたりって、普段からされていたんですか」
「いいえ。でも、習ったりはしたことあったじゃないですか。
 …私、一般的なご家庭でしたら当然に知っている事ができない暮らしをしていました。
 こんな状況でもなければ、わたくしはずっと普通の暮らしを知らぬ女として、
人生をまっとうするんでしょう。父の敷いたレールを進むだけの生活。
…例えそれが幸せだとしても、私には退屈な話ですわ」
「あなたはここの生活を嫌だとは思わないのですか?」
「…えぇ。わたくしは、ここの生活好きですよ。キラ様は…お嫌そうですわね。
 まぁ、無理も無いですわ。あなたは日々命を削りながら私達を守って下さっている。
 その中でわたくしはのんきに暮らしている」
「あぁ、そんなことは……」

 彼女の言葉に、キラは慌てて恐縮する。

「良いのです。わたくしは日々貴方に感謝しています。
 たぶん、貴方が守ってくれていること以上に、この自由を下さったことを。
 そのような不届きなわたくしはお嫌いですか?フフ」
「ラクスさん……」

 彼女は彼を手招きする。
 彼は立ち上がり彼女のもとに近づき、そのまま彼女を抱きしめた。

 深夜の砂漠はとてもひんやりとした風が吹く。
 この数日は連合の足付きとの戦闘で大きく損失を出していた。
 しかも、先の戦闘ではここ暫く手心を加えてきた勢力まで手を出してきたのだ。
 いくら穏便な彼と言っても、この状況で穏便で居られる程にお人好しではない。
 実際、司令部へ報告出来る様な話ではなかった。
 ここらで一つ花火を上げておかなくては、自分自身は勿論、
彼らもずっと居心地の悪い結果を招くだろう。

「ではこれより、レジスタンス拠点に対する攻撃を行う。
 昨夜はおいたが過ぎた。悪い子にはきっちりとお仕置きをせんとな」
「目標はタッシル!総員、搭乗!」

469 :通常の名無しさんの3倍:2012/09/01(土) 01:17:36.19 ID:???
支援

470 :量産型牛& ◆eVzLvfNS20BR :2012/09/01(土) 01:20:35.39 ID:???
13/14
 副官のダコスタが命令する。
 隊員達がその号令に従って素早く乗機に搭乗した。
 バクゥのモノアイが光る。目指す集落すぐそこだ。

「……同盟関係を締結する事自体は、我々も異存は無いわ。
 少なくとも、ここであなた達と無理に敵対する理由は無いから。
 でも、それ相応の対価は必要ね」

 ジェインウェイは相手側の要求する砂漠の虎攻略を了承するのは目論見通りだった。
 彼らにとって虎の排除が最大の利益であることは交渉以前から明白だったからだ。
 いわば彼女からすればそれらは交渉のうちに入っておらず、より大きな果実が欲しかった。

「ほぉ……、何が欲しいんだ。俺達は見ての通り、大したものは無いぜ」

 サイーブ側からすれば、まさか連合側がすんなりと共闘条件を飲むとは思っていなかった。
 確かにレセップスを相手にしなくては乗り越えられないとは言えるが、
自分達に恩を売る程の規模も無ければ価値も無い。あるとすれば売られない安全程度だ。
 もし自分が司令官であったとすれば、このような貧乏くじを引く必要は無く、
適当にあしらっておけば良いかもしれない。それをあえて受けるのだ。何か無い筈が無い。

「そうねぇ、あなた方の持つ情報網と、
物資の供給元を教えてくれたら……ってところかしら」

 彼女は元々明けの砂漠という組織自体には興味を持っていなかった。
 どんな世界にもゲリラやレジスタンスというものは存在する。
 しかし、そうした零細な組織は末端に過ぎず、必ずそれらを動かす支援者の存在があるのだ。
そして、その支援者とのパイプこそが彼らの持つ最大の価値と言える。
 実際はそうした末端組織には上位組織との交渉能力は存在しない。
 場合によっては接点すら巧妙に隠されているものだが、この組織には規模に不相応な資金が供給されており、
幾度となく行われた戦闘にも関わらず、その損失で疲弊する事無く存続している。
 これは明確にこの組織に上部組織との接点が存在するということだ。

「……あんた、なかなか怖い女だな。俺達が嫌だと言わない理由は無いんだぜ。
 あんた等の条件を飲まなくたって、俺達はこれまで通りに戦うまでだからな」

 サイーブは実際に普段は滅多にかかない汗が滲み出るのを感じていた。
 これまで様々な権力者と対峙する事はあったが、これほど交渉で存在感のある大物に出会ったのは少ない。
 この女は確かに大佐という階級を名乗るだけはあると感じさせられていた。

「……そう。私は別に事を荒立てる気は無いけど、必要と有れば銃を向けるわ。
 あなた方が私達を敵と見なすというなら、それが運命の分かれ目よ。
 もし、あなた達が私達に協力してくれるなら、私も協力を惜しまないわ」

 彼女の表情は至って変わらず平常だ。ただ、会合始まって以来ずっと視線は彼に向けられていた。
 無言の圧力とは言ったものである。射すくめられる視線を彼はじっと耐えた。

「………その言葉、嘘偽りは無いな?」

471 :通常の名無しさんの3倍:2012/09/01(土) 01:21:05.65 ID:???
支援

472 :量産型牛& ◆eVzLvfNS20BR :2012/09/01(土) 01:24:42.77 ID:???
14/14
 額から汗がこぼれる。
 本来乾燥した砂漠では陰った洞窟の中では暑さが和らぐものだが、
前進から吹き出す汗が下着を濡らして密着するのが不快に感じる程だ。

「えぇ。……あなた達の神に誓っても良いわ。私は時々悪魔にもなるけど、
信頼出来る相手には協力を惜しんだ事は無いの。どう、目を瞑って悪魔と契約してみる気は無いかしら?」

 彼女の言葉にサイーブは一瞬目が点になった。
 いや、あまりに緊迫した状況だったので、不意に使った彼女の表現が彼のツボにハマったのだ。

「ふはははは!これは面白れぇ。傑作だ!悪魔と契約?くくくく、あぁ、良いだろう。
あんた等の条件を飲む。但し、俺達も条件がある。……必ず虎を仕留めてもらうぞ?」

 ジェインウェイが微笑みを浮かべる。

「良いわ。これで契約成立ね」

 互いの契約書にサインをして同盟が成立した。
 一時は緊迫した会談では有ったが、当初目的通りに協力関係を築くに至った。
 だがその時、外で叫び声が上がる。

「燃えている!!!空が燃えているぞ〜〜!!!」

 若い男が慌てて皆に知らせていた。
 サイーブ氏と共に外に出た私は、確かに遠くの空が赤く揺らめくのを確認した。

「……タッシルだ。あれは俺達の街のタッシルだ」

第27話終了。28話へ続く。
投下完了です。支援書き込み有り難うございました。
放送へ来て下さった方も有り難うございます!
次回の更新は火曜の夜11時くらいを予定しています。では、お疲れさまでした。

473 :通常の名無しさんの3倍:2012/09/01(土) 01:37:28.05 ID:???
GJ!
なんだかラクスがまるで普通の女の子のように見える不思議!
サイーブも圧倒される威圧感、さすがは悪魔艦長やでえ。
ボーグクイーンと世間話すらしてみせる胆力は伊達じゃない。

474 :量産型牛& ◆eVzLvfNS20BR :2012/09/01(土) 01:48:20.64 ID:???
早速の乙有り難うございます。
14/14
 本来乾燥した砂漠では陰った洞窟の中では暑さが和らぐものだが、
前進から吹き出す汗が下着を濡らして密着するのが不快に感じる程だ。 は、
 本来乾燥した砂漠の陰った洞窟の中では暑さが和らぐものだが、
全身から吹き出す汗が下着を濡らして密着するのが不快に感じる程だ。 と訂正します。
 申し訳ありません。

475 :通常の名無しさんの3倍:2012/09/01(土) 21:48:24.89 ID:???
プラント議会はかなり焦っているようだな。

476 :通常の名無しさんの3倍:2012/09/01(土) 23:09:49.87 ID:???
社長が相変わらず他を圧倒してるね
宇宙規模で暴れまわってきた社長からすればここのレジスタンスなんて子供みたいなものかw

477 :通常の名無しさんの3倍:2012/09/01(土) 23:27:43.31 ID:???
ボーグとの交渉に成功したのなんて悪魔艦長しかいないんじゃないのかってレベルだからな。

478 :通常の名無しさんの3倍:2012/09/02(日) 18:01:44.52 ID:???
>フェイザーの威力関連、特に『〜最大出力はビルも一撃で破壊〜』
…ちょっとマジで興味が有って映像で見て検証等したいんだけど
何か該当する動画とかって無いかな?

479 :通常の名無しさんの3倍:2012/09/02(日) 19:02:09.58 ID:???
TOSからENTまでで何百話もあるんだぞww
それにスタートレックはアメリカじゃたくさん本出てるからそこ出典という線もあるので。

480 :通常の名無しさんの3倍:2012/09/02(日) 19:12:29.84 ID:???
作品中での携帯型フェイザーの使用状況から考えると、映像でフェイザーつかってビルを吹き飛ばしたシーンは恐らく無いんじゃないか?
そもそも、そんなことをしなければなら無い状況が良くわからない

多分、設定飼料集か解説本などの記述か作品中での台詞、もしくは製作スタッフによる説明って線が濃厚かな

481 :通常の名無しさんの3倍:2012/09/02(日) 19:13:25.67 ID:???
艦砲型の最大出力が惑星を焼き払えるけど設定通りの威力を発揮したシーンも無いしな

482 :通常の名無しさんの3倍:2012/09/02(日) 19:19:23.61 ID:???
TOSの携帯型フェイザーで思い出せるのは小型宇宙船や大岩を消滅させたりするシーンかな
どれもセットを退かすだけで簡単に撮影出来るシーンだったのだろうw

483 :通常の名無しさんの3倍:2012/09/02(日) 19:28:05.96 ID:???
おお・・・結構な返事が…有難う御座います

出来れば「携帯型(ハンドガン型・ライフル型)」の撃ち合いって言うか
鬱ってるシーンの映像が見たいんです
(どんなエフェクトとか…)

出来れば最近の最新版とかで…むかしのSFXとかだとちょっと…(苦笑

484 :通常の名無しさんの3倍:2012/09/02(日) 20:07:24.40 ID:???
TOS以来予算の制限がy強大な敵だからなw特にドラマに必要ない特撮映像は作られんよ。
惑星破壊ビームが見たいならヴォイジャーの68、69話[生命体8472]。
映画だと2009年版スタートレックで赤色物質によって発生したブラックホールでヴァルカン星が消滅するシーンがある。
>>482
携帯フェイザーの対人や麻痺の設定もセット壊せないからできた設定に思うw

485 :通常の名無しさんの3倍:2012/09/02(日) 20:42:05.62 ID:???
>>483
レンタルDVDのベストエピソード1に入っている超獣生命体VS狩猟星人でフェイザーライフル撃ってるシーンがある。

486 :通常の名無しさんの3倍:2012/09/02(日) 21:11:52.32 ID:???
>>484-485
超サンクス、本当に感謝の極み…
つべかニコに無い物か…orz

487 :通常の名無しさんの3倍:2012/09/02(日) 21:16:01.51 ID:???
>>486
いやその話自体はあるよ…?
でもニコとかツベは大っぴらに勧められるもんじゃないということを分かって頂きたい。

488 :通常の名無しさんの3倍:2012/09/02(日) 21:18:22.79 ID:???
フェイザーじゃないか、クリンゴンのディスラプターの一撃で惑星上の全生命体を死滅させたのはどこかの話で見た記憶がある
ピーカード艦長だったかな、銀河各地に存在する生命の遺伝子から隠された暗号を解くって話で、クリンゴンが他の勢力に遺伝子渡さない為にやらかしたって話だった

ハンドフェイザーもライフルタイプも、艦載のフェイザーも色もエフェクトも変わらない気がするんだが


489 :通常の名無しさんの3倍:2012/09/02(日) 21:36:32.79 ID:???
>>488
命中しても爆発も基本起こさないな。
まあ、予算が(ry
あと、その話はTNG146話命のメッセージだな。クリンゴン艦1隻がプラズマ反応起こして大気を奪い、惑星の有機体を全滅させた。

490 :通常の名無しさんの3倍:2012/09/02(日) 22:03:36.14 ID:???
こうしてみるとやっぱりエフェクトって特撮よりもアニメの方が派手にし易いと再認識するなぁ
アニメでも種や00のビームより設定上は強力なビームなんて山ほどあるけど
視覚効果の技術の発達した近年の作品である種とかの方が昔のアニメよりも派手でカッコイイしね

491 :通常の名無しさんの3倍:2012/09/02(日) 22:13:09.00 ID:???
フェイザーは波長を変えたでいろんな効果出したり、ナノプローブ(凄いナノマシン)混ぜて発射できたり用途が広い。

492 :通常の名無しさんの3倍:2012/09/02(日) 22:45:14.50 ID:???
>>487
いや、「話全部」で無く「フェイザー射撃集」みたいなのとか…

さっきニコでスタトレvs星戦争なMAD見つけて見て噴いたw

493 :通常の名無しさんの3倍:2012/09/02(日) 22:53:59.24 ID:???
>>492
そんなもんよりドラマや宇宙艦同士の戦いを見たいって連中ばかりなのにあるわけないだろ。
銃撃戦なんておまけもいいとこな作品なんだぞ。
横着せんと1話ずつ見ろ。

494 :通常の名無しさんの3倍:2012/09/03(月) 06:48:18.01 ID:???
ボイジャー&悪魔艦長全力全開モードで
銀英伝勢力と戦闘になったらどの位無双出来るの?

495 :通常の名無しさんの3倍:2012/09/03(月) 07:46:00.30 ID:???
戦いになる前に悪魔がラインハルトを転送で誘拐して交渉に持ち込み終了

496 :通常の名無しさんの3倍:2012/09/03(月) 10:02:10.28 ID:???


>人間とは矛盾を抱えた存在だ

荒野の迅雷の台詞を思い出した
「『ホワイト・ディンゴ』、人間とは矛盾に満ちた存在なんだよ。」

497 :通常の名無しさんの3倍:2012/09/03(月) 13:34:57.85 ID:???
おつ!
このまま明けの砂漠も同化しちゃいましょう!

498 :通常の名無しさんの3倍:2012/09/03(月) 16:00:46.12 ID:???
「ミッシング1937」涙出たわ…
493氏の言うとうり一話づつ見ますわ…w

けどヴォイジャーの制服ってティターンズに似てるねw
(いや軍服でティターンズのが、マジて好きなんだけどね)

499 :通常の名無しさんの3倍:2012/09/04(火) 20:46:20.78 ID:???
>>476
まあ元々スタートレックの惑星連邦の宇宙艦艦長は外交官の役目も兼ねてる優秀な存在だしな。

500 :通常の名無しさんの3倍:2012/09/04(火) 22:21:38.74 ID:???
VOYのボーグ関連のエピソードは事前知識としてウルフ359の戦いを知ってるとより楽しめるぜ。

501 :量産型牛& ◆eVzLvfNS20BR :2012/09/04(火) 23:38:25.66 ID:???
投下開始は0:30頃に遅らせます。すみません。

502 :通常の名無しさんの3倍:2012/09/04(火) 23:49:50.80 ID:???
支援

503 :量産型牛& ◆eVzLvfNS20BR :2012/09/05(水) 00:43:00.44 ID:???
1/19…本日は19分割のため、二回に分かれます。
いつも通り、http://com.nicovideo.jp/community/co1722789にて放送中
第28話「秘密会談」

 夜空を風切る音が駆け抜ける。
 砲撃を仕掛けるバクゥは上空からの不意打ちに遭い被弾。

「どういう事だ。奴らは正義の味方気取りか?チィッ、全軍撤収だ。
……この犠牲、必ず返させてもらうぞ」
 
 バクゥが後退する。
 炎に包まれた街を後にして。

 艦長日誌
 彼らの街は焼かれた。
 事前の警告後、住民に避難する時間を与えての攻撃ではあったが、
それで全てが間違いなく助かるわけではなく、少なからぬ犠牲が強いられた。
 住民達の中にいるレジスタンスの構成員達は現地で抗戦した様だが、多勢に無勢。
絶対的戦力差の前には何らの効果も無かった。
 そこで我々は早速彼らの行動を支援する。
 街を焼く行動を取るバクゥをアグニを装備させたスカイグラスパーで空爆し、
数機のバクゥに損害を与えることに成功する。
 ZAFT側もまさか空爆があるとは思わず油断したのだろう。
彼らの焼き討ちは中途半端な形で撤収する事と鳴った。

「……大佐。すまねぇ」

 私は力なく肩を落とす彼の肩に手を置き慰めた。
 我々の行動はZAFTを追い払いはしたが、起こされた実害を食い止めるには至らなかった。
 我々は多くの掛替えの無い命を失ったのだ。

「……良いのよ。我々は仲間になったんじゃなかったの?
困っている仲間に力を貸すのは当然のことよ。それより、彼らもだいぶ頭に血が溜まっている様ね。
この采配ミスは痛いわ」

 彼女の言葉にサイーブは慰められたばかりだが、カチンと来た。
 彼はジェインウェイに強い視線を向けて問う。

「采配ミスだと?」

 彼女は悪びれる様子も無く、その視線に応えるように真面目に話す。

「……えぇ。彼らが曲がりなりにもあなた方を焼かなかったのは何故かしら」
「そりゃ、そうする程の価値を感じていなかったからだろう」
「いいえ、違うわ。彼らは地上に縁を持たぬが故よ。砂漠の虎といったかしら、彼はお利口さんね。
 無用な対立を誘うより治安の安定による人心掌握を望んでいたのでしょう」

504 :通常の名無しさんの3倍:2012/09/05(水) 00:43:45.87 ID:???
支援

505 :量産型牛& ◆eVzLvfNS20BR :2012/09/05(水) 00:55:12.51 ID:???
2/19
「……あいつ等が俺達のことを守っていた様に言うんだなぁ。あんたは」
「そうは言わないわ。彼らは少なくとも損得勘定で貴方達を怒らすのを損だと思ったということよ。
出来る事なら仲良くやりたかった。じゃなかったら、とっくの間に貴方達の街は地上から消えているわ」
「……」

 確かに彼女の言う通り、ZAFTには彼らを余裕で殲滅する程の力がある。

「でも、そうはしなかった。だけど、昨夜私達と共闘した件を重く見た彼らは、
我々の間に楔を打ち込みたかった。それも、この戦闘で全て破綻。
 結果的に彼らは貴方達以外の勢力にも自分達に抵抗する口実を与えてしまった。
彼らにとっては、この作戦は確実に燃やし尽くす必要があったのよ。
実力で捩じ伏せるためにもね。でも、それに失敗した。……このミスは大きいわ」

 サイーブは怒りを忘れて彼女の分析に感心していた。
 そして、その先を聞いてみたくなった。

「……ほぉ、その先は何があるってんだ?」
「弔い合戦とばかり、多くの若者が立ち上がる。……血で血を洗う連鎖はあなたも知っての通りよ」
「……それじゃ時間がねぇだろ」
「そうよ。だからこそあなたにはしっかりしてもらわなくちゃいけない。
 こういう時こそ年長者の重みが必要になるのよ。……若者を導いてあげて」

 彼は彼女が言っている程に自分達を侮辱しているわけでもなければ、
ずっと深く心配してくれていた事に気付かされた。
 彼女がしてみせた分析は未来の世代への心配なのだ。
 自分が男としての誇りや名誉を重んじるならば、彼女はその尊厳を守りたいというのだ。
 ここで男が振るわなければ、どこで立つ瀬があるだろうか。

「……分かった」
「……とにかく、今は街の人達を安全な場所に避難させましょう」

 艦長日誌補足
 我々は彼らの負傷者を、彼らの他のセーフポイントへ移送する支援をする事にした。
しかし、頭に血が上っている若者等は全く聞く耳を持ちそうになかった。
 撤収して行ったZAFTを追撃出来ると考えた若者達は、バギーに武器を積み込んで出て行こうとしていた。
 それを必死に身を挺して止めようとするサイーブ氏だが、その努力も沸騰した彼らには届かなかった。

506 :通常の名無しさんの3倍:2012/09/05(水) 00:57:25.58 ID:???
支援

507 :量産型牛& ◆eVzLvfNS20BR :2012/09/05(水) 01:00:37.20 ID:???
3/19
 ガシン、ガシン、ガシン、ガシン!

 出て行こうとする彼らの目前に巨人が立ちはだかる。
 その姿を見て一瞬躊躇いの姿勢を見せるが、その中の一人がバギーのエンジンを噴かすと、
それに倣う様に他の若者達も再び勢いを取り戻す。
 その時、巨人は彼らの進行方向にシュベルトゲベールを突き刺した。

「……フフ、残念ながらここを通すわけにはいかないの。
 愚かなものね。自分達の家族も守れない不甲斐無い男達に教えてあげるわ。
 もしここで命を粗末にしたいというなら、私がお望み通りに始末して上げる。
 さぁ、選びなさい。家族を失うか、自分を失うか。…それとも、全てかしら?」

 ジーニーの目がエメラルドグリーンに輝く。
 それでも動こうとしたバギーにジェインウェイは躊躇わず剣を突き刺した。
 ビームが出力されていないとはいえ、その重量から繰り出される衝撃は相当のもので、
バギーのボンネットが無惨にひしゃげ、爆発する暇無く潰れてしまった。
 その衝撃で吹き飛ばされた者たちは、慌てて車から離れる。
 車はその後すぐに炎上した。

「恨むなら、己の浅慮で短気な愚かさを恨むのね。
 我々と手を組んだ以上、家族や自分の命を大事に出来ない男は要らないの。いいわね?」

 若者達はジェインウェイの気迫に負け、大人しく彼女の命令に従い、
サイーブの指示のもと避難活動が始まった。

「……さて、作戦も終わった。残念な結果ではあったがね。
 遅くなったが君達の失態についての弁解は聞いておこうかなぁ?」

 バルトフェルド隊旗艦レセップスでは、彼の執務室内にザラ隊の3人が集められていた。
 足付きとの戦闘でレセップスに現れた明けの砂漠を撃退するどころか、
砂にハマって集中攻撃を受け、バルトフェルドの帰還によって助けられた格好は失態という他に無い。
 艦上でイージスに乗ってスキュラを撃っていたニコルも含めて精彩を欠いたといえる内容だけに、
言い訳をしたくとも全く弁解のしようがなかった。

「……申し訳有りません。我々の力不足を認めざるを得ません」

 ディアッカが代表してバルトフェルドに謝罪し深々と頭をさげる。
 イザークもニコルも彼の唐突な行動に驚いていた。

「おや、他二人はそう思っていないのかい?」

508 :量産型牛& ◆eVzLvfNS20BR :2012/09/05(水) 01:03:38.12 ID:???
4/19
 二人に顔を向けるバルトフェルドに、ニコルが礼をし、渋々イザークも頭を下げた。
 イザークからすれば自分は全く何もしていないのだが、チームメイトとして倣った格好だ。
 彼らの潔い姿勢に幾分気分が良くなった彼は、手に持っていたパッドを彼らが見える様に机上に置いた。

「僕はねぇ、出来ない事を素直に認められる奴は良い奴だと思うよ。
出来ない事を出来ると言い張って、結局迷惑かける奴よりはね。
 まぁ尤も、不可能を可能にしてみせるくらいの気概があると嬉しくは思うがね。
それでも、己の身の丈を忘れて背伸びをするよりはずっと良いと思うんだ」

 3人は彼が何を言いたいのかいまいち分からなかった。
 彼の言葉をそのまま素直に取れば、出来ない事は仕方ないと許しているのだと思うが、
わざわざそんな事を言いたくてここに集められたとも思えない。

「あの、バルトフェルド隊長、発言宜しいですか」
「ん、良いよアマルフィ君。なんだね」
「我々の失態を不問にされるということでは……無いですよね。
 ご発言の真意を愚考させて頂けば、我々は暗に批判されている様に感じるのですが」
「……そうだね。君等はエリートの赤服……の筈だったが、この失態はね。
 連合の同型機は即座に砂漠に対応してみせたけど、君等のはどういうことなんだい」
「そ、それは、OSが……」
「そう!それだよ。OSが連合の方が高性能なんだ。そして、我々は彼らに劣っているわけだよ。
 どうだ。……出来ると豪語して、実際我々には全く何も出来なかったんだよ。
 これは君等だけの話じゃない。我々は彼らに劣っているんだ。この意味がわかるかね?」
「!?」

 3人は絶句した。彼の話は続く。

「問題はOSだけか?我々の能力に慢心は無いか?…あるさ、新人類?ふっくく、笑わせてくれる。
 君等は我々の中でもエリート中のエリートなんだよ。その君等が明けの砂漠にすら翻弄された。
 これを笑わずに居られるかっていうんだ。……そう、これは僕も含めたコーディネイターの欠陥だ」
「あ、あの……」
「何かね、批判に耐えられないかね?アマルフィ君」
「いや、その……以前、ザラ隊長も仰っていました。我々は見誤っているのではないかと。
 その当時は単なるテクノロジーだけの話だと思っていました。
 でも、確かにバルトフェルド隊長の仰る通りなんだと、……私も愚かにも気付いてしまいました」

509 :通常の名無しさんの3倍:2012/09/05(水) 01:06:29.02 ID:???
支援

510 :量産型牛& ◆eVzLvfNS20BR :2012/09/05(水) 01:10:02.88 ID:???
5/19
「ほぅ、それでザラはなんて言っていた」
「彼も同様に、コーディネイターのことを憤っていました。……何が新人類だ……と」

 ニコルの話を聞いて、バルトフェルドはザラに対する評価を変えた。
 どうやら軍部の中にもまともな奴がいるらしい。ただのエリート二世だと思っていたが、
少なくとも状況判断能力はここに居る3人よりはずっとマシな様だ。

「ほほぅ、それは傑作だ。良い判断をしているな。アスラン・ザラは。
 元々我々は数では勝てない事を分かりながら戦っていた。だからこそ技術の優位は重要なんだよ。
 その優位が覆されつつ有る。……まだ多少は上だがね。
 ビクトリアは何とか落として見せたさ。ジブラルタルも押さえている。
カーペンタリアからカオシュンにかけてのアジアも押さえて、残るはパナマとオーブだ。
……それがどういうわけだ、これを見たまえ」

 バルトフェルドが先程机上に置いたパッドを指差す。
 3人が並んでそれに視線を向けると、そこに書かれている情報を見て絶句した。

「こ、これは……」

 思わず口から漏らしたニコルの呟きは、他の二人も同様の思いだった。
 ディアッカが司令官に問い掛ける。

「オペレーション・スピットブレイク、……アラスカを攻撃……でありますか?
 失礼ですが、この内容は……何かの間違いでは……」
「いいや。これはつい先程正式に来たものだ。だがね、僕はこれ自体を問題にする気は無い。
いずれやるんだ。遅いか早いかの違いだろう。だから問題はそこじゃない。
 先程も言った通り、パナマとオーブが残っていては、我々は後顧に憂いを持ちつつだ。
 どこの馬鹿がこんなものを考えた。優先順位を間違えればモグラ叩きにしかならないだろう」
「いや、あの、お言葉ですが、確かこの計画はパナマであったはずでは?」

 ディアッカの疑問にバルトフェルドはパッドを操作し、とある文を表示させた。

「議会が全会一致だそうだ。決議案は403文書によって修正された。これだ」
「403文書?……うわ」
「……それもこれもあのOSだよ。だからこそ、我々は死に物狂いで奴らを落とさなくてはならない。
 幸いNジャマーのお陰で電波通信は不能。ワイヤーネットも我々が元栓を押さえている。
 この地域から情報が連合本部へ行くことはない。ここが肝心だぞ。わかるか?」
「つまり、落とせずとも進路を固定する……ということですか?」
「……ほぉ、頭はまだ大丈夫な様だな。そうだ。その通りだ。
 単純な勝利が望めないならば、食らいついてでも奴らが他と接触する道を断つんだ。
幸い、司令部はこちらに色々と便宜を図ってくれる様だ。
エリート諸君、そこは君等に素直に礼を言っておこうか」

511 :通常の名無しさんの3倍:2012/09/05(水) 01:11:04.75 ID:???
支援

512 :量産型牛& ◆eVzLvfNS20BR :2012/09/05(水) 01:13:01.05 ID:???
6/19
 タッシル攻撃から夜が明け、我々は住民達を彼らの他のセーフポイントに移送した。
 ZAFTの攻撃が止むまでは仕方ない処置では有るが、物資の不足は否めない。
 その為、サイーブ氏は他の町から調達する道筋を付ける事を提案。
 彼らの話から分かった事は、彼らを支援する組織は連合でもZAFTでもない第三勢力によるもので、
その地下組織的な資金力によって支えられている。
 その中にはZAFTに与するアフリカ共同体からの資金も有るという。
 つまり、アフリカ共同体はZAFTの支援を受けながらゲリラを育てているわけである。
 なかなかに罪深い話だ。

 物資調達はバナディーヤというこの地域では随一の都市で交渉するという。
 バナディーヤはZAFTの拠点であり、砂漠の虎の根城だ。
 我々はアークエンジェルの武器弾薬の調達も出来るという彼の話を頼り、
必要目録を持たせサイーブ氏の交渉にクルーを同行させた。
 この交渉についてはバジルール大尉を班長に任じ一任し、
彼女は同行者としてノイマン、アーガイル、マードックの三名を選んだ。
アーガイルについては彼女が勉強の為に同行させたいとわざわざ相談してきた程だ。
 私は彼女の選定を妥当と判断し許可した。

 町での一般必要雑貨の買い出しはサイーブ氏からカガリ嬢を使う様要請された。
 彼女はこの地元の事情をよく知っていることや、
子供の方が何かと目立たないで行動出来るというメリットを添えての話だ。
 確かに彼の提案は納得出来た為、有り難く利用させてもらう事にした。

「しかし驚きましたよー。貴方が私のところへ御出になるとはねぇ」
「水を押さえて優雅な暮らしだな、ジャイリー。
 俺も出来れば貴様の顔など二度と見たくはなかったが、
仕方がない。俺達の水瓶を枯れさせるわけにもいかん」

 サイーブにジャイリーと呼び捨てされた彼は、
この一帯の地下商人を統べるボスとでも呼ぶべきか。
 彼はZAFTは勿論、連合や第三世界の勢力全てと取引を持つ、
ここらでは知らぬ者はいない大物だ。

「お考えを変えられればよろしいものを……。
 大事なのは、神殿より命ですよ?サイーブ・アシュマン。
 水場も替わるものです。が、どこの水でも水は水だ。飲めればいい。それが命を繋ぐのです」

513 :通常の名無しさんの3倍:2012/09/05(水) 01:13:59.95 ID:???
支援

514 :量産型牛& ◆eVzLvfNS20BR :2012/09/05(水) 01:16:45.31 ID:???
7/19
「そんな話を、今更貴様としようとは思わん。どうなんだ!
こっちの要望を聞いてもらえるのか?もえらえんのか?」
「それは無論、同胞は助け合うもの。ま、具体的なお話はファクトリーの方で。はっはっはっは」

 サイーブ氏達と同行したナタルは、彼らの地下取引相手であるジャイリー氏の邸宅へ来ていた。
 二人の仲は古い様だが随分と犬猿な関係の様で、長らく交流していなかった様に見える。
 ジャイリー氏側はその関係を意に介す様子は無く、取引出来るなら皆客とばかりの要領の良さだ。
 彼に案内されて、彼らの言う「ファクトリー」へ向かった。
 そこは地下水路の奥深くにあり、ZAFTや連合に限らず、様々な勢力が製造した武器弾薬等の物資が集められていた。

「……世の中、知らない方が良い世界があるようですね」
「あぁ。だが、今の我々にはそれが有り難い」
「……ナタル、無理はしない様に」
「ッフ、アーニー。そこは無理を通してこそだよ」

 サイは普段あまり親しく会話している所を見ない二人が、
こんなにも親しげに話しているのを見て、彼らの仲が思ったより深い事を感じていた。
 その頃、キラ達は町中を歩いていた。

「ったく、まだ買うの?」

 キラは荷物持ちとして沢山の物を抱えていた。
 買物時間はかれこれ一時間を超える。
 一件の店で幾つもの同じ商品を買い、それを街の砂漠の虎の拠点に持ってゆき、
彼らのメンバーがそれら物資を街の外に持ち出すという算段だ。
 その為にキラは何度も大荷物を抱えては運ぶという行動を繰り返さなければならなかった。

「仕方ないだろ。こんなに沢山リストがあるんだから。
 しかもあのアルスターって女、馬鹿か。こんな砂漠にこんなものあるかってんだ。
 こんな化粧品、ここで買う奴いるわけないだろ」
「へぇ、知ってるんだ」
「そ、それはまぁ、そりゃ、私も女だからな……って、お前、今絶対女と思わなかっただろ!」
「あ、いや、そういうわけじゃ」

 憤る彼女だが、唐突にお腹が空いてきた。
 考えてみれば朝早くから出掛けて以降、何も食べていない。
 こんな大荷物を抱えていたら仕方ないが、とりあえず買物を終えたら食事にしようということになった。
 買物も済み、荷物も拠点へ渡した後、二人はレストランに入る事にした。
 地元料理のファーストフードであるケバブを勧める彼女は、
バナディーヤの中でもお気に入りの店に彼を招待する。

515 :通常の名無しさんの3倍:2012/09/05(水) 01:17:22.78 ID:???
支援

516 :量産型牛& ◆eVzLvfNS20BR :2012/09/05(水) 01:26:32.23 ID:???
8/19
 彼女はキラに席取りさせておくと、店の奥で注文していた。

「合席宜しいかしら?」

 キラの前には黒い民族衣装で体を包み、頭にはブルカを被りサングラスをした婦人だ。
 彼女の腕には沢山の食品が入った籠が下がり、手にはケバブを乗せたトレーを持っていた。
 買物帰りだろうか。

「どうぞ。連れももうすぐ来ますが、元々4人掛けですから遠慮なく」
「そう?有り難う。優しいのね」

「よ、待たせたな」

 カガリが丁度良く帰って来た。彼女も婦人の合席を快く受け入れると、早速食事の時間だ。

 大きな箱が設置されている。
 いずれも相当な量が入っているだろう。

「水と食料、燃料等は既に用意させてあります。あとは、問題の品の方ですが……。
 75mmAP弾、モルゲンレーテ社製EQ177磁場遮断ユニット、マーク500レーダーアイ、それから……」

 ジャイリーはサイーブの要求した物資を検品させる為に用意してくれていた。
 ナタル達4人がその商品を検品する。

「おひょぉ、これ、純正品。こんなものまで有るんかぁ……」

 マードックは所狭しと置かれている連合の流出品を見て、呆然といったところだ。
 しかし、そう突っ立っているわけにも行かず、手早く検品を進める。

「呆れるな……ったく。どこから横流しされてるんだか。
 アーガイル、型番を照合しておけ」
「はい!」

 サイがパッド内にあるコードナンバーとの照合を進める。
 ジャイリーはその様子をにんまりと見ていたが、サイーブはそれが面白くない様だ。

「世界にはご存知ない地下水脈も、多御座いましょう?
 ふわっはっはっは。ま、その代わりと言っては何で御座いますが……」
「分かっている。どうなんだ?それでいいのか?」

 サイーブがナタルに呼びかける。

517 :通常の名無しさんの3倍:2012/09/05(水) 01:27:08.93 ID:???
支援

518 :量産型牛& ◆eVzLvfNS20BR :2012/09/05(水) 01:28:48.13 ID:???
9/19
「少し待て」

 彼女はアーガイルの検品データを確認し返答する。

「ああ、品物に文句はない」

 その言葉を聞いた彼は、ジャイリーを見据える。

「希望した物は全て揃うんだろうな?」
「それはもう。これを」

 彼はサイーブに見積書を見せた。その額をサイは横から覗いた。

「え!?なんだこの額は……マジかよ」
「貴重な水は高う御座います。お命を繋ぐもので御座いましょう?」

 ジャイリーは嫌らしいまでの醜悪な顔でサイーブの目を見つめる。
 彼は背後にいる大男の名を呼んだ。

「キサカ!」

 彼の呼びかけに、キサカはジャイリーに告げた。

「支払いは、アースダラーで良いか」
「はい、それで結構です」

 商談が成立した。
 サイはこのやりとりを内心驚いてみていた。
 こんな砂漠の真ん中の街で、どう見たって貧しさを絵に描いた様な生活をしている筈なのに、
ここの人々は先進国に暮らす自分ですら使わない額の金を動かしているのだ。
 これをどう考えるべきか、正直困惑していた。

「では、すぐ運ばせろ!」

 キサカがジャイリーに命じる。
 彼は悪びれる事無くにんまり微笑んで彼の指示に従った。

「大佐なら、どういう反応をしたでしょうね」
「気になるか?……そうだな。私も気になった。
 愚考するなら、彼女ならこの額程度では驚かないだろう。
 彼女のVSTが亡き准将閣下に要求した額を知っているか?……それと比べたら可愛いものだ」

519 :通常の名無しさんの3倍:2012/09/05(水) 01:29:16.40 ID:???
支援

520 :量産型牛& ◆eVzLvfNS20BR :2012/09/05(水) 01:32:55.66 ID:???
10/19
 商談が成立してからは早かった。
 ジャイリー氏は迅速に物資を運んだ。
 彼らの闇の結束は高く、ZAFTに気付かれる事無く進められた。

「これはな、このチリソースを掛けてだな、こうかぶりつくのが旨いんだ」

 彼女は自分のケバブにチリソースをかけると、それを手早く丸めて自分の口に運んだ。

「っんまーーーーいーーー!ほぅらお前も!ケバブにはチリソースが当たり前だ!」
「あいや、待たれい!そこの君、ケバブにチリソースは邪道だよ。
 このヨーグルトソースを掛けてこそが本場の味というものだ!」

 唐突に現れた男性は、とても地元の男とは思えないけったいな服装をしていた。
 アロハシャツ等は暑さを考えれば頷けなくはないが、
帽子のセンスや服のコーディネイト等、
人のセンスをとやかく言う気は無くとも怪しさは半端なかった。

「人が折角気持ち良く食事をしようと思っている所になんだ!
私はこの食べ方が好きなんだ!」
「ならば、その食べ方を人に押し付けるというのはどうかなぁ。
 私は親切に彼にもう一つの食べ方があると教えているんだ。
 君は黙って彼の判断に委ねるのが礼儀というものではないかねぇ?」
「……唐突に挨拶も無く人に講釈垂れる男に礼儀云々言われる筋合いは無い!
ほら、キラ、チリソース旨いぞぉ!」
「え」
「あ、抜け駆けは許さん!ほら、少年、ヨーグルトソースを!』
「あ……」

 二人の取り合いの結果、キラのケバブは見事に二色のソースに塗れる事となった。
 そのやりとりを見ていた婦人が笑った。

「ふふふ、あらあら、見るも無惨なことね。お三方、料理を粗末にしちゃだめよ。
 作った人への感謝を忘れずに食べる。そして、美味しいと味わう。それで良くなくて?」
「ははは、いやぁ、仰る通りで。面目ない」
「伏せろ!」

521 :通常の名無しさんの3倍:2012/09/05(水) 01:33:32.21 ID:???
支援

522 :量産型牛& ◆eVzLvfNS20BR :2012/09/05(水) 01:35:43.57 ID:???
11/19
 けったいな男が叫んだ。
 と、その時、発砲音がした。
 同時に男はテーブルを蹴り上げて盾にすると、その背後に隠れた。
 キラはカガリの事を身を挺して庇うと、同様にテーブルの背後に隠れる。
 婦人も流れる様に素早くそれに倣った。

「死ね!コーディネイター!宇宙の化け物め!」
「青き清浄なる世界の為に!!」

 ゲリラ達が発砲して来たのだ。狙いはコーディネイターの無差別殺戮か。
 彼らは執拗にこちらへ向けて銃を発砲する。しかし、
なんとテーブルはその銃弾を受けても貫通しなかった。
 金属的な音もせずに弾いている所を見ると、強化カーボン素材だろうか。

「構わん!全て排除しろ!!!」

 けったいな男が懐から銃を出して再び周囲に叫ぶと、今度は周囲でも発砲音がする。
 通りから現れた男を認めたキラは、近くに有った銃を投げ放つ。
それは見事に男の顔に当たり、それで怯んだ隙を突いてキラは走り寄って蹴り上げた。
 その時、キラを狙うゲリラの姿があった。だが、けったいな男の発砲によって事なきを得た。
 ゲリラ達はあっという間に鎮圧され、周囲から銃声は消えた。
 まだ息の有るゲリラを見つけたZAFT兵が止めを刺した。
 キラはそれを見て嫌悪感を感じていた。自分と同じ筈のコーディネイターが殺人を犯している。
 その事実だけでも彼は受け入れるのが嫌だった。
 そんなキラの気持ちを知らないカガリが言った。

「お前!銃の使い方知ってるか?それにしれも…」

 その時、通りの向こうから一人のZAFT兵が走って来た。

「隊長!御無事で!」
「ああ!私は平気だ。彼のおかげでな」

 けったいな男が帽子とサングラスを外した。
 それを見たカガリは、思わずその名が口から出た。

523 :通常の名無しさんの3倍:2012/09/05(水) 01:38:06.06 ID:???
支援

524 :量産型牛& ◆eVzLvfNS20BR :2012/09/05(水) 01:40:05.47 ID:???
12/19
「ぁ……アンドリュー・バルトフェルド……砂漠の…虎…」
「え……」

 彼女の言葉に、彼の目前にいる人物の正体を知って動揺していた。
 そんな彼らの気持ちを知ってか知らずか、彼は陽気に話しかけた。

「いやぁ〜助かったよ。ありがとう」

 彼は少々強引だったが、その場に居あわせ被害に遭った3人を自分の屋敷へと招待した。

「さ、どうぞ〜」
「いえ……僕達はほんとにもう……」
「いやいや〜、お茶を台無しにした上に助けてもらって、
彼女なんか服グチャグチャじゃないの。
 それをそのまま帰すわけにはいかないでしょう。ね?僕としては」
「お兄さん、彼の言葉に甘えましょう。お嬢さんの姿は私も可哀想だと思うわ」
「……はい」

 ご婦人の言葉もあり、彼に甘える事とした。
 屋敷の中に入ると、長い黒髪に金色のメッシュを入れた美しい女性が、
この館の主ともいえるバルトフェルドを出迎えた。

「この子ですの?アンディ」
「あぁ。アイシャ、彼女をどうにかしてやってくれ。
チリソースとヨーグルトソースとお茶を被っちまったんだ」
「まぁ、それは大変。これはケバブね。それにしても、派手に汚したわね。フフ」
「あ、う、ん」
「さぁ、いらっしゃい」

 彼女はカガリを着替えに案内しようとするが、彼女が進もうとしない。
 キラは彼女に促すが、悩んでいる様だ。

「お嬢さん。人の厚意は受けるものよ。大丈夫。いってらっしゃいな」
「……はい」

 彼女はアイシャと共に部屋を出て行った。
 キラと婦人は部屋の応接椅子へ案内された。
 突っ立っているキラを見て、婦人は座る様促す。
 彼は仕方なく椅子に座った。

「僕はコーヒーには、いささか自信があってねぇ。まぁ、寛いでくれ」

525 :通常の名無しさんの3倍:2012/09/05(水) 01:40:29.41 ID:???
支援

526 :通常の名無しさんの3倍:2012/09/05(水) 01:43:36.86 ID:???
シエン

527 :量産型牛& ◆eVzLvfNS20BR :2012/09/05(水) 02:05:49.13 ID:???
13/19
「まぁ、入った時から気にはなっていたけど、そう。
私はブラックが好きよ。出来れば濃いめはお願い出来るかしら?」
「あぁ、良いですとも。美味しい珈琲を楽しんで行って下さい」

 彼は笑顔で彼女の願いを聞き入れた。

「まぁ、楽しみですわ。あ、申し遅れましたわね。お招き下さいまして有り難うございます。
 街では命拾いしましたわ。あの場でお二方に会えたことを神に感謝したいくらい。
 本当に、有り難うございます。お二人とも」

 婦人の感謝の言葉に、二人とも恐縮してその言葉を受け取った。
 鼻歌混じりに珈琲を入れるバルトフェルドを横目に、キラは壁にかけてあるものに目が行っていた。

「エヴィデンス01。実物を見たことは?」
「いやぁ……」
「何でこれを鯨石と言うのかねぇ。これ、鯨に見える?」
「いや……そう言われても……」
「これどう見ても羽根じゃない?普通鯨には羽根はないだろう」
「え……まぁ……あでも、それは外宇宙から来た、地球外生物の存在証拠ってことですから……」
「僕が言いたいのは、何でこれが鯨なんだってことだよ」
「……じゃぁ、何ならいいんですか?」
「ん〜〜……、何ならと言われても困るが……、先入観かな。僕等は見た事の有るものから推測するだろ?
だけど、誰もコイツが生きていた姿を見た事は無いんだ。なのに鯨と思ってしまう」

 バルトフェルドはトレーに三つ分の珈琲の入ったカップを乗せて運ぶと、
テーブルの上に置いて自分も彼らの対面に座った。
 婦人はトレーの中のカップをそれぞれに分けて置くと、自分のカップを手に持って口へ運ぶ。

「あら、美味しい。それに、とても良い香りねぇ」
「おぉ、それは良かった!嬉しいねぇ。人から褒められるのは」

 キラは脇に用意されていた砂糖を入れてスプーンで掻き混ぜ、おそるおそる飲んでみた。
だが、その味は普段珈琲を飲む事が少ない彼には合わなかった。

「おやおや、君にはまだ早かったかな。大人の味は。はは」

528 :通常の名無しさんの3倍:2012/09/05(水) 02:06:10.36 ID:???
支援

529 :量産型牛& ◆eVzLvfNS20BR :2012/09/05(水) 02:08:10.63 ID:???
14/19
 3人はしばし珈琲を飲みながら静かにしていたが、バルトフェルドは先程の話題に戻す。

「……ま、楽しくも厄介な存在だよね。あれは」
「……厄介……ですか?」
「そりゃそうでしょう。こんなもの見つけちゃったから、希望っていうか、可能性が出て来ちゃったわけだし」
「……」
「人はまだもっと先まで行ける、ってさ。この戦争の一番の根っこだ」
「ん……」

 キラは彼の言葉をどう捉えて良いか分からなかった。
 一般に進化の究極としての事例が「羽鯨」だが、
確かに羽鯨そのものが本物かどうかは検証しようがない。
 それでもプラントがこの羽鯨の存在を一つの可能性として、
宇宙へ出る為の「必然的進化」としてコーディネイトすることを正当化している。
 だが、羽鯨がコーディネイトの結果である訳でもなければ、
外宇宙からやって来たとも限らないのだ。

「お二人とも、私もその話題に入って宜しいかしら?」
「おぉ、どうぞどうぞ」
「お二人は外宇宙へ行くことが不可能だと思う?」
「……それは、不可能ではないと思いますが、
技術的にはかなりの長い年月が必要です」
「そうだな。君の言う通り、不可能ではないと思う」
「じゃぁ、可能なのよね。でもそれはコーディネイトしなくちゃ駄目なのかしら」

 婦人の質問は問題の核心だった。
 バルトフェルドがニヤリと微笑んだ。

「駄目とは言わないが、それだと我々の存在意義が、無くなっちゃうってことになるのかねぇ」
「あら、そうかしら」
「違うと?」
「えぇ。何事も必要に応じて行われるんじゃないかしら。
 もし必要が生じるなら、ナチュラルだけじゃ駄目なのよ。
でも、出来る限りはナチュラルに解決させる必要があるとは思うけど、
それは問題解決のベースの問題であって、手段を縛る話ではないわ」

530 :通常の名無しさんの3倍:2012/09/05(水) 02:08:31.33 ID:???
支援

531 :通常の名無しさんの3倍:2012/09/05(水) 02:09:08.76 ID:???
しえん!!

532 :量産型牛& ◆eVzLvfNS20BR :2012/09/05(水) 02:09:58.09 ID:???
15/19
「ほぅ、すると、あなたはコーディネイトに賛成であると」
「積極的なものではないわね。飽くまで限定的よ。何事にも限度がある。
限度を超えてやり過ぎるとバランスを失うのよ。今のあなた達みたいにね」

 バルトフェルドは正直に彼女の話に驚いていた。
 彼女の胆の座り具合も確かに驚く所だが、何より彼女の判断に驚いていた。
 彼は彼女の考えに興味が湧き出すのを禁じ得なかった。

「フフ、これは参った。面白いご婦人だ。
 じゃぁ、どういうコーディネイターであれば良いと?」
「そうねぇ、連合もZAFTも、言ってしまえば原理主義よ。
 それしかないイデオロギーで行けば、ゴールがお先真っ暗なのは歴史が証明しているわ。
 昔から何事も中庸と言って、バランスを重んじ、立ち位置を極端に置かないのは原則。
 それを失っているのが今のこの世界と言ったところかしら」
「ほう、それで…あなたは中庸であると?」
「えぇ、そうね。少なくとも連合やZAFTといった枠組みに捕われる気は無いわ。
 必要な事は殺しあう結果が無くなれば良いのだから」
「ふむ」

 その時、ドアが開いた。
 先程のアイシャがカガリを連れて来たのだが、なかなか彼女が入ろうとしない。

「もう、ほら、お入りなさいな」

 アイシャが後ろに回り、恥じらう彼女を部屋の中にどんと押し込んだ。
 そこにはグリーンの美しいドレスに身を包んだカガリの姿があった。
 キラはそれに一瞬見とれていたが、不用意な発言をして彼女を怒らせてしまった。
 だが、そのやりとりが滑稽なもので、彼女が女の子であることを改めて実感したキラの反応に、
カガリは赤面し、周囲は思わず笑っていた。
 カガリを交えて話す事になったので席替えし、婦人はバルトフェルドの横に座り、
キラとカガリが二人で彼らの前に座る事となった。

「いやぁ、しかし美しい。……と言うか、そういう姿も実に板に付いてる感じだ」
「勝手に言ってろ!」

 彼女がふてくされてプイッと顔を背ける。
 バルトフェルドは彼女の反応に油を注ぎたくなった。

533 :通常の名無しさんの3倍:2012/09/05(水) 02:10:55.45 ID:???
支援

534 :量産型牛& ◆eVzLvfNS20BR :2012/09/05(水) 02:11:57.82 ID:???
16/19
「うーん、しゃべらなきゃ完璧」
「ぬぁ!?……そう言うお前こそ、ほんとに砂漠の虎か?
 何で人にこんなドレスを着せたりする?これも毎度のお遊びの一つか!」
「ん?ドレスを選んだのはアイシャだし、毎度のお遊びとは?」
「変装してヘラヘラ街で遊んでみたり、住民は逃がして街だけ焼いてみたり。ってことさ」

 カガリが睨む。
 彼は不敵な笑みを浮かべて彼女に言った。

「いい目だねぇ。真っ直ぐで、実にいい目だ」
「くっ!ふざけるな」
「カガリ……」

 キラが彼女の気を沈めようと声をかけるが、彼女の耳には届かない。
 バルドフェルドの表情が曇る。

「……君も死んだ方がマシなクチかね?」

 彼の急な豹変振りに、二人はたじろいだ。

「そっちの彼、君はどう思ってんの?」
「え?」
「どうなったらこの戦争は終わると思う?……モビルスーツのパイロットとしては」
「うっ!……」
「お前どうしてそれを!」

 二人の反応に彼は今更感を感じながら苦笑した。

「はっはっはっは。あまり真っ直ぐすぎるのも問題だねぇ。
 さぁて、戦争には制限時間も得点もない。ルールも有って無い様なものだ。
スポーツの試合じゃないからね。ならどうやって勝ち負けを決める?」

 唐突な問いかけだが、確かに彼の言う通りだ。
 戦争はスポーツではない。だから怨嗟の渦が際限なく拡大する。
それを止めるのは力だけだが、力は悲劇の根源なのだ。
 自分が欲している平和は、言い換えればその力によって齎されるのだ。

「ぅ……」
「どこで終わりにすればいい?」

535 :通常の名無しさんの3倍:2012/09/05(水) 02:15:02.93 ID:???
支援

536 :通常の名無しさんの3倍:2012/09/05(水) 02:15:46.55 ID:???
しえん

537 :量産型牛& ◆eVzLvfNS20BR :2012/09/05(水) 02:16:19.86 ID:???
17/19
「どこ……で……?」
「敵である者を、全て滅ぼして!……かね?」

 彼は懐から銃を取り出した。
 セーフティガードを解いて銃口を二人に向ける。
 それを見てキラがカガリを庇い身構えた。

「ふふん、止めた方が賢明だなぁ。いくら君がバーサーカーでも、
暴れて無事にここから脱出できる程には、世の中甘くは無いよ」
「バーサーカー……?」
「ここに居るのはみんな君と同じ、コーディネイターなんだからねぇ」
「お……お前……」

 バルドフェルドの言葉に一番驚いたのはカガリだった。
 まさか、隣に座る彼がコーディネイターだったとは。

「いやぁ、僕は君の戦闘を二回見た。砂漠の接地圧、熱対流のパラメーター。
 君は同胞の中でも、かなり優秀な方らしいな。それとも、それはOSによるものかな。
 ……だがね、さっきの動き、あれをナチュラルだと言われて素直に信じるほど私は呑気ではない」
「ぅぅ……」

 彼の指摘は的を射ていた。
 MSはOSによるものだが、行動ばかりはあの状況で自分の動きを意識出来る程の余裕は無い。

「君が何故同胞と敵対する道を選んだかは知らんが、あのモビルスーツのパイロットである以上、
私と君は敵同士だと言うことだな?」
「……」
「ふふ。やっぱり、どちらかが滅びなくてはならんのかねぇ」

 その時、彼の横に座る婦人が口を開いた。

「……嫌ね。どうしてそんなに滅びたがるのかしら。
 そうやって銃口を向ければ、分かりあえるものも、分かりたいとは思わないでしょう?」
「……おや、それもそうだ。これは失礼な事をした」

 彼はそう言ってあっさりと銃を収めた。
 婦人はそれを見て微笑みながら続ける。

「……銃を出してしまう心の弱さが、あなた達の克服出来ていない弱点ね。
 ナチュラルはあなた達からすれば下等生物なんでしょう?だったら堂々となさいな。
 銃を向けられる側の私の方が冷静だなんて、どうかしていると思わない?」
「……僕はあなた方を下等生物だとは思ったことないよ」

538 :通常の名無しさんの3倍:2012/09/05(水) 02:18:06.67 ID:???
支援

539 :通常の名無しさんの3倍:2012/09/05(水) 02:20:40.15 ID:???
しえn

540 :量産型牛& ◆eVzLvfNS20BR :2012/09/05(水) 02:22:52.74 ID:???
18/19
「その様ね。だからこそ、あなたはここで自分なりのスタイルで解決する事を試みた。
 でも、世の中そんなに簡単にできているのなら話は楽だった……といった所かしら。
 だとしても、諦めてしまうのは勿体ないわね」

 彼女の話は図星である。彼からすれば自分の力をもってすれば、
充分に円満な解決が出来ると考えていた。少なくとも自分達にはその力があると信じていた。
 だが、目前に現れた結果は理想とは大きく掛け離れたものだった。
 ナチュラルを超えた筈の自分達が為したことは、何の事は無い彼らと同じ結果だ。
 違うのは勢力の違いだけで、この土地に住まう人間達からすれば大家が変わった程度であった。
 それでも自分達の統治が正当なものであると見せる努力を彼は惜しまなかった。
 歴史は一日にして築き上がるものではない。少なくとも自分がここでの統治スタイルを成功させ、
それが互いの互恵関係を促進するのであれば、長い目で見れば間違いではないはずなのだ。
 しかし、その道も先日のミスが公に破綻したことを告知する結果となってしまった。
 この隣の女性の采配によって…。

「……ほぉ、僕にどうしろと?」
「あなたはあなたの道を進みなさい。誰もが人の道から外れた調整者である必要は無いわ。
飽くまでひと味違うスパイスであれば良いのよ。それを逸れようとするから反目しあう。
 それに、あなた達は自分達の領域を維持すれば良いけど、排他性を持たせては駄目ね。
 オーブの様な共生を目指して穏便に収束為さい。そうすればZAFTは生き残れる」

 彼女の話はその通りにやれば良いだろうと自身では思っていても、
一人の軍人としては本国の命令に背ける話ではないが。ただ、興味はある話だ。

「……その話ぶりだと、僕等は滅びる運命だということになるねぇ?」
「……そうね。このまま行くなら、結果はそうなるでしょう。
でも、貴方も知っているのでしょう?だからこそ貴方はそれに抗ったのではなくて?
どの道このままなら、人類はそのエゴで滅亡の危機に陥る。これはナチュラルも例外なくよ。
 だからこそ、貴方達には大人になってもらう必要がある」
「ほぉ、そりゃ責任重大だ。それを僕がやると?」

 彼女は決して挑戦的ではなく淡々と話している。
 それが余裕に寄るものなのか、客観性の現れと呼ぶべきなのかは分からないが、
内心感じている面白さが先を聴けと言っている様に感じられた。

「いいえ、誰も貴方がしろとは言わない。できれば、そう思う人を集めることね。
尤も、貴方達の中にもそう考える人がいるから、これまでの行動が許されているんじゃなくて?」

 婦人の言葉は全て彼の的を射ていた。
 図星ばかりの彼女の言葉には驚かされっぱなしだ。一体彼女は何者なのだろう。
 彼女はどこまでの事を知っているのだろうか。

「……はぁ、まいったなぁ。こんな予想はしていなかった」
「あら、どんなことをお考えになっていたのかしら」

541 :通常の名無しさんの3倍:2012/09/05(水) 02:24:52.40 ID:???
しえん

542 :量産型牛& ◆eVzLvfNS20BR :2012/09/05(水) 02:28:32.55 ID:???
19/19
「……貴女はもっとこう、ずっとガチガチな主義者かと思っていたんだ。
 だけど、これはどうしたわけだ。僕等なんかよりずっと進んでいるじゃないか。
 ふぅ、話せて楽しかったよ。正直この状況が憎らしいくらいだ。
 まったく、これが良かったかどうかは分からんがねぇ。また戦場でな。ご婦人も」
「え?」

 キラはバルトフェルドの最後の言葉が気になって彼女を見た。
 彼女は動じる事も無く微笑みを浮かべて答えた。

「いいえ、私の方こそ助けて下さって、こんなに美味しい珈琲を入れて頂いて感謝しますわ。
 あなたと直接お話が出来て有意義でした。出来れば違う機会にお会い出来たら良いですわね」

 彼女は立ち上がって穏やかに礼を告げた。
 彼はそれに笑顔で応じる。

「はは、全くです。あなたとなら頭の硬い連中と話すよりずっと有意義に話せそうだ」
「あら、何の事かしら。私はただのおばさんよ。でも、茶飲み友達は歓迎よ?フフ。
 さぁ、お二人とも、行きましょう。今日は有難う。バルトフェルドさん」

 婦人は二人を連れて邸宅を出た。
 その後は婦人について市街地をぐるぐる回り、彼女は付けている兵隊を撒くと、
迎えに来ていたアークエンジェルクルーと合流した。
 その時始めてブルカとサングラスを取り、
キャスリーン・ジェインウェイはクルー達と共に帰還した。

「……ん?」

 バルトフェルドは彼らが帰った後カップを片付けている時に、
婦人のカップのコースターの下にメモ紙が置かれているのを見つけた。

「……これは」

 彼はメモをどう判断して良いのか分からなかった。
 だが、それをポケットに仕舞うと片付けを続けた。

第28話終わり。29話へ続く
 投下完了です。途中お猿規制入りましてすみません。
 支援書き込み有り難うございます。そして、いつも放送に来てくれてる方も有り難う。
 次の投下は金曜日の夜0時くらいに出来たらいいのかなぁ。お楽しみ頂けましたら幸いです。

543 :通常の名無しさんの3倍:2012/09/05(水) 02:38:26.97 ID:???
乙でした!
この様子からすると社長はバルドフェルドと接触する為に出てきてたのかな?
にしても本気で殺す気で車をお釈迦にしたりコーディネーターの本拠地でコーディネーターを貶したり社長無双が凄いwww

セブン達はいつ回収されるのかそれも気になる
もしかしてメモの内容はセブンとかに関係していたのかな?

次回待ってます!!

544 :通常の名無しさんの3倍:2012/09/05(水) 02:45:35.53 ID:???
GJ!
パイロットに続き今回はブルカ姿とはオシャレだなw
弁舌で虎を圧倒、さすが連邦最多のファーストコンタクトを誇る艦長、交渉経験が段違いだぜ!
最後のメモはいったい?

545 :通常の名無しさんの3倍:2012/09/05(水) 07:24:11.58 ID:???
GJ!
続き待ってますっ!

546 :通常の名無しさんの3倍:2012/09/05(水) 15:13:45.19 ID:???
乙!
明けの砂漠の無謀な特攻を一喝して止めるとは流石!

547 :通常の名無しさんの3倍:2012/09/06(木) 22:57:27.44 ID:???
そうえいえば前スレの解説でスタートレックのシールドはレーザー通しやすいってあったけど、
レーザー装備してる船がいないのはなんでなんだぜ?

548 :通常の名無しさんの3倍:2012/09/07(金) 12:33:01.49 ID:???
>>547
前スレのどこに書いてあった文章だか知らないが、スタートレックのシールドはレーザーを弱点にしてるわけじゃないぞ?
ただ単に物理的な物に対する限りは原則として有効だが、エネルギー兵器に対しては別途で亜空間歪増幅器ってので位相を変調させて対応する必要があるだけ
エネルギー兵器に対しては、シールドの位相がどの様になっているのかがばれるとそれで防げないよう調整されると貫通されてしまうが、シールド側も調整が効くものだからその弱点を突くなんてのは簡単じゃない
そしてスタートレックの世界の宇宙船には、ほぼフェイザーやディスラプターなどのエネルギー兵器が積んである

使い勝手の悪いレーザーなんか要らないだろ?

549 :通常の名無しさんの3倍:2012/09/07(金) 19:25:56.10 ID:???
>>548
つまり波長変えたらレーザーも止められると。
あと、前スレのこれさ。

470 名前:通常の名無しさんの3倍[sage] 投稿日:2012/06/21(木) 20:11:44.12 ID:???
4/7
3−3、その他の攻撃に転用可能なもの
 普段は船の周囲の障害物から重力線等で保護するディフレクター盤は、
タキオンやグラヴィトン等のエネルギーを指向性ビームという形で照射出
来ます。これらは活用次第で攻撃兵器として転用可能です。
 また、船を牽引したり岩等を引っ張るトラクタービームも重力ビームの
一つのため、利用の仕方では攻撃に転用可能です。

4、シールド/装甲
 亜空間の断裂を生じさせ、エネルギーの流入を遮断するいわば真空の様
なものを作り出して攻撃から船体を守るのが防御シールドです。
 攻撃態勢に入るとヴォイジャーは船体をシールドで包み込み、シールド
が維持される範囲において全ての攻撃から保護されます。しかし、シール
ドが持つエネルギー周波数を解読されたり、それらシールドの保護周波数
を撹乱する様な兵器や、純粋な光子兵器(レーザー)からの攻撃は貫通し
ます。(※光子が貫通するのは、劇中で目視出来る様に設定されたため)

550 :量産型牛& ◆eVzLvfNS20BR :2012/09/08(土) 00:30:47.76 ID:???
1/18…2回に分かれそうです。放送してます。http://com.nicovideo.jp/community/co1722789
では、投下開始させて頂きます。
第29話「熱砂の向こう」

 アークエンジェル作戦室では上級士官達が集まって会議が開かれていた。
 その冒頭、バジルール大尉が普段は状況説明を開始するのだが……。

「まったく、大佐!今日という今日は言わせてもらいますよ!
 先日のジーニーの件もそうですが、司令官が敵軍の将と一人で会いに行くとはどういう事ですか!」

 バジルールはトゥヴォックが居ない現在は、丁度彼の役目を担っている。
 根が生真面目な彼女はトゥヴォック同様に規律正しいが、時にうざいと言っては失礼だろうか。
 それでも彼女の指摘がその通りだけに、ジェインウェイも無下には扱えない。

「えぇ、貴方達に何も話さなかったのは謝るわ。だけど、全く考え無しに動いたわけじゃないわ。
 ジーニーの件は事前に訓練場に出向いた時に、あまりの内容に大丈夫かと思ったから、
彼らに出撃を命じる前に自分を試してみたのよ。そうしたら私の方が生存率が高いと思ったから出たの。
 それに、アレは結果的にはサイーブ氏の気を引く事にも効果的に作用した。結果オーライでしょ?」
「では、外出の件は」
「あれは偶然が重なっただけ。街で買物に出掛けてみたら、たまたまキラ君達を見つけて声を掛けたの。
 そうしたら銃撃戦が始まって、あれよあれよの内に砂漠の虎の邸宅に連れて行かれたのよ。
 でも、こちらも彼らの腹を探る良い機会だったから、充分に利用させてもらったわ。これでOK?」
「……はぁ。私には大佐を縛る権限はありません。ただ、心配で。
 これまで大佐のチームの皆さんが我々を引っ張って下さいました。
その大佐を失えば、我々はより困難な状況に陥る事は想像に難く有りません。
それだけ依存していることを反省すべきですが、大佐にはご自分を大切に為さって頂きたいのです」
「バジルールさん……。ありがとう」

 バジルールはジェイウェイ達の事を本当に心配していた。彼らは独断専行で行動しがちだが、
それを許してしまうのは自分に経験や知識が不足している故だ。しかし、どんなに経験が不足しようとも、
許しては行けない一線があるはずだ。それをこれまで見落として来たことを恥じてもいたのだ。
 それと同時に、本来は自分自身が大佐へ無理をさせない様に仕事ができていなくてはいけないのだと、
思いを新たにしていた。

551 :通常の名無しさんの3倍:2012/09/08(土) 00:33:52.61 ID:???
支援

552 :量産型牛& ◆eVzLvfNS20BR :2012/09/08(土) 00:38:39.36 ID:???
2/18
 その後はアークエンジェルと明けの砂漠同盟軍の編成が話し合われた。
 紅海を抜けてインド洋に出る為にも、まずはバナディーヤのレセップスを撃つ必要がある。
というより、それが同盟の最重要課題であり、条件であった。
 必要な物資はサイーブ氏のお陰で粗方入手出来た。
 殆どの物資は、予めセブンがリストアップしていたものを中心に武器弾薬類も補充したが、
問題はセブンとイチェブの捜索が進んでいない事だ。
 彼らは別の方向から捜索しない限り難しいか。どちらにせよ、次の戦闘で必ず虎を仕留める必要が有る。

「この辺りは廃坑の空洞だらけだ。こっちには俺達が仕掛けた地雷原がある。
 戦場にしようってんならこの辺だろう。向こうもそう考えてくるだろうし。
 せっかく仕掛けた地雷を使わねぇって手はねぇ」

 彼は地図上にある海岸線から続くラインを示していた。
 岩山がその前方を囲み海への脱出を阻んでいる。
 ZAFT陣営はその海への脱出するルート上に基地を設営し、その通行を阻んでいる形だ。

「過去の原油採掘跡地ね。資源埋蔵量でいえば、まだ出てくるはずよ。
良いのかしら?こんな宝の山を燃やしても」
「虎に従い、奴の下で、奴等のために働けば、確かに俺達にも平穏な暮らしは約束されるんだろうよ。
バナディーヤのようにな。だけど、俺達がこいつで豊かになれる保証はないのさ。なら、無いも同じだろう?」

 彼の目は地図上のZAFT陣営の拠点を凝視していた。
 その場所は過去の時代ならばオイル成金が多数暮らした豊かな場所の一つだった。
 しかし、それら成金達も彼らのために暮らした事は無く、常にロゴスと共にあったのだ。

「……そうね。地雷原となっているこんな場所、今の貴方達には使いようが無さそうね。
 だったら、綺麗サッパリと燃やし尽くしてしまいましょうか。
 花火は盛大に上げて、後は祭りでどうかしら?」

 ジェインウェイは事も無げににっこりと笑顔で彼に答えた。
 サイーブは彼女の発言に呆然としていたが、つられて笑みがこぼれた。

553 :通常の名無しさんの3倍:2012/09/08(土) 00:39:56.81 ID:???
支援

554 :通常の名無しさんの3倍:2012/09/08(土) 00:43:32.18 ID:???
シエン!

555 :量産型牛& ◆eVzLvfNS20BR :2012/09/08(土) 00:45:43.41 ID:???
3/18
「……大佐、あんたはおもしれー人だな。人の土地だと思って無茶苦茶言いやがる。
 だけど、あんたの考えてることは俺達よりずっと前を見ているのか。情けねぇなぁ。すまねぇ」
「いいえ。私は自分のルールに従って出来る範囲なら手段を選ばないだけよ。
 実際、人の気持ちを考えたら選べない事もあるわ。だけど、
それが状況を打開する会心の一策であるなら、私は罵られようとやり抜くまでよ」
「はは、強ぇーな。正直な話、女達からはやめちまえって声もある。
 あんたらと共に戦ったからといって、何かが劇的に変わるわけじゃねぇんだ。
 だが、支配者の手は気紛れだ。何百年も俺達の一族はそれに泣いてきた。
 そろそろそういうのは止めにしたいってのは、人情ってもんだろ。
少なくとも若い奴には、繰り返して欲しくねぇ」

 彼からはこの戦いに賭ける相当な意気込みが感じられる。
 我々の歴史にも居た中東の人々は、彼同様に固い信念を持って命を賭けられる
強い精神力を持った人々だった。そうした精神力は、長い年月を掛けて培われた文化に根ざしている。
 それを我々はしばしば宗教原理主義で片付けがちだが、その強い精神力が有るからこそ、
自主独立して文明は育まれ、歴史が築き上げられて行くのである。
 意志はとても大切な文明の核だ。
 それが有るのと無いのでは、我々が関与する結果にも大きな差異を生じさせる。

「私は貴方の考えに同意するわ。自分の生活の自由を束縛されない生活が必要だもの。
 だけど、我々が去った後にそれが保証されるかは難しいでしょうね。
それでもこの同盟が何かの縁にはなるはず。
 我々の艦隊と同盟を結んだことの証として、この戦闘後、スカイグラスパーを一機置いて行くわ。」
「え、大佐!軍の機体をゲリラへなど!?」

 私の提案に真っ先に反発の声を上げたのはバジルールだった。
 彼女の反発は軍人としては当然の反応だろう。

「バジルールさん、我々は同盟軍に機体を貸与するだけよ。
 差し上げるんじゃなくて、陣営の防衛のために。
 そこを勘違いしてもらっては困るわ。もう、彼らの領域は私達連合の領域でもあるのよ」

556 :通常の名無しさんの3倍:2012/09/08(土) 00:46:31.11 ID:???
支援

557 :通常の名無しさんの3倍:2012/09/08(土) 00:48:35.75 ID:???
シエン!したいけど時間が無い!!

558 :量産型牛& ◆eVzLvfNS20BR :2012/09/08(土) 00:51:29.56 ID:???
4/18
「……了解しました」

 私の説明に彼女は渋々同意した。
 実際、彼女の性格からすればこれ以上の事は言えない。
 出来れば私の言葉を聞いても反論出来る程度に育ってくれると良いのだが、まだ無理か。

「連合との間で何か有ったなら、私のサインしたこの同盟調印書を見せて、
第八艦隊大佐である私の名前を出しなさい。
 それで貴方は少しは責任を我々に転嫁出来る筈よ。彼女の言った事は気にしないで」
「……何から何まで、すまねぇ。オドンネル大佐、あんたの名前は末代まで伝えるぜ。
連合にも勇者が居たとな」
「あら、居たじゃなくて居るでしょ。勝手に私を殺さないで頂戴」
「はは、これは失敬!」

 作戦が纏まると早速行動に移された。全部隊の準備が進められる。
 この作戦では同盟軍に向けてスカイグラスパーの貸与の為に技術指導するため、
明けの砂漠の人員の中から選抜する必要があった。
 幾人かの若者が候補として選定に参加したが、最終的に候補となったのはアフメドという少年だった。
 彼には大尉程ではないが、僅かに拡張空間認識能力を持っている気配がある。
 私は作戦室のコンピュータから作成した練習メニューと彼用のサポートシステムを手早く組み、
それらの設定を施したシミュレーターでの練習を一日実施した。
 彼は予想通りに高い認識能力を示し、シミュレーション結果がカズイ少年を軽く上回る成績を出した。
 これならば彼をスカイグラスパーに乗せても大丈夫と踏んだ私はGOサインを出した。

 その他、整備陣に向けても私は注文を出していた。
 以前の戦闘でのアーマーシュナイダーの有効性を考え、
ストライクの脚部にシュナイダーソケットを付けた。
 脚部側面外側にフィンの様に刺さった形で収納され、
元々あるポケットを含めて6本のアーマーシュナイダーを装備出来る。
 その他、ストライクのバッテリー充電方法の改善策として、タッチチャージングシステムを設計した。
 ストライクの蓄電池への供給用に、
手にチャージングモジュールを搭載する形で構造設計していたセブンのデータを流用したものだ。
彼女がこの場に居たならこのシステムを採用させたに違いない。

559 :通常の名無しさんの3倍:2012/09/08(土) 00:55:03.90 ID:???
支援

560 :量産型牛& ◆eVzLvfNS20BR :2012/09/08(土) 00:55:22.82 ID:???
5/18
 チャージスポットはリニアカタパルト射出パックは間に合わないので、
脚部と両側面翼に開閉式のチャージポケットを設置した。
 ジーニーにはバッテリーバックパックユニットを搭載し、アグニを持たせて後方支援させることにした。
 次の戦闘のジーニーのパイロットは私が乗るわけにも行かず、フレイ・アルスターが乗る事になった。

 アークエンジェルのCICでは敵の動きをキャッチしていた。
 CIC主任のパルが状況を報告する。

「敵、前方地雷原を突破。こちらにゆっくり向かっています」
「明けの砂漠の誘導が上手く行ったな。艦長、行きましょう」
「えぇ。これより本艦は戦闘行動に入る。目標、砂漠の虎!哨戒機先行、敵情視察後MS部隊は攻撃に入れ」

 ラミアスの宣言後、バジルールが命令を出して行く。

「スカイグラスパーを先行させ、MS部隊を発進させろ」

 スカイグラスパーがリニアカタパルトを発進した。

『キラ、嬢ちゃんを頼むぞ!』
「はい」

 スカイグラスパーからの通信が切れる。
 初陣のフレイを保護しながら敵を叩く事になるこの戦いは、砂漠の虎との決戦になるだろう。
 キラからすればこんな決戦にフレイを出してくる大佐の気が知れなかった。
 それでも彼女の言葉は絶対であり、自分が簡単に変えられる事ではない。
 ただ、キラからすればそれどころではない事情もあった。
 このままこの艦に乗って軍属として戦うということは、
アラスカへ到達した時点での評価次第で何が起こるか分からない。
 優秀な成績を打ち立てなければ、無能者として切り捨てられる可能性があるのだ。
 少なくとも優秀であれば、文句や嫌みを言われても、
価値を認めて命を狙われることにはならないと思うが。
 そして、気がかりなのはラクス・クラインだ。彼女をこのままアラスカに移送すれば、
きっと何らかの外交交渉の材料に使われる事は間違いない。出来る事ならそうしたくないが、
そうなると自分も後ろに手が回る事態を想定しなくてはならなくなる。

561 :通常の名無しさんの3倍:2012/09/08(土) 00:56:23.97 ID:???
支援

562 :量産型牛& ◆eVzLvfNS20BR :2012/09/08(土) 00:58:42.06 ID:???
6/18
 その覚悟をどこで決めるべきか。……そもそもそんな覚悟が自分にあるのか。
仮にあったとしても、自分一人で守り抜くだけの力があるとも思えなかった。
 それでもどうにかしてやりたいという気持ちは有るのだが。

「キラ・ヤマト、ストライク、行きます!」

 ストライクが出撃する。
 先行したスカイグラスパーが敵側の陣容を知らせてくる。

「敵部隊、バクゥx10、ジン・オーカー6、それにイージスとバスターだ!」

 フラガの報告はブリッジのラミアスのもとに届く。
 レセップスの姿が見えないことを警戒した彼女は、スカイグラスパーを艦後方へ向けさせると、
ストライクとジーニーに対し前方の敵へ対応する様命じた。

「来たわね」

 アグニを装備したジーニーは、フレイの操縦のもと後方支援射撃に徹する。
 彼女は静かに狙いを定める。狙いは最も奥に位置するジン・オーカーだ。
 アグニは高速機動を得意とするバクゥには適さないため、本来はジェインウェイの様な芸当は勧められない。
 彼女の場合は野生の感の様なものが働いたからだが、フレイにはそんなものはない。
しかし、彼女にもジェインウェイには無い能力もある。

『……うーん、俺はあまり意識した事は無いが、相手を感じるってのは集中に近いかもしれない。
相手の事を考えているうちに、何故か相手の事が分かったりすることがあるんだ。
 それを拡張空間認識能力……ってのか?……になるなら、狙いを定めてよく見る事かもしれないな」

 訓練教官としてのフラガの言葉は、技術的というよりは漠然とただ感じろという事だが、
彼自身この能力を良く理解しているわけではない。たぶん、その漠然としたものがそのものなのだろう。

「(感じるのよ。あの真ん中の鈍い奴……)あ!?そこね!!!」

563 :通常の名無しさんの3倍:2012/09/08(土) 00:59:14.95 ID:???
支援

564 :量産型牛& ◆eVzLvfNS20BR :2012/09/08(土) 01:00:12.39 ID:???
7/18
 ジーニーがアグニの引き金を引いた。
 その光線は真っ直ぐ戦場を駆け抜け、ジン・オーカーの両足を破壊した。

「や、やったわ!……あ、あたし、やれた。あは、あはははは!」

 彼女の笑い声が聞こえる。
 初の撃墜に浮かれているのだろうが、彼女はまだ事態をよく理解していない。
 この一撃はたまたま相手の足に当たったが、戦闘で撃ち抜く事は命をやりとりしているということだ。
 キラは彼女の笑いを聴いて安堵する半面、その事の意味に嫌悪感を抱いていた。そして、
そんな繊細過ぎる脆弱な自分に嫌気も感じていた。
 強くなりたいのに嫌悪を抱く自分は、一体どちらに向かいたいのだろう。

「っくそぉ!!!」

 キラのシュベルトゲベールがバクゥを切り裂く。
エールで先行した彼は間髪入れず攻撃を繰り出す。
 バクゥは小型ミサイルでその動きを牽制しようと一斉射撃にでるが、
キラはその攻撃も地面スレスレに飛ぶ事で、ミサイルを誘導し、
高い砂丘に導いたところで急上昇し砂丘へ衝突させた。
 砂を巻き上げて大爆発するのを尻目に、彼はアーマーシュナイダーを両足の新たなソケットから取り出すと、
次の瞬間には二機のバクゥを投擲して射抜いていた。そして、バーニアを拭かし転倒した一方の機体へ向かうと、
その機体に刺さるアーマーシュナイダーを引き抜いた。
 そこに二方向から高速で接近してくるバクゥ。彼はそれを見て、一方はアーマーシュナイダーで突き刺し、
もう一方は蹴り上げてからパンチを入れて地面に叩き付け、
仰向けに倒れたバクゥの腹に向けてシュベルトゲベールを突き刺した。
 その時、高エネルギーが彼の機体を霞める。
 イージスの放ったスキュラがストライクを霞めてジーニーのアグニを撃ち抜いた。

「きゃぁ!?!」
「フレイ!?」

 彼女はとっさに動きアグニを手放したため無傷だが、武器が失われてしまった。

565 :通常の名無しさんの3倍:2012/09/08(土) 01:00:32.04 ID:???
支援

566 :量産型牛& ◆eVzLvfNS20BR :2012/09/08(土) 01:02:09.89 ID:???
8/18
 フレイが後退しようと動くが、そこを後方からジン・オーカーの流弾が飛ぶ。
 その砲撃は彼女の行く手を阻み、機体操縦に不慣れな彼女は思う様に進めない。
 アークエンジェルが迎撃ミサイルを発射して牽制するが、相手側の動きに翻弄されて上手く捕らえられない。

「くそぉ!何とかしないと」

 キラは焦っていた。このままではラクスどころかフレイすら守れない。
 そんな自分では彼女のそばに居る事は出来ない。力が欲しい。力が。
 その瞬間、彼の頭の中で何かが弾けた。
 空間認識が急にクリアになり、全てのものが当然の様に感じられた。

「ガンダム、フライトサポート、回避プランA、速度MAXでファイティング!」
『サポート、オンライン』
「シュベルトゲベールのエネルギー供給カット、僕の合図で電源オン」
『供給、を、カットしました。命令、を、受け付けました』

 キラはガンダムの動作出力を最大速度に設定し噴かす。目指すはイージス。
 この場は最高の破壊力を持つイージスを黙らせなくては後顧の憂いを断てない。
 シュベルトゲベールの電力供給をカットしたのは少しでも省電力にするためだ。
少しでも長く戦闘を続けなくてはフレイは勿論、アークエンジェルを守る事は出来ない。

「来ましたね。空戦仕様はこちらの方が上手ですよ!」

 ニコルがイージスを飛行形態で噴かすが、ストライクのスピードはイージスに劣らない。
 エールユニットの性能はイージスのMA形態に劣らぬ性能を見せている。
 彼はイージスをMS形態に変形させると、右足のビームサーベルを起動して牽制するが、
ストライクはイージスの足をシュベルトゲベールで切り裂いた。

「なんで!?」

 切り裂かれた足が宙空で爆発する。
 姿勢制御が揺らぐのを必死に押さえて立て直すが、その隙にイージスの左手を切り裂かれた。
 ニコルはこのままでは確実にやられると判断し後退する。
 だが、ストライクは膝のアーマーシュナイダーを抜くと、それをイージスの背に向かって投げ放った。
 接近警報がなるが、その時には深々と背に突き刺さっていた。

567 :通常の名無しさんの3倍:2012/09/08(土) 01:02:25.16 ID:???
しえーん!!

568 :量産型牛& ◆eVzLvfNS20BR :2012/09/08(土) 01:04:33.58 ID:???
9
「うわぁ!!!」

 イージスが煙を上げて落下する。
 ストライクは既に次へ狙いを定めていた。
 その視線の先にはバスターが見えた。

「くそぉ、ニコルが」

 ピートリー艦上のディアッカは機動力で劣るバスターの劣勢は分かっていたが、
現状では何もしないわけにはいかなかった。
 ニコルがやられた状況で、ZAFTはバクゥ以外で戦える機体は無い。
そのバクゥもストライクにあっさりやられている。

「俺は悪足掻きはしない質なんだよな。だけどよ、逃げるなんて、出来ねぇよな!!」

 ディアッカは持てる兵器を全てフルバーストで発射した。
 この状況で出来る最大最高の攻撃はこれ以外に道が無い。
 ストライクへ照準を合わせたフルバースト攻撃に、キラはエールを噴かして熱源誘導を躱そうとする。

「くぅ!?」

 アグニの射線がそれを遮り、回避運動を阻害していた。
 後方から接近警報が聞こえる。ロックオン警報と共にセンサーが大合唱する中、
遂に全ての攻撃がストライクへ命中した。

「キラ!?」

 ミリアリアが叫ぶ。
 アークエンジェル艦橋もキラの安否に緊迫した。

「……え、そ、そんな」

 ミリアリアが困惑していた。
 その声にバジルールが反応する。

「どうした、何が有ったんだ!」
「……スカイグラスパー2号機……消失」
「!?」

569 :通常の名無しさんの3倍:2012/09/08(土) 01:05:01.74 ID:???
支援

570 :通常の名無しさんの3倍:2012/09/08(土) 01:06:00.03 ID:???
支援

571 :量産型牛& ◆eVzLvfNS20BR :2012/09/08(土) 01:07:08.61 ID:???
10/18
 全ての攻撃を遮る様に、アフメド少年の乗っていたスカイグラスパー2号機は、
ストライクの前に入っていたのだ。

「……あの、接近警報が……そんな。どうして」

 キラは絶句していた。まさか、自分の命を賭けて守られると……。

「……こんな、こんな事があっていいわけがない!どうして、どうしてぇぇぇええ!!!!」

 キラの怒りが極限に達した。
 バーニアをベタ踏みに噴かしてバスターへ急接近する。
 ピートリーが主砲で狙うも、それをひらりひらりと躱し迫った。
 バスターはフルバーストによる排熱が追いつかず次撃が撃てない。
 その時、ミサイルの雨がストライクに降り注ぐ。

「!?」

 アークエンジェルから3時の方角より現れたヘンリーカーターが、バクゥと共に接近する。

「おらおらおらおらぁ!!!イザーク・ジュール様のお通りだぁ!!
道を空けやがれぇ!」

 バクゥに乗ったイザークを先頭にバクゥが迫る。
 キラは小型ミサイルを避けると、バスターのアグニを切り裂いて反転し、そのままバクゥに急迫する。

「来たなストライク!今日こそは必ず打ってやる!」

 バクゥが跳躍する。
 これまでの機体とは違うが、イザークにとってそんなものは関係無い。

572 :通常の名無しさんの3倍:2012/09/08(土) 01:07:39.52 ID:???
支援

573 :量産型牛& ◆eVzLvfNS20BR :2012/09/08(土) 01:13:33.76 ID:???
11/18
 ストライクと戦えるということに、純粋に喜びすら感じていた。
 彼からすれば、負けるより戦えずに終わる事の方がずっと屈辱なのだ。
 イザークはストライクにビームサーベルを出力して迫るも、ストライクはバクゥを蹴り上げた。

「ぬあ!?」
「沈め!!!」

 蹴り上げられ後方に転落して行くバクゥに、アーマーシュナイダーが投げ込まれた。
 それはバクゥの腹に深々と突き刺さり、爆発して落着した。
 そして、続けざまに残りのアーマーシュナイダーを投げ込み、二機のバクゥへも命中させると、
 ヘンリーカーターの艦上に着地し、シュベルトゲベールのビームをオンにすると、そのまま深く突き刺し離れた。
 ヘンリーカーターは現れて数分もせずに爆発して炎上した。

「……あいつ、化け物か……」

 イザークはものの数分もせずにストライクにしてやられたことを悔しがりたい所だが、
実力差はこの戦いでハッキリしていた。……この差がマシンの差であって欲しいものだが。

 だが、そのキラは休む暇を与えられない。
 後方で爆発音が聞こえる。センサーには新たな機影が複数現れていた。

「……良い様にやられているか。全く、君は大したコーディネイターだよ。
正直それがうちの仲間じゃないのが悔しいねぇ」

 ラゴゥと共に現れたバルトフェルド隊旗艦レセップスは、アークエンジェルを後方から狙う格好となった。
 丁度ピートリーと挟まれる形となる。

「艦長、ここはローエングリンの使用許可を!前方の敵艦を沈めて後方の敵に当たるべきです!」

 バジルールの提案を彼女は即座に否定する。

「駄目よ。あれは地上で使える兵器ではないの。放射能汚染を残せば、
ここに暮らす人々に長い傷をもたらしてしまう。
 それが与える連合の印象はどんなものかしら。言いたい事は分かるけど、人として考えて」

574 :通常の名無しさんの3倍:2012/09/08(土) 01:14:00.84 ID:???
支援

575 :量産型牛& ◆eVzLvfNS20BR :2012/09/08(土) 01:16:19.56 ID:???
12/18
「しかし!このままでは!」
「艦長!前方敵艦、フラガ大尉がミサイルで大破させました!」
「え!?」
「な!?」

 パルの報告に二人はお互いに顔を見合わせた。
 そして、思わず笑った。

「さっすが、しょ・う・さ、ね♪」
「……くくく、仰る通りで。では、アークエンジェル転進反転!艦首、敵レセップス!」

 その頃、当の手柄を上げた本人は?

「へっくし!!……はぁ、風邪かぁ?嫌だなぁ、俺治るの遅いんだよなぁ。
……帰ったらうがいだな」

 スカイグラスパーもレセップスへ向かって旋回運動していた。
 残すはレセップスの部隊のみだ。

 バルトフェルドは完全な負け戦であることを既に悟っていた。
 この場に勝利出来る要素があるとすれば、それはラッキーの部類だ。
 果たして自分にそれほどの強運が残っているのだろうか。

「……らしくないなぁ」
「あら、そうかしら?私は今の貴方が好きよ」
「そう言ってくれるのは君だけだよ。アイシャ。さて、どうしたもんだ。
引き際が肝心と言ったもんだがね。引けるのかねぇ?」

 彼の部隊の周囲はアフリカ共同体の保護下にある。とはいえ、何の事は無い。
 単純にアフリカ共同体が抵抗しないという協力があるだけだ。
 こんな弱った状況では、彼らに足下を見られるのは火を見るより明らかだ。
 だからと部下を易々と殺させてたまるものではない。

576 :通常の名無しさんの3倍:2012/09/08(土) 01:16:53.53 ID:???
支援

577 :量産型牛& ◆eVzLvfNS20BR :2012/09/08(土) 01:19:00.77 ID:???
13/18
 アークエンジェルとの戦闘を継続する利益よりは、交渉し休戦するのが手だが、
よもやこの期に及んでそんな楽な逃げ道があるとは思っていない。
 だが、敵の指揮官が「彼女」であるならば、あるいは……甘い話は罠が付き物か。

「……レセップス。こちらバルトフェルドだ。
レセップスは現時点より戦闘を離脱。そのままジブラルタルへ行け」
『ダコスタです。隊長、どういう事ですか!第一、そんな事が可能な状況では』
「大丈夫だ。行け!俺が何とかする」
『……分かりました。隊長、ご無事で』
「あぁ、生きて共に会える日を願っているよ。通信終了」

 彼はそう伝えると覚悟を決めた。

「悪いがアイシャ、君も降りて貰おうか」

 しかし彼女は従う様子は無い。

「貴方は悪い人。本当に。そんな悪人を許してあげる程、私は優しくないの。
だから、貴方がとっても困る事をするのが……私の生き甲斐」
「……アイシャ、君って人は。ふ、行こうか。悪人らしくなぁ!!」

 ラゴゥが単機転進を続けるアークエンジェルへ攻撃する。
 ビーム包の攻撃が機関部に命中し、アークエンジェルは転進中にバランスを崩して着陸を余儀なくされた。

「あぁ、アークエンジェルが!?」

 キラは焦っていた。
 エネルギー残量も残り僅かな状況でエールを使えず、走ってアークエンジェルへ向かう。
 だが、この距離では間に合いそうにない。

578 :通常の名無しさんの3倍:2012/09/08(土) 01:19:30.09 ID:???
支援

579 :量産型牛& ◆eVzLvfNS20BR :2012/09/08(土) 01:21:58.98 ID:???
14/18
「くそぉ、一か八か!」

 キラはエールを噴かす。こうなってはなりふり構っていられない。
 少しでも早く飛び、アークエンジェルの充填を受けられればあるいは……。
 だが、その時通信が入る。

「アークエンジェルは、私が守る!!」
「フレイ!?」

 フレイの乗ったジーニーは、一足早くラゴゥへ向けて到着していた。
 スカイグラスパーがそこに牽制射撃する。

「お嬢ちゃん、あんたには無理だ!」
「そんなこと、やってみなければ!」

 ジーニーはアーマーシュナイダーを構える。
 キラやトールにも出来て、自分に出来ぬ筈は無い。必ず出来る。
 そうでもしなければ、これから続く長い戦いを勝ち抜く事は出来ないのだ。
 彼女は敵の動きを凝視する。
 高速で接近してくるラゴゥの中から人の気配を感じる

「(二人……いるの?……強い意志、何これ…こわい!?)」

 フレイは震える手を押さえる様力を入れ、強引に操縦桿を握る。
 ジーニーがアーマーシュナイダーを投げ放った。

「アンディ!」
「おぅ!!!」

 アイシャが機敏に反応しアーマーシュナイダーを避ける。
 それに呼応する様にバルトフェルドはビーム砲でジーニーを狙い撃つ。

「きゃあああ!!!!」

580 :通常の名無しさんの3倍:2012/09/08(土) 01:22:18.67 ID:???
支援

581 :量産型牛& ◆eVzLvfNS20BR :2012/09/08(土) 01:25:39.20 ID:???
15/18
 ビームはジーニーの胸に命中し、その衝撃で後方へ飛ばされた。
 そこに第二射が飛び、それは右腕と左手に命中。
 彼女の攻撃オプションは頭部イーゲルシュテルンのみになった。

「あ、あぁ!?」

 キラのエールはアークエンジェルまで辿り着き、
充電パッドから急速充填を受けている所だった。
 焦る気持ちとは裏腹に充填は時間が掛かった。
 実際はかなりの高速充填なのだが、この状況では数秒ですら惜しい。
 そして、ラゴゥが跳躍する。

 「……終わりだ!」
 「フレェェェイ!!!!」

 一筋の光球が貫く。
 それはラゴゥの右前足部を貫通し爆発させた。
 ラゴゥはバランスを崩しジーニーの横を通り過ぎる格好となった。
 機体の姿勢を立て直し確認する。

「なんだ!?」
「アンディ、アレ!」
「……あれは!?」

 アイシャが指摘したそれは、先日倒した筈の連合の機体だ。

『X−102デュエル、イチェブ・オドンネル。戦線に復帰する』
「イチェブ!?」

 キラのもとに入った通信はアークエンジェルのブリッジでも聴こえていた。
 艦橋に歓喜の声がわき上がる。

582 :通常の名無しさんの3倍:2012/09/08(土) 01:26:09.95 ID:???
支援

583 :量産型牛& ◆eVzLvfNS20BR :2012/09/08(土) 01:28:33.89 ID:???
16/18
『キラ、あの機体は僕が相手をする。キラは彼女の保護を』

 彼はそう言うや否やデュエルのバーニアを噴かして砂漠を突進する。

「速い!?」

 デュエルの機動は彼が以前見たスピードより速かった。いや、それだけではない。
所々カスタマイズされているのがわかる。
 ラゴゥは状況の変化を悟り、機体の進路をレセップスの方へ反転させる。
 だが、それより早くデュエルが迫る。

「ぐぅ、早い」

 デュエルの手に持つビームライフルは黒くゴツゴツとした印象のあるもので、
これまで手にしていた物とは全く違う物だった。
 彼はそれを片手に持ち構える事無く撃ち放つ。
 銃口からはパルスビームが打ち出され、ラゴゥの走る前方へと着弾する。
 その射線はまるで弧を描く様に曲がっており、着弾点の予測がつかない。
 全てはアイシャの反射神経にのみ委ねられる状況だ。

「アイシャ、すまない」
「何を言っているの、アンディ。今はそういう時じゃないわ!」
「それでも、言える時に言わないとな」
「もぅ、そんなセンチメンタリズムは要らないわ!生きて、生きて、生き延びるのよ!」

 彼女の言葉に彼は一瞬虚を突かれた様な感覚を覚えた。
 この状況ですら彼女は諦めないというのだ。

「……ふふふ、なんて人だ。君は。まったくもって驚かされる。…そうだな。
 賭けてみようじゃないか。俺達の運命を」

 バルトフェルドの目に強い光が宿る。
 彼は撤退を続けるレセップスに通信を試みた。

『た、隊長!ご無事ですか!』

584 :通常の名無しさんの3倍:2012/09/08(土) 01:29:06.34 ID:???
支援

585 :通常の名無しさんの3倍:2012/09/08(土) 01:33:41.48 ID:???
しええええええええん!!

586 :量産型牛& ◆eVzLvfNS20BR :2012/09/08(土) 01:36:10.18 ID:???
17/18
「ダコスタくん、君に頼みたい。主砲を一発、指定の座標にお願いする。
詳しい内容はそちらに送った。その通りにしろよ。いいな」
『わ、わかりました。あの、隊長は…』
「僕の事は良い。君はそのまま撤退しろ。良いな」
『……はい。ご無事で』

 通信を切るとアイシャのディスプレイに座標を送信した。
 彼女はそれを見てラゴゥの進路を変更し、砂漠の真ん中へと走って行く。
 デュエルはそれに真っ直ぐ一定の距離を置いて近づいてくる。
 前方には小高い丘が見えた。ラゴゥはそこを駆け上っていく。
 丘の上に到達すると、その後はかなり落ち込んだくぼみになっていた。ラゴゥはそこをノンストップで降りて行く。
 デュエルも丘の上に到達したその時には、ラゴゥは低地の向こうを走っていた。
 デュエルがビームガンの引き金を引いた。連続して三つの光球がラゴゥ目掛けて飛んだ。

「ファイア!!!」

 ダコスタが命令する。
 レセップスの主砲が咆哮し、砲弾がデュエルとラゴゥの戦闘するフィールドへと飛んで行く。
 ロックオン警報が鳴っていた。

「アンディ!」

 その時、操縦席に乗る彼女が突然彼のもとに体を寄せる。

「アイシャ!!」

 二人は抱き合い、その最後の時を待った。
 光球が相次いで着弾する。それと同時にレセップスの砲撃がデュエルの周囲に降り注いだ。
 その瞬間、地面が大爆発を起こした。

「イチェブくん!?」

 ラミアスが思わず声に出した。
 アークエンジェルのブリッジに緊張が走る。

587 :通常の名無しさんの3倍:2012/09/08(土) 01:36:42.08 ID:???
支援

588 :通常の名無しさんの3倍:2012/09/08(土) 01:39:27.95 ID:???
しえん

589 :量産型牛& ◆eVzLvfNS20BR :2012/09/08(土) 01:50:02.33 ID:???
18/18
「やった!かかった!!!」

 サイーブが言った。
 彼は双眼鏡を片手に遠くで起きた爆発を見ていた。
 そこは彼らの敷いた地雷原であると同時に、古い油田の採掘坑跡が地下に大きく空洞として残っている。
 古いと言っても中にはまだ沢山の原油が眠っているのだ。
 着弾した地雷の爆発によって陥没したそこに、原油への引火も始まり炎の柱が立ち上る。

「……砂漠の虎が、…逝った。……勝ったんだ。俺達は勝ったんだ!!!」

ワアアアアアアア!!!!

 大きな歓声がわき上がる。
 明けの砂漠の勝利の祝砲を上げていた。
 そして……

『……任務終了。アークエンジェル、これより帰投する』

 アークエンジェルへ通信が入った。
 その声は皆が心配して待っていた彼の声だ。

「イチェブ君!あぁ、……良かった。こちらミリアリア・ハウ。
X-102デュエルの帰投を了承します」
『了解』

 彼の無事の声を聴き、ブリッジ内の緊張も解かれた。
 ラミアスも息を止めていた程だが、ほっと一息ついた。
 バジルールが珍しくマイクを取り自ら回線を繋ぐ。

『こちらアークエンジェル、バジルールだ。こちらも見ていた。
よくやった。早く帰って来い。……みんなが待っている」

 デュエルがアークエンジェルへと飛ぶ。
 遂に砂漠の虎との戦闘が終結した。

投下完了。本日は遅くまでお付き合い下さいましてありがとうございました。
放送へも来て下さった皆様、本当に有り難う。次の回でとりあえず暫く休止となります。
次回の火曜日の投下は夜9時くらいを予定しています。お疲れさまでした。

590 :通常の名無しさんの3倍:2012/09/08(土) 01:55:22.01 ID:???
GJ!
虎は原作通生きているのだろうか?
なんかデュエルが強化されてるけどナノプローブ効果か。

591 :通常の名無しさんの3倍:2012/09/08(土) 02:00:17.23 ID:???
GJ!!!
イチェブが無事で何より!
セブンも無事なのかな?

デュエルの改造についてひと悶着ありそうな予感。
とにかくGJ!!!

592 :通常の名無しさんの3倍:2012/09/08(土) 07:34:03.57 ID:???
超乙!!
…結局、虎さん逝っちゃった…けど、
屋敷でのメモって一体何だっだろ?…

593 :通常の名無しさんの3倍:2012/09/08(土) 15:09:31.03 ID:???
次回でしばらくお休み、寂しくなるなー
あの二人は転送収容されてそうな気がするw

594 :通常の名無しさんの3倍:2012/09/08(土) 20:03:39.30 ID:???
>ニコルがイージスを飛行形態で噴かす

イージスMA形態は大気圏内飛行できないっすよ。ロッソイージスは飛行できます。

595 :量産型牛& ◆eVzLvfNS20BR :2012/09/08(土) 21:10:46.97 ID:???
GJや乙有り難うございます。

まず訂正

13/18の
 ビーム包の攻撃が機関部に命中し、は
 ビーム砲の攻撃が機関部に命中し、…に訂正致します。申し訳ないです。

>594
 そうでしたか。指摘有り難うございます。すみません。確認不足で。
 では、内容を変更した方が良いですね。8/18の部分は後程訂正します。

596 :量産型牛& ◆eVzLvfNS20BR :2012/09/08(土) 21:20:43.09 ID:???
こんな感じでどうでしょうか。

8/18
「来ましたね。空戦はあなただけの物では有りませんよ!」

 ニコルがイージスのバーニアを噴かすが、ストライクのスピードはイージスの出力に劣らない。
 唯一の不利はエネルギー消耗率の高さだが、この点でもストライクの方が上回った。
 彼はイージスの右足のビームサーベルを起動して牽制するが、
ストライクはイージスの足をシュベルトゲベールで切り裂いた。

「くぅ!?」

 切り裂かれた足が宙空で爆発する。
 姿勢制御が揺らぐのを必死に押さえて立て直すが、その隙にイージスの左手を切り裂かれた。
 ニコルはこのままでは確実にやられると判断し後退する。
 だが、ストライクは膝のアーマーシュナイダーを抜くと、それをイージスの背に向かって投げ放った。

597 :通常の名無しさんの3倍:2012/09/08(土) 21:41:12.01 ID:???


598 :通常の名無しさんの3倍:2012/09/08(土) 22:41:38.75 ID:???
大貫・平井絵での、ヴォイジャーメンバーのキャラ見てみたい…w
とくに艦長とセブンとイチェブ

599 :通常の名無しさんの3倍:2012/09/09(日) 10:16:24.25 ID:???
そういやシンゾンと変態仮面は境遇が同じだっけ
まぁクローンの反乱やら復讐って古典SF的なネタだけど

600 :通常の名無しさんの3倍:2012/09/09(日) 15:10:35.83 ID:???
>>549
レーザーその電磁波の波長を一定に保って照射するという性質上、
使用する電磁波の周波数の範囲は電磁波ごとに決まっているから
相手のシールドの周波数に合わせて調整するとか難しいんじゃね

601 :通常の名無しさんの3倍:2012/09/09(日) 20:30:45.99 ID:???
>>599
まあシンゾンの目的はレムスの独立とピカード入手による延命で、地球滅亡はおまけみたいなもんだったな。
それにしてもウォーバード・シミターはカッコよすぎる。

602 :通常の名無しさんの3倍:2012/09/10(月) 21:12:43.27 ID:???
シミターか。
ディスラプターキャノン52門、光子魚雷発射管27門、2重のフォースフィールド、完璧な遮蔽装置。
そして使うと相手は死ぬセラロン放射装置と「ボクの考えたすごい戦艦」状態。

603 :量産型牛& ◆eVzLvfNS20BR :2012/09/11(火) 21:21:58.32 ID:???
1/23……http://com.nicovideo.jp/community/co1722789
本日で第1期終了みたいな感じです。23分割と長いですが宜しくお願いします。
第30話「それぞれの役割」

 敵軍の将が討たれ、レセップスも撤退したのを見てジェインウェイは戦闘を終結させた。
 ここに砂漠の虎は消え、地球連合・明けの砂漠連合軍は戦闘に勝利した。
 ジェインウェイは周囲のZAFT兵の生き残りを捕虜として回収する様命じると、
ピートリー及びヘンリーカーターから十数名程の生存者が発見された。
 捕虜の扱いで殺人事件が発生しない様ジェインウェイは厳命し、
命令違反者に対しては同盟軍も含めて処刑するとした。
 これには明けの砂漠側から少なからぬ抗議があったが、
彼女は早々に戦闘部隊を捕虜回収監視に回らせ付け入る隙を与えなかった。
 いずれも重傷者で軽傷の者は僅か数人。大破した二つの艦内に居た生存者も残らず回収し、
遺体は戦没者として丁重に扱い、彼らの管理コードの入ったタグは後にアフリカ共同体を通して返還された。
しかし、その中にイージスやバスターのパイロットは見つからなかった。

「……ったく、敵前逃亡なんて軍法会議もんだぜ?」

 ディアッカはデュエルを動かしながらこぼしていた。
 彼らはアグニのみを失い無傷に近いデュエルに乗っていたディアッカの機転で、
不利な戦場からの撤退をしていた。ディアッカ自身は躊躇いもあったが、
低軌道会戦でのアスランの判断の遅さが危機を招いたことが記憶に新しかった事もあり、
この戦いでは自分の判断を優先する事にした。何があっても生き残らなくては意味が無い。
 彼はまずイージスから負傷していたニコルを回収すると、
その足ですぐヘンリーカーター付近のイザークのもとへ行った。
 イザークの方は自力で脱出しており、バスターへも自分の力で乗れた。
 ディアッカは二人を狭いコックピットの後方に入れると出発する。
 戦場は丁度足付きがレセップスに気を取られてこちらに興味を示していない状況だった。
 この機会を逃せば彼らに脱出のチャンスは無いだろう。まさにナイスタイミングだった。

「敵前逃亡じゃない。勇敢なる撤退だ。レセップスを見ただろ。
 あれが撤退したんだ。俺達があそこに居る必要は無い」

 イザークは悪びれる様子も無い。さも当然の様に言ってのけた。

「いや、そりゃ、そうだけどさぁ……」

604 :通常の名無しさんの3倍:2012/09/11(火) 21:23:05.98 ID:???
支援

605 :通常の名無しさんの3倍:2012/09/11(火) 21:23:37.08 ID:???
支援

606 :通常の名無しさんの3倍:2012/09/11(火) 21:23:53.44 ID:???
0===。El
  (・∀・ ) 足なんて飾りです!
 >┘>┘   エロイ人にはそれがわからんのです!

607 :量産型牛& ◆eVzLvfNS20BR :2012/09/11(火) 21:25:41.19 ID:???
2/23
 こういう時のイザークの頭の切り替えの早さは、正直見習いたいと思うディアッカであったが、
彼のこのお目出度い性格が普段は毎度お荷物となるだけに、なかなか甲乙付け難い。
 彼は不意に後部座席で負傷した腕を押さえながら座るニコルが気になった。

「ニコル、大丈夫か。傷、痛むのか?」
「大丈夫です。ただ、今回の僕等って、本当に何も手出し出来なかった。
 これって、バルトフェルド隊長が仰っていた通り、僕等が欠陥品だからなのかな…と」

 ニコルは彼の言葉がずっと引っかかっていた。
 これまでコーディネイターである自分の能力に疑問を持つ事は無かった。
 確かに個人の差はあるし、同じコーディネイター同士ならば競合することはしばしばだ。
 だが、ナチュラルと競争して負けるという事は、これまで一度も経験が無かったのだ。
 それが、この戦闘で図らずもハッキリと結果として出た様に感じていた。
 ディアッカはニコルの気持ちも分かるが、だからと落ち込まれているわけにもいかなかった。
 悲観はどんなに勝てる見込みが有っても勝てなくする魔法の眼鏡だ。
 一度そのフィルタに捕われてしまえば、どんなに可能性があることも挑戦出来なくなってしまう。

「あのなぁ、俺達が欠陥品なら、今ここに居ないさ。少なくとも生き残れるってのは才能だろ?」
「……はぁ、その楽観的な考え方には感心させられますね。そんなに単純ならどんなに良い事か」

 自分では良い事を言った気がしていたディアッカだが、ニコルには不評だった様だ。
 何より、つい先程イザークに対して感じていた感想をニコルに言われるとは思わなかった。

 艦長日誌
 砂漠の虎との戦闘が終わり、終戦処理に入っていたアークエンジェルだが、
それら作業が粗方終わり、警戒についていたMSが帰還してくるのを見に多くのクルーが集まっていた。
 普段はこんなことは無いが、本日は特別だ。彼らの目当ての機体はデュエルだった。
 これから降りてくる勇者の姿を待ちわびているのだ。
 この瞬間の為に民間人の見物者も多数居合わせた。普段は彼らの侵入は関係者以外禁止されているが、
この日は特別に許可が出されていた。

 彼らの目前には少々厳つくなったデュエルが威容を示している。
 ハッチが開かれる。彼の視界には既に大勢の人の姿が見えていた。その先頭に立つ人物と共に。
 ゆっくり降りて来た彼は整列して並ぶブリッジクルーと、
その前に立つジェインウェイのもとへ歩み進み、彼女の前でヘルメットを脱いだ。

608 :通常の名無しさんの3倍:2012/09/11(火) 21:26:18.93 ID:???
光子砲発射!

609 :通常の名無しさんの3倍:2012/09/11(火) 21:26:24.83 ID:???
支援

610 :量産型牛& ◆eVzLvfNS20BR :2012/09/11(火) 21:28:57.66 ID:???
2/23…彼は不意に後部座席で負傷した腕を押さえながら座るニコルが気になった。
は、→彼は不意に座席後部で負傷した腕を押さえながら立つニコルが気になった。 へ訂正します。
3/23
「……おかえりなさい。よく、帰って来てくれたわね」

 彼はヘルメットを取り小脇に抱えると敬礼した。

「……只今、帰還しました。遅くなり申し訳有りません、大佐」

 彼の言葉に、ジェインウェイは彼を抱きしめた。

「……良いのよ。あなたが無事ならそれで。よく、頑張ったわね。イチェブ」
「……有り難うございます。セブンも無事です。彼女もこちらへ向かっています」
「……そう。わかったわ。とにかく、貴方達の帰りを歓迎するわ。
ねぇ?皆さん。彼を一緒に祝ってあげて。勇者の帰還よ!」

 ジェインウェイが笑顔でクルー達に呼びかける。
 それを合図とするかの様に、どっと大勢のクルーが彼のもとへ集まった。

「よくやったなぁ!イチェブ!お前は必ず生きていると思ってたよ!」
「ちっくしょう、美味しい所持って行きやがってぇ!かっけぇなぁ、お前!」
「疲れてたって休ませてやんねぇからなぁ!お前が居ない間、どんだけみんな暗かったか!
今日は罰として賑やかし役決定だぞ!」

 長く慣れ親しんで来たハンガーの若いクルー達の喜びの声が聞こえる。
 彼らは実際はそんな感情を一切見せずにプロとして仕事をやり抜いていた。
 だが、彼らの中にも少なからぬ思いが積もっていたのだ。
 イチェブは彼らの反応に驚きつつも、若者らしい笑顔を見せていた。
 彼がこんな笑顔を見せたのは、ジェインウェイが知る中でも初めてのことではないだろうか。

 多くのクルーに祝福された後、イチェブはパイロットの控え室に向かっていた。
 生物的感覚が復活して以降は人間的な衛生感覚が彼にも芽生えており、
この数日着替えられなかったことが苦痛に感じられた。
 早くシャワーを浴びて着替えたい気持ちと共に更衣室に入ると、そこにはキラが待っていた。
そして、フレイ・アルスターの姿もあった。彼女は彼を見ると椅子から立ち上がって出迎える。

「あ、あの!お帰りなさい!!」
「……あ、うん。有り難う。ただいま」
「わ、私、あなたに助けて貰って、本当に、良かった!有り難う!」

611 :通常の名無しさんの3倍:2012/09/11(火) 21:29:13.23 ID:???
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612 :通常の名無しさんの3倍:2012/09/11(火) 21:29:23.84 ID:???
支援

613 :量産型牛& ◆eVzLvfNS20BR :2012/09/11(火) 21:31:12.08 ID:???
4/23
 イチェブは彼女の普段の「あの」態度を知っているだけに、少々面食らっていた。
 彼女の態度の変化は一体。

「……良いんだよ。僕は当然のことをしただけだ。君こそおめでとう。
 念願のモビルスーツパイロットになったんだね。これからはチームだ。よろしく」
「う、うん。……有り難う。よろしく、ね!じゃ、私はこれで!」

 彼女はそう言い残すと、足早に部屋を出て行った。
 その表情は赤面していた様に感じられた。

「……キラ、彼女はどうしたんだろう?」
「あはは、あぁ……うん、感謝していたけど、たぶん、照れているんだと思うよ」
「そうか。僕はシャワーを浴びるよ」
「あ、僕もこれからなんだ」
「そうか」

 二人はシャワールームへと入って行った。

 その頃ヴォイジャーでは、例の『問題の物』が話題になっていた。

「……これは、鯨なのか?」

 ブリッジには上級クルーが集まっていた。
 チャコティの質問に、ドクターは分析結果のパッドを渡して説明する。
 そこに映っているものは……確かに副長が疑問に思う通り、とても鯨には見えない。

「副長、私の分析結果では、この生命体は鯨だと思われます。
ただ……その……我々が知るものとはかなり違いますが、
 遺伝子配列上の構成はそれに近いものの様です。ですが、問題はそこではありません」
「ん、どういうことだ?」
「ここを見て下さい。これは地球人のDNA配列です。
そして、この下がこちらの生命体のものです」

614 :通常の名無しさんの3倍:2012/09/11(火) 21:31:43.52 ID:???
支援

615 :通常の名無しさんの3倍:2012/09/11(火) 21:32:29.61 ID:???
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616 :通常の名無しさんの3倍:2012/09/11(火) 21:32:38.47 ID:???
支援

617 :通常の名無しさんの3倍:2012/09/11(火) 21:33:21.47 ID:???
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618 :量産型牛& ◆eVzLvfNS20BR :2012/09/11(火) 21:33:43.74 ID:???
5/23
 チャコティは説明されたDNAの配列をしばし見ていた。
 そこには一定の同一性が認められる。

「……これはどういう事だ。いや、生命の種論からすれば、
大文明の遺産として銀河の生命体には一定の同一性が認められるはずだが」
「その通りです。私もその線を考えて分析しました。しかし、……どうもこれは違います」
「違う?」
「はい。この生命体の起源は太陽系由来のものと推測します」
「太陽系由来、……以前デルタ宇宙域に居た、6500万年前に脱出したヴォスと同じだというのか?」
「……はい」

 チャコティはいよいよこの世界の状況が分からなくなってきた。
 ヴォスの様な脱出は全くゼロではないことは言える。
 6500万年の間に地球に訪れた天変地異は数知れない。
その間に幾つもの文明が生まれては消えて行ったはずだ。だが、
その中で恒星間文明に達するものとなると……そうは多くない筈だ。
 少なくともそれほど多いのだとすれば、
地球は幾度となく「起源の星」として里帰りの襲来に遭う筈だし、
デルタ宇宙域からの帰還途中にも沢山の種族に会って来たのだ。
ヴォス以外の地球出身文明と遭遇してもおかしくはない。
 だが、そんな事はヴォスとのみしか無かったのだ。噂すら聞く事も無く。

「トム、向こうの状況はどうなっているんだ」
「はい、ハリーはこちら側へ向かっています。ワープ1で飛んだ程度なので、
太陽系からそう離れているわけでもないですから、距離的には比較的近い領域を飛んでいて、
この生命体は何らかのアクシデントに巻き込まれたものと思われます」
「……そのアクシデントだが、攻撃の痕が有ったそうだな」

619 :通常の名無しさんの3倍:2012/09/11(火) 21:34:14.48 ID:???
支援

620 :通常の名無しさんの3倍:2012/09/11(火) 21:34:38.38 ID:???
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  ( ゚д゚ )
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621 :通常の名無しさんの3倍:2012/09/11(火) 21:35:03.73 ID:???
sienn

622 :通常の名無しさんの3倍:2012/09/11(火) 21:37:15.98 ID:???
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623 :量産型牛& ◆eVzLvfNS20BR :2012/09/11(火) 21:37:50.59 ID:???
6/23
「えぇ、粒子ビームの痕跡が有り、その構成が問題で……」
「何だ、勿体ぶるな」
「……バルカンによるものの様なんです」
「ぁあ!?……なんだって!?何かの間違いじゃないのか」

 新たに現れた生命体の情報は彼らにとっても親しい筈の相手の名前だけに、
困惑は混迷へと深まりを見せた。

 地球連合軍、月面プトレマイオス基地では、トゥヴォックが造船所へ来ていた。
 就任後すぐに建造を開始させた新造艦の製造が遂に完了したのだ。
 新しい艦はドレイク級を最終的に3隻組み合わせたものとなった。
 この新造艦をトゥヴォックはハルバートンと名付けた。
 亡き中将の名前をつける事で、第八艦隊のクルー達の労を労ったのだ。
 この艦は名実共にこの基地のフラッグシップとなるだろう。
 トゥヴォックはこのハルバートン級をテストする事も兼ねて就役させることになる。

 この艦の売りは最大6機のMSを格納出来るハンガーとリニアカタパルトを中央に搭載し、
メビウスも両サイドのドレイク級船体に2機ずつ格納出来、最大4機搭載出来る。
 船速も二つのハイスピードドレイク級のエンジンにより、連合最速の速度を誇る。
 遠心力重力デッキを持ち、クルーの無重力長期滞在時の負担を大幅に軽減する。
 この艦は総定員500名のクルーで運行する事になる。
 トゥヴォックは現状でMSを持たないため、MSハンガーにもメビウスFを載せることとし、
メビウスであればMSハンガーならば倍の数を格納できることから、
16機のメビウスFを搭載して運行させる事にした。

「基地司令代理、トゥヴォック・ヴァルカン中佐だ。ここに集まった諸君の活躍を期待する。
 我々が目指すのは安全な航行の確保だ。諸君等も知っての通り、連合は劣勢に置かれている。
 それを打開するには地球との密なる連携においてのみである。君達のすべき仕事は、
その道を造り繋ぐことだ。これは重要な任務となる。心して掛かって欲しい。以上だ」

 地球連合軍第八艦隊は周辺宙域のZAFT排除に向けて出航した。
 随行艦はバーナード/ロー/ディファイアントの3隻のハイスピードドレイク級だ。
 端から見たらドレイク級づくしの弱小艦隊であることは間違いないが、果たして実力の程は。

624 :通常の名無しさんの3倍:2012/09/11(火) 21:38:21.52 ID:???
s

625 :通常の名無しさんの3倍:2012/09/11(火) 21:39:03.28 ID:???
0===。El
  ( ゚∀゚ )
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626 :通常の名無しさんの3倍:2012/09/11(火) 21:39:12.91 ID:???
支援

627 :通常の名無しさんの3倍:2012/09/11(火) 21:40:06.46 ID:???
0===。El
  (^ω^)
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628 :量産型牛& ◆eVzLvfNS20BR :2012/09/11(火) 21:41:08.09 ID:???
7/23
「すごい、なんだこれ、どんな装備だよ」

 ラスティは連合製MSらしきデザインだが、どことなく雰囲気や質感の違う機体の前に立っていた。
 フェイスデザインは連合製のGAT-Xと酷似しているが、それ以外の装備はこれまでのどのMSとも適合しない。
 ディテールも連合デザインに近いが、使われている素材や装備は見た事も無い形状をしている。
 所々サイアンブルーに明滅するラインはオプティカル回路だろうか。銃などの装備は見えない。
 全長は20m前後は有るだろう。通常の規格よりは若干大きめのサイズに思える。

「お気に召したかな?」

 声を掛けたのは、このプログラムの開発メンバーであるムルケイ少尉だ。
 ラスティが知るこの施設内で会った僅かな生身の人間のうちの一人だ。
 彼は少々技術オタク的だが気さくな性格で話し易い印象だ。
 以前、ミゲルが彼らに殴りかかった事が有ったが、
トムという人物にあっさり押さえられたことが有った。
 その件があってからミゲルは暫く謹慎扱いだが、確かにドクターの言った通りに、
ここの施設の人物は強い様だ。

「ムルケイさん。あの、これ、どんなMSですか。
その、僕の要望は……たぶん入ってるんだと思いますが」
「あぁ、君の希望は自分が乗る筈だったストライクに乗ってみたいということだったね。
 まぁ、コイツはストライクとは違うけど、それとは全く次元の違う乗り心地を見せてくれる筈だ。
 こいつは俺達の夢のモビルスーツさ」

 そう言う彼の表情はとても嬉しそうだ。彼はこうした作業をする事が大好きだそうで、
幼少の頃から機械弄りばかりやった少年時代を過ごしていたという。
 ラスティはこの彼らの夢のモビルスーツの名前が気になった。

「名前は」

629 :通常の名無しさんの3倍:2012/09/11(火) 21:41:29.53 ID:???
カチャ
;y=-(´・ω・)

630 :通常の名無しさんの3倍:2012/09/11(火) 21:42:09.21 ID:???
ターン
;y=ー(´゚ω゚)・∵.

631 :通常の名無しさんの3倍:2012/09/11(火) 21:42:55.42 ID:???
支援

632 :量産型牛& ◆eVzLvfNS20BR :2012/09/11(火) 21:43:36.67 ID:???
8/23
「名前?……あぁ、決めてなかったなぁ。トムはゴリ・ゴリアテとか言っていたけど、
正直トムのセンスで決めるのはなぁ……そうだ、君の意見を聞いてみたい」
「僕のですか……うーん、グランドスラム……って駄目ですか?なんか、何でも入ってそうで」

 ラスティが笑う。
 彼からすれば、この場所に来てから何でも有りな事ばかりなことに因んでだが、
聞いていたムルケイの反応は違った。

「……素晴らしい。君の意見に決めた!きっとトムも気に入るよ。グランドスラム。良い名前だ」
「あ、えーと、あれぇ、良いんですかぁ?」
「あぁ。じゃ、早速乗ってごらん」

 彼が笑顔で言った。だが、このMSにはハッチらしき物は見当たらない。
 どうしたら良いのかと眺めている彼をみて、ムルケイが気付いた様だ。

「あはは、忘れていたよ。ごめんね。コンピューター、ゴリ・ゴリアテに一名転送」
「え、うわ!?」

 転送ビームが彼の周囲に起こり、気付いた時には薄暗い室内に浮かんでいた。
 というか、コンピューターがゴリ・ゴリアテと認識していたのは無視して良いのか。
 彼が転送された先は真っ暗だった。それに先程まであった重力も無い。

「うわぁ、なんだこれ!?あ?」

 唐突にボォッと室内に光が溢れてくる。
 そこは球状に出来ていて、次第に壁面が外の景色を表示していく。

「全天球ディスプレイ……すげぇ。でも、椅子が欲しいなぁ……」
『了解しました。椅子を作成します』

 普段聴き慣れたコンピューター音声が当然の様に作成すると告げると、
本当に瞬時に彼の背後に作成された。流石の彼も最早この程度では驚かない。
 ここは不思議の世界なのだ。魔法同然の事が起こっても不思議じゃない。
 シートベルトを着用して周囲を見回すと、空間に文字が浮かび上がってきた。
 コマンドコントロールが空間をリング状につながり、自分の周囲を回っている。
 完全な3Dビジョンシステムだ。
 しかも、彼がそのメニューに触れると、ちゃんと質感が感じられる。

633 :通常の名無しさんの3倍:2012/09/11(火) 21:43:59.33 ID:???
支援

634 :通常の名無しさんの3倍:2012/09/11(火) 21:44:17.27 ID:???
支援

635 :通常の名無しさんの3倍:2012/09/11(火) 21:45:14.39 ID:???
ガチャ
;y=━(;・ω・)ドキドキ

636 :通常の名無しさんの3倍:2012/09/11(火) 21:46:30.61 ID:???
;y=━( ゚д・∵. ドゴ──────ン!!!

637 :量産型牛& ◆eVzLvfNS20BR :2012/09/11(火) 21:46:59.18 ID:???
9/23
「……ソリッドビジョン(うわぁ、驚かない、驚かない、驚かない〜〜〜!!)」
『ラスティ君、それじゃぁ、テストを始めてもらおうか。これから君に任務を与える。
 君が戦う相手はワープ5の巡航速度を持つ巨大巡洋艦、バードオブプレイとウォーバードだ。
 彼らは光学遮蔽フィールドとフォースシールドを形成し、君の乗る機体の攻撃を100%避けられる。
 君にしてもらいたいのは、ドレスを展開させて、ただそこを通り抜けることだ。良いね?」
「え、なんですかそれは」

 ラスティは唐突に告げられた世界観に呆気にとられた。
 ワープ5?光学遮蔽?フォースシールド???……どれも謎の用語ばかりだ。
 勿論、言っている意味は分かるが、そんなものはSFの世界の産物に過ぎない。

『まぁ、ゲームの世界だ。気張らずに頑張ってくれ。ただ、攻撃を受ければ衝撃も走るし、
機体もちゃんと損傷する。完全に破壊されたらゲームオーバーだ。
 なお、エリア内に有る物は何を使っても構わない。どのような方法であれ、
生きて敵艦から脱出して目標点へ向かえれば良いが、飽くまで見つからない様に工夫することだ。
 わかったね。じゃぁ、健闘を祈る』
「あぁ、待って!?ちょっと、たんま!あぁ、……切れた。
 はぁ。何だよそれ。ワープだって?シールド?わけわかんねぇよ」

 そうこう考えている間もなく、視界は宇宙空間に切り替わった。
 そこには彼がまだ見た事も無い景色が広がっていた。どう見たって地球の景色ではない。
 それもこんなにリアルに。息を飲む景色とは、こういうものを言うのだろう。

「えーと、スペックは……」

 彼がそう言うと、リングメニューが瞬時に回転して目前に必要な情報をポップアップさせる。
 そこにはこの機体の詳細なスペックが表示されていた。

「マイクロワープドライブ!?最高速度はワープ5……どんなスピードだ?
 武装はアームラインフェイザーキャノン左右腕に二門に、アームビームブレイド?ビルトインか。
 えっとー……ブレイド出力とパルスビームの変換が出来る様になっているんだ。
 で、フォースシールド?……バリアみたいな物か?防御スクリーンモードってのは壁?
 あと、腕の中に仕込みで光子魚雷?…魚雷っていうんだから、実弾兵器みたいなもんかな……が2個」

638 :通常の名無しさんの3倍:2012/09/11(火) 21:47:49.76 ID:???
支援

639 :通常の名無しさんの3倍:2012/09/11(火) 21:48:31.57 ID:???
支援

640 :通常の名無しさんの3倍:2012/09/11(火) 21:49:11.33 ID:???
ちょwwwwwもはやMSじゃねえwwwwwww

641 :通常の名無しさんの3倍:2012/09/11(火) 21:50:35.43 ID:???
オービタルフレームが泣いて逃げ出すレベルww

642 :量産型牛& ◆eVzLvfNS20BR :2012/09/11(火) 21:51:06.99 ID:???
10/23
 ラスティは一通り確認したが、はっきり言ってしまえば確認した意味は無かった。
 書いてある事が分かった所で、実際の効果を見てみない事には分からないのだから。

「よし、いっちょ、ゲームスタートと行こっか!」

 しかし、彼はどう操作して良いのか迷っていた。操縦桿が無いし、コンソールしか無い。
 結局の所、まともに動かせる様になるにはそれから一時間以上の時間を必要とした。

 機体内部の気温が上昇し、全体が強い軋み音を発していた。
 が、唐突に音は消えた。

「……………え」

 彼女は彼に抱きついたまま、おそるおそる目を開けて周囲を見回す。
 所々バチバチといっているが機体自体は無事の様だ。でも、外部の爆発音はまだ聴こえている。

「……アイシャ、無事で良かった。
しかし、どうなっている。ディスプレイも消えているしなぁ」

 その時、唐突に声がした。その声はスピーカーから発せられたというよりは、
機体全体から伝わってくる様な音だ。とても不思議な伝わり方だが、通信特有のノイズは一切無かった。

『……我々はオドンネル大佐の命により救出した。
お前達は私のフィールドに守られている限り無傷だ』
「フィールド?」

 その声は電子的に作られた様な音声だった。ひどく低い様で、高い音も混じった声。
 まるで複数の声が一つに束ねられて発生している様に感じられる。

『……お前達が知るべきことではない。
我々の助けを請うということは、大佐の提案を受け入れたのか。
返答次第では、お前達をパージする』

643 :通常の名無しさんの3倍:2012/09/11(火) 21:52:22.35 ID:???
ワープ5=光速の214倍www

644 :通常の名無しさんの3倍:2012/09/11(火) 21:53:13.20 ID:???
支援

645 :通常の名無しさんの3倍:2012/09/11(火) 21:54:56.50 ID:???
0===。El
 (´;ω;`) オレラノソンザイイギガ……
 >┘>┘

646 :通常の名無しさんの3倍:2012/09/11(火) 21:56:37.22 ID:???
ボールさんは確かについてけんレベルだなw

647 :量産型牛& ◆eVzLvfNS20BR :2012/09/11(火) 21:56:53.84 ID:???
11/23
 バルトフェルドはようやくこの事態の首謀者の名前が聞けて安堵した。

「……事、この期に及んで僕がどうこうすると思うかね。
 僕はアイシャと一緒に居られるならば、それで良い。
 大佐には感謝したいところだ。だが、私を生かしてどうしようというんだね」
『……その答えはYESと取るが、良いか』
「あぁ。捕虜の扱いは君等次第だろう。何を躊躇う事が有る」
『……それを聞いて安心した。私の名はセブン・オブ・ナイン。お前達の直属の指揮官となる。
 そして、お前達の新たなるコードネームはエイト・オブ・ワン及びツーだ』
「ほぉ、コードネーム。スパイでもさせるのかね?」
『スパイ?……そうとも言うのか。だが、我々の目指す物は連合でもZAFTでもない』
「……というと?」
『お前も理想とするその全てだ……と、大佐なら言うだろう。だからこそ、お前は選ばれた。
お前達にはこれを渡しておく』

 そう告げられた後、二人の耳元がぼうっと緑色に光り輝き、
その光が消えた後にはピアスの様なものが装着されていた。二人は互いの耳を触り確認する。
 それは不思議な事に刺さっているわけではなく、ただ皮膚に吸着している。
しかし、取れそうには無い。

「これは一体なんだ!?それに、今のは!?」
『深く知る必要は無い。いずれ分かる時が来る。お前達の行動は全てチェックされる。
 今渡したコミュニケーターを外しても、お前達の居場所は瞬時に特定される。だが恐れる事は無い。
 お前達に与えられるその楔は、我々の仲間である証であり、敵対することを意味しない。
 お前達が窮地に陥れば我々はお前達を助けよう。だが、それは我々の意図に反しない範囲でだ」

 バルトフェルドは声の主の話を聞きながら冷静に分析していた。
 耳に装着されたものは「コミュニケーター」と呼ばれていた。これは声主の言う通りに受け取れば、
通信装置なのだろう。しかし、通信出来るということは、Point to Pointで居場所が特定されている必要がある。
そのために必然的にGPSの様な座標情報を発する発信器ともなるのだろう。

648 :通常の名無しさんの3倍:2012/09/11(火) 21:57:52.50 ID:???
支援

649 :通常の名無しさんの3倍:2012/09/11(火) 21:58:16.20 ID:???
支援

650 :量産型牛& ◆eVzLvfNS20BR :2012/09/11(火) 22:00:16.20 ID:???
12/23
 だが、このNジャマーで覆われた地球でどうやって座標情報を取得し交信するのだろうか。
 連合にこれほどの衛星通信技術があるなら、誘導弾の利用に支障はない筈だ。…それに先程のフィールド。
 それが何を意味するのかわからないが、現状の無事を説明する重要な技術なのだろう。
 仮にそれがSFで存在する様なバリアの様なものであるとすれば、これは恐るべき事実だ。
 これが声主の言う通り連合でもZAFTでも無いとすれば、とんだワイルドカードの登場と言える。

「………ほぅ、それはまたまた頼もしい。で、どうすれば良い?」
『お前達をZAFTへ戻そう。お前達の軍へ戻り、我々の支持通りに動けば良い』
「……従わなかったら?」

 彼はあえて試してみたくなった。どうせ死んでいてもおかしくない境遇だ。
 その時間の早さに一喜一憂するくらいなら、自分の置かれている自由を調べておきたかった。
 だが、彼の緊張とは裏腹に、声主は何の躊躇いも無くあっさりと答えた。

『……好きにするが良い。それを選ぶもお前達の自由だ。だが、それは我々との敵対を意味する。
 その末路に補償は無い。先程も言った通り、我々はいつでもお前達を特定可能だ』

 つまり、行動に沿っているのであれば、何をしようとお構い無しということだろうか。
 随分と気前の良い話だが、相手が許すというのだ。何ら遠慮の必要は無いだろう。

「……怖い怖い。言う通りにしよう」
『良い心がけだ。我々への協力を感謝する。最後にお前達に告げておこう。……抵抗は、無意味だ』

 彼らはその後、レセップスの移動進路先に運ばれた。
 かなりの損傷があった筈の機体だが、不思議な事に殆どの損傷場所は回復していた。
 勿論、被弾した右前足部はご丁寧に壊れたままだが、
その他の性能は完全に治っていると表示された。
 彼らに指示通りに動くことを再度約束し下ろされた二人は、ラゴゥのハッチを開けて外を見た。
 そこには頭上に黒く異様な機体がほぼ音も無く浮いている。
 それはこれまで聴いた事の無い程静かな駆動音を響かせて瞬時に消えた。
 そのスピードは本当に瞬時と言って差し支えないものだった。

651 :通常の名無しさんの3倍:2012/09/11(火) 22:00:19.66 ID:???
;y=■(;´Д`)オモイノー

652 :通常の名無しさんの3倍:2012/09/11(火) 22:00:52.86 ID:???
支援

653 :通常の名無しさんの3倍:2012/09/11(火) 22:01:10.61 ID:???
支持→指示

654 :通常の名無しさんの3倍:2012/09/11(火) 22:02:08.17 ID:???
なんつーか、アブダクションケースみたいだなw

655 :量産型牛& ◆eVzLvfNS20BR :2012/09/11(火) 22:02:24.11 ID:???
13/23
「……見たか?あれ」
「えぇ」

 二人は暫くそのまま余韻にでも浸る様に呆然と消えて行った方角を眺めていた。
 しばらくして彼が口を開く。

「アイシャ、俺達はいずれお尋ね者かもしれないな。どうする?」
「フフフ、あら、砂漠の虎は悪人なんでしょう?だったら、決まってるじゃない」
「……そうだな。どうせだ、極悪人を目指してやろうじゃないか。ふふふ、はっはっはっは!」

 そう時間の経過を待つ事無く、彼らの母艦が視界に現れた。

「隊長、ご無事でしたか!!」

 彼の副官は通信機越しに涙を浮かべていた。
 あの絶望的な戦闘でも彼らの隊長は無事に帰還したのだ。

「こちら、バルトフェルド。レセップス、帰投する」

 ラゴゥが帰還する。
 その後レセップスは進路を変え、ビクトリアへと向かった。


 イチェブは数日振りにシャワーを浴びていた。
 これまで、こんなに水が気持ち良いと思った事は無い。
 香りの良い石鹸の泡で体が清められて行く。不快な臭気も消え、清潔になることが爽快に感じる。
 ボーグの時は油まみれであろうと全く考えた事が無かったが、
生きるという事は細胞が常に更新されて行く。

656 :通常の名無しさんの3倍:2012/09/11(火) 22:03:29.45 ID:???
支援

657 :通常の名無しさんの3倍:2012/09/11(火) 22:04:31.69 ID:???
オモイヨー⊂⌒~⊃。Д。)⊃y=■

658 :量産型牛& ◆eVzLvfNS20BR :2012/09/11(火) 22:06:33.78 ID:???
12/23『お前達をZAFTへ戻そう。お前達の軍へ戻り、我々の支持通りに動けば良い』
は『お前達をZAFTへ戻そう。お前達の軍へ戻り、我々の指示通りに動けば良い』へ訂正します
見つけて下さった方、有り難うございます。

14/23
 その過程で沢山の古くなった細胞が廃棄され、新たな細胞に取って代わる。
 そうしたサイクルが体をリフレッシュさせて行くと同時に、多くの老廃物を出して不潔にする。
 生体とは本当に面倒な物だが、それ故にこの五感から伝わる快感も得られるのだ。

「はぁぁ……」

 思わず溜息を吐いた。心地よさとは思わず大きな息を吐きたくなるものだ。
 焦っている時の過呼吸さとは違い、生体はリラックスしている時は多くの呼吸を必要としない。
 一定のリズムに従い、一定の吸気量を満たしてやりさえすれば良いのだから。
 だが、心地よさを感じている瞬間は呼吸を忘れている。その反動として大きく息を吐き出すのだろう。
 個体の持つ感情がさそれをさせるのだ。ボーグに感情は存在しないから有り得ない。

「イチェブ」

 一つ向こうのシャワーを使うキラが声を掛けて来た。

「どうした」
「ん、いや、どうしてたのかなって」

 これは現段階ではまだ誰も知らない事だけに、誰もが知りたい話だろう。
 イチェブは隠す事でもないので素直に話した。

「……セブンに助けられて、僕達は暫く傷を癒していた」
「傷?」
「あぁ、助けられたと言っても、体も損傷していたからな。傷を癒しつつ、
壊れた機体を修理したりと試行錯誤していたら、こんなに時間が掛かった。
 でも、何とか居なくなる前に戻れて良かった」
「僕達がやられちゃう心配はしなかったの?」
「ん?……僕等にはジェインウェイ社長がいる。彼女が居る限り、僕等は負けないよ」

 彼は事も無げに言い切った。
 その発言の裏から伺えるのは、彼の大佐に対する深い信頼だろう。

659 :通常の名無しさんの3倍:2012/09/11(火) 22:06:39.70 ID:???
紫煙(´ー`)y─┛~~

660 :通常の名無しさんの3倍:2012/09/11(火) 22:06:59.66 ID:???
支援

661 :通常の名無しさんの3倍:2012/09/11(火) 22:08:23.55 ID:???
( `Д´)コオオオオオオオオオ!
( `Д´)<シェーン!Tバーック!!

662 :通常の名無しさんの3倍:2012/09/11(火) 22:09:50.61 ID:???
こんな支援もある

ぬるぽ

663 :量産型牛& ◆eVzLvfNS20BR :2012/09/11(火) 22:10:12.01 ID:???
15/23…放送も3枠目へ突入

「……はは、凄いな。強い自慢のおばさんなんだね」
「そうだな。彼女は強い。どんな困難な事があっても、必ず解を見つけ出す。絶望的な状況でも諦めない。
 だから、僕は彼女の力になりたい。彼らの力になりたいんだ」
「……ハンセンさんはどうして来れなかったの?」
「あぁ、彼女の方のマシンが言う事聞かなくて。遅れると言った通りだ。必ず戻ってくる」
「だったら、座標を追って僕等が迎えに行けば良いんじゃないの?」
「……………失念していた。まぁ、彼女のことだ。心配ない」

 キラはあっさり忘れていたと答えた彼に思わず笑った。
 確かに彼らしい。そして、それだけ彼女の行動にも信頼を寄せているのだろう。

 アークエンジェルは戦闘後、機関部が被弾した事で修理する時間が必要となった。
 また、戦場に残るザフト兵捕虜の対応が必要になった。総勢で200名程の人員が残っており、
 その内100名は負傷しバナディーヤの医療施設ではケア不能な内容だったため、
この100名はアークエンジェルにて収容し治療する他に助かる道が無かった。
 しかし、幾ら何でも一人の医者でこの数を治療するのは困難だ。
 我々はバナディーヤの医療施設と連携し、政治的支配が消えて混乱する事が無い様、一時的に支配者となった。
 そんな中、彼女は帰還した。

「……随分揉まれた様ね。セブン」
「あぁ。本当に大勢のクルーが私の帰りを待っていたらしい。……悪い気はしない」

 ジェインウェイは自室に彼女を呼んだ。
 多くのクルーが帰還を祝っていた中、ジェインウェイは連日の激務にさすがに疲れたのだ。
 彼女はセブンを自分の対面の椅子に座る様促すと、カップにお茶を入れて差し出した。

「さぁ、どうぞ。……あなたは沢山のクルーに愛されているのよ。掛替えの無い一人だわ」

664 :通常の名無しさんの3倍:2012/09/11(火) 22:11:27.32 ID:???
同化

665 :通常の名無しさんの3倍:2012/09/11(火) 22:11:53.63 ID:???
■━⊂( ・∀・) 彡 ガッ☆`Д´)ノ>>662

666 :通常の名無しさんの3倍:2012/09/11(火) 22:12:09.42 ID:???
>>662
ぽ・・・ポン酢!

667 :量産型牛& ◆eVzLvfNS20BR :2012/09/11(火) 22:13:57.73 ID:???
16/23
 セブンがカップに手をかけるが、口に運ぶでも無く両手をカップに当てていた。
 猫舌なのだろうか。彼女は温もりを感じている様だ。

「……そうか。有り難うと言っておこう。ところで社長、いや、大佐と言った方が良いのか?」
「いいえ、どちらでも構わないわ」
「そうか。ならば、社長。あなたの指示通りにしたが、あれで良かったのか」

 実は、あのバナディーヤでのバルトフェルドとの会談をした前日には、既にセブンとの通信は確立していた。
 彼女の話では、新たなメビウスことオーロボロスの完成により、あの戦闘はシールドで切り抜けていたそうだ。
ボーグフォースシールドを纏うオーロボロスの前に実弾は無意味だが、回復する時間を稼ぐ為に姿を隠したという。
何より、新たなボーグを個人として手名付けるには時間が必要だ。そのために不必要な情報を入れたくなかった。
 だからこそ彼女は限界まで待ったという。再生サイクルの確立のためとはいえ、長く苦しい戦いだった様だ。
 私は彼女との通信があってから一計を案じた。
 軌道上にシャトルアーチャーがあったことから、亜空間トランスポンダーを衛星軌道上に散布させ、
中継通信網を確立させたのだ。そして、これまで連合を中心に動いて来たが、
プラントへの関与を進める為の布石を打つ事にした。
 その対象である彼が使える人物であるかどうかは未知数であったが、いざとなれば転送で脱出可能な事もあり、
私は自ら彼に会いに出掛ける事にした。丁度彼らが市内ゲリラ掃討のための計画を立てていたことを逆手に取り、
囮である彼と会話をするチャンスと考えたのだ。
 結果は思わぬ収穫だった。
 彼は私の話に耳を傾ける公平さがあった。思った通りに理性があったことが決め手だ。
 私は彼に提案した。

『我々が負け戦となれば素直に降伏し技術を提供する。
その代わり、我々の勝利が確実ならばあなたは私が送る指示に従い、私に協力して欲しい…と』

 そして実際の戦闘は我々が優勢に終わり、戦闘終盤には私は彼に提案の通信を送った。
 彼は我々にレセップスを逃がすことと、捕虜の公正な扱いを求めて来たのでそれに応じた。
 結果的にレセップスが砲撃して来てもアークエンジェルへは一切手出しさせずに終わり、
 終盤に現れたイチェブが完璧に演じてくれた事でこの戦闘は終幕へ導かれた。
 そう、この戦闘を平和裏に終わらせるには、砂漠の虎の死は免れぬ物だった。
 故に完璧に亡くなったと同盟軍が納得する形で戦闘を終了させる必要があったのだ。

668 :通常の名無しさんの3倍:2012/09/11(火) 22:14:25.51 ID:???
支援

669 :通常の名無しさんの3倍:2012/09/11(火) 22:14:34.95 ID:???
支援

670 :通常の名無しさんの3倍:2012/09/11(火) 22:16:57.02 ID:???
( ゚Д゚)y─┛~~

671 :量産型牛& ◆eVzLvfNS20BR :2012/09/11(火) 22:17:59.98 ID:???
17/23
「……ということは、上手くやってくれたのね。それで構わないわ。
 これからの事を考えると、より多くの支援者が必要になる。彼らも敵ではないのだから」
「それは彼らがこちらの指示通りに動く事が前提になるな。彼らが裏切るとは考えないのか?」
「……それは彼が言ったのかしら?」
「あぁ。仮定とは前置きしていたがな」

 彼らしい話だ。ジェインウェイは随分と律儀な男だと感じた。

「良いのよ。むしろ彼ら自身の意志が入った方が、物事は良く動く事も有るわ。
 何事も誰かからの命令であるよりは、自発的な意志である方がモチベーションは高いでしょう?」
「……なるほど。それは効率が良い判断だ」
「それより、問題は患者ね」
「戦闘の負傷者か。ハン・ソロ医師は現在117名の負傷者を扱っていると聞く。オーバーワークだろう。」
「そうね。だからというか、私が考えているのは……正直、気は進まないのだけど」
「……ドクターを転送するのか」
「えぇ。あなたならどう思うかしら」

 彼女はしばし考えていた。その表情には眉間の皺が見える。
 彼女も気が進まないのだろう。

「……技術レベルが違い過ぎる。……だが、あなたの言う人道からすれば、答えはYESだろう。
 ただ、ドクターが来る必要があるのか?」
「……どういうことかしら?」
「医療用セットを一式送って貰い、それで処置してはどうだろう。
 火傷や出血や裂傷などの内外部の傷ならば、そう高度な設備は要らない筈だが」
「それよ!良いアイディアね」

672 :通常の名無しさんの3倍:2012/09/11(火) 22:18:40.83 ID:???
支援

673 :通常の名無しさんの3倍:2012/09/11(火) 22:19:33.15 ID:???
┗─y( ´Д`)。oO○

674 :通常の名無しさんの3倍:2012/09/11(火) 22:20:09.13 ID:???
sienn

675 :通常の名無しさんの3倍:2012/09/11(火) 22:21:28.83 ID:???
支援

676 :量産型牛& ◆eVzLvfNS20BR :2012/09/11(火) 22:21:51.65 ID:???
18/23
「しかし、治療技術的に高度なことには変わりないぞ?」
「良いのよ。そんなこと、妖精さんの仕業にすればいいんだから」

 セブンは私の言葉に首を傾げていた。
 私はそれに微笑んで次の話題に変えた。

「とりあえず、医療はそれで行くわ。さてと、あなたの仕事についての話だけど、
オーロボロスとデュエルについての扱いは厳重にお願い。
 特にオーロボロスは……被害者を出さない為にもしっかり管理する事。わかるわね」
「……了解。あなたの懸念は理解している。だが、オーロボロスは役立つ」
「報告書を見たわ。随分てんこもりじゃない。ボーグシールドだけでも圧倒的なのに、
全地形対応でワープドライブ搭載。セルフリカバリ、グラップラー、レプリケーター、フェイザービット。
 それだけじゃない。センサー性能も一線級よ。……オーロボロス。オーリィかしら。素晴らしいわ。
 これは流石の私も驚きの結果よ。この技術が私達の自由になれば、かなりの対応能力を獲得出来る」

 同化という作業はジェインウェイ自身はあまり気が進まない行動ではあったが、結果的に大成功であった。
 クィーンがあの程度で消滅するとは思えない。何より30年のテクノロジー差もあっという間に来てしまう。
 そして自分には提督程の経験は無いのだ。彼女に出来たのだから自分に出来ないという事は無いだろうが、
経験の差は如実に現れるに違いない。その差を縮める為にも彼女はより多くの知識と技術を必要としていた。
 その意味では、この結果は今後の為にも大きな一歩と言える。

「だろうな。ワンとは違い、殆どの技術がヴォイジャーと互換性があるだろう。何より『現代』のものだからな」
「彼が仲間であると思うと、私も心強い。それだけに、クルー達との諍いは避けたいわね」
「……細心の注意を払う。私も奴の機嫌を損ねると面倒だ。まだあれは幼児の様なものだからな」
「あら、そうなの。じゃぁ、あなたから生まれた様な物だから、あなたがお母さんということね」
「……あんな金属を産んだ覚えは無い」
「ふふふ、頼んだわよ」

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